完結!?ツルギ抹殺計画
をお送りします。
その日、結城荘の周囲は並々ならぬ雰囲気が漂っていた。
結城荘の入居者達6人は皆、張り詰めた空気の中で強張った顔となりリビングのテーブルを囲む。
結城荘始まって以来の事態である。
「……どういうことですか」
固く結ばれていた唇を開き、儚が呟く。
「どうして、前回の更新から3ヶ月も経ってるんですか!?」
テーブルを叩き、儚は嘆いた。
この作品、仮面ライダーハカイブが前回更新されてから3ヶ月も放置されていたことを。
「ま、まあまあ儚。ほら、ハージェネの方でさ、ディガルム×ハカイブやってるからまったく放置されてたってわけじゃ……」
「甘い! 甘いですアユさん……! 3ヶ月も本編を放置されてしまっては、読者の皆さんも、「そういえばハカイブのストーリーってどんなだっけ?」となること必死です!」
「そういえばハカイブのストーリーってどうなってたかしら〜?」
「見てください! 登場人物ですらこの有様です!」
すっかり本編の記憶がない望を指してあゆに詰め寄る儚。更に望は本編とはまた別の苦情があるという。
「ディガルム×ハカイブやってるけど〜。流石に◯棒を連呼させられるのは私もちょっと〜。セクハラよね〜これ?」
「いや、あんたは本編の時点でローションまみれになったりそっち方面で売ってたでしょうが」
自分は清楚キャラだと主張する望に千佳は冷静につっこんだ。
それよりもと千佳は話を本題の3ヶ月放置問題に戻す。
「3ヶ月放置による影響はストーリーを忘れる以外にも色々あるわ」
「たとえば?」
「季節系イベントよ。ただでさえ短い秋という季節のイベントをごそっとやらなかったのは大きいわ」
「でも、元々この作品そういうの気にしてなかったんじゃない?」
莉緒の指摘に頷きつつも、千佳は話を続けた。
「でも、夏場でようやく季節感があってきたところだったのよ。それを3ヶ月放置によって季節はもう冬よ! 今から秋関係の話をやっても読者からすれば季節感のない作品って思われるのが関の山よ」
「それに……皆さん。3ヶ月前。もっと言えば4ヶ月前を思い出してください」
4ヶ月前?
そう全員が首を傾げながらも記憶を辿る。
すると、優李が「あっ」と声を上げた。
「お盆だ! ハカイブお盆祭りとか、ハカイブ1周年直前祭りとか作者言ってたよ!」
「そうです。ハカイブ1周年に関する活動報告まであげています……。儚達はこれにまんまと踊らされてしまったのです……」
「1周年を期にストーリーも加速させていくのかと思いきや、3ヶ月も……」
「ぬか喜びさせてからのこの仕打ち……」
「それで、やべっ3ヶ月放置してたからそろそろ本編更新するか……って私達に優しい顔するんでしょ〜? やってることがDV彼氏と変わらないわよ〜」
「この次もどれだけ待たされるか分かったもんじゃないわね」
作者へのヘイトが溜まる中、あゆがフォローを入れる。
「まあやっぱディガルム×ハカイブもあるしさ……そっちで忙しかったんだろ……」
「そんなことはありませんアユさん」
儚はそう言うとテーブルの上にノートパソコンを置いて、画面をあゆへと向ける。
画面は、ハーメルンのマイページが表示されていた。
「見てください、直近のこれを」
「ああ、作者の……」
「ハカイブが最後に投稿されてからの3ヶ月間に投稿されたものを見てください」
「そりゃディガルム×ハカイブが……」
「ディガルム×ハカイブはこの3ヶ月の間に3話投稿されました」
「1ヶ月に1話って計算だったらまあ……」
「仮面ライダーマイヤも3話です」
「ああ、まあそりゃそうなるだろ」
「仮面ライダーツルギに関してはTVSPも含めると3ヶ月で11本投稿されてます」
無言になる一同。
そして儚はひとつの結論を導き出した。
「つまり諸悪の根源は仮面ライダーツルギです」
眉間に皺を寄せるほどの険しい顔で儚は言った。
「いやいや待て待て! そりゃたしかに格差はあるけどさ!」
