戦争から無事帰ってきたから、社員全員による祝賀会が開かれた。
今まで関わってきた人たちからのねぎらいや感謝を受け取るんだけど、俺はそこまで大層なことをしたのかなと疑問に思うばかりだ。
おっと会社内の俺個人のことなんてどうでもいいんだよ。
とにかく水だよ水。早明浦ダムするから、実地調査すべしっていう感じで派遣したはず。
調査結果とか科学的知見というものも、源氏へ行って調査してきたようだ。
一番の問題として、金がないということ。
重量式コンクリートダムということを、由良さんや今年入ってきた新入社員に聞いたぞ。
で、お金が足りないならどうするか。
そう、議員に直談判だ!
と営業部長に昇進した藤岡に、一番懇意にしてある議員と橋渡しをしてもらった。
「水がないので、水力発電もついでにできるダム作りたいんです」
「ふむ……なら、農林省につたえておこう」
「よろしくお願いします」
「そうだ。君は知っているかね? 東京から、全国の鉄道を徐々に標準軌にするという指示が下ったのを」
「いえ、全く」
「君のところは標準軌だから問題はないだろうが、お上は都市区間を標準軌にするつもりだ。
君の……『瀬戸内電鉄』は、呉から倉敷、そこから松山・高松を結ぶらしいじゃないか。
本州での競争は、官営私営ともに厳しくなる。負けるなよ」
「かしこまりました。こちらも負けぬよう、精一杯奮励努力致します」
「うむ。君の会社が大きいくなるほど、私の発言力もそうだが香川県議会の発言力も上がる。
特にあの土佐の反対を真っ向から勝負できるのだ。これは大きい。頼むぞ」
「はい!」
藤岡は愛国心というか国益を考える議員をよく見つけ出したよな。
あいつになにかプレゼントをしたいんだけどなぁ。
と俺は有り余ったこの会社の利益を何に使うか、皆と協議した。
実は燃料を買わなくていいから、利益が上がりまくるんだ。
でも低くすると、絶対におかしく思われる。これはよろしくない。
そこで何かに使えば、更にこの国に資本を巡らせることができるんだ。
金は天下の回り物。使わないとね。
「研究所を作りたいんだけど」
「いいんじゃないですか? 流石に鉄工所だけにやらすのは、非効率がすぎるので」
「そうだな! 俺等も呉---倉敷間に、りにあもぉたぁかぁを作らないといかんしな!」
「高橋も佐渡川さんも、ちゃんとした人材に育ちました。ここらで、部署を分けて効率よくいきましょう」
「藤岡がそういうのなら仕方ないな」
俺は『瀬戸内電鉄』という名前をこの会社に付けた。今までただの電鉄だった。
でもそれじゃ、今後どうにもならないんだ。さっさと存在意義を確定させたら、鉄工所で作られたコイルモーターカー改め磁力浮遊式電車を、呉ーー倉敷間を走らせたい。
それに線路もロングレールにすることも、最近の都市開発で一部の田畑が潰されたことも相まって、モーターカー・急行・通常の三路線を敷くことが確定した。
これらは売上予算の7割をしめる。残りの三割は、先程の研究所に投資しよう!
というわけで、うちの建設会社を使って開発だ。
「社長。早明浦ダムに運ぶ資材を、岡山から香川、大阪から徳島へ行き香川、そしてさめうらへという搬入ルートがほしいです」
「トンネル掘るのか?」
「いえ、川の近くを削って土地を確保します」
「直近はそれでいいか。南海地震も発生するから、地盤が硬いところを狙おう」
「わかりました」
当面はダムの建設を待ちつつ、研究所への投資と呉ーー倉敷を結ぶことだ。
電車に関して言えば、ウェスティングハウスかAEGって決まってる。
そこからリバースエンジニアリングをして、電車構造をパクるんだ。
一応由良さんや佐渡川さん、今年入社した新人数名と起業当初からいる技術者が、
電車を作ってくれているんだ。
でもそれらはすべて、コイルモーターカーに心血を注がれたんだけどね。
電車はしばらく時速70キロでいくんだって。
「電化製品はどうなんだ?」
「現在、鉱石ラジオ・蓄音機・洗濯機・冷凍庫・冷蔵庫・アイロン・ダイヤル電話を売り出しています」
「そっかぁ。じゃあ、今度うちが電車を作るとき、冷暖房完備の電車作ろうな」
「わかりました。企画書書いときます」
また乾ドック……ああ、船渠(せんきょ)なんだけど、こっちもこっちで呉や東京にヒトをやって、技術をパクってきてもらってそれを取り入れるようにさせた。
アーク溶接とかそういうのはまだできないから仕方ないとして、ブロック工法を取り入れて活かせる方針だ。
沈むのは嫌だからね。
後は由良さんに、転生者のことについてもそうだんしておかないと。
一般転生者は、色々苦しむと思うから受け入れ土壌を作り上げて、うちで囲い込む。
政治家は中央に殴り込んでもらって、一般市民は研究漬けにするぞ。
なんなら、うちの社員が暇つぶしに開発してる、電子音の作曲を任せようと思ってる。
うちの社訓?とかなんとか言って、歌を作っているらしい。
で、ラジオにでも流してしまえばいいんじゃないかな。
『おめでとうございます、マスドライバーの建設が可能になりました』
『西洋一有名な日本人になりました』
『中華一畏怖される日本人になりました』
『転生者の中で初めて、オーバーテクノロジーを商用にしました』
『お願いを3つ叶えます』
お願いねぇ。何がいいかな。そうだなぁ、中央の情報を知りたい。
というか、そういう会社作るかな。よし、鉱石ラジオに流すための、放送局を作る!
1:今の中央は転生者が介入してどう変わったか聞きたい
2:ラジオ放送局を作りたい
3:転生者を呼び込みたい
『わかりました。まずは、ラジオ・テレビ等にながす放送局を作ります。
いつもの通り、有能な30名を入社させます』
『日本全国津々浦々の転生者に、人生に一度は瀬戸内電鉄の話が入るようにします』
『最後ですがーーーー』
中央の情報をもたらされたぞ。
まずは、統帥権が天皇に与えられ、それが総理大臣に下賜[かし]される。
陸軍や海軍といった区切りがなく、全て【国軍】に統合。
とある重工業会社と帝国人造繊維が、武器弾薬と特許に記載しないプラスチックを開発。
内親王が医学薬学分野で、大きく活躍中。
平民宰相になるはずの者が、外国資本に大きく食い込んでいる。
清に朝鮮を渡し、報酬金(賠償金)を得た。
工業所有権の保護に関するパリ条約に参加。
全国電気の交流化。重要人物の暗殺回避。
政府による裏組織発足。政府が、二大政党制を指示。
八紘一宇の精神の発露。
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