仮面ライダーハカイブ   作:大ちゃんネオ

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ライダー集結!

 儚救出のためグレイダーの秘密基地へと潜入した千佳達は地下を目指して下へ下へと突き進んでいた!

 

「千佳と地下で上手いこと言いたかっただけでしょこれ」

「誰に言ってんだ千佳姐?」

 

 骸が隠れる段ボール箱を載せた台車を押すあゆが千佳に訊ねた。

 

「なんでもない。それより、他の階を探すって言って望達行っちゃったけど心配ね……」

「上手いことやるだろ望さん達なら。にしても、やたら広い……土の中にこんだけの施設造るとかヤベェな」

「はあ……普通に仮面ライダーを番組として楽しめる世界なのに、まさか普通にこんなショッカー的な組織がいたなんて……。一気にこの世界観が怖くなってきたわ」

「今更過ぎるだろ……」

 

 もう何度も怪人やら何やらと戦い、巻き込まれてきた千佳達。こういった事態には慣れっこのように思われたが、慣れてしまう怖さというものもまた存在する。

 昨日までの日常が、当たり前ではなくなってしまったのだから。

 しかしそんなものにへこたれず、儚を受け入れる器の大きさがある彼女達。現にこうして、自ら囚われの儚を助けようというのだから、あゆの言うとおり、いろんな意味で「いまさら」なのである。

 

「おーい、それでどうだ? 儚がいそうな部屋はあるか?」

 

 段ボール箱の中から骸が訊ねる。当然だが、段ボール箱の中なので骸には何も見えていない。つまり、情報が何も入らない。そのため、何遍もこうして聞いて確認しているのだ。

 

「いやーなんていうか、それっぽい部屋はないような感じといえばないし、どれもそれっぽい部屋に見えてくるし……。あー待って、やばい。このエキセントリックな色遣いの空間をマジマジ見たせいで目がチカチカしてきた」

「千佳だけに?」

「うっさい」

 

 ボゴッと千佳は段ボール箱を叩いた。

 そんなこんなで歩き続けた二人、いや三人はいよいよ基地の最奥に辿り着いた。

 大きな鉄扉の前に立つ千佳は恐る恐る重い扉を開いた。

 すると、そこには……。

 

「あ、お疲れ様でーす」

「お、お疲れ様でーす……」

 

 作業服姿の男性が二人。

 特に千佳達を怪しむこともなく挨拶すると、作業服の男達は千佳とあゆの元へ近付いてきた。

 

「結構デカいな〜。台車使っても重かったでしょう、これ」

 

 男は段ボール箱を見て千佳へと気安く話すと骸の入った箱を持ち上げようとした。

 

「あ、重い。中に何か入ってます?」

「え! あ、いや、えっと、あはは……」

(おい千佳姐! もっといい感じに誤魔化せよ!)

 

 あゆの視線が千佳を貫く。もちろん気付いている千佳だが上手い言い訳が浮かぶわけもない。冷や汗だらだらの千佳がなんとか捻り出したのは……。

 

「ゴミですゴミ! 社会のゴミとかクズとか色々入ってるんですよ〜!」

 

 社会のゴミなどと言われてカチンと来た骸だがバレないためにも息を潜めた。

 だが、万一の時はと飛び出す準備は出来ている。

 

(そんな言い訳通るかよ! ヤバい、中を見られる! バレる〜!)