「ふん。ちょっと人気があるからってでかい顔して……。大体なんですかTVSPって。本編だけじゃなくこんなものまであるとかどうなってるんですか。なんですかTriangle Victim SPiralって、気取ったタイトルつけて調子に乗ってますね」
「やめろー! ツルギに喧嘩売るなって、お気に入り数こっちの5倍もあるんだぞ!」
「でもTVSPのお気に入りはそんな数なかったわよ〜?」
「所詮は読者参加型で増やしたお気に入りです……。お気に入り外されてないだけの読者の皆様の優しさによって作り出された幻想に酔いしれてる哀れな奴なのです……」
「そうよ。ちょっと来年5周年とかいうぐらいの年季だけ入った作品なんだからねあれ」
「マジでやめろってツルギのファンに殺されるからマジで! こっちが潰されるって!」
「あと、あれだよね。女の子たくさん出せば人気出るみたいな安易な考えが透けて見えるよね」
「莉緒さん、自分達の性別思い出して。デスティニーのビームブーメラン並のすごいブーメラン返ってきてるからこっちに!」
「大体な〜にがお風呂屋さんよ。こちとらとっくに全身ローション塗れになってるのよっ!」
そう言うと望達はいつの間にかタオル一枚巻いた姿となっており、皆マットを脇に抱えていた。
「いつ着替えた!?!?」
「もうこの際しのごの言ってられないわ! 人気のためには脱ぐわよ!」
「そうだよ! ローションでもなんでも被るよ!」
「千佳姐やめろ! リビングで頭からローション被んじゃねぇ!」
「結城荘はもうやめて結城荘・プに生まれ変わるのよッ!」
「なんだよ結城荘・プって!? やめろマジで! きらら系仮面ライダーを名乗ってたの忘れたのかよ!?」
「そんなの序盤で形骸化してたでしょ〜。いえ、むしろこれこそが新時代のきらら! お風呂ブームを起こしてくっさいオタク達を入浴させるのよ〜!」
「これでみんな清潔に!」
「男としても一皮も二皮も剥けるわね!」
「うるせえよ! アタシらが剥かなくていい皮だろそれ!」
一方その頃、あゆ達をよそに儚と莉緒はある物に興味を示していた。
「見て儚ちゃん。この椅子、真ん中のところが凹んでる」
「本当に凹って漢字そのままな見た目ですね……」
「なんで凹んでるんだろう?」
「洗いやすくするためでしょうか……?」
「微妙に当ててくんのやめない? てか儚は未成年なんだからそんなもん持つな! そんな格好もダメ! 服着る!」
あゆは儚にいつもの黒ローブを纏わせる。
儚には優しいあゆを微笑ましい瞳で大人達は見つめていた、が。
「ひぃん……こっちの世界のお風呂入る時の正装なのに……」
儚がそう言うと、あゆは望達の方を睨みつけた。
睨みつけられた本人達はどこ吹く風といった様子である。
ようするに開き直り。
「儚に変なこと吹き込むな!」
「別に吹き込んでないわよ」
「そういえば、お風呂屋さんってなんですか……?」
「銭湯じゃないの?」
何も知らない純真な儚と莉緒を、望が穢す。
「儚ちゃん、莉緒ちゃん。お風呂屋さんっていうのはね、男と女がたまたま同じお風呂に入って、そこで偶然二人は恋に落ちてそこからピーしたりピーなんかしちゃってピーーーーーーー」
「だから吹き込むなよ! てか後半ほとんど聞こえねえし!」
「そんなことしたら儚……世界中の男の人を恋に落としちゃって傾国どころか、最早世界を傾けて……傾界させちゃう……」
「ホントどこから出てくんだよその自信は! ああくそ! なんでツッコミがアタシしかいねぇんだよ!!!」
頭を掻きむしるあゆ。
どうしてこんな事態になってしまったのかと振り返り、ある台詞を思い出す。
「諸悪の根源は仮面ライダーツルギ……」
「そうよあゆ。悪いのは全部あの女たらしよ」
「ダブルヒロインの片割れを実質キープしてるような主人公が全部悪いのよ〜」
「思わせぶりな態度ばっかしてさぁ!」
「読者参加型お気に入り数工作法……」
「潰しに行きましょうアユさん……! またキャラ応募なんてしてます!」
「ふふ〜失敗した◯V女優みたいな名前のキャラ送っちゃお〜」
「みんないくぞ! ツルギを潰しに!」
結城荘の入居者達の戦いは続く。
いつの日かツルギを越えるために!
