ルビコン高等学校ーありえたかもしれないAC6ー   作:しぃ君

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 あるサイトで見てしまって学パロの妄想小説です。
 私は一周目をクリアしたばかりなので、続いたら登場キャラが増えたり、色々もりもりになるかもしれません。

 火を点けろ、燃え残った全てに


ルビコン高等学校ーありえたかもしれないAC6ー

 これは、有り得たかもしれない記録。コーラルも争いもなく、皆が輪を結んで過す。そんな、もしも(if)の検証記録だ。

 

 ◇

 

 朝。耳をつんざくような、けたたましいアラームが響くと共に621は目を覚ます。「レイヴン」、「戦友」、「G13(ガンズサーティーン)」、彼を識別する呼称は色々と存在するが、もっとも気に入っているのが──ウォルターが与えた「621」という名前だ。

 

 

 養父として、孤児だった自分を引き取り育てたウォルターがくれた初めてのプレゼント。それが、「621」という名前である。他人が聞いたら、子供に付ける名前として相応しくないと騒がれるが、二人からしたら関係ない。

 孤児院で燻り、ただただ無価値に無意味に終わるはずだった命にウォルターが「意味」を与えてくれたのだ。

 

 

「……学校、行くか」

 

 

 一人ボソリと呟きながら、621は寝間着から制服に着替える。鏡の前で自分の姿を確認しつつ、キチッとネクタイを締めた。緩くし過ぎると、また体育教師のミシガンに怒られるため、その辺も怠らない。黒髪黒目で顔も平凡。容姿だけなら特別目立つこともない彼だが、存外にも学業の成績はよく。運動全般も得意。

 

 

 野球部のレッドガンや、サッカー部のヴェスパーに部活へ勧誘されることも少なくない。だからこそ、身だしなみには最低限気を遣う。

 

 

(ウォルターに恥はかかせたくない)

 

 

 そう思う621だが、今一番の問題は──先程鳴ったアラームが、朝食をとっていたら学校に間に合わなくなる。そんなギリギリの時間を設定していたものということだ。

 

 

「621! ゆっくりしている時間ではないぞ。早く降りてこい!」

 

「はーい」

 

 

 少し怒ったようなウォルターの警告に、彼は抑揚のない返事をして、部屋を後にする。

 これが、ウォルター家の日常風景だった。

 

 ◇

 

 焼けたパンを頬張り、昼食をカバンに詰め込んだ621が外に出ると幼馴染みの少女──エアが待っていた。

 

 

「おはようございます、レイヴン。また寝坊したのですか?」

 

「少しだけ」

 

「……あまり夜更かしはしないように。体に障りますよ、レイヴン」

 

「気をつける」

 

 

 昔馴染みだからか、エアは621の大体の生態を把握している。丁寧な口調を崩さない彼女は冷たいと思われることも多いが、その実心配性で優しい。精巧に作られた人形のように整った顔立ちは綺麗という言葉以外は当てはまらず。肩ほどに揃えられた艶やかな白髪に、眩しく思える紅い瞳がよりエアを魅力的に見せる。

 

 

 これで高校生にもなって交際相手がいないのが不思議だと、621は常々思っていた。──向けられた感情に気付かぬまま。

 

 

「それにしても、今日のレイヴンは身軽ですね。四限目は保健体育ですよ。体育着はあるのですか?」

 

「……不味い」

 

「……まぁ、今日は一組も体育があったはずです。イグアスやブルートゥに借りてみては?」

 

「いや、ブルートゥは嫌だ。イグアスを頼ろう」

 

「また貸しを押し付けられそうですが、贅沢は言ってられませんね」

 

 

 そうやって、会話をしたりしなかったり。621とエアは二人の独特な雰囲気で学校へと歩いていく。近付くにつれ、校門より先にミシガンの声が響いていくのが、ルビコン高等学校の当たり前だ。

 先のことを考えると億劫になる621だが、今は取り繕うしかない。彼はミシガンにいつものように挨拶を返す。

 

 

「おはようございます、ミシガン先生」

 

「おはようございます」

 

