東方龍白録 〜The End of Crossover Fantasy. 作:タミ
一歩は踏み出せた。
これからだ。
これが私の人生の、リスタートだ。
「ひゃあ……きったねえ……」
悟空はめちゃくちゃな部屋を見て絶句する。
「ま、まあ汚いが広いぞ、1人泊めるくらいなんてことない」
レミリア・スカーレットが引き起こした、のちに紅霧異変と呼ばれる出来事の翌日、悟空は魔理沙の家に泊まることになり、連れてこられ今に至る。
「使ってなかった布団があったハズだ……たぶん、きっと……おそらく」
魔理沙は不安そうな顔を浮かべながら押入れを開けていく。
部屋はかなり広く、数もそれなりにあるようだが、そのほとんどはガラクタやら何やらで埋まっている。
悟空はその様子に苦笑しながら辺りをキョロキョロと見回す。
ここは魔法の森にぽつんと佇む、魔理沙の家こと霧雨魔法店だ。
"なんかします"という適当な看板が表に立てられている。
魔理沙曰く、店主である魔理沙ですら、具体的な業務内容を一言で言い表せないそうだ。
そのせいもあってか、この家は物置として使われてるんじゃないかと思うほど物で溢れかえっている。
そんな物で埋め尽くされた部屋の1つを、悟空に貸すことにしたのだ。
「あった!多分これだ!」
魔理沙はそう叫ぶと、押し入れの中から埃を被った敷布団を取り出し、それを雑に床に放り投げた。
案の定埃が舞い上がる。
「げほっ……うぇ……」
魔理沙は咳込み、顔を歪ませる。
悟空は慌てて窓を全開にし、換気を行う。
「おめえすげえとこに住んでるんだな……」
「魔法の研究にあたってじめじめしてたとこの方が何かと都合がよくってさ」
魔理沙はそう言うと、再び片付けに戻る。
「悟空、修行は夕方からだろ?」
「ああ、それまでは暇だし、オラも手伝うよ」
「ありがたいが遠慮しとくぜ、悟空には夕飯のお使いを頼みたいからな!」
魔理沙はニカッと笑うと、悟空に買い物リストを手渡した。
そこには米などの食料品、味噌、醤油といった調味料、さらには酒などの名前が書かれていた。
魔理沙はそれらを指差して説明する。
「人間の里の場所は昨日説明したよな?」
魔理沙の問いに、悟空はああ、と首を縦に振る。
「じゃあ、ちょっくら行ってくるな」
悟空を見送り、魔理沙はよし、と気合を入れる。
これもトレーニングだと考えようと、テキパキと部屋の掃除を始めた。
そして、あっという間に日は傾き、修行開始の時間になった。
「よし、それじゃあ修行を始めるぞ」
魔法の森の近くの平原にて、悟空は魔理沙と美鈴、2人の顔を交互に見ながら言う。
「よろしくお願いします!」
美鈴が腹から響くいい声で挨拶をする。
魔理沙は横目で美鈴を睨む。
くそっ、響く声出しやがって。
負けてたまるか、と魔理沙は大きく息を吸い込む。
「よろしくお願いします、師匠!」
魔理沙も美鈴に負けず劣らずの声量を見せる。
「師匠はなんか堅苦しいな……悟空でいいぞ」
「……そ、そうか」
魔理沙は顔を赤くしてしまう。
「美鈴は一通りの基本が出来てるみたいだけど、魔理沙はぜんぜんだよな?」
魔理沙は申し訳なさそうに俯きながら頷く。
「よし、じゃあ基礎から始めよう……美鈴には悪いが鍛え直しだと思ってしばらくガマンしてくれ」
「はい、大丈夫です」
「じゃあまずは2人の実力を改めてオラに見せてくれ」
そう言って悟空は辺りを見回す。
「よし、あそこに生えてる木までくらいだな」
2人は同じように首を傾げた。
「あそこまで走ってみろ、もちろん魔法も気もなんにも無しでな」
悟空は木を指差しながら言う。
魔理沙と美鈴は互いに顔を見合わせる。
距離はおおよそ100メートルだろう。
「速く走れるヤツがえらいし強くなれるってわけじゃねえけどとりあえず基礎体力をみるためにな」
それなら、と魔理沙は帽子の中をまさぐりストップウォッチを取り出した。