ご愛読ありがとうございました!
大ちゃんネオ先生の次回作というか仮面ライダーツルギにご期待ください!
「おい!? ハカイブ打ち切られたぞ!?!?」
「ふー。これで3000文字は稼ぎましたね……」
「それじゃあ本編入るからみんな準備してー」
「はーい」
「ツッコミ過ぎて喉痛ぇ」
「はい、のど飴」
などという一連の流れを庭で聞いていた骸は思った。
「3ヶ月の間犬小屋で放置されてたおじさんが一番可哀想だと思うけどなぁ……」
紫煙が、冬の空に溶けていく。
おっさんの扱いは、冬の寒さのように厳しいものなのだ。
時系列とかもうかなぐり捨てて本編。
墓荒らし結社グレイダーの本部は騒然としていた。
本部勤めの構成員達が廊下の端に避けて生まれたランウェイを堂々と歩くのは幹部ララを先頭とした営業部二課こと特務機動隊と呼ばれるグレイダーきっての武闘派。
全員、黒のライダースーツに身を包み、黒いフルフェイスのヘルメットを小脇に抱えている。
更に、量産体制が整いつつあったトゥームグレイダーバックルの先行配備型を腰に巻きつけており、使用許可が首領から降りたこともまた話題のひとつに上がっていた。
「気合入ってんなー」
「激戦潜り抜けてきた猛者達だ。面構えが違う」
本部勤めの構成員達が機動隊の面々を目の当たりにし、ひそひそとそんなやりとりが交わされるのをララ達はまるで気にしない。
そんな中、ララはちょうど出勤してきたクロフトの姿を見つけ立ち止まった。
「よう。朝から精が出るな」
「本部勤めのデスクワークチャラチャラやってる奴等とは違うもの」
「そりゃそうだ。最前線に立ってるお前らには敵わんて」
「あんたらが手を焼いてる墓守を倒してくる。成功したら昇進確実ね」
「そいつは楽しみだ。昇進したら、ぜひ部下にしてくれ」
目を細めるララに構わず、笑顔を向けて肩をぽんと叩きクロフトは去っていった。
「……余裕ぶって」
「隊長」
「分かってる。いくよお前ら!」
「応!」
威勢のいい機動隊の隊員達の声がフロアに響く。
クロフトは自身のデスクにつきながらそれを聞き流していると、突然背後から笑顔のドクターハカリに話しかけられた。
「おはよ〜ございま〜す!」
「うおっ!? びっくりしたぁ、何してんの君」
「朝の挨拶、即ちおはようございますですよ〜」
「いやそれは分かるけど、後ろからはなしでしょ……」
「そんなことよりいいんですか〜? あれ、クーデター宣言してるようなものじゃないですか〜」
ドクターハカリは先程のクロフトとララのやり取りを見聞きしていたのだ。
営業部の部長であるクロフトに対してあの発言は問題といえば問題であるが、クロフト本人はまるで気にした様子ではない。
「優秀な人間が上に立つ。いいことじゃないの。あいつの実力も分かってるしな。……なんだよその顔は」
分かりやすく意外そうな顔をしているドクターハカリを見て、クロフトが言った。
「私、もっと保身に走るものかと思っていました」
「そんな小さい男じゃないよ俺は。幹部とかどうとかも関係ない。俺は首領のために働く。それだけ」
「流石の忠誠心。ワンちゃんみたいですね!」
「馬鹿にしてるだろ。それは馬鹿にしてるよな?」
「可愛くていいじゃありませんか」
「たく、許してやる代わりに肩揉んでくれないか? 重くて重くて……」
肩を摩るクロフトの表情は本当に辛そうであった。
肩の痛みというのは若者には伝わりにくいが、存外キツイものである。
意外と身体の動きに密接に関わってくる肩は痛むと身体を正常に動かすことも躊躇われるほどになるのだから。
そんな痛む身体でも出勤する世の中年はすごい!
