東方龍白録 〜The End of Crossover Fantasy. 作:タミ
始まった。終わらせられた。
始まった。終わらせられた。
始まった。終わらせられた。
始まった。終わらせられた。
始まった。終わらせられた。
さあ、もう一度始めよう。
其之一 霧雨魔理沙と孫悟空
ほら、わかるかい?
また、始まったんだよ。
ヤツが諦めない限り、この世界は続くのさ。
うん。また始まり、出会い、そして別れる。
わかりきった偽物の世界をなぞるだけだ。
今度は、終われるかな。
終われるといいね、今度こそ。
我々の知る地球とは似て非なる光景の星にて…
「……おめえはすげえよ……よくがんばった……たったひとりで……」
「こんどはいいヤツに生まれ変われよ……一対一で勝負してえ……待ってるからな……オラももっともっとウデをあげて……」
「またな!」
地球中の元気で、千変万化の凶悪魔人は文字通り細胞一つ残さず消滅した。
こうして再び宇宙は平和な時を刻み始めたのである……
そして、あっという間に数ヶ月の月日が流れ…
「……修行してえなあ」
魔人を仕留め世界を救った男、孫悟空はトラクターを運転していた。
本当はトレーニングを兼ねて素手で耕そうか、と考えていたが悟空の妻、チチにせっかく上等な機械を貰ったんだから使え、とこのトラクターを押し付けられた次第である。
悟空としてはどうにも気が進まない。
ふと後ろを振り返ると、耕された畑がかなりの広さで広がっている。
「サボって修行するか」
これくらいやっていれば怒られることはないだろう。
そう考え悟空は特徴的な山吹色の道着に着替える。
長らく世話になっている服装だ。よく悟空の肌に馴染む。
「オラはやっぱこのカッコがイチバンだな」
よし、と気合を入れる。
さあ、修行を始めよう。
……そうして目を閉じイメージした敵と戦うトレーニングを始めようとしたその時だった。
感じたことのない気を悟空は捉える。
「……なんだ……?」
警戒心と好奇心を抱きつつ悟空は気を放つモノの方へ飛んでいく。
「……!気を発していたのはこいつだ……」
ソレはすぐに見つかった。
空間を引き裂いたかのように空中に穴が開いている。
「……騙されたと思って入ってみるか!」
「……あれ、前にもこんなことあったような気がするな……ま、いっか!」
何が起こるのかわからないワクワク感に包まれながら、悟空はその裂け目に飛び込む。
「いでっ!!」
飛び込んだ先は空中で、悟空は見事に尻餅をついてしまった。
「いってぇ~っ……ここはどこだ……?」
辺りを見回すとそこは見慣れない景色が広がっていた。
木々が生い茂り、見たこともない植物がある。
だが不思議と懐かしく感じる場所でもあった。
「……ここ、パオズ山みてえだな」
辺りを見渡しているうちに、先程の裂け目はいつの間にか無くなってしまっていた。
「あ"っ!?穴が無くなっちまったぞ!これじゃ帰れねえな……」
悟空は慌てて人差し指と中指の2本を額に当て気を探るが……
「まいったな……チチの気も悟飯の気も悟天の気も感じねえ……」
それどころか自分の知っているどの気とも違う気がそこら中に漂っている。
「困ったなぁ……チチにまたどやされちまうぞ……」
「きのこきのこきのこ〜きのこ〜を〜たべ〜ると〜♪あたまあたまあたま〜あたま〜が〜ばく〜はつ〜♫」
背中にキノコを沢山入れた風呂敷を担いだ金髪の少女、霧雨魔理沙は、軽快な身のこなしで森を進んでいる。
「きのこきのこきのこ〜きのこ〜を〜たべ〜ると〜♪からだからだからだ〜からだ〜に〜はえ〜るよ〜♫……って、誰だアレ」
魔理沙は森の中で1人佇んでいる山吹色の服を着た男を見つける。
「なんだアイツ……ヘンなカッコしてんな…………ちょっとちょっかいかけてやるか」
