東方龍白録 〜The End of Crossover Fantasy.   作:タミ

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そろそろ、勝たせてもらうぜ。


其之四 魔理沙&霊夢、快進撃‼︎

「こいつと、こいつと……これもいいな」

 

マスタースパークを撃ち込んだ影響で露出した地下の図書館に侵入した魔理沙は本を物色し勝手に風呂敷に包んでいた。

 

「よ〜し、まあまずはこんなもんだろ」

 

今度また来てさっくり貰ってくとしよう、と魔理沙は風呂敷を背負う。

 

「……勝手に持ってくんじゃないわよ」

 

けほけほと咳き込みながら本棚の陰から何者かが魔理沙に話しかける。

 

「堂々と置いてるおまえさんの責任だ、悪いな〜」

 

「悪いと思うなら返していきなさい」

 

現れたのはパチュリー・ノーレッジという魔法使いの少女である。

 

「まあまあ、そう言わずに」

「返しなさい」

「や〜だね」

「……いい加減にしなさい」

 

パチュリーは魔法を魔理沙目掛けて放つ。

 

「危ねっ!無茶すんなあもう」

 

魔理沙は間一髪で避ける。

 

愚痴を零す魔理沙に追撃を与えるためパチュリーは呪文を唱える。

 

「……ラーヴァクロムレク」

 

火&土符「ラーヴァクロムレク」

 

魔理沙の周囲が炎で囲まれてしまう。

 

「あちゃちゃちゃちゃっ!!」

 

「あなたが悪いんでしょう、自業自得」

 

魔理沙は必死に火の海から脱出しようとするが、熱気がそれを阻む。

 

「どう、降参する?」

 

「馬鹿言うんじゃねーよ、この小説始まってからいいとこなしなんだ、そろそろ白星あげさせてもらうぜ」

 

と強がってみせるが、パチュリーの技を一目見ただけで自身との魔力量の差を魔理沙は直感的に理解してしまっていた。

 

「そう、じゃあいくわよ」

 

水&木符「ウォーターエルフ」

 

「なに!?」

 

突然、地面が割れそこから巨大な樹木が姿を現す。

 

「うををををっ!!」

 

魔理沙は全力で走り足元から突き出してくる樹木を避ける。

 

「ちょこまかとしつこい」

 

「ばーか!人間サマ相手なんだからちったあ手加減しろ!」

 

魔理沙の泣き言を嫌よ、とバッサリ切り捨てパチュリーは更に追い討ちをかける。

 

魔理沙はいつのまにか樹木に囲われ捕えられていることに気付いた。

 

「……まさか」

 

「そのまさか、よ……フォレストブレイズ」

 

木&火符「フォレストブレイズ」

 

燃え盛る木々が魔理沙に襲いかかる。

 

「あっちゃちゃちゃちゃ!!」

 

魔理沙の悲鳴が響き渡る。

 

「まだやる?」

 

「ったりめーだ!!」

 

懲りないわね、とパチュリーは更に呪文を唱える。

 

「後手に回ってちゃ勝ち目はないな……ならば攻めあるのみだ!」

 

魔符「スターダストレヴァリエ」

 

魔理沙も呪文を唱え、パチュリー目掛けて魔法を放つ。

 

「ちゃちな魔法ね」

 

日符「ロイヤルフレア」

 

パチュリーは余裕の表情で、魔理沙の放った魔法を掻き消す。

 

「まだまだだ!」

 

魔理沙は次々と魔法を放ち続ける。

 

「ヤケクソね……もう終わりにしましょう」

 

金&水符「マーキュリポイズン」

 

パチュリーの魔法は魔理沙の放つ魔法を消しとばし、魔理沙本人を巻き込み爆発を起こした。

 

「……けほ、けほ……これでおしまいね……はしゃぎすぎたせいで目眩がしてきた」

 

パチュリーが勝利を確信し踵を返そうとしたその時、不意に肩を何者かに叩かれる。

 

パチュリーの思考は一瞬停止してしまい、その一瞬が勝負を分けた。

 

「必殺……」

 

パチュリーは振り向き呪文を唱えようとするが、それより速く魔理沙はパチュリーの目の前に八卦炉を突きつける。

 

「マスタースパークだ!!」

 

恋符「マスタースパーク」

 

