編入先はトレセン学園   作:名無しの権左衛門

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8:春のファン感謝祭 午前の部

♪~

♫~~~

 

「うぐぐ、きょ、今日は春のファン感謝祭だぁ」

「くっそぉ、担任のやろぉ、まじで覚えてろよ……」

 

 僕たちは春のファン感謝祭の大トリを飾るつもりだったんだけど、それじゃよくないってんで

競技の何種類か出てもらうんだと。

ウマ娘に勝てるわけないだろ、いい加減にしろ!

ってみんなが発狂して抗議したんだけど、あんまり聞き入れてくれなかった。

わからせは好みじゃないんだよな。

 でも上に政策ありなら下に対策ありだ。

早速体育会系の男子と女子を集めて会議し、公平になるようにプログラム中の競技内容をほんの少しだけランダム性の高いものに変えてもらうよう交渉したんだ。

例えば、高いウマ娘の身体能力を逆手に取った、微妙な高さ半端な障害物面倒な注文。

これらを合わせれば、勝つこともできるはずだ!

 

「よ、テイオー」

「あ、遠矢。おはよー」

「ライス、こっちに座らせてもらうぜ」

「うん、いいよ」

 

 今日はみんな体操服姿だ。かくいう僕らもそうなんだけどね。

トレセン学園の全校生が織りなす春のファン感謝祭は、トレセン学園全体を使って行われるんだ。

どんな規模になるのか想像もつかないよ。

だってチームじゃなくて、クラス単位に行われるんだもん。

ただウマ娘のレースの方は、重賞・OP・未勝利またはその他でクラスが分けられているから、種目別で倍率が変化するんだそうだ。

 だから最後の方にある駅伝リレーは、中等高等入り交えた混沌の血で血を洗う過酷なレースになるんだって。

つまり、中2~高3の重賞クラスが、駅伝リレーを行うって寸法だ。

中1の重賞は入学したばかりで存在しないので、地獄に放り込まれないんだってさ。

 

「最後、遠矢たちがライブするんでしょ? 特等席で見てやるもんね!」

「ぜひ頑張ってくれたまへ。今日のために準備してきたからさ」

 

 僕は踊らないけどね。

 

「ライスも頑張る!」

「頑張って最優秀賞を授与してくれよ! なんてったって、ライスのために頑張ってきたんだからな!」

「ちなみに、ライスのソウル波の干渉は続けるから」

「競技中はやめてね!?」

「まあ、流石にね?」

「よかったぁ」

 

 やらないとは言ったが、しないとは言っていないので干渉は行うぞ。

契約書には、いついかなる時も実験や研究に協力するって書かれているんだからな。

きっちりとデータを頂くぜー?

 

 

 

 

「へぇーここがダンススタジオですか~いろんな機材がありますねー」

「なあ安倍、それなんべん言うんだよ」

 

 学園に登校したら、早速最後の調整を行いに行くぞ。

声はあまり出さず、マイクで声を拾っていく。

軽く出すことで、喉に負担を募らせないようにしたいんだ。

でも麻生くんは、声出ししなくて何が調整だとも言っててさぁ。困っちゃうよ。

運動中でも応援の声を上げるんだから、ここでもそうだけど喉を潰さないでほしいね。

 やることやったら最初の宣言のために、準備していくぞ。

よし、最初のプログラムは行進だな。さっさと持ち場についてくれよ。

 

 さて春のファン感謝祭の開催が宣言された後、少しの間暇になったので他のウマ娘のクラスを偵察しようとあるき回った。その時、見たことのある子がいたんだ。

 

「あ、遠矢さーん!」

「あ、キタちゃん! ようこそ、トレセン学園へ」

「遠矢さんもトレセン学園に来てたんですね」

「あー、来てたっていうか。まあ、学びやを貸してもらってるんだ」

「トレセン学園に入学してるんです?」

「入学はしてないよ。学校の校舎がないから、トレセン学園に貸してもらっているんだ」

 

 話を続けていると、キタちゃんの後ろに見たことのない子がいるから、そちらに話を振ってみようか。

なんか疎外感があって、話しづらそうにしているからさ。

 

「そういえば、後ろの子は?」

「あ、ごめんダイヤちゃん!」

「ううん、大丈夫だよ。私、サトノダイヤモンドっていいます。ダイヤって呼んでください」

「僕は西尾 遠矢。遠矢って呼んでね。よろしく!」

 

 二人はトレセン学園の一番最初に行われる、今注目されているウマ娘がいるらしい競技を見に行くらしい。

僕の出番はまだ先だから、付き添いで一緒に行こうかな。

 途中で競技プログラムにて対戦するであろう相手を偵察する目的で、谷岡さんや田淵くんと合流したよ。

というかなんで相手を知ってんの?