すごいのだが。
「え、セクハラですか?」
「どこにセクハラ要素あった!?」
「身体に触れという指示がちょっと……」
「そんな変態チックな頼み方してねぇよ!?」
「こういう時は人事部に駆け込めって言われましたぁ!」
「あ! おい待て! セクハラで降格させられるのだけは嫌だ! 待てコラ!」
「きゃーパワハラー!」
特務機動隊が去った後、グレイダー本部ではクロフトとドクターハカリの鬼ごっこが始まった。
当然だが、首領から怒られた。
「人権、奪われました」
住居は豪邸と言っても差し支えない大きな家……の庭に建てられたギリギリ全身入れるぐらいの犬小屋。
首輪に繋がれ、半径2mしか動けません。
こんな状態になっても、道行く人は誰も気にもしません。いや、気にすることはあってもこうです。
「あら。家は立派なのに飼ってる犬は貧相ね」
「意地汚そうな犬ね」
「うるせえ」
「キャア吠えた!?」
グランの野郎の魔術でここの家の連中以外には犬に見えている。それもそうだろう。おじさんが首輪で繋がれてるなんてどんなプレイというか、通報確実だからな。
お隣の工事の音がうるさくて、そろそろ我慢の限界なんだ。
人間扱いしてくれる人は誰もいない。
優しくしてくれる人は唯一……。
「はい、エサ」
そう言って、猫まんまをくれた長谷部莉緒さんだけ。
あんなに美味い猫まんまを食ったのは初めてでした。
世界一美味い猫まんまだと思います。
「それを証明するためにさ、おじさん世界を巡る旅をしなきゃならねぇんだ。だから儚、この首輪を解いてくれねぇか?」
「嫌です」
骸・ブツダンブッカ。
推定380歳。
住所東京都世田谷区の犬小屋。
人権派の方、助けてください。
不当な扱いを受けているんです。
「10年間もブツダンブッカの家を放っておいて、儚のお小遣い借りて博打で溶かした人に人権があるとでも?」
「悪かったって。反省してる。お前の小遣いもきっちり利子つけて返す。だから頼む。マジで頼む。お願いもう限界なんだ」
地面に額を擦り付けて懇願する骸を見下し、もとい見下ろし儚は何かを思い出した様子でいた。
「そういえば、お父さんから今朝メールが届いてました。ブツダンブッカの人達からの伝言です」
「お! なんて言ってた!?」
「バーカ、アーホ、ドージ、マヌケ、ゴクツブシ、カネクイムシ、スケベ、セクハラ野郎……」
「もういい分かった。続けなくていい」
「借金返さないマン、巨乳、胡散臭い、枕臭い」
「続けなくていいって言ったろ! え、てか嘘? 枕臭いってマジ? ホントに言ってた?」
「はい。書いてあります」
儚は携帯の画面を見せて証拠を示すと、骸は肩を落としてしょぼくれてしまった。
一番ショックが大きい悪口だったのだ。
「別に何言われても構いやしないけどな? でも、枕臭いはライン超えてねぇか……?」
「そんなにショックですか……」
「俺、ガキの頃に親父の枕の臭い嗅いでこうはならねぇって誓ったんだよ、でも臭いんだろ? 俺はおっさんになっちまった……」
「何を今更……とっくにおっさんじゃないですか……。自分のことおじさんって言ってますし……」
「それはな、自分のことをおじさんって言って、全然そうは見えないです〜って言われるためなんだよ、分かれ。世のおじさんおばさん皆若いって言われてぇんだよ」
「かわいそうな努力……」
ボソッと呟いたその言葉を骸は聞き逃さなかった。
「お前やっぱり性格悪く育ったな? ちっちゃい頃は……いや、あんま変わんねぇわ」
「当然です。儚は今も昔も世界一可愛い……」