パチュリーは咄嵯に結界を張るが、魔理沙渾身の一撃は容易くそれを打ち砕き、パチュリーを飲み込んだ。

 

「ふうっ」

 

魔理沙は一息つくと、図書館の床にへたり込む。

 

「疲れた……こんなの弾幕ごっこじゃねえっての」

 

「なぜ……確実に……命中したハズ……」

 

「お?生きてたか……さっすが」

 

魔理沙の予想に反し、パチュリーはボロボロになりながらも立ち上がり、フラつきながら魔理沙に近づいていく。

 

「……どうして無事なのかって言いたいんだろ?」

 

コクリと小さくパチュリーは頷く。

 

「蜃気楼だ……私の水魔法で急激に温度を下げて光を屈折させたんだ」

 

おまえが狙ってた場所に私は居なかったんだよ、と呼吸を落ち着かせながら魔理沙は言う。

 

「星魔法使いじゃ……なかったのね……」

 

「星魔法の方が好きなんだよ、派手でカッコいいから」

 

おまえみたいに地味〜な水魔法なんかほんとは使いたくないんだが仕方なくな、と魔理沙は口を尖らせる。

 

「ま、油断したあんたの負けですわね」

 

くすくすと嫌な笑みを浮かべながら魔理沙は本を詰め込んだ風呂敷を抱え直す。

 

「……無念だわ……」

 

パチュリーはそう言って倒れ込んだ。

 

さて、次はどこに行くかな、と伸びをしながら魔理沙は先に進み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

魔理沙が館の正面玄関から入り込んだと信じ込んだ霊夢はエントランスへ入っていく。

 

「……魔理沙のヤツ、何処行ったのかしら」

 

廊下を進みながら霊夢はあくびをする。

 

すると、掃除をしていた銀髪のメイド服の女性とばったり会ってしまった。

 

「あら……お嬢様のお客様かしら」

 

「あ、あー……まァ客かと聞かれれば客だと思うわ」

 

招かれざる感じの、という付け足しは口にしないことにした。

 

(……ぶっ飛ばしに来ました、通して〜って言っても通してくれるわけないし)

 

「……本当かしら?」

 

銀髪のメイド、十六夜咲夜はジトっとした目で霊夢を見つめる。

 

「嘘ついてどうすんのよ、通しなさいよ〜」

 

「残念だけどそれはできない相談ね……あなたをここから先に行かせる訳にはいかないわ」

 

咲夜の瞳が妖しく輝くと、突然霊夢の背後からナイフが襲いかかる。

 

霊夢は慌てて身を捻り避ける。

 

「魔っぽい感じのお嬢様に縁起物を会わせるなんてとんでもないもの」

 

「誰が縁起物じゃ」

 

巫女だからって縁起がいいわけじゃないのよ、とぶつくさ文句を言いつつ、札を取り出し臨戦態勢に入る。

 

「塵のお掃除はメイドのお仕事だわ」

 

時符「プライベートスクウェア」

 

咲夜の周りに大量のナイフが現れ一斉に放たれていく。

 

「ちっ」

 

霊夢は舌打ち混じりに御祓い棒を構え、迫り来る無数の刃を弾き飛ばす。

 

「そんなもの?」

 

「まだまだこれからよ」

 

更に量が増えたナイフの雨を霊夢はひらりと躱し一気に間合いを詰め、御幣を振り下ろす。

 

しかし咲夜は何の予備動作も見せず移動し、霊夢の攻撃は虚しく空振った。

 

(移動の瞬間がわからなかった……)

 

咲夜の動きを捉えようと、霊夢は目を凝らす。

 

するとまたもや咲夜は瞬間移動し、今度は霊夢の目の前に現れる。

 

そしてナイフを一本投げてきた。

 

霊夢はそれを紙一重で避け、カウンター気味に蹴りを繰り出す。

 

が、それも難なく避けられてしまった。

 

「……速さには自信がありそうね」

 

「メイドは手際の良さだもの」

 

霊夢は思考を回すため会話による時間稼ぎを選択した。

 

「あんたは一瞬消えている……私の目で見切れなかった」

 

「そんな強い力を持っておきながらここの"お嬢様"とやらに何故忠誠を?」

 

霊夢は咲夜に問いかけた。

 

咲夜は少し考えてから答える。

 