悪そうにニヤリと笑い、魔理沙は男の方へ向かっていく。
「なあアンタ、何モンだ??」
「? オラのことか?」
男はキョトンとした顔で振り返る。
「アンタ以外にいないだろ……っていうか、アンタどっかで見たことあるような……いや、気のせいか」
「おめえこそ誰だ?珍しいカッコしてるな」
「アンタがそれ言うのか」
魔理沙はガックシと肩を落とす。
「ま、いいや。アンタ、この森になんか用でもあるのか?悪いことは言わねーから帰ったほうがいいぞ」
「いやあ……そうしてえんだけどさ、帰り道がわかんなくなっちまってよ」
魔理沙は訝しげな顔をするが、すぐに納得したのかヤレヤレといった表情になる。
「まったく、酒ってやつは怖いな……ほら、優しい私がおウチまで送ってやるよ」
「いや、別にオラ……サケ飲んでるわけじゃねえぞ」
魔理沙は眉間に皺を寄せ男を見つめる。
「……アンタ、どっから来たんだ?」
魔理沙は男を色々な角度から観察しながら言う。
「パオズ山だ」
聞いたことのない単語に、魔理沙の脳は一瞬思考作業を止めてしまう。
「あ"ッ……あー!パオズ山、パオズ山ね!わかるわかるパオズってる感じがいいよなウン」
脂汗をかきながら魔理沙は言う。
(マイったな……本当に訳のわからん場所から来たのかクスリやってるかのどっちかだぞコイツ……)
「よし、アンタ……名前は?」
「孫悟空だ、よろしくな」
「そ、そうか……悟空、私は霧雨魔理沙だ、気軽に魔理沙って呼んでくれて構わないぞ」
魔理沙は胸にポンと手を当てて名乗る。
悟空もそれに対してにこやかによろしくな、と返す。
「悪いんだけどさ、パオズ山知ってるなら帰り道教えてくれねえかな、オラ迷っちまったみてえでよ」
「え"ッ」
予想外の頼みに魔理沙はギョッとしてしまう。
(ヤベ〜……絡む相手間違えたかもな……)
「おッ、おう!もちろんだ!この魔理沙サマは人助けの魔理沙と呼ばれるほど義に厚く懐が深いと評判なんだぜ」
魔理沙の脂汗の量はどんどん増えていく。
「そっか!そりゃありがてえ!じゃあ頼んでいいか?」
明るい表情で頼ってくる悟空に魔理沙は徐々に気圧されていく。
(どうすんだオイ……!テキトーにウソついたらとんでもねーことになっちまったぞ……!考えろ……考えるんだ霧雨魔理沙……ッ!!)
魔理沙は明らかに目が泳いでいる。
だが悟空はそんなことは全く気にせず魔理沙の手を握る。
「サンキュー!助かった!じゃあ頼む!」
その時、魔理沙は天啓を得た。
「待て悟空!」
神妙な顔で引き留める魔理沙に、悟空は驚く。
「な、なんだ?」
「案内するのはいいが、1つ条件がある……」
魔理沙は悟空の目の前に人差し指を突き出す。
「私と勝負して勝てたら、ガラパゴス山まで案内してやるよ!」
「……ガラパゴス山じゃなくてパオズ山だぞ」
ポカンとした顔で訂正する悟空に魔理沙は顔を真っ赤にして反論する。
「いッ、今のは言葉のアヤってヤツだ!とにかく私と闘え!」
魔理沙の思考はこうである。
こんな訳の分からない格好したヤツを弾幕で黙らせてそのまま置いて帰る口実を得よう。
もし勝負に乗ってこなくてもそれはそれで「ならば無理だ、諦めろ」と悟空を置いていける。
そんな考えに至ったのである。
「さあどうする、真剣勝負だ!」
「……別に構わねえけどよ、おめえケガしちまうぞ」
「へっ、余裕だな……それとも虚勢ってやつか?大丈夫だ、ちゃんと手加減してやるから安心しろよ」
「それとも自信がないのか?まあそれなら仕方ないな!残念だけど他を当たって……」
魔理沙の挑発的な態度に、悟空は表情を変えず答える。
「いやあ、おめえじゃオラには勝てねえさ」
は?
こいつ、今なんて言った?