「マジでどっから出てくんのその自信? グランの野郎、甘やかすだけ甘やかしたな」
「にへへ……お父さん大好き……」
「けっ。どうせお前の大好きなグランもいずれ俺と同じおっさんになるんだぜ。生え際後退してくれるんだぞ。加齢臭してくんだぞ」
「お父さんはそんなことありません。お父さんは永遠にかっこいいので。一人で生際後退して加齢臭発しててください」
「おいこらクソメスガキ調子乗ってんじゃねぇぞ。俺が本気出せばなぁ、お前なんてブベベ!?」
骸の顔に水流が当てられる。
ホースを手にした儚が、骸に向けて強めに水を出していた。
「ばばばっ! ばべっ!?(特別意訳:儚っ! やめっ!?)」
儚は骸に水をぶっかけ続ける。
特別意訳がなければ分からない言葉など分かるはずもないのだ。
そんな鬼畜の所業が行われている中、庭に面するテラス窓が開いて優李が声をかけた。
「あ、儚ちゃん。おはよー。ムクおじに水浴びさせてるのー?」
「ユウリさん、おはようございます……。いえ、おじさんにではなくショーリョーマッの水浴びをさせようと思って……」
「そっかー」
儚はキセキレジスターを開いてショーリョーマッを庭に出現させる。
メタリックグリーンのボディが朝日を浴びて輝き、反射した光が骸の目を焼いた。
「身体に異常なし……。機関部も大丈夫……」
各部チェックを儚が行うと、ショーリョーマッは返事をするようにライトを点滅させる。それを見た儚は笑顔で応えていた。
「にへへ……ショーリョーマッ、今日も元気……!」
「ほーんと、ショーリョーマッのこと好きよねぇ」
「あ、千佳さんおはよう」
「ふぁ〜あ。まったく朝から元気ねぇ。うわっ、骸さん何? 雨でも降ってた?」
あくびをしていた千佳だが、ずぶ濡れの骸が目に入りあくびが引っ込んでしまった。
「さっき儚ちゃんがムクおじに水かけてたんだ」
「ムクおじってあだ名ちょっと嫌なんだけど変えてもらえる?」
「ムクおじちょっと濡れてるんだから近付かないで」
「あれなんか……おじさんまた水かけられてる? なんか目から水が……」
顔を覆う骸をよそに、千佳と優李は穏やかな顔でショーリョーマッと接する儚を見つめていた。
すっかり結城荘の日常と化した光景である。
「ああしてると普通の女の子って感じだよね〜。ペットと戯れてるみたいなさ〜」
「なんだかんだ言って、儚も年相応ってわけよ」
うんうんと頷く千佳を横目に骸もまた儚とショーリョーマッへと視線を向ける。どこか遠い目で。
そうして自然と、懐かしむように口が開いた。
「ショーリョーマッはあいつがグランの次に心開いた奴だからな」
「そうなの?」
「霊馬駆動輪は戦士の墓場にいる霊馬って生き物の亡骸と魂を使って作られるんだが、儚とショーリョーマッはショーリョーマッが霊馬の頃からの付き合いだからな」
それは、つまり。
儚は一度、ショーリョーマッの死に目を見ているということ。
骸の言わんとすることを千佳と優李は察して、目を細めた。
「霊馬なら何でも霊馬駆動輪になれるわけじゃない。ショーリョーマッが死んじまった時はギャンギャン泣いてなぁ……。そのせいつうかおかげつうかでショーリョーマッは霊馬駆動輪として生まれ変わったってわけだ」
「本当に好きなんだ、ショーリョーマッのこと……」
「ああ。俺が戦士の墓場出てから風の噂で聞いたが、霊馬駆動輪の整備資格まで取得したらしいからな。最年少記録だし、合格する奴も少ないかなりの難関なんだが」
「……異世界の資格の話聞くと親近感湧くわ」