「そうね、教えてあげようかと思ったけれど……大した理由じゃないし、やめておくわ」

 

「"人間は誰でも不安や恐怖を克服し、安心を得るために生きる"……お嬢様はそう仰っていた」

 

「ならばお嬢様の不動の盾となり脅威を弾き返すことこそが私の役目」

 

そう言って咲夜は再び姿を消した。

 

霊夢は眉間にシワを寄せる。

 

まだ咲夜の技のタネが理解できていない。

 

そもそもあれは人間に可能な動きなのか? 咲夜は瞬間移動する直前、必ず姿を消す。

 

その前兆が全くわからない。

 

霊夢は攻撃を避け続けるのに精一杯だった。

 

洞察力の高い魔理沙ならあるいは何かわかるかもしれないが、今ここにいない人間のことを考えても仕方がない。

 

(……ああクソ、やりづらい)

 

霊夢は心の中で悪態をつく。

 

博麗神社の巫女として、異変解決屋としてのプライドが、目の前の敵に何も出来ずにいる現状を受け入れられずにいた。

 

(……どうする?)

 

考えろ、と自分に言い聞かせるが焦燥感が募るばかりで打開策が思い浮かばない。

 

(制限付きの超加速能力?……いやそれならばナイフの説明がつかない)

 

(それとも幻覚?……いや、少なくとも初撃は幻覚じゃない……幻覚なら私の勘が働きにくかったハズ)

 

霊夢は咲夜の動きを必死に追う。

 

しかし一向に捉えることが出来ずにいた。

 

咲夜のナイフは確実に霊夢の急所を狙ってきている。

 

このままではいずれ致命傷を負いかねない。

 

咲夜もそれをわかっているのだろう、余裕の表情を浮かべながら攻撃を繰り出し続けている。

 

(いつの間にかあいつが投げたナイフが回収されてあいつの手元にある……そんな動きをしている様子は見られなかったけれど)

 

(こんな芸当が出来るのは、それこそ……)

 

一つの可能性に辿り着いた霊夢は思わず舌打ちをする。

 

(……時間)

 

咲夜以外の全ての時間を止める、時間が止まった世界を作り出せる。

 

詳細はどうでもいいが、とにかく目の前の敵は時間を止めた状態で動ける。

 

そうとしか考えられない。

 

霊夢は奥歯を噛み締め、苛立ちを抑えながら思考を巡らせる。

 

その可能性を信じるとして、まずはあのメイドの時間停止の弱点を見つけなければならない。

 

その時、霊夢はある違和感を抱いた。

 

時間を止められる時間、文面はおかしいがとにかく「咲夜の体感時間で規定の時間以内」のみでしか時間を停止させられないのではないだろうか。

 

考えてみれば、時間を好きなだけ貯められるのだとしたらいくらでもアプローチの方法はある。

 

それこそ時間停止中に首元にナイフをぶすり、それで終わらせられるハズだ。

 

しかし現実にはそうしていない。

 

つまり、咲夜の能力には必ず何かしらの限界があるのだ。

 

この仮説が正しいとするのならば、あとはもう答え合わせをしてみるしかない。

 

霊夢は札を取り出し、一枚ずつ指に挟んでいく。

 

咲夜が瞬間移動し、ナイフを投げてくるタイミングを見計らい、投げられたナイフを弾いた瞬間に札を投げつける。

 

札は霊夢の狙い通り真っ直ぐ飛んでいき、そして咲夜の顔の横を通り過ぎていった。

 

やはりそうだ。

 

霊夢は確信した。

 

立て続けに時間を止めることはできない、と。

 

「……気が付いたのね」

 

咲夜はニヤリと笑い、ナイフを両手に構えた。

 

「……それは「あなたの仮説は正しいです」ってことかしら」

 

霊夢は御幣を構え直し、息を整える。

 

次の瞬間、咲夜はナイフを霊夢に向かって投げつけた。

 

霊夢は避けずに御幣を素早く振り回し、ナイフを弾き飛ばす。

 

ここで訂正しておこう。霊夢の推理には2つ間違いがある。

 

1つ目は咲夜の能力は時間を止めるだけではないということ。

 

例えば空間を拡張する、対象の時間の流れを加速させるなど非常に多様な事が可能なのだ。

 

2つ目は咲夜の時間停止の解除条件は「体感時間で一定時間が経過する」、ではないということである。

 