 

 あゆもまたフォローしようと頭を回すが、それよりも男達の手が箱に触れるのが早かった。

 飛び出ようとする骸……であったが。

 

「あはは。まあ、ここに来るものは全てゴミですからね〜。全部まとめて燃やしちゃいますから」

 

 男は二人で段ボール箱を持ち上げながらそう言った。

 

「ですよね〜ゴミって全部実質燃えるゴミみたいなところありますもんね〜!」

 

 千佳は話を合わせた。

 その間に、骸を入れた段ボール箱は巨大な焼却炉の中へと投げ込まれるのであった。

 

「いや〜デカい焼却炉だからいいですけど、あんまり溜め込まないようにしてくださいね。ゴミ」

「そうですよね〜こまめに捨てるのが大事ですよね〜。それじゃあお疲れ様で〜す」

 

 千佳とあゆは軽くなった台車と共に、ゴミ処理場を後にした。

 後にしてしまった。

 

「……なあ、千佳姐」

「な〜に?」

「……ムクおじ、焼却炉にぶち込まれなかった……?」

「……ゴ……よ」

「え?」

「あれに入ってたのはゴミよ! 私達はゴミ捨てに来た一般グレイダー構成員! 今日も元気に世界征服目指して頑張るのよ!」

「現実逃避してる!!! 目ぇ覚ませ! 世界征服する側になるな!」

 

 早口で捲し立てた千佳を現実に引き戻そうとあゆは千佳の肩を揺らす。骸の呆気ない最期に千佳はまだ整理がついていなかったのだ。

 

「どどどどうする!? ムクおじいなかったら、敵に襲われたりしたら敵わないわよ!」

「と、とりあえず全員一旦集合!」

「そ、そうね!」

 

 台車を放って二人はエレベーターへと走り出した。

 ひとまず上階へと上がり、この階にいるだろう莉緒を探す二人は片っ端から部屋を見回った。

 すると、どこからかトントントントンと小気味良い音が聞こえてきた。何か、とても聞き覚えのある音に二人は音の発生源がいるだろう部屋の前に立った。

 

「あ、開けるわよ」

「ああ……」

 

 身構えた二人は扉を少しだけ開けて中の様子を確認した。

 その部屋は……。

 

「キッチンだ……」

 

 白いエプロンにコック帽を被った人々が野菜を切り、フライパンを巧みに操り、盛り付けを行なっていた。

 紛うことなきキッチンである。

 

「さっきの音は包丁の音か……」

「それにしても、キッチンということは……」

 

 千佳は厨房の中をぐるっと見渡し……見つけた。

 

「うわっ!」

「火を恐れては駄目。火を支配するの」

 

 二十歳前後、それよりも少し幼く見える童顔の女性コックに指導している莉緒がいた。……何故か金色のコック帽を被っているのが気にかかる。

 肉を焼いている最中のようだが、フランベにより燃え上がった炎を恐れている女性コックに莉緒は寄り添い助言し、莉緒はキッチンの中を歩き回っては味の確認や調理師達へ指導を行なっていた。

 

「なに馴染んでるの!」

「あ、千佳……私ね、ここの料理長になったみたい」

「なったみたいじゃないわよ! 何をどうしたらこの短時間で料理長に就任するわけ!?」

「えっとね、儚ちゃんを探してたらここを見つけてね……」

 

 みんな、なんだか辛そうな顔で料理してるのが見ていて辛くて……。つい、色々とアドバイスしてしまったの。

 あ、そこの火加減は……。

 こういう時は塩を加えるとね……。

 

「貴様ぁ! 神聖なる我が厨房でデカい顔をするなぁ!!!」

 

 そしたら……料理長に見つかって……。

 料理長さんと料理対決をすることになってね……。

 

「いざ掴め! ナンバー! ワァーーーン!!!」

 

 以下略。

 

「そこ略すの!? 口上聞きたいんだけど!」

  

 結果……。

 

「お前の料理は豚の餌ぁぁぁー!」

「ちくしょう!!!!!」

「祝え! 新料理長の誕生を!」

 

 パワハラ気質の料理長は料理長の座から降ろされて……。

 

「それで、料理長になったの」

「ここに来た目的忘れてるでしょ! 儚を助けるんでしょ! てかあとムクおじが焼却炉に放り込まれてヤバいの!」

「ふふ、大丈夫。ムクおじさんのことはともかく、儚ちゃんの居場所は分かったから」

 