何? 先生がおいていった資料を盗み見た? ちゃんとスパイしてんねえ!

 

 しっかしすごいなあ、特に年に二回行われるドリームレースに出走しているウマ娘たちが織りなす戦争じみた攻防は、非現実すぎてちょっと意識が飛んじゃったよ。

その中でもオグリキャップとタマモクロスの芦毛コンビが強いのなんの。

どうやってアレにかつんだろ?

 

「今年もすごいね、ダイヤちゃん!」

「うん、キタちゃん!」

「地面砕いてる。やべぇ」

「棒倒しとかプログラムに入ってなくてよかったわ」

「そんなの骨折どころじゃねえよ」

「なあ、西尾。強化外骨格とか作れないか?」

「作れないこともないけど、UPR株式会社の買えばいいじゃん」

「非電動で50万かかるからなあ、無理だ」

 

 シンボリルドルフVSミスターシービーが行われている棒倒しは、稲妻と雨が渦巻く大時化が幻視されるほど激しかった。

なぁにあれ。固有合戦はまずいですよ!

 

「お、やってんな」

「あ、トレーナーさん」

「よっ」

 

 スピカのトレーナーも三冠ウマ娘の戦争が気になったみたい。

レース中でもないのに、生を見れるのは中々ないらしいね。

それだけ卓越している証なんだとか。

 この二人のようなレジェンドに、テイオーやライスはなれるのだろうか。

いや、流石に運動会で固有スキルを放つほど高ぶってほしくないなあ。

 

「トレーナーさんが見た中で、一番やばかった競技ってなんですか?」

「数年前の最終競技だな。足の負担軽減と短距離バが少なかったこともあって、8人のウマ娘が8000mを走ってな。

その時、現役だったオグリキャップやシンボリルドルフ・ミスターシービー・シリウスシンボリが、最後の10秒を競ったんだ」

「短いですね。固有なんてなさそうですけど」

「固有? 俺たちの間では、領域って呼んでるな。それと当時は勝負服の着用も認められていてな。

ファン感謝祭もなく、ウマ娘が別の会場でイベントとして交流祭があったから、そういう機会もなかったんだ。

だから、こういうときに本気を出したんだよな。あのときが懐かしいぜ。なんせ、全員領域ダダ漏れだったからな」

「こっわ。自然災害じゃないですか」

「まあ、泡ふいて白目をむいて気絶したウマ娘もいたし、誇張表現じゃねえな」

 

 あ、ミスターシービー側が勝った。

あんなに激しく戦ったからか、地面が焦げてるんだけど。隣りにいるキタちゃんたちは、尊敬の眼差しでスッゲーて言ってる。でも、安倍くんや田淵くん・伊藤さんは、冷や汗を流したり青い顔をしてるね。

かくいう僕も心臓が高鳴っていてね。興奮よりも恐怖で、身が縮こまってしまうんだ。

あばばばば。

 

「やばない? 次の次が、うちら障害物競走なんやけど」

「だ、だ、だだ、大丈夫だ。問題なぃ。一番いい武器を頼むぅ」

「ヒトなのにウマ娘の競技に出場するたあ、蛮勇だな」

「トレーナーさんに言われたくないんだよなぁ。いっつもゴルシさんに飛び蹴りされて、スカーレットさんに関節技キめられてるのに、ピンピンしてんだからさあ」

「あれは慣れだ、慣れ」

「慣れとは?」

「ヒトは痛みに強いんやで。ソースはうち」

 

 何言ってんだよ、伊藤さん。

 

 はぁ……。

 

