東方龍白録 〜The End of Crossover Fantasy. 作:タミ
努力は悪か?
憧れは罪か?
……それでも、諦めたくない。
悟空とレミリアは一進一退の攻防を繰り広げている。
お互いの攻撃は直撃しているが、どちらも致命傷には至っていない。
「中々やるじゃない、人間にしては」
「おめえも流石だな」
お互いにそう言い合い、同時に飛び上がる。
神槍「スピア・ザ・グングニル」
貫け、と唱えたレミリアの手の中に魔力で作り上げた槍が現れた。
それを手に取り、一気に間合いを詰めて悟空目掛けて投げつける。
それを悟空は両手で受け止めるが、勢いを殺し切れずに後方に吹き飛ばされてしまった。
しかしすぐさま体勢を整え、地面を蹴って追撃をかける。
「はぁっ!」
悟空が突き出す拳を、レミリアはひらりと避ける。
そして手のひらを悟空の目前に突きつけ、そのまま弾幕を放った。
巻き起こる煙を見てレミリアは口角を上げる。
その時、悟空が煙から現れレミリアに頭突きを喰らわせる。
突然の奇襲に反応が遅れ、レミリアはまともに受けてしまう。
「淑女の顔に頭突きするとは品のない……」
そう呟いて、反撃に出ようとするが既に目の前には誰もいなかった。
瞬間、背後に気配を感じ振り向くとそこには蹴りを放つ悟空の姿が見えた。
咄嵯に身を捻ってそれを避けるが僅かに掠ってしまう。
掠った頬から血が流れ出すが、気にせず今度は逆に殴りかかる。
悟空は瞬時にそれに対応し拳をぶつけてきた。
激しい衝撃が走り2人は互いに距離をとる。
「……なんて底知れぬ力……ますます欲しくなった!」
レミリアは驚きの表情を浮かべる。
「へへ……楽しくなってきたぜ」
そう言って、悟空はニカッと笑う。
「ふん……まだ余裕があるみたいね」
「……ああ、まあな」
一方、レミリアには明確に疲れの色が見て取れる。
その時、レミリアの両腕と頭が糸の切れたマリオネットのように脱力した。
「……なんだ……!?」
悟空はより一層警戒心を高め、構えをとる。
レミリアの肉体からはどす黒い血のようなオーラが吹き出し始めている。
「……おめえ……何者だ!レミリアじゃねえな!!」
「……そんなことが今重要なのか?人間」
レミリアはそう言った後、悟空の視界から消失する。
「鈍いな、欠伸が出る」
次の瞬間、レミリアは悟空の顔を鷲掴みにし、地面に叩きつける。
「そんなものか、サイヤ人」
レミリアは知り得る筈のない単語を口にし、悟空を持ち上げる。
「……サイヤ人を知ってるのか」
「ああ……よく知っているし、
悟空はそうか、と言って頭を鷲掴みにされたまま気を高め始める。
そして自身の気を周囲に爆散させ拘束から抜け出した。
その反動でレミリアも少し怯む。
「ふぅ……やっと出られたぞ」
悟空はそう言って額に浮かんだ汗を拭う。
「……そうこなくちゃ」
レミリアはどす黒く紅いオーラを纏いニヤリと不気味に笑った。
「ははッ、待て待てーーッ!!」
一方、フランと魔理沙の戦闘は一方的なものになり始めていた。
魔理沙はとうとう反撃することも出来なくなりフランに追いかけられながら館の中を飛び回っていた。
フランは魔理沙を追いかけながら、時折光弾を放って攻撃してくる。
魔理沙はそれをなんとか避けているが、いつ被弾し撃墜されてもおかしくない状況だった。
「いい加減に、しろぉっ!!」
魔理沙は苦し紛れに弾幕を展開するが悉く避けられてしまう。
フランはその弾幕を掻い潜り、魔理沙に肉薄していく。