「おお! 朝から随分と遅い重役登校だなG13!! 惰眠を貪る快楽には抗えないか!! エア! お前もふにゃけた幼馴染みに喝を入れてやれ!! テストの点だけでは、成績は決まらないぞ!」

 

「はい。以後善処します」

 

「よろしい! それ以上は御託を並べずキビキビ歩け! チャイムが鳴る前に教室に滑り込むことだ!」

 

「失礼します」

 

 

 鬼教師、そんな言葉が似合うガッチリとした体型に白髭が似合うミシガンだが、なんだかんだ生徒に嫌われてはいない。

 毎週毎週生徒指導室に呼び出されているイグアスとヴォルタですら、嫌っていないのだから相当なものだ。

 

 

 ──だが、怖いものは怖い。621とエアはそれ以上大声を浴びせられる前に校門を潜り下駄箱に早足で向かう。パッパと靴を履き替えたら、廊下を小走りで行き教室へと辿り着いた。どうやら、まだ担任のカーラは来ていないようで、生徒各々が賑やかに駄弁っている。

 

 

 そんな中、一際注目を集める男子生徒──サッカー部(ヴェスパー)に所属するラスティが声をかけてきた。高身長に加えて他の追随を許さない顔面偏差値(戦闘力)、様々なことを器用にこなし、精神面もイケメンという天に四物も五物も与えられたのが彼である。621とは学校の入学時からの仲であり、対戦型のネットゲームで夜な夜な戦友として戦場を駆ける仲だ。

 

 

「おはよう、戦友。それにエアも。調子はどうだい?」

 

「元気。少しお腹がへったけど」

 

「私も元気です。レイヴンのことはお気にならさず。破綻した睡眠時間の……妥当な末路です」

 

「はは、手厳しいなエアは。カロリーメイトならある。一本いるかい?」

 

「貰いたい」

 

「了解。確か、戦友はチョコレート味が好きだったか……ほら。私がもう開けてしまったが、もう一本は残ってる」

 

「助かる」

 

「………………」

 

 

 621を甘やかすようなラスティの行動にエアは目線で抗議を送るが、彼はそれを軽く受け流し。もしゃもしゃとカロリーメイトを頬張る621を見ていた。

 そうして、少しの談笑のあとチャイムが鳴り──学校が始まった。

 

 ◇

 

 時間は過ぎ、放課後。

 体操着を正直に忘れたと言わなかった罰でミシガンに生徒指導室に呼ばれた621が帰ってくると、教室にはエアとラスティの二人だけが待っていた。二人の間に会話はなく、エアは読書。ラスティは誰かとやりとしているのか、スマホをいじっている。

 

 仲が悪いわけではないが、621を挟まないと二人は特段話そうとしない。ラスティから話しかけることはあるだろうが、エアは必要なことしか喋らない質だから、長続きしないのだろう。

 

 

 621はそれを理解してか、気にかける様子もなく、少ししょんぼりした表情で二人に話しかけた。

 

 

「ミシガンに怒られた……」

 

「仕方ないでしょう。忘れたのをごまかしたわけですし。借りたなら借りたと言うべきだったのでは?」

 

「まぁまぁ、ミシガン先生も少し怒っただけで許してくれたんだ……それより今日の夜はどうする?」

 

「もちろん、合流する」

 

「わかった。仲間には伝えておく。それじゃあ、また戦場で会おう」

 

「じゃあね、ラスティ」

 

「さようなら、ラスティ」

 

 

 部活があるからか、ラスティは二人に軽く微笑んで去っていく。そういう、些細な気遣いだったり、仕草が人気の秘訣なんだろう。621は到底自分には真似できないを彼を尊敬しつつも、ササッと帰りの身支度を済ませる。

 

 

「……彼も部活に行きましたし、私たちも帰りましょうか、レイヴン」

 

「うん」

 

 

 長いような、短いような学校を終えて二人は帰路に着く。グラウンドを通れば、621に体育着を貸したことがバレたイグアスがミシガンに走らされており。621は目を逸らすようにそそくさと歩き、エアも軽く目を伏せてあとを追った。

 そうして、また少し歩いた頃。静寂を破るように、エアが口を開く。

 