とはいえ、そんな難関を突破するとは並大抵の努力ではないだろうことは容易に想像つく。
それを為せたのは一重に、ショーリョーマッと一緒にいたいから。
「ショーリョーマッ、お散歩行こっか」
ヘルメットを呼び出し、ショーリョーマッのハンドルを握って歩き出そうとする儚の背に千佳が声をかけた。
「あ、そういえば。儚ー」
「はい……?」
「ついでにムクおじ散歩に連れてって」
「え?」
「えー……」
心底嫌そうな顔をする儚。
本当に嫌そうな顔の儚。
めちゃくちゃ嫌そうな顔な儚。
ヒロインがしちゃいけない顔の儚である。
「おい、そんな嫌そうにするなよ傷つくだろ。いやそもそも散歩ってなんだよ」
「いやぁ、この間ご近所さんに、「最近ワンちゃん飼い始めたみたいだけど、ちゃんとお散歩行ってる?」って言われたのよ。怪しまれないためにも儚行ってきて」
「儚、おじさんの散歩の仕方は分からないので……」
「基本はショッピングか食事をしてからお店に行って本指名よ〜」
「それ
ひょこっと顔を覗かせ、おじさんの散歩のさせ方を伝授する望に骸がつっこんだ。
「教育に悪いだろ変なこと教えるんじゃない!」
ポンポンと儚の頭を撫でながら言う骸になんだかんだこの人も過保護だなと思う千佳と優李、望。
やはり儚は愛され体質なのだなと実感させられる。
それはともかく。
「まあ普通に犬の散歩の感じでいいから行ってきて」
「えー……まわりには犬に見えてますけど、実際はこれですよ」
「これ言うな」
「犯罪じゃないですか。おっさんが10代女子を無理矢理飼い主にしたみたいな。それにこれからショーリョーマッの散歩なので……」
「じゃあこうすればいいわ」
結城荘の前。
ショーリョーマッに跨る儚。
ショーリョーマッに繋がれ、寝かされている骸。
「これでよし」
「いやよしじゃねぇだろ!? 散歩じゃなくて市中引き回しだろ!」
「なるほど……これは良いですね……。いってきます」
「待ってはかっぎゃあぁぁぁぁぁ!!!!!」
アクセル全開で突き進む儚とショーリョーマッは風を切り裂き街を駆ける。
楽しいショーリョーマッとの時間。
「俺を無視するな!」
しかし、そんな儚とショーリョーマッの背後に迫る黒い影。
「ターゲット捕捉しました」
無線で報告し、黒ずくめのライダーはショーリョーマッの後ろについた。
ショーリョーマッと儚はやがて自然溢れる林道へ。
徐々に徐々に増え、迫る魔の手。
それに気付かぬ骸ではなかった。
地面を蹴って儚の後ろに飛び乗る。
「ピンピンしてますね」
「さっきまではギャグパートだったからな。こっからシリアスパートだぜ。おい、気付いてるか」
「はい……」
「ありゃあグレイダーの特務機動隊だな。ララとかいう幹部が率いてる武闘派だ。そんなんに狙われるたぁ有名になったなぁ」
「儚の可愛さが墓荒らし共にも伝わりましたか……」
「可愛くねぇところが伝わってたんだろ……来るぞ!」
二台のバイクがショーリョーマッに横並び、儚と骸に拳を向ける。
が、骸は容易く打撃を捌き、戦闘員の胸へと強烈な一撃。
バイクごと転倒し、ショーリョーマッの右が空き、儚はハンドルを切った。
殴る相手が間合から外れ、戦闘員の拳が空を殴ると儚はハンドルを支えにシートから飛び上がり戦闘員を蹴飛ばす。
「儚! 前!」
「っ!」
シートに戻った儚の目の前。
儚達をショーリョーマッから引き摺り下ろそうと白いロープが引かれる。
だが、こんな時どうすればいいか僕達は知っている。
仮面ライダーが教えてくれた、あの!