魔理沙の顔はみるみると紅潮していく。
プライドの高い魔理沙にとって、今の発言はかなり効いたようだ。
プツンと何かが切れた音が聞こえた気がしたが、魔理沙は気にも止めない。
むしろ好都合だった。
この生意気なヤロウをぎゃふんと言わせて家に帰ってやる。
魔理沙の心にメラメラと闘志が燃え上がってきた。
「随分と大口たたいてくれるじゃねーかよ……上等だ!後悔したってもう遅いからな!!」
魔理沙は箒に跨ると、一気に上昇し高度を取った。
「地上じゃ闘りにくいだろ、空は飛べるか?」
悟空はにやりと笑ってああ、と答える。
魔理沙は親指で空を指し、そのまま飛び上がっていく。
魔理沙の姿はすぐに見えなくなった。
上空では風が強く吹き荒れている。
(なかなかの気だ……まだ若いのによ)
悟空は感心しながら自分もまた飛び上がる。
魔理沙は悟空が飛んでくるのを見てニヤリとする。
ああ、どういうふうにカッコよく勝ってやろうか。
星魔法でカッコよく撃ち堕とした後にケツを箒で引っ叩いてやろうか。
それともいっそ、超スピードで突っ込んで一気にKOさせて土下座させてやるか。
魔理沙の頭の中では、既に勝利後のプランが出来上がっている。
魔理沙の顔は自然とニヤけてしまう。
(いかんいかん、そういうのは後だ)
ブンブンと首を振り、目の前に集中する。
そして両者は向かい合う。
魔理沙は八卦炉を取り出すと、それを悟空に向けた。
「まずは小手調べだッ!!」
その瞬間、八卦炉からは眩い光が放たれ、悟空に向かって一直線に伸びていく。
悟空は避ける様子もなく、待ち構えている。
刹那、悟空がいた場所を中心に爆発が起こった。
魔理沙の放った光は悟空を飲み込み、大きなキノコ雲を作っている。
「へへーん!いきなりで面食らっただろ!」
魔理沙はガッツポーズをしながら鼻を伸ばす。
しかし、背後から視線を感じ、慌てて後ろを振り返る。
「いやぁ、驚いたぜ。でもそんな程度の攻撃じゃあオラには通じねえな」
そこには無傷の悟空が立っていた。
……そんな馬鹿な
魔理沙は驚愕するが、すぐに落ち着きを取り戻す。
「へ……へへっ、あの程度の攻撃避けてもらわなくちゃ困るってもんだ!」
額に滲んだ汗を拭い、悟空に指を指す。
「いいか!これからが本気の私だからな!」
「そうこなくちゃな……よし、来い!!」
悟空も構えを取る。
魔理沙は大きく深呼吸すると、両手を広げて叫ぶ。
すると、魔理沙の背後に魔法陣が大量に展開され、そこから魔法弾が悟空目掛けて発射される。
悟空はそれを難無くかわすが、弾幕はなおも降り注ぐ。
魔理沙は腕組みをしてその様子を眺めながら、次の一手を考えていた。
(……こんな雑な弾幕じゃ当たらねーな……スペルカードルールも知らないみたいだ……さあどうする、考えろ……)
魔理沙の思考が加速する。
そして、1つの結論に至った。
そう、答えは至極単純なものなのだ。
つまり、パワーで押しきればいい。
「しのごの考えすぎるのはもうヤメだ。何故なら弾幕は……」
魔理沙の体から、先程とは比べ物にならないほどのオーラが立ち昇っていく。
魔力を全開にし、更に弾数を増やしていく。
「パワーなんだからね!!」
魔理沙の叫びと共に周囲に大量のレーザーが出現する。
魔理沙はそのレーザーを操り、悟空を徐々に追い詰めていく。
悟空は更に速度を上げ、レーザーを掻い潜り星形弾を避け続ける。
「まだまだだっ」
魔理沙もまたレーザーや魔力弾の数を増やしていく。
しかし、悟空はまたしても軽やかにそれらを避けていく。
「くっそーッ!なんで当たらないんだよーッ!」
魔理沙は歯噛みする。
このままではいずれこちらの魔力が尽きてしまう。
息があがり始めていることに魔理沙は気付く。
そしてとうとう魔理沙の弾幕は悟空にかすり傷一つも与えることができなかった。
「おめえの技は確かにすごいけど隙もでかいんだ」
「だから避けられる、とでも言いたげだな」
肩で呼吸をしながら精一杯嫌味を言う。
しかし、事実なのでこれ以上は何も言えない。
魔理沙は悔しさに唇を噛む。
悟空は見たところほぼ全く呼吸を乱していない。
「……そうかもな」
(甘く……見てたのか、私は……!)