 現実逃避したいけど、現実から逃げられないんだよ。

僕は大縄跳びで飛ぶだけだからいいけど、体育会系のみんなには全部出てもらうことになっているんだ。

普通ならウマ娘数人のところを、ヒトが参戦しているんだ。全員で取り掛からないと、勝てるものも勝てないよ。

会場まで移動して上着を脱いで、軽装になっていく皆。

 

「あ、西尾。お前、50m9秒台だろ? 疲労困憊状態の田淵の代わりにでてやれ」

「なんですか、担任のセンコー。田淵くんなら……あれ?」

「連れのウマ娘にやられて、身動きが取れないんだとよ」

「はえー、姉弟子来てたんだ。じゃあ、出ます」

「ああ。上に伝えておこう」

 

 なぁにやってんだか。一応僕もスピカのサポーターとして、軽い運動を嗜んでいるよ。

何より『巨万の富』のお陰で、最低限の筋肉はもっているんだ!

 入場門に移動しようとしたんだけど、な「あ、遠矢じゃない! あんたウマ娘だったのね!」あ、違うんです姉弟子。

僕らはトレセン学園に学び舎を借りてるだけなんだ。決して入学しているんじゃないし、そもそもTS魔法少年でもないんだ。

TSしたのは田淵師匠と新田くんであって、僕は違うんだよ。信じてくれよぉ。

 

「こらこら、スイープ。西尾くんたちに、迷惑をかけてはいけないよ」

「むー! パパったら心配しょうね。大丈夫よ。なんてったって、あたしの弟弟子なんだから!」

 

 姉弟子、それ、理由になってないです。っと、呼ばれたな。行こうか。

 

 障害物競走なんだけど、障害物として途中で色々ぶっこまれたりを2.4キロ走る。

ウマ娘は8人、僕らは12人で1組になるんだよね。それで到着した時間で順位が決まり、グループごとの順位と総合順位がある。

どちらも上であればあるほど得点がもらえて、最後の表彰台に上がれる可能性を高めるのさ。頑張って足を動かさないとねー。途中でSASUKEっぽいやつもあるし。

こりゃあ、気を引き締めないと、大怪我するな!

 

「えー、負けてしまいました」

「グループ中12組の中で2位。まあまあじゃない?」

「総合3位ね。なかなか健闘したほうじゃないか?」

「時速70キロ連中に、これは善戦したほうだろ」

「遠矢! あんたなら、ワープできるでしょ!」

「無茶言わんでください、姉弟子。あれはTS魔法少年の新田くんだからこそできるんですよ。

僕は純粋な人間なんです」

 

 無茶振りぃ。

なお、この後借り物競争があるんだよなぁ。で、それに出走予定なんだ。

理由? 新田くんが、足首を挫いた安倍の代わりに出るんだよ、あくしろよってさ。

安倍くんの口調移ってる新田くんも面白いけど、普通の人がいうと怖いんだよね。

 次の借り物競争は、お題目のある机まで行ってそこから色々化粧室で変化したり、衣装を着替えたりしたあと紙に書いてある物を取ってゴールまでひた走るんだ。

うーん、こりゃ笑いものになるな?

でも皆も頑張ってるし、僕も頑張らないと示しがつかないよね!

 

「じゃあ、お題目の中身はウマ娘に女装することと箱の中にあるもので移動するんだってさ。

最後の注文はお嬢様だ」

「新田くん?」

「俺に不可能はない」

「知ってる」

 

 担任のセンコーから情報を抜き取ったんだろうなあ。

ついでに女装の中身もある程度方向性があるんだけど、ここはちょっくら実験をしてみようかなと思う。

テッテレー、ソウル干渉器~!

ソウル波を僕に強くぶつけてやるぜ!

ソウル波は波長っぽいなにかでしかないから、人間の魂とは別なのだ。よって、めちゃくちゃ不幸な目にあう以外実害はないぞ。

……実害しかなくないか?

 テイオーやライス・キタちゃんたち、見知ったウマ娘に声援を送られ、観客席からクラスメイトのヤジを背中に受けながら出場だ。

うーん、めっちゃアウェー。

 

 じゃあ、出走だ!