「魔理沙、おめえその帽子の中身どうなってんだ……?」
悟空はぽかんとした表情で尋ねる。
「ふふん、秘密さ、女の秘密を暴こうなんて野暮ってもんだぜ」
魔理沙は得意げに答える。
「はいはい、早くやろうね」
美鈴が呆れたように魔理沙の頭を軽く叩く。
「わ、わかってるっての」
魔理沙はストップウォッチを悟空に手渡し準備運動をする。
「全力で走るなんていつ以来かな」
美鈴も軽くストレッチをする。
「魔理沙、さっきも言ったけどこれは2人の実力を測るためのものだから、あんまり勝ち負けにこだわらないでリラックスして走れよ」
ああ、やっぱりお見通しか、と魔理沙は苦笑する。
「よし、じゃあ始めるぞ」
美鈴の身体能力は自分とは随分大きく差がある、それくらいは魔理沙もわかっている。
だが、それでも負けたくない。失望されたくない。
魔理沙は頬を叩き、気合いを入れ直す。
そして、悟空の合図と共に2人は一斉に走り出す。
案の定美鈴は風を切るように走り抜け、魔理沙を置いて一瞬でゴールしてしまった。
「……美鈴が2秒2、魔理沙が16秒7だな」
悟空はストップウォッチを見ながら呟いた。
魔理沙はその場に座り込み、ぜえぜえと肩を上下させる。
美鈴は平然と立っていた。
そして、悟空は魔理沙の元に駆け寄り、手を差し伸べる。
「よく頑張ったな、魔理沙」
「……っ、1人で、立てるさ」
魔理沙は悟空の手を取らず、1人で立ち上がる。
悟空は少し寂しそうな顔をしたが、すぐに笑顔に戻り、魔理沙にタオルを手渡す。
魔理沙はそれを無言で受け取ると汗を拭った。
数字として出ると余計に2人との差を感じてしまう。
魔理沙は悔しさに唇を噛み締める。
悟空には勝敗は気にするな、と言われたがやはり悔しいものは悔しい。
しかし、ここでへこたれている場合ではない。
魔理沙はぐっと拳を握る。
いずれ必ず勝ってやる。
あがる息を抑えながら美鈴の横に並ぶ。
「よし、2人の実力はよくわかった」
悟空は腕を組みながら言う。
「本格的な修行は明日からにしよう」
魔理沙はえ?という表情を浮かべている。
「2人とも昨日の疲れが抜けてねえし、オラもさっきので2人にどういう修行をするかなんとなく決めたかったんだ」
もちろん修行は厳しくするけどただ無理にやるのは辛いだけだからな、と悟空は微笑む。
「明日は……そうだな、朝の5時半くらいから始めよう」
魔理沙と美鈴は同時に首を縦に振る。
「じゃあ私は紅魔館に帰りますね、また明日お訪ねします」
美鈴はぺこりと頭を下げ、飛んでいった。
美鈴を見送った後、魔理沙と悟空も家路についた。
「おーい魔理沙、朝だぞ」
魔理沙は布団の中でごそごそと動き、ゆっくりと目を開けた。
悟空の顔が見える。
魔理沙は寝ぼけ眼で上半身を起こす。
時計を見ると時刻は午前4時50分を指していた。
悟空は既に身支度を整えており、いつでも出かけられるようになっていた。
「……そっ、か……朝か……」
魔理沙は大きく欠伸をする。
顔洗って着替えてくる、と魔理沙は布団から出る。
暫くして、まだ多少眠そうに魔理沙が着替えてきた。
そしていつも被っている大きな帽子を被ろうと手を伸ばすが、その手が止まる。
「……いや、"普通の魔法使い"は……ちょっとお休みだな」
魔理沙は帽子をそのままにして先に外に出た悟空を追いかけていった。
「おはようございます、悟空さん!」
悟空と魔理沙が昨日の平原に向かうと、既にそこには美鈴が待っていた。
「早起きだなおまえ……」
魔理沙があくびをしながら言う。
「よし、それじゃあ修行を始めるぞ」
悟空の台詞に2人は気合の入った返事をする。
「……そういえば悟空?私たちは結局何をするんだ?武術を習うんだとは思ってたけど……」
魔理沙の問いに、ああ、と悟空は答える。
「まずは2人の基礎体力を底上げするためにオラと鬼ごっこをするぞ」
「え?」