 

「……レイヴン、今日は泊まってもいいですか? 明日こそ、ギリギリになるのを防ぎたいです」

 

「構わないけど。……ウォルターに聞かないと」

 

「問題ありません。許可なら既に頂いています」

 

 

 そう言って、エアはスマホのメッセージ画面を621に見せる。メッセージ相手はウォルターであり、そこにはしっかりと泊まることを許可する旨の返信が映っていた。

 もうウォルターに許可を取ったのなら、自分に許可を取る意味はあったのだろうか、621は不思議がりつつも彼女を受け入れて帰宅する。

 

 

 玄関を開けて中に入ると、夕食はもう作り終わっていたのか、シチューの良い香りがリビングから届く。久しぶりのシチューにワクワク気分の621は靴を脱ぎ捨てて行き、エアは「はぁ」とため息を吐きつつも、それを整えた。

 変わった関係である。

 

 

「ウォルター。今日はシチュー?」

 

「そうだ、621。帰ってきたばかりだろう。手を洗ってこい。夕食は逃げない」

 

「食器出す」

 

「助かる。ほら、早く行け」

 

「ん」

 

 

 先にリビングに来た621は、手洗いを済ませて来たであろうエアと入れ替わるように洗面所に走る。年齢的には大人も近いのに、ある種の純粋さがあるのは彼の美徳……長所なんだろう。エアとウォルターは顔を合わせてクスリと笑い、夕食の準備を進めた。

 

 

「今日はまた、随分と唐突だったな。泊まりたいなんて」

 

「不測の事態、ではなかったでしょう。予測できる範囲内です」

 

「本当は?」

 

「ミシガン先生に朝から怒られました。これ以上の面倒事はごめんです」

 

「……621を置いていけば──」

 

「それはダメ! いえ……失礼しました。大きな声を出してしまい、申し訳ありません」

 

「別にいいさ。あいつが愛されているのは……むず痒いが、誇らしい」

 

 

 普段のウォルターからは考えられない小さな微笑みに、エアは少しだけムスッとし。もっとレイヴンに伝えればいいのに、と思い横っ腹を小突く。

 二度とないような、幸せな光景だった。

 

 ◇

 

『……作戦終了。お疲れ様、戦友。相変わらず、凄まじい腕前だ』

 

「ラスティが援護してくれたおかげ。動きやすかった」

 

『嬉しいことを言ってくれる。この後はどうする?』

 

「もう一回くらい──」

 

「レイヴン、お風呂頂きました。……それと、そろそろ就寝の時間です」

 

「らしいみたい」

 

『そうか。じゃあ、今日はここまでだな。おやすみ戦友、良い夢を』

 

「うん、おやすみ」

 

 

 ゲームのオンラインプレイを終了し、通話から抜けて、621はパソコンをシャットダウンする。エアが家に来る時、彼女は決まって同じベッドで寝ることを望む。無論、彼が断ることはしないが、何故同じベッドで寝るのか疑問に思わないわけではない。その手の知識は薄い621だが、高校生にもなった幼馴染みが一緒に寝るというのは些か不健全だ。

 

 

 だというのに、エアが望むから断らないという彼の優しさは、一種の毒なのかもしれない。裏表の一切ない感情は危険で、不安定──けれども、その感情はなによりも尊く、美しい。

 

 

「……本当に、あなたは変わりませんね」

 

「そうかな?」

 

「ええ、変わりません。私が言うんだから、そうなんです」

 

 

 どこか子供っぽく、普段の彼女より砕けた口調。いつもと違う、違うからこそわかる。エアはきっと……不安なのだ。どこか遠くの世界で、お互いに戦うしかなかった、そんな結末が。不安で、不安で、仕方ない。

 

 

「レイヴン。どうか、私の手を離さないでくれますか?」

 

「……がんばる」

 

「約束は、してくれないんですね」

 

 

 きっと、それが621なりの誠実さなのだろう。ベッドで向かい合う二人は、互いの手を握り目を瞑る。

 いつか、遠くない日。

 別れることになっても、思い出だけはなくならないように。

 

 

 強く、手を握った。お互いに、強く。




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