♪~
「ふわぁ~デートかぁ」
「ちゃんと責任とってこいよ」
「あいあい。じゃ、新田君はライスの世話でもしてて」
「休ませてくれよ」
服装なんてしゃれたものなんてないから、適当に見繕って準備を完了する。
後は色々リュックサックの中に入れていこう。
「デートにリュックいる?」
「これがないと落ち着かないんだよ」
「まじか。せめてこっち使いな」
「ああ、これ? 新田君がいうなら、そうしてみるよ」
新田君って本当に賢いよね。デート経験でもあるのか、相手や場所の雰囲気に合わせた服装の合わせがうまい気がする。
女性に対する扱い方っていうのを、僕が開発中に調べたんだってさ。
いやはやものすごく細やかだなあ。世間の女性や男性は、デートに特別感を持ち込みすぎじゃない?
いわゆるただ遊びに行くんじゃないの?
「よし、行け。色男!」
「ただの友達なんだよなぁ」
朝食を食べに来たんだけど、なんか目線が痛い。
特に男子から。休日なのに暇だなってか? 暇じゃないんだよ、失態を挽回しにいくんだよ。
「や、西尾」
「おっはー、浜内君」
「デートか?」
「うん。そういう君は……推し活?」
「おうよ。お互い、頑張ろうぜ」
「うん」
さて、同じ志を持った友達と意気投合して、いざ校門の正門前へ。
以前テイオーが背中を預けていた場所に陣取って待っていると、何やら聞いたことがある声質が。
「ごめーん! ちょっと遅れちゃった!」
「大丈夫、僕も今さっき来たところだし……っ!?」
「ん、どうしたの?」
「ああいや、その」
「?」
「僕の隣を歩く人が、こんな美人でいいのかっていう」
「どう? 躊躇しちゃう?」
「ううん、是が非でも手にしたい感じ。じゃ、行こうか」
やっべ。くっそ顔が熱い。なんなんだよ、アプリやアニメじゃ年相応の子供なのに、実際生きているこの世界だと
僕も全身が興奮してしまう。
なんか負けた感じがするし、気取られるのも癪だからテイオーと手をつないでみる。
するとなんか恋人つなぎをされてしまった。
ちょっと待って、友達の延長線じゃないのか!?
まあいいや、テイオーの友達感覚がこれなら尊重しようじゃないか。
でもなんか近すぎじゃない? 近くない、そう。
はい、やってきました。都内有数の遊園地。
こんなところにあったんだなぁ。千葉県の近くとか言ってたけど、もろ県境じゃん。
駐車場側のハッピーエントリーに並んで、持ち物検査を行う。
さすがにソウル干渉器は持ってきてないよ。
日傘を差して開店前に並ぶことができたけど、ウォルトのネズミーランドって大変だなと思う。
「そういえば、テイオーはどんなアトラクションに乗りたい?」
「んーと、できればたくさん乗りたい!」
「うん、わかった。じゃあ、左からだね」
「OK、任せてよ」
「って言っても、9時から案内されるからちょっと寄り道しちゃう?」
「うーん、それはあとでいいや」
「わかった。じゃあ、たくさんアトラクションにのろっか」
「うん、楽しみ!」
じゃあ、『巨万の富』に教えてもらおうか!
MAPを片手にいろいろ考えていくと、早めに左から回って早めに軽食を取って、
ハーモニインカラーが始まる前にその周辺を終わらせる。
そしてテイオーを肩車でもして見せてやれば、そこから未来館のある室内アトラクションへ移るんだ。
お、列が前進し始めたぞ。
じゃあ、戦の始まりだ!
「そういえばテイオーって、ここ来たことあるの?」
「うん! すっごく小さいときにね」
「その時はどうだった?」
「どうって?」
「世界が違う?」
「うん。……でも、夢は変わらないし、終わらないよ」
「そっか」
「遠矢は来た事あるの?」
「全然」
「都内に住んでるんでしょ? これなかったの?」
「うーん、時間に余裕がなかったからねー」
「えー勿体ない」
「そうだね、勿体ない気がするよ」
「さては興味ないな~?」
「そんなこたない。テイオーと一緒の時間を過ごすの、とっても楽しいよ」
「っ、ぼ、ボクも楽しいよ。あ、次アレ、アレ行こうよ!」
「おっけー」
テイオーといろんなアトラクションに乗ったり、『巨万の富』からもたらされる情報の隙間時間に、色んなお店で軽食をつついたりしたんだ。
色んな食べ物があるんだねえ。だがしかし、高い!
有名で人気な遊園地は、物価がべらぼうに高くてくらくらするよ。
さて、そろそろパレードちゃいますかって時に、視界の端に気になる親子を見る。
それは有名人じゃない。
中肉中背の男性と白いメッシュの入った幼いウマ娘。
親子としてみたら、見たいパレードを見れなくて泣いているとしか見えない。
が、『巨万の富』が子供が多く、敷地面積の多いアミューズメントパークにおける誘拐犯罪の資料やその連れ去り方をレクチャーしてくれる。
ははは、僕の目をごまかせると思ったか!
「どこ行くの?」
「ちょっと確認」
僕は男性に話しかけて色々答弁してみたけど、なんで親が子供の名前を把握していないんですかねぇ?