2人はぽかんとした表情になる。
「しばらくは気も魔法も使っちゃダメだぞ、空飛ぶのもな」
悟空はにっこり笑う。
「ま、マジで言ってんのか?」
魔理沙は恐る恐る尋ねる。
「ああ、大真面目だ」
「いやいやいやいやいやいやいやいやいやいや!鬼ごっこて!」
魔理沙は両手をぶんぶんと振りながら叫ぶように言う。
「オラも結構頭捻って考えたけどよ、特に魔理沙には今1番これが効くと思うぜ」
「だ、だからって鬼ごっこって」
魔理沙は腕を組んできまり悪そうな顔をしている。
「魔理沙んちのある森の中でオラを捕まえるんだ、2人で協力してももちろんいいぞ」
悟空は膝を伸ばしながら言う。
「オラを捕まえられればそのぶん早く朝メシが食えるから頑張れよ」
そう言って悟空は猛スピードで森の中へ向かっていった。
「……速すぎだろ」
魔理沙は唖然としながら呟いた。
「魔理沙、とりあえず追いかけないと」
美鈴の言葉に魔理沙は我に返った。
「わ、わかってるよ」
2人も一斉に森に向かって走り出した。
森に入った2人は悟空を追いかけ始める。
しかし、悟空の速度は2人が全力疾走しても追いつけないほど速い。
魔理沙は息を切らしながらも必死に追いかける。
「くっそ〜ッ、地の利はこっちにあるハズなのに追いつけねえ……っ!」
悟空は木々の隙間を縫うように軽快な動きで逃げ続けている。
一方美鈴は余裕の表情で走っている。
魔理沙はその様子に少し腹が立った。
「おい美鈴、なんか作戦とかないのかよ」
魔理沙が息を荒げながら尋ねる。
「あるにはあるけど、多分悟空さんには通用しないよ」
美鈴は淡々と答えた。
「ならやるぞ、通じなくても悟空を崩すきっかけになるかもしれねえ……それに、2人で協力してもいいってことはアタマも使えってことなんだろ」
魔理沙はニヤリと笑いながら言う。
美鈴はこくりと首肯する。
「魔理沙、私が囮になって悟空さんを引きつけるから、その間に魔理沙は隠れて」
「わかった」
魔理沙は追跡ルートから逸れ始める。
悟空も魔理沙がいなくなったことにすぐに気がつく。
(む……魔理沙がいなくなった……何かしてくるな)
美鈴は速度を上げ悟空に迫る。
悟空は何度も方向転換を繰り返し、美鈴を撒こうとするが美鈴は何とか悟空に食らいつこうと追い続けてくる。
「なかなかやるなあ」
悟空は楽しそうに笑う。
その時、魔理沙が木陰から飛び出してきた。
「貰ったっ!!!」
魔理沙は悟空に向けて右手を突き出す。
「おっと」
悟空は軽く飛び上がり、魔理沙の頭上をひらりとかわした。
「なに!?」
魔理沙は慌てて振り返るが、既に悟空の姿は遠くなっていた。
「くそっ!ダメか……!」
「今のはなかなか良かったぞふたりとも」
じゃあ続きを始めるぞ、と悟空は再び走り始めた。
魔理沙は肩で息をしながら再び走り出し、美鈴もそれに続いた。
「魔理沙、大丈夫?」
美鈴は苦しそうに走る魔理沙に尋ねる。
「大丈夫……じゃねーけど、やっとわかった……これが悟空の修行か……」
楽しいお遊びだとちょっとでも思った自分が馬鹿らしいよ、と魔理沙は自嘲する。
「それでも自分がやるって決めたんだ……弱音なんて吐く暇ないんだよ!」
魔理沙は歯を食い縛り、さらにペースを上げて走り続ける。
美鈴もそれに続き、悟空を追いかける。
「よし、とりあえず今日はここまでだな」
背中から倒れた魔理沙と膝に手を当てる美鈴を交互に見て悟空は言う。
まだ暗かった辺りはすっかり明るくなっている。
時刻は午前7時といったところか。
「これから朝メシ……といいてえがもう一個修行を用意してあるぞ」
悟空は魔理沙と美鈴の方に向き直る。
美鈴は疲れこそあるもののまだ余力がある、といった感じだが魔理沙は既にぐったりしていた。
「どうした魔理沙、もう参っちまったか?」
悟空はにっこり笑って尋ねる。
畜生、と魔理沙は心の中で毒づく。
