今年は例の皇太子が成年式を迎える年だなぁ、と香川実験所で研究している転生者が呟いていた。
もうそんな年になるんだねー、と業務用冷凍庫を個人用冷凍庫にするための検証に参加しながら思ってた。
うーん、香川実験所・実験場・香川研究所とか表記ゆれが起きるけど、作っているのは香川実験所でその中に研究所があるんだよな。俺もそうだけど、皆の口から飛び出てくるの全部違うんだからスゴイよ。
さて、なんで俺がここにいるのかというと、高知・徳島・愛媛の各路線を電化するかについて相談しに来たんだ。
前世のJRは、資金不足と顧客不足で汽車だった。
でも『瀬戸内電鉄』は、強制的な黒字。やってもいいんじゃないかなぁ、なんて思ってたりする。
「でも電線の架線工事とかめんどくね?」
「将来人口減少するのに、金はともかくメンテナンスの手間を掛ける必要ある?」
「ぶっちゃけ、ディーゼルでいいよな」
「線路に電気流してる方式だと、山に住む生物の死体が山積みになるんじゃない?
実際そういう事故が起きてるって、うちのグループの建設会社のヒトが仰ってたよ?」
「広報の宮根さんな」
俺個人としても、山間部を駆け抜ける高知と徳島に関して言えば、汽車に情熱を捧げるほうがいい気がする。
それにもしもクマが線路の高圧電流で倒れ、それに高速電車が当たった場合……。
考えたくないような面倒が発生する。こんなのは嫌だ!
またそれとは別に、電車以外の技術を持っていたほうが震災時動けるんじゃない?
という意見もある。結論は出揃ったな。
高知と徳島は、今後軌道と汽車に力を注ぐことにする!
なぁに燃料はあの石の粉末を使えばいいんだ。
そうすれば、俺等が生きている間燃料を、注ぎ込まなくてすむ。
現在『瀬戸内電鉄』の内約。
・高松ー瓦町ー長尾
速度90・1981年ウェスティングハウス製電車
馬牧場と陸軍基地を結ぶ。
・児島ー早島ー岡山
速度70・1897年多度津工場製(協力:多度津造船所)電車
・岡山ー倉敷―呉ー広島
速度100・1897年多度津工場製(協力:多度津造船所)電車
・岡山―広島
速度約400・1897年製高松鉄工所製リニアモーターカー
・高松ー端岡ー坂出ー丸亀ー多度津ー高瀬(三豊市)
速度50・1890年AEG製電車
・高松ー坂出ー多度津ー伊予西条ー今治ー松山
速度70・1897年多度津工場製ディーゼル機関車
・高松ー多度津ー(通過:琴平)ー阿波池田ー土佐山田ー高知
速度70 1897年高松鉄工所製ディーゼル機関車
・長尾ー大川富田ー三本松ー引田ー池谷ー[阿波]ー徳島ー阿波中島
速度70 1897年三菱製ディーゼル機関車
長尾街道・香川県道10号高松長尾大内線を沿うような形。
池谷を分岐として阿波と徳島方面へ。
・さぬき貨物鉄道
速度50 1892年AEG製電気機関車
1897年高松鉄工所製電気機関車
ほぼ全ての路線は、3本並列させている。この内の一つを貨物線にしているぞ。
汽車のディーゼルは、ドイツのルドルフ・ディーゼルさんにお願いして使用料金を払って使わせてもらってる。
でもそれは最初のうちであって、すでに実験所では現代に近い機構を開発してもらっているから、彼らに資金を支払うのはこの2年くらいじゃないかな。
後は他三県へ向かう鉄道の客車なんだけど、これらすべて材料はこっちもちで多度津工場さんや周辺の製作所にお願いした。
流石に全部うちの鉄工所にやってもらうわけには行かないからなぁ。
それに最近、香川県への流入が徐々に増えてきているらしいんだ。
特に岡山駅なんて、大臣級が初めて視察に来たんだぜ?
その時俺は居なかったが、あまりにも異質な建造物に質疑応答の時間を作らなければならなかったとか。
いやぁ、注目とかせず50年くらい見逃してくれればよかったのに。
後は国有鉄道という構想が出てきたようで、岡山駅や広島駅へ繋がる用地の確保が相次いでいるみたい。
更にお金と権利をちらつかせて、車両や線路を買おうとしたことも明かされた。
うん、拒否していいよ。なんなら、俺が出るからさ。
圧倒的な内部留保で、逆にあなた方を買ってやろうじゃないか。
「これが塩水分離機で作った真水かあ」
「いわゆるイオン交換膜製塩法ってやつさ」
「フッ素ナノチューブを使って爆速でろ過してもいいんだけど、味がね……」
皆が雑談している間、俺はお願いを何にしようか考えてみたんだ。
『13個のお願いがあります。5つ消化することで、重いお願いができます』
うーん。じゃあ、この有り余った内部留保で、金融機関作りたい。いわゆる銀行。
『わかりました。追加でお願いを消費しますと、金融系に有利になります』
わかった。完全にわからないから、新しい人たちに任せるしかない。
よし、お願い4つ使っちゃおう! これで、どうなるか見てみたいな!!