「これで、おしまい!」
フランは魔理沙の目の前まで迫り、弾幕を放とうとする。
「なわけねーだろ!」
魔理沙は油断したフランに弾幕をぶつけ、再び距離をとり始めた。
「……ふふっ」
そうこなくちゃ、とフランは不気味に笑い魔理沙を再度追いかけ始める。
(……ヤツには今のが苦し紛れの1発に見えたハズだ)
魔理沙は追ってくるフランを横目で確認する。
(よし、この調子で……)
しかし、いつの間にか魔理沙はパチュリーと闘った地下の大図書館まで追い詰められてしまった。
「鬼ごっこはもうおしまいね」
フランは図書館の出入り口を閉め魔法で鍵をかける。
「……なんのつもりだ?」
「だって、逃げられると困るもの」
追いかけっこは飽きちゃったし、と妖しく微笑んだ。
「………へへっ」
肩で息をしながら魔理沙は口角を上げる。
「あら?気でも触れたかしら?」
「いんや……ただ予定通りに事が進みすぎるのがおかしくてよ」
「へぇ……面白いじゃない、何か作戦があるのね?」
「そうだな、面白くなるよ」
魔理沙は足元に巨大な魔法陣を展開する。
「1日に2回も水魔法を使うハメになるなんてな!」
魔理沙は残りの全魔力を用いて図書館を埋め尽くす勢いで水を放出した。
「しまった!」
フランはあっという間に水に飲み込まれてしまう。
魔理沙の勝算、それは吸血鬼の弱点の一つ、流水であった。
密室に誘い込み、本来自身の体質に合っている水の魔法で流水を生み出し閉じ込めるという作戦だったのだ。
フランは蝙蝠化し離脱しようとするが上手く体が動かせない。
魔理沙にとっての好都合はこの図書館が地下にあり尚且つ魔力が満ちていることだった。
周囲に漂う魔力を利用し魔法の威力の底上げをする事ができたのだ。
「……女は知恵と度胸で立ち向かうもんだぜ」
魔理沙は膝から崩れ落ちる。
「どうだ畜生!」
しかし、魔理沙の期待はあっさり裏切られる。
轟音と共に図書館の壁が崩れ落ち、そこから水が流れ出てしまった。
「壁が……!?」
「残念残念、惜しかったわ」
「水に完全に飲まれる前に壁の目を壊しておいたの」
「そ、そんなのアリか……」
フランは水から姿を現した。
今はまだ太ももあたりまで流水に浸かっているせいで身動きが取れないが水が引けば再びフランは襲いかかってくるだろう。
「どうやら魔力を使い切っちゃったみたいね、ざ〜んねん」
魔理沙はへたりこみフランを睨む。
「まあ動けなくても攻撃はできるけど」
フランは腕を上げ巨大なエネルギー弾を生み出す。
「楽しかったわ、魔理沙」
魔理沙はぎり、と歯噛みし、笑う膝を叩き起こし立ち上がる。
「あら、まだやれるのね」
「……ったりめーだ」
考えろ。考えろ。
まだ自分に残っている手札は何だ。
魔理沙は必死に思考を巡らせる。
その瞬間、魔理沙の脳裏にある光景が浮かび上がった。
━━━……そういや悟空、なんだよ"キ"って
━━━まあ簡単に言えば、誰もが持ってる体内エネルギーみてえなもんだな
━━━ほう、つまりはやろうと思えば私にも使えるわけだな?!
━━━そうだな、でも苦労するぜ
それは先程館の前でした悟空との会話だった。
「……そうか、そういうことか」
魔理沙は呟き、拳を握りしめる。
「なんだ、やっぱり諦めるの?」
フランはつまらなそうに言い、指先に力を込める。
「いーや、こうなりゃ一か八かだ」
体内エネルギー、すなわち気。
それは生き物ならば誰でも持ち得る力。
(……もう残っているのはこれしかない!)