正直これ以上は無理だ、身体中痛いし喉も渇いた。
しかしここで諦めるわけにはいかない。
一昨日の自分に嘘をつくわけにはいかないのだ。
魔理沙はよろめきながらも立ち上がる。
「……正直……なまっちょろいと……思ってた……とこだ……」
魔理沙はふらつきながら言う。
「そうこなくちゃな」
悟空は魔理沙に微笑む。
「次は畑の手伝いだ」
オラも昔やった修行だな、と悟空は言う。
2人は再びぽかんとしてしまう。
「畑を耕すんだ、簡単だろ?」
微笑む悟空に2人は顔を見合わせてしまう。
「鬼ごっこの後は野良仕事かあ……」
魔理沙は苦笑しながら呟く。
「よし、とりあえず始めましょう、始めないと終わらないもの」
美鈴は鍬を持ち魔理沙に手渡す。
「あ、待て待て、鍬使っちゃダメだ」
悟空が2人を制止させる。
「なんでだよ、これ使わないと効率悪いぜ」
魔理沙は不思議そうな顔をして尋ねる。
「道具使っちまうと修行になんねえだろ」
悟空はあっさり答える。
「……なるほど」
仕方なく2人は手で耕すことにした。
雑草が茂る土を手で掘り起こし耕すのは相当の力が必要である。
「こんなので……強く……なれんのかよ……っ!!」
魔理沙は文句を言いつつも必死に手を動かし続けている。
「……強くなれるかどうかの何よりの証拠は悟空さんの強さじゃないの?」
美鈴は淡々と作業を続けながら魔理沙に話しかける。
「ああ……確かに……それはそうだな……っ!!」
魔理沙も美鈴の言葉に力強く答え、黙って手を動かし続ける。
「……やっと……終わった……」
畑の修行に入ってから約3時間経ってようやく2人は指定された面積を終わらせた。
「手が……痛い……」
泥だらけの2人の手はじくじくと痛みが脈打っている。
それだけではない。最初の鬼ごっこの影響で足にも腰にも相当の痛みが襲っている。
「よし、それじゃあメシにするか!」
悟空の声に2人も反応する。
「……腹減ったなァ」
魔理沙は空っぽのお腹をさすりながら呟く。
美鈴も同意するように首を縦に振る。
「昼からの修行、まずは休憩だ」
正午過ぎ、食事を済ませ3人は最初の平原に戻ってきた。
「休憩?修行なのに?」
魔理沙はきょとんとした表情で言う。
「ああ、休憩だ」
「ただひたすら訓練し続けるのはよくねえ、辛くなるだけだ」
休む時にしっかり休ませてやらねえとな、と悟空は木陰に入り座り込む。
「ほら、ふたりも」
促され、2人も悟空の近くに座る。
心地よい風が頬を撫でた。
「……気持ちいいなあ」
魔理沙は深呼吸をして言う。
「うん……すごく」
美鈴も深く息を吸い込み、ゆっくりと吐き出す。
「昼寝でもすっか」
悟空はごろんと仰向けになり、そのまま目を閉じた。
「そりゃいいや」
朝の修行だけでかなりくたびれちゃったし、と魔理沙も背中から倒れ込む。
「私も……少しだけ……」
美鈴も小さく言って、すぐに眠りに落ちてしまった。
「次は精神を鍛える修行だ」
悟空が見守る中2人は正座で合掌をしていた。
悟空曰く、これは精神統一の修行なのだという。
心を落ち着かせ、雑念を捨て去る。
武道経験者の美鈴はともかく魔理沙は瞑想をするのは初めてだった。
最初は何も感じなかったが、時間が経つにつれ少しずつ意識が遠退いていく。
「こら、魔理沙、寝ちゃダメだろう」
悟空が魔理沙の肩を掴み軽く揺すった。
ハッと我に帰った魔理沙は慌てて姿勢を戻す。
その様子に美鈴はくすりと笑った。
「なあ悟空、こんなんで強くなれるのか?」
魔理沙は目を閉じたまま尋ねる。
確かに、心が落ち着いたり集中力が高まったりする感覚はあるが、それが果たして自分の力になっているかはわからない。
……正直あまり実感はないが。
「美鈴にも言えることだけど、特に魔理沙、おめえはムダな動きが結構ある」
自覚はあんまりねえと思うけどな、と悟空は続けた。
魔理沙は何も言わず、静かに話を聞いていた。