 さらっと流された骸のことではあったが、まさかの言葉に千佳とあゆは驚いた。

 聞いていた話では、ずっと厨房にいただけなはずなのにどうして儚の場所が分かったのだろうか。

 

「さっきね、捕虜用のご飯を作って運ぶところだったから」

「なるほど。捕虜ってことはつまり儚ね!」

「マジかよ莉緒さんが料理以外で役に立つなんて……」

 

 千佳が黙ってあゆの頭を叩いた。

 シンプルに失礼だったからである。

 

「さて、それじゃあ望と優李とも合流しましょう」

「その必要はないわ〜」

「みんなお待たせ!」

「あ、望と優李も来た……のね……」

 

 振り返り、望と優李へと目を向けた千佳は絶句した。

 二人は何故か、黒いレオタードに網タイツを着用し、首に赤いネッカチーフと腰布を巻いていた。

 

「なに、その格好」

 

 千佳は自分でも驚くほど低い声を出していた。

 

「やっぱり潜入といったらこういう格好でしょう〜?」

「どうどう! 私の瞳、緑色に光ってる?」

「いやキャッツ◯イじゃなくて女戦闘員の格好でしょそれ!」

「もうそんなカッカしないでよ泪姉」

「誰が泪姉よ!」

「たしかに、身長はともかく泪姉にしてはグラマラスさに欠けるわ〜」

「ああ!?」

「もうツッコんでたらキリないから行こうぜ泪姉」

「千佳姐って呼びなさい!」

 

 ツッコミに疲れ、肩で息をする千佳。

 そんな中、莉緒がトレーに食事を載せてキッチンから出てきた。

 

「みんな揃ったから、行こう。儚ちゃんのところに」

「そうね……ムクおじ亡きいま、儚を救えるのは私達だけ!」

「ムクおじを勝手に殺すな……いや、流石に死んだ? 死んだのか……?」

「えっ! ムクおじ死んだの!?」

「段ボールに入ってたらゴミだと間違えられて焼却炉に……」

「ええ……」

 

 莉緒の案内に従いながら進む結城荘の入居者達。

 儚が捕まっている牢があるのは厨房のあるこの階であった。

 

「どうしよう。しっかり見張りまでいるよ」

 

 曲がり角から様子を伺う優李。

 儚が捕まっているとされる部屋の前には戦闘員が二人、見張りとして立っていた。

 

「ちょうど二人だから、ほら戦闘員の格好した二人。行きなさい」

「ええ〜?」

「仕方ないな〜」

 

 特に打ち合わせもなしで行った二人だが、何をどうすればいいかは理解していた。

 

「お疲れ様で〜す!」

「見張り交代ですよ〜」

「交代? そんな時間か?」

「早くね?」

 

 怪しまれる二人。望はいつもと変わらぬ笑顔を崩さずいるが、優李の方は少々表情が固かった。

 そこへアシストと、莉緒が行く。

 

「食事を運んできました。皆さんの分も出来てますので食堂にどうぞ」

「えっ!? 美味そう!?」

「なんだよ本当にこの基地の飯なのか!?」

「料理長が変わって劇的に改善したんですよ〜」

「マジかよ! これまでずっと貧相な飯だったのにこんな高級料亭みたいな飯が!?」

「おい食堂に急ぐぞ! あ、鍵これね!」

 

 見張りをしていた二人は一目散に食堂目指して走り出した。

 兎にも角にも見張りを排除することには成功したのである。隠れて様子を窺っていた千佳とあゆも扉の前に立った。

 

「……ここのご飯、そんなに酷かったのかなぁ」

「作ってる人達が楽しそうじゃなかったからね」

「よし、儚を救出するわよ!」

 

 五人は顔を見合わせ頷き、鍵を開けて一斉に儚が閉じ込められているだろう部屋に突入する。

 