大体ウマ娘と同じような内容だけど、ウマ娘の方は回数が多くなっていたり複数のお題目があるんだ。

僕らヒトはレース場から観客席まで、分レベルで時間をかけるからその塩梅だね。

早速プレハブ化粧室に入って、即席ウマ娘の女装をするよ。

 幸いにして、まだ声変わりも来ていないしパパパっと変身しちゃうぞー。

なんだかウマ娘のシュバルグランみたいになってしまったな。

早速表に出たら、次のお題目のところに行って用紙をもらう。

そこにはお嬢様を二人と書かれていた。内容がちがうっ!

だけど幸か不幸か、一番近いところにキタちゃんとダイヤちゃんがいるじゃあないか。

 

 うおおおおお! 唸れっ僕の脚いいいいい!

巡航速度を維持しつつ、フェンスに近づいて二人に話しかけるんだ!

 

「キタちゃん! ダイヤちゃん!」

「だ、誰ですか!?」

「西尾 遠矢だよ。お題目がお嬢様二人なんだ」

「お嬢様!? わ、私はお嬢様じゃ……」

「僕にとって、キタちゃんはお嬢様だよ。ダイヤちゃんも頼むっ。やべっ、時間が」

 

 まずい! シンボリルドルフやグリーングラス・スズパレードが、出走ウマ娘を担いで降りてきてる!

観客席のご臨席とか上層の方にいたのに、これじゃあ負ける!

 

「私達も行こう、キタちゃん!」

「ダイヤちゃん……うん、わかった。遠矢さん、一緒にいきましょう!」

「よっしゃ!」

 

 そういうわけで、手段を選んで入られないな!

僕は二人に担いでもらってそのまま判定員にお目通りをするよ。

判定は可。無事一着だね。

なお直後にシンボリルドルフが、領域を放って来ていたのですっごく肝が冷えたぞ。

 

「よくやった西尾!」

「流石だな、遠矢!」

「なんで先生が一番喜んでんの?」

「やっぱり西尾は期待を裏切らないな。頼んでよかった」

「やっぱり遠矢はスゴイや!」

「うんうん。弟弟子なんだから、一着なんて当然よね」

「よぉやったなあ、西尾!」

「これでわたくしたちの優位は揺るがないわ。後は午後の部ね」

 

 僕よりも皆のほうが喜んでいるけれど、たぶんきっと三冠バの影響があると思う。

それに他の競技だと、最下位だったりするからここに来て白星は予想外の高評価に繋がったんだ。

個人的にはしるのを、二人に任せたのがよかった。僕が走ってたら確実に追いつかれていたし、ライスのソウル波でよくないことになっていたと思うから。

 結局ソウル波の影響は、ウマ娘に女装することに抵抗を持たないようにすることと妙に似合う効果を得ただけだった。

よかったような、よくなかったような。

 

「ありがとね、キタちゃん・ダイヤちゃん」

「はぁ…はぁ……お役に立ててよかったですっ」

「どういたしまして、すごく楽しかった!」

「そりゃよかった。ヒトはウマ娘に勝てないっていうジンクスも、工夫したらなんとかなるもんだね」

「っ! ジンクスっ」

「あれ? 遠矢さん、ダイヤちゃんのジンクス破りのこと、知ってたんですか?」

「え、いんや?」

 

 やっべえ! 『巨万の富』が、アプリにおいてのサトノダイヤモンドの設定を読み込んでいたから、ついやっちまった!

そもそもここは生きている世界なんだ。ゲームじゃないんだし、ちゃんと分けていかないと。

僕という存在も嘘になってしまう。気をつけよう。

 

 さぁて、この後は昼休憩だ。

皆各家庭が用意した料理や食堂が提供してくれる弁当を選んで食べることになっている。

僕はというと食事休憩の前に、新田くん達と合流して午後のミーティングを行うんだ。

そこでは午前に集中した対決や競争ではなく、競い合いが中心になることを加味して注意すべきことを再度勧告するんだ。

 僕が参加するのは、大縄跳びや大玉転がし。他にも台風の目とかあるけど、最下位になるの確定だから注力しないらしい。

で、物理法則が敵になっている競技は、僕らヒトでもやりようがあるんだ。

 

 議会は紛糾したけど、なんとか終わったぞ。

じゃあ、胃腸が飯はまだかと叫んでいるので、早速向かおうかな!

 

 

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