魔理沙は目を閉じ、大きく深呼吸をする。
「何をしても無駄なのに、じゃあいくわよ」
フランは魔理沙に向けて弾幕を放つ用意を始める。
魔力と同じだ。身体に流れる力を感じろ。
魔理沙は悟空のように両手を腰に引く。
「か……め……!!」
「……かめ?亀がなぁに?」
外したら。撃てなかったら。押し負けたら。
間違いなく死ぬだろう。
しかしそんなことは一切考えない。
ただ、自分を完膚なきまでに叩きのめしたあの男のように。
燃え上がる憧れと、恋のような情熱を胸に力を込める。
「は……め……!!」
それに呼応するように、魔理沙の両の手の間に光が満ち始めた。
しかし、魔理沙本人はそれに気付かない。
「まあいいや……ばいばい、魔理沙!」
フランは巨大な弾を魔理沙目掛けて投擲する。
(出来る出来ないじゃねえ、やるしかねえんだ!この一撃に全てを賭ける!)
「波ーーーーっ!!」
その叫びと共に魔理沙は両手を前に突き出した。
魔理沙の手のひらからは悟空のものとは比べるまでもなく小さく細いが、確かにかめはめ波が放たれていた。
魔理沙のかめはめ波とフランのエネルギー弾が衝突する。
魔理沙の放った気の塊はフランの気の玉を突き破り、そのまま一直線に突き進む。
「なっ……わあああーーっ!」
フランは慌てて避けようとするが、魔理沙の気の奔流は図書館の壁に激突し、大穴を開けた。
「……やったのか」
魔理沙は今度こそ力を使い果たし、背中から倒れる。
フランが油断していたことに加え、流水に浸かりうまく力が出せなかった、これらの要因が無ければ魔理沙のにわか仕込みのかめはめ波では倒せなかっただろう。
「ふぅ……」
魔理沙は安堵のため息をつく。
フランは図書館の瓦礫の中から立ち上がり、ゆっくりと魔理沙に近づく。
「……すっごく楽しかったわ、魔理沙」
フランは満面の笑みを浮かべた。
「あー……そりゃ良かったよ」
魔理沙は苦笑いを返す。
「でも残念だけど、今日はここまでみたい」
そう言うと、フランは意識を手放し倒れ込んだ。
「……なさけねー格好だけど、とにかく勝った……」
魔理沙は安心感からか、眠気が襲ってくる。
「……ったく、霊夢のやつ、どこ行ったんだよ」
愚痴を零し、魔理沙は意識を手放した。
「まったく、どこに行ったのかと思ったら……」
霊夢はめちゃくちゃになった図書館で横たわる魔理沙を発見した。
「魔理沙、魔理沙」
起きなさいよ、と霊夢は魔理沙を揺さぶる。
「……あれ、霊夢」
魔理沙は目を覚まし上半身を起こす。
「やっと起きた」
「……なんでお前ここにいるんだよ」
「あんたが勝手にいなくなったんでしょ」
そうだったな、と魔理沙は再び上半身を倒す。
「身体中ガタガタなんだ……もう少し休ませてくれよ」
「まあ、いいけど」
霊夢は魔理沙の隣に座る。
「……で、何があったわけ?」
「んー、まあ色々とな」
魔理沙はこれまでの闘いについて話し始めた。
「随分無茶したのね」
「……ほんと、今日は厄日だ」
「まったくね」
再び上半身を起こし魔理沙は立ち上がる。
「肩貸すわよ」
「悪いな……悟空は?」
「まだ外で闘ってる」
肩を借りながら魔理沙はゆっくりと外へ向かっていく。
奇策により魔理沙は遂にフランを破った。一方、紅黒いオーラを纏い更に力を増したレミリアに悟空は黄金の戦士へと変身する。次回、「黄金VS紅黒」をお楽しみに。
感想やお気に入り、評価、ここすき等、是非お願いします。やる気が出ます。次回投稿が早くなります。……たぶん。