それはきっと事実だから。
悔しさはあったが、今は黙って受け入れるしかないのだ。
それを乗り越えて、必ず強くなると信じて。
「ムダを削ぎ落とせばおめえのポテンシャルはグンと上がるとオラは読んでる……今まで10のパワーで出していた技を6のパワーで出せるくらいにはな」
悟空はにっこり笑って言った。
魔理沙は目を見開き、悟空を見る。
しかし、すぐにまた視線を落として黙ってしまった。
今の言葉が本当ならば、それはとても喜ばしいことだ。
だが同時にそんな都合の良い話があるのだろうか、という思いもあった。
ただでさえ自分は半端者で未熟者だ。
自分から修行を頼んでおいて馬鹿らしいが魔理沙にはまだ強くなった自分のイメージが出来ていないのだ。
「いずれはオラみたいに目以外でものを見ることだって出来るぜ」
「目以外で……?」
「気配やわずかな空気の動き、それに勘……見るだけじゃなく感じるんだ」
オラが見る限り霊夢も美鈴もかなりこれをモノに出来てると思う、と悟空は付け加えた。
魔理沙は美鈴の方を見てみる。
彼女はまだ瞑想を続けているようだったが、その姿は実に穏やかだった。
「まずは雑念を消すとこからだな」
魔理沙はよし、と気合いを入れ直し、再び目を閉じ集中し始めた……
そして、あっという間に半年以上の月日が流れ、春……
「ふうっ、終わったあ」
魔理沙と美鈴は本人たちにあまり自覚はなかったがめきめきと上達していた。
日が傾き始めた頃、美鈴は紅魔館に帰り、悟空と魔理沙も霧雨魔法店へ帰る準備をしている。
「……それで、地球にいる人たちはみーんな殺されちゃって、それで地球もぶっ壊されちゃったのか?!」
悟空は魔理沙に今まで戦ってきた相手たちについて話していたのだ。
「ああ、すげえ相手だった」
「魔人ブウかあ……」
魔理沙は空に浮かぶ大きな雲を見ながら呟く。
「そんなヤツよく倒せたなあ、やっぱり悟空はすげえや」
魔理沙が悟空が戦ってきた強敵たちに思いを馳せていると、冷たい風が2人を襲った。
「そういえば……もう5月だってのに雪だよな、去年の今頃は桜の木の下で昼寝でもしてた時期なのに」
魔理沙はぼそっと呟く。
季節外れの異常気象、と言える天気だった。
昨日も、一昨日も、その前の日もずっと雪が降り続けていた。
まるで四季が消えて冬だけになってしまったかのように。
「……よし、メシ食べたら調査してみようぜ」
魔理沙が手に息を吐きかけながら言った。
「普通の魔法使い……再稼働だ」
魔理沙はしばらく被っていなかった帽子を深く被る。
「魔理沙、もし誰かと戦うことになったら、その時は魔法使ってもいいぞ」
「ほんとか!?」
やっと本領発揮ってやつだな、と魔理沙は腕を振り回す。
魔理沙は表に出て、深呼吸する。
「よ〜し、行こうぜ悟空!」
魔理沙の声に、おう、と答え悟空も外へ出て宙へ浮かび上がった。
「……自信満々に出てきたのはいいけどさ……悟空、私、ちゃんと強くなれてるのかなあ」
魔理沙は不安そうな表情で悟空に尋ねる。
その問いに、悟空は楽しみにしていろ、とにこやかに答えた。
悟空に聞くまでもなく、魔理沙自身も自分の成長を感じてはいた。
しかし、どうしても拭えないのだ。
自分はただ足踏みをしているに過ぎないのではないか、という疑念が。
悟空に修行をつけてもらっている時はもちろん、普段の生活の中でもふとした瞬間にそんな考えが頭をよぎってしまう。
「まあそんなに心配しなくても大丈夫だ、オラが保証する」
悟空は魔理沙を激励した。
「……よし、じゃあとりあえず色んなとこ行ってみよう」
魔理沙の言葉を合図に2人は一気に加速し飛んでいった。
一向に訪れない春を求めて、魔理沙たちは再び空を駆ける。
次回、其之十一「極寒の春」をお楽しみに。
感想やお気に入り、評価、ここすき等、是非お願いします。やる気が出ます。次回投稿が早くなります。……たぶん。