「あ、皆さんお疲れ様です……」

「意外と楽そうにしてるのなんなのよ」

 

 拘束台に寝かされた儚は想像よりもケロっとしていた。儚らしいといえば儚らしいとなんだか一気に気の抜けた五人。

 幸いなことに拘束具の鍵も一緒にまとめられていたため、容易く儚を解放することが出来た。

 

「大丈夫儚ちゃん?」

「お腹空いてない?」

「空いてます……」

「空いてても食事は後! えーと、ムクおじは……多分大丈夫でしょう!(テキトー) とりあえず脱出!」

 

 千佳が脱出を促すも、儚はその場で立ち尽くしたまま。

 元からどこか幽霊のような儚だが、余計に幽霊のようでジッと黙って見つめてくる儚に気付いた千佳はその異様な様子に息を呑んだ。

 

「は、儚……? 大丈夫……?」

「儚、本当にお腹が空きました……成長期は辛いです……。なので、いただきます……」

 

 ここで忘れているかもしれない読者諸兄のためにおさらいしよう。

 この時、本物の儚はハカリに連れ出されショーリョーマッの整備中である。こうして囚われているのは、儚が閉じ込められたままだと誤魔化すためにハカリが用意した……ワームである。

 

 つまり、千佳達の目の前にいるのはワームが擬態した儚。

 

 擬態が解け、本来のワームの姿が露わとなる。

 

「へ……」

「ワームだぁぁぁぁ!!!!!!」

「逃げろぉ!!!!!!!」

「なんでこうなるの〜!?」

 

 ワームから逃走する五人。上述したとおりの経緯を知らぬ五人はなんで儚がワーム、ワームが儚に? などと混乱するばかりである。

 

「なんでワーム!? なんでワーム!?」

「知らないわよ!!!」

「つーかなんでワームの儚が捕まってんだよ!」

「もうとにかく走るの〜! ていうか莉緒ちゃん、そのご飯置いたら〜!?」

「駄目、粗末に出来ない」

 

 食事を載せたトレーを抱え、溢さないように走る莉緒は明らかなハンデだが、姿勢良く皆と並んで走っている。食に対する想いが成せる技である。

 しかし、その食が莉緒に牙を剥く。

 

「見つけたぞ長谷部莉緒ォ!」

 

 前方に現れたコック。

 この男は、莉緒により料理長の座を追われた元料理長。

 

「貴様のせいで俺はぁ!!!! うおおおお!!!!!」

 

 元料理長の身体が異形と化す。

 怪人の魂と融合を果たし、魂融合怪人となったのだ。

 赤いカニのような身体とサイの角を生やした魂融合怪人は莉緒達を待ち受ける。

 前門の元料理長、後門のワーム。

 まさに絶体絶命。

 

「こ、こういう時は……横ぉーッ!」

 

 千佳の言葉に全員、左手の部屋へと飛び込んだ。

 薄暗い部屋は研究室のようで、様々な器具がテーブルの上に置かれていた。幸いなことに室内は無人で余計な追手が増えることにはならなかった。

 

「入ったはいいけど逃げ場なくない!?」

「テーブルを利用して上手いこと撒くのよ! 青鬼で学ばなかった!?」

「ゲームと現実を一緒にしないで!!!」

「来た!」

 

 扉をぶち破り、元料理長とワームが研究室へと押し入る。

 

「……元料理長は私だけが狙いだから、私だけ別で逃げれば……」

「莉緒はそんなこと言わない! もうとにかく逃げるなり抵抗するなりすんの!」

 

 千佳は手近なところにあったものを怪人達へと投げつけて僅かばかりの抵抗を行う。それに習って全員何か物を投げたり近くにあった箒を構えるなどしてみせた。しかし、怪人に対して物を投げた程度でどうにかなるほど現実は甘くない。

 

「このっ! 離れなさい変態!」

「そんなものを投げられたところで痛くも痒くもないわ!」

「……あれ、これって……」

 