周囲の人たちに誘拐だ!と叫んでみたんだけど、誰も相手にしてくれないし丁度パレードが始まってしまう。
あああああ、ライスに干渉した余波ががががが。
なんて人のせいにしている場合じゃない! テイオーがスタッフさんを連れてきてくれたので、事情聴取を行うことと親御さん
を呼ぶ措置をしてくれた。
「え、父さんのお弟子さんじゃないの?」
「違うんだってさ」
「大変なめにあっちゃったね」
例の男性が警官に連行されるのを後目に、この子の親御さんを一緒に待つことにした。
エレクトリカルパレードが始まる前に脱出したいな。
親御さんが迷子センターに来る間、少女とお話してみる。
彼女もたくさんのアトラクションに乗りたかったはずだ。
気の毒だけどそういう気持ちは子供に伝わってしまう。だったら、ネタバレしない程度にアトラクションの話をしようじゃん。
なんせ此方には、午前中に7つ踏破した実績があるんだ。
君には及ばないんだぜ。
「そういえば君の名前は? 僕は西尾 遠矢」
「あ、それ、ボクも知りたかったんだ。ボクはトウカイテイオーだよ」
「えっと、あたしはキタサンブラックっていいます! みんなからキタちゃんって呼ばれてます」
「じゃあキタちゃんだね。もしもこの後、ご両親が許してくれるなら一緒にアトラクション乗り回さない?」
「えっ?」
「あ、ちょ、遠矢」
「大丈夫だって、安心しなよ」
「~~~っ、はあ、わかった。キタちゃん、せっかく友達になったんだし、一緒に遊ぼうよ」
「で、でも、お二人の邪魔なんて」
「ははは、気を遣うにはまだ早いぞ小学生!」
その直後やっといらっしゃったご両親が、キタちゃんと再会した。
ご両親はトゥーンタウンにあるアトラクションに連れて行ったとき、ふとした拍子にいなくなってたらしく、
ずっと歩き回ってたんだってさ。
でも5分に一度流される迷子案内を聞いて、小走りでいらっしゃったそう。
いやいや、こんな暑い中を走ったら脱水症状で倒れますって。
「お父さん! お母さん!」
「キタ! 無事か!」
「キタちゃん! よかった、怖い思いをしたねぇ」
ご両親はキタちゃんを心配して、目を離したことを謝って今後絶対手を離さないっていうことを聞いた。
母親の方は、キタちゃんに抱き着いて号泣してしまって、僕個人としては微妙な気持ちになってしまった。
テイオーはうんうんとなんか感動してるし、父親の方もちゃんとしているけど……。
まあいいか!
この後ご両親の許可を取って、一緒にアトラクションとパレードを見ることになった。
近くにはご両親がいらっしゃるから一安心。キタちゃんも心行くまで楽しめるだろう。
もちろん僕が肩車。結構重い。
でもキタちゃんとテイオーが、楽しそうに話しているのを見てこういうのもいいかなとちょっと思った。
そうして楽しい時間も終わり、帰る時刻になってしまう。
別れる最後笑顔で手を振って、ご両親と手をつないで帰っていくキタちゃんたちを見送った。
「どうする? 一応外泊のための予約取ってるけど」
「ええっ!? 泊まる気だったの?」
「うん。外泊届もやってるし、どう?」
「どうって……いいの?」
「もう予約してるし、いいよ」
「やったあ!」
よかったよかった。といっても、部屋は一人ずつに分けるようにしている。
多額の出費になるけど、すでに多くの企業が例の時計の特許使用を希望しているから、
トレーナーや学園を通して色々契約してもらって、それで資金を調達しよう。
きっと元手を取れるはず。取れるよね?
この後携帯で親に連絡して服を届けてもらっていたテイオーに驚きながら、
ホテルにチェックインして思いっきり楽しんだぞ。
──夜──
疲れた。寝よう!
といっても、いつも新田君とやっていたソウル干渉器の開発ができないのが、結構つらい。
元気にやっているかなぁ。
そう思っていた時、なんかドアが叩かれる。誰かなと寝ぼけまなこをこすりながら、ベッドから這い出て対応する。
「誰ですか?」
「遠矢!」
「何?」
「さみしいから一緒に寝よう?」
「えー、うん、いいよ」
「やった」
嬉しそうだねぇとあくびを噛み殺しながら対応をする。
暫くの間テイオーと一緒に園内を座ってみて、今日を振り返るんだ。
眠すぎて何を言ったかとか、テイオーの反応とかわからなかったなぁ。
なんせ園内の光が眩しすぎてよく見えなかったんだ。
じゃ、寝る。
「……全く、ボクの気も知らないで。今日はお疲れ様、遠矢」
後日、カストーディアルキャスト体験をしているキタちゃんと出くわしたり、
ディズニーシーに行ってシーオブドリームスを鑑賞したり、水系アトラクションを途中合流したキタちゃんと共に巡って一緒にびしょ濡れになって楽しんだぞ。
──翌日の夜──
「もう無理、疲れた」
「よ、お疲れさん」
「奮発したけど、もう二日連続で遊ぶのは嫌だ。疲れるし、精神的に死ぬ」
「まあまあ、いい思い出ができてよかったじゃないか」
「それはそうなんだけどさ」
「仲直りはできたか?」
「それはできたよ」
「じゃあよかったじゃん」
「まあね」
この日は泥のように眠って、疲労を回復するしかないや。
干渉器と3週間後のアレの開発は、また明日から……。
「おーい? まじで? せめてっベッドの上でっ寝ろっ! ふぅ……」