『お願いを4つ消費します。銀行を作ります。また4つ使った影響により、2%しかいない頭脳の持ち主を二人確保し、
有能な人材を30名かくほします。追加資金はありますか?』
100万円で!
『かしこまりました。初期投資の資本金が、国家予算1%になりました。巨大な金融機関を作り上げます。
好奇心旺盛・聞き上手・説明上手・頭脳明晰な人材を200名採用します』
こうして、香川県に百十四銀行なんて目じゃないほど、資本力だけでかい銀行ができてしまった。
そう、建物はボロっちいどころか、いつものカタログだ。
今からやるんかーいって感じで、不動産も手掛けている建設会社に頼んで、高松市に立派な社屋を立ててもらうぞ。
「そういえば、もう電線立ててるんだな宮根さん」
「ええ、銅線垂れ流しはまずいですので、思い切って実験所にいる皆さんに聞いてみたんですよ。
すると、人の手に触れない為、感電死する人や動物がだいぶ減ったという報告があります」
「だいぶかぁ。完全には無理なのかい?」
「香研が作っているコンクリの電信柱でしたら、頑丈なのでイノシシの突進には耐えられます。しかし、クマの体当たりには負けますね」
「あぁ……ならば、林業の方々に迷惑をかけるほうがいいかぁ」
「その方が喜ぶでしょう」
香研にある電信柱第一号は、漆塗りの彫刻付きの超豪華仕様になってる。
香川県にも漆塗りの文化があるので、職人さんの懐が潤うようにそこらの芸術系の方々の厄介になることがあるんだ。
なんせ基本的な香川県の産業は、ほぼ財閥のような事になってしまっている。
未来できるかもしれない企業の未来を潰してしまった罪悪感はないけれど、経済を停滞させてしまっていることに悪気を感じるんだよ。
だからなんとしてでもいろんな企業や零細企業、それら全てに俺たちの莫大な資本の一部が還元できるようにしているのさ。
じゃないと、うちの電化製品買ってくれないし。
「御注進!御注進!」
「なんだい、帝國香川銀行職員、元飛脚の額田さん」
「はっ! イタリアのトリノ伯が、内親王の増宮殿下を襲ったと東京支部のラジオ放送局から電報が来ました!」
「は? 皇室にご無礼を働くとは笑止千万だな。八つ裂きに……」
「ちょ、ちょ、宮根さん落ち着いて」
襲った内容はきっと強姦的な意味合いじゃないと思う。でなければ、大変なことになっていたはずだから。
どんな内容だったかな……剣道とかで試合して……だった気がする。
まあ東京の事かつ政治的なものだし、なんとかなるんじゃないか?
確か上医を志しているお方は、魅力が天元突破しているはずだし。
俺は一度も増宮様の写真を見たことがない。宮根さんは見たことが有るみたいだし、額田さんも業務上見たことが有るんだと思う。
一種の洗脳や催眠に近いよなぁ。これからも新聞に気をつけよう。
さて今日は周辺の挨拶や銀行関係の契約・営業は休んで、満濃池に来た。
なんで農業用水のため池に来たのか。
それは世界初の空母を見たかったからだ。っていうか、なんで空母を満濃池に浮かべたのかなぁ。
「内海だと政治家に見られるので」
知ってた。
ついでに世界初の単葉機も、この空母に艦載されてる。
流石にずっと浸水させていると、貴重な水がなくなるのでこのあと巨大なトレーラーに乗せて内海へ下ろすんだって。
このトレーラーの開発とか聞いていないんだけど、ディーゼル機関車の車輪をタイヤに変えただけらしい。
わざわざこのために開発したのかと聞いたら、振り子機構の確認ついでにつくりましたってさ。
訳がわからないよ。
艦載機の発進と発着、くくりつけられた鉄の棒の投下や機関銃の空砲等を確認し、空母の性能を遠目から確認した後
帝國香川銀行を視察しに行く。
帝國香川銀行の取締役は、松平さんだ。たぶん分かると思うんだけど、水戸徳川家庶流の高松松平氏なんだ。
スカウトは天の声の人がやってくれたから、詳しく知らないんだけど元藩主ということで経済面にも政治的にも精通しているはず。
そういう事もあって、取締役になっているんだとさ。
また今回の縁もあって、高松城の設計図をコピーさせてもらって保存もできたんだ。
これで焼かれても復興できるな。
「あれ、テープレコーダーって開発されてたんですね」
「うむ、香研にある者らのお陰だ。なんでも、オバリン・スミスとヴォルデマール・ポールセンという者らの特許を得て、
このながーいテープを作ったとのことだ」
同じ社長であり相手は華族。タメ口でもその威厳と歴史で、なんもいえねぇ。
ま、気楽だしありがたいよ。それに、松平さんの人脈と顔もあって、瀬戸大橋計画や早明浦ダム計画も順調にいき始めたぐらい。
『磁気カセット・読み取り機の開発に成功しました』
『二極真空間が開発されました』
『超大型電子計算機が開発されました』
『ブラウン管テレビが発明されました』
『詰め替えパック式掃除機が開発されました』
『世界初オーバーテクノロジーであるリニアモーターカーが、完全な商用利用を開始しました』
結局真空エレベーターはできなかったんだなぁ。