正確には「停止した時間の中で行動すればするほど時間停止のリミットが減っていく」のである。

 

例えば、停止させた時間の中で何もせずにいれば体感時間では今の咲夜は丸一日ほど止めていられる。

 

咲夜の行動が咲夜以外の物質に強く影響を与えれば与えるほどそれに比例して時間停止の限界時間も減っていくのだ。

 

咲夜が時間停止中に霊夢に直接攻撃を与えない理由の一つはこれであった。

 

一部とはいえ咲夜の能力のタネがわかった霊夢は徐々に咲夜の動きについていきはじめている。

 

「……さすがのメイド様も疲れが出てきたんじゃなくて?」

 

「あら、まだお喋り出来るなんて元気なのね」

 

あんたの攻撃が手ぬるくてね、と霊夢は後ろに飛び退き札を投擲する。

 

「あんたの能力、大体読めてきたわ」

 

「へえ、じゃあ試してみましょうか」

 

咲夜はナイフの雨を降らせるが、霊夢はそれを全て弾き飛ばす。

 

「私の能力がわかったとして…」

 

「それは、勝敗とは別ではなくて?」

 

咲夜は霊夢の背後に立ち呟く。

 

「あんたは確かに強いわ」

 

「けど、それだけよ」

 

霊夢は背後に目掛けて蹴りを放つ。

 

しかし咲夜は既にそこにいなかった。

 

「もう終わりにしましょう!」

 

咲夜は速度を上げナイフで襲いかかってくる。

 

霊夢はギリギリまで引きつけてから身体を回転させ、遠心力を利用して裏拳を放った。

 

霊夢が放った一撃は見事に命中したが、それと同時に咲夜に腹部を蹴られてしまった。

 

2人は同時に逆方向に吹き飛んだ。

 

間髪入れず2人はそれぞれナイフと札を投擲する。

 

そして一瞬で距離を詰めた2人は互いの顔に互いの武器を突きつけた。

 

「……やるじゃない……まさかここまでとは思わなかったわ」

 

「あなたこそ」

 

互いに互いを認め合うが、勝負はまだ終わっていない。

 

霊夢と咲夜は再び距離を取り、構え直す。

 

「予告するわ……あと一撃であんたを倒す」

 

「……ならば私も次の攻撃であなたを刈り取るわ……当然あなたより速くね」

 

まるで西部劇ね、と霊夢は笑う。

 

霊夢は最後の1枚となった札を取り出す。

 

咲夜も同じように脚につけたホルスターからナイフを取り出し構える。

 

刹那、霊夢の周囲を囲い込むようにナイフが配置された。

 

霊夢は持ち前の直感でナイフを捌く。

 

ナイフは霊夢の服や皮膚を切り裂いていくが、致命傷は避け続ける。

 

その時、ナイフの隙間から咲夜は霊夢の懐に入り込み、ナイフを振りかざした。

 

(……貰った!)

 

霊夢に首筋目掛けナイフを振るう咲夜だったが……

 

身体を捻った霊夢に躱され、目の前に札を突きつけられる。

 

宝具「陰陽鬼神玉」

 

「……陰陽鬼神玉」

 

霊夢が創り出した光球は一瞬で咲夜を飲み込み炸裂した。

 

爆発音と共に砂煙が舞う。

 

霊夢は肩で息をしながら、膝をつく。

 

「……何故、あのナイフが囮だと……」

 

「かん」

 

霊夢の答えに咲夜は自嘲気味に吹き出す。

 

「私も聞きたい」

 

「時間を止めている間に私に直接攻撃することも出来たハズでしょ?」

 

霊夢は倒れた咲夜に近づく。

 

「……私の能力の限界、という理由もあるけれど、何よりは……」

 

「私の流儀に反するからよ」

 

咲夜の答えに霊夢は微笑みながらそう、と返した。

 

意識を手放した咲夜を一瞥し、霊夢は先へと進んでいった。




美鈴を破り魔理沙と霊夢に遅れて館に突入しようとする悟空の目の前に、紅き悪魔が舞い降りる。
次回、「紅き悪魔の世界」をお楽しみに。

感想やお気に入り、評価、ここすき等、是非お願いします。やる気が出ます。次回投稿が早くなります。……たぶん。
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