「ライダー乗り!」
儚はシートにお腹を乗せて空を飛ぶかのような姿勢でロープを躱す、が。
後ろには骸が乗っていたわけである。
「ごふっ!?」
ライダー乗りの姿勢になると同時に、儚の両足が骸の腹部に直撃。骸を蹴り飛ばしてしまった。
「おじさん! くっ……よくもおじさんを……!」
「いやおじさんやったのお前ぇ!」
体勢を整え、着地した骸はショーリョーマッに引き摺られないよう全力疾走。
儚の言葉に抗議する中、骸は更に迫る戦闘員達を目にし思考をギャグからシリアスへと切り替える。
「儚! 鎖外せ!」
「え……でも、おじさん変身……」
「出来ねぇけど、おじさん舐めるな。ブツダンブッカの頭領やってたんだからな」
「……! はい……!」
儚はショーリョーマッに結びつけていた鎖を外し、骸を解放。
急制動をかけ、骸は戦闘員達の方を向くと何処からともなく錫杖を取り出し、振り回す。
そして、骸を轢き殺そうと加速する戦闘員を錫杖で叩き落とす。
その横を通り過ぎていく戦闘員達のうち5人はバイクをターンさせ、骸を標的とした。
「おじさん狩りに5人で大丈夫か?」
バイクをウィリーさせ、骸へと向かう戦闘員だが、骸はバイクを錫杖で破壊。
バイクは爆発し、爆炎の中から余裕あり気に骸が現れる。
左手に、気絶した戦闘員を引き摺りながら。
「殺しはしねぇよ。聞きてぇことがあるからな。だから、安心してかかってきな、坊ちゃん達」
ニタリと笑みを浮かべ、骸は戦闘員達を挑発。
すると戦闘員達は一斉に言葉を発するのであった。
『憑装』
戦闘員の肉体が変化する。
色は変わらず黒のままだが、骨のような白い紋様が身体に走り黄色いスカーフを首に巻き、黄色く血走ったような瞳に大きな縦長の耳が生えたかのような姿となる。
「やっべ、挑発し過ぎたか。戦闘員レベルとはいえ、魂憑依されちまうと面倒なんだよ……こちとら変身出来ないんだからさぁ!」
「イーッ!」
その一声で戦闘員達は骸へと襲いかかる。
変身出来ない骸だが、戦闘員達と戦うことは出来る。だが、怪人となって強化された戦闘員達を倒し切ることは出来ないのだ。
様子を見て、撤退することを決めた骸は冷静に戦闘員達に立ち向かうのであった。
一方、戦闘員達と戦いながら疾走する儚の胸には妙なざわついた感覚があった。
誘導されているようだと。
そして、その勘は当たっていた。
「来たね、墓守が」
「っ!」
進行方向に立ち塞がるバイクに跨った女。
女から異様な気配を感じ取った儚は墓守ノベルトを呼び出し腰に巻きつけさせる。
「さぁて、首をもらおうじゃないか」
ララは二つのトゥームを起動させ、トゥームグレイダーバックルへと装填する。
《原始タイガー》
《ゴ・バダー・バ》
「憑装」
変貌していくララの肉体。
細身な身体は筋骨隆々と。獣のような毛皮と昆虫のように艶めいた体表が入り混じり、顔は巨大な猫科動物を思わせる顔と長い触角を備えるバッタを連想させるものが袈裟に繋ぎ合わされたよう。口腔からは巨大な一対の牙が血肉を欲し突き出て、首に巻かれた赤いマフラーが風を受けて靡いていた。
更に、変化は肉体だけでなく搭乗していたマシンにも及び、褐色の鋭い牙を模した姿となり、ララはアクセルを吹かしていた。
「ハッハァッ! 飛ばすよ!」
その加速に儚は目を見張った。
一瞬で儚とショーリョーマッの前まで距離を詰め、儚は咄嗟にハンドルを切り、ショーリョーマッもまたそれを見越して回避行動。
「っ……大丈夫? ショーリョーマッ?」
「————」
「そっか……よかった」
しかし、やはりあの加速力は脅威だ。
もし、回避が間に合っていなかったらと想像するだけで恐ろしい。
一方、ララはマシンを反転させて儚とショーリョーマッの様子を伺っていた。
「避けるとはやるじゃないさ。さあ何回避けられるか試そうじゃない。この激走のララの相手が務まるか、お嬢ちゃん!」
「っ……いい気でいられるのも今のうちです。儚とショーリョーマッは誰にも負けません……変身」
《仮面ライダーハカイブ バイオレントブラッド》
赤と青の野性の姿、仮面ライダーハカイブ バイオレントブラッドへと変身。
反応速度など感覚に優れた姿で、ララのあのスピードに対抗しようという作戦だ。
背中に備わる四本のサブアームが展開し、ララと睨み合う。エンジン音が獣が威嚇に発する声のように唸り、二人は同時に走り出すのであった。
千佳「仮面ライダーツルギ5周年記念作品のキャラクターを応募してます!」
莉緒「詳しくはここから↓」
https://syosetu.org/?mode=kappo_view&kid=320052&uid=270502
優李「みんなが考えた素敵なキャラクター待ってます!」
あゆ「応募期限は今年中。年が明けたら終了」
望「たくさん応募してくださいね〜」
儚「ひぃん……前半やらかしたペナルティでツルギの宣伝させられてる……」