魔理沙は悟空を睨みつける。
こんなヤツに負けたくない。負けるわけにはいかない。
魔理沙の心の中に、再びふつふつと闘志が湧いてくる。
「悟空、おまえは確かにすごいよ、私の想像の遥か先だった」
魔理沙はニヤリと笑う。
それは、今までに見たことのない、挑戦的な笑みだった。
魔理沙の瞳に闘志の炎が灯った。
それを見た悟空は思わず身震いをする。
今対峙しているこの少女の中で何かが変わった。
悟空は直感的にそう感じていた。
「おめえもな魔理沙……オラこんなにワクワクするのは久しぶりだぜ」
それを聞いた魔理沙は笑みを浮かべ箒に跨ると、更に空高く飛び上がる。
純白の雲すら見下ろせる遙か高高度にて、魔理沙は悟空を見る。
そして八卦炉を構え、叫んだ。
「悟空!!私の最後の賭けを受けてみろ!!嫌だなんて言わせないからな!!これでダメなら私の負けだ!!」
「ああ、受けて立つさ!!」
魔理沙は目を閉じて大きく深呼吸すると、カッと目を見開く。
恋符「マスタースパーク」
魔理沙は宣言し、八卦炉からは先程の比ではないほどの巨大な光が溢れ出す。
「やるな魔理沙……すげえパワーだ!!ならこっちも……」
悟空は両手を腰に引く。
「か……め……」
両方の手のひらの間にエネルギーの塊が生み出され、悟空の体が眩い光に包まれていく。
魔理沙は八卦炉に全ての力を集め、ただひたすら集中する。
「は……め……」
やがて悟空の体は光輝き、その光はどんどん膨らんでいく。
「波ーーーーッ!!!」
そして悟空は両手を前に突き出し、青白いエネルギー波、かめはめ波を放つ。
「なッ、なんだアレ……!!」
魔理沙の視界いっぱいに白く輝く光線が広がる。
そのあまりの大きさは自分の放つマスタースパークが小さく見えてしまうほどだった。
だが、ここで臆してしまえば勝機はないに等しい。
ならばこちらも全身全霊を出すまで。
魔理沙は更に力を込める。
「ぐ……ぐぐ……ッ……!」
しかし、魔理沙の魔力はもう限界に近い。
歯を食い縛りながら必死に耐えるが、少しずつ押されていく。
「あ……諦めて……たまるか……ッ!!」
魔理沙は必死に押し返そうとするが、かめはめ波の勢いは一向に収まらない。
そしてとうとうマスタースパークはかめはめ波に押し負けかき消されてしまった。
魔理沙が絶望に暮れている間にも、徐々にかめはめ波は迫ってくる。
魔理沙の頭の中には過去の出来事が流れていった。
「ああクソ、これが走馬灯ってヤツかよ……」
魔理沙はぎゅっと目を瞑る。
その時、魔理沙は体は誰かに抱えられる。
「……?」
恐る恐る目を開けてみると、魔理沙は悟空に抱えられ助け出されていた。
「……悟空……」
「大丈夫か?すげえパワーだったな!オラも本気になっちまったよ」
「……今さっきまで戦ってた相手に助けられてちゃ世話ないな……降参降参、私の負けだよ」
魔理沙は肩を落とし呟く。
「そんなことねえさ!オラも正直かなり危なかった」
「……ははっ、お世辞でも嬉しいね」
魔理沙は苦笑いしながら悟空の手から離れ箒に跨る。
「お世辞じゃねえぞ?」
「はいはいわかったわかった。ありがとさん……ったく、こんな負け方したのは人生で2回目だよ」
「おめえはまだまだ伸びしろがあるさ。焦らずゆっくり鍛えりゃいい」
「お褒めの言葉どうも」
魔理沙は照れ臭そうに頬を掻いた。
「あ"っ」
それと同時に嫌なことを思い出してしまった。
「あー……その、だな」
魔理沙は決まり悪そうに視線を泳がせる。
「パオズ山ってところを知ってるっていうの、実はウソなんだ」
申し訳なさそうに横目で悟空の表情を確認する。
悟空はキョトンとした顔で首を傾げていたが、
「えっ、そうなのか?!」
事態を理解したのか驚きの表情に変わる。
「ごめんな、森にいたアンタにちょっかいかけてやろうと思ってさ」
パオズ山なんて聞いたことない、と魔理沙は続けた。
「そうか……困ったな……」
悟空は困り顔で頭をかく。
「闘ってる最中から思ってたんだけどさ、悟空ってたぶん外から来た人間だよな?」
「外?」
魔理沙の問いに対し悟空は問い返す。
この様子だとやはり何も知らないようだ。
「まず、今悟空がいるここは……━━」
「……ってわけだ、わかった?」
魔理沙の説明を聞き終えた悟空はぽかんとした表情をしている。
悟空にはこの幻想郷のこと、そして自分の世界のことを話した。
わからずとも真剣に理解しようとしてくれているのが伝わってきた。
「パオズ山は無理でも幻想郷の外に帰してやることはたぶんできるぞ。今度はホントだ」
「ほんとか!?ありがてえ!」
魔理沙の提案を聞いた途端、ぱあっと顔を輝かせる。
その様子があまりにも無邪気だったので思わず笑みがこぼれてしまう。
「よし!そうと決まれば行くか、神社に」
「そこ行けば帰れんのか?」
「私の腐れ縁の知り合いがそういうことやってたハズだからね」
魔理沙は帽子を深く被り直す。
「特急で行くぜ、ついてこれるか?……って、聞くまでもないか」
悟空はニヤリと笑う。
その笑顔を見た魔理沙もニッコリ笑って答える。
二人は並んで飛び立っていった……
霧雨魔理沙に案内され、悟空はとある神社にやってきた。
そこで悟空は衝撃の事実を目の当たりにする。
次回、「帰れない⁉︎」にご期待ください。
感想やお気に入り、評価、ここすき等、是非お願いします。やる気が出ます。次回投稿が早くなります。……たぶん。