 投げるのに夢中で気が付かなかったが、千佳が投げていたのはグレイダーが開発した怪人の魂を納めた小さな墓石状のアイテム、トゥームであった。

 

「どこを見ている!」

 

 ハッと気付いた時には元料理長とワームが千佳の目の前に迫っていた。

 咄嗟にトゥームを投げる千佳だったが、焦って投げたせいで見当違いの方向へと飛んでいってしまった。

 

「ぐふふ……一人ずつ調理してやる……」

「どうしよう! このままじゃわたし達、人肉ハンバーグにされちゃうよ!」

「縁起でもないこと言わないの!」

 

 万事休す。

 それでも千佳は状況を打開する方法を模索していた。

 元料理長の手が千佳へと伸ばされる。

 その時だった。

 

 煙草の香りがした。

 

「ふぅ……。よお、女に乱暴なんざするもんじゃねぇぜ」

「骸さ……! ん?」

 

 扉に背中を預けながら紫煙を吹かす骸。

 しかし、その頭はチリチリで、顔面も煤にまみれ、僧衣も所々が焼け焦げていた。

 

「……ラーメンの小池さん?」

「おいどこ見て言った。頭か? 頭見て言ったのか?」

「やっぱり焼けたんだ……」

「これは違うからな、あれだから。ちょっとパーマ失敗しただけだから。やっぱ慣れないことはするもんじゃないわー。男は黙って床屋行っときゃいいんだよやっぱり」

 

 焼却炉であわや焼死しかけたことを誤魔化し、骸は煙草を床に落として踏みつける。

 

「なんだテメェは!」

「つまらん科白を吐くねぇ。いやー、おじさん、今日は人生の中でもツイてない日かと思ったんだがよー。どうやら、そうでもないらしい」

 

 しゃがみ込んだ骸は地面に散らばるトゥームの中からひとつを手にし立ち上がる。

 千佳が投げていたトゥームが、思わぬ運命を導いたようであった。

 

「こんなとこにあったとはね。おじさん結構探したんだぞ」

 

 骸がトゥームを握り締めると、トゥームがひび割れ、砕け散る。すると、トゥームの中に納められていた紫の霊魂が浮かび上がり、骸は紺色のキセキレジスターを掲げる。霊魂をキセキレジスターへと納め、骸は懐から取り出した墓守ノベルトを腰に巻きつけた。

 

「お前、墓守!」

「そのとおり。久しぶりだなぁ、この感じは……」

 

 骸は手首をスナップさせキセキレジスターを開帳させ、怪人と仮面ライダーの名をそれぞれ書き記していく。

 

《ボディ コブラ》

 

 骸の肉体を紫の厳ついコートのような特殊強化服が覆う。

 

《アーマー 仮面ライダー王蛇》

 

「変身」

 

《コブラ×仮面ライダー王蛇》

 

《手向けた花 荒れ狂う毒蛇》

 

《最凶蛇拳》

 

《仮面ライダーブツダン ベノイレイサー》

 

 骸の周囲を虚像が舞い踊る。虚像達が骸に重なると、紫の鎧と仮面が実像となって顕現し仮面ライダーブツダンへと変身。

 紫紺の戦士は大きく、厳つい。

 見るからにパワーに優れた戦士であった。

 毒蛇の代名詞とも言えるコブラを模した仮面は凶悪な面構えをし、後頭部からは蛇のような触手が垂れ下がっている。

 

「あぁ……」

「俺の邪魔をするな!!!」

 

 元料理長がブツダンへと向けサイの如く突進。

 周囲のテーブルを弾き飛ばしながらの突進にもブツダンは怯まず、首を回す。そして、元料理長が接近した瞬間。ブツダンは元料理長の胸元に手を当てて、片手で強力な突進を受け止めてみせた。

 

「なっ!?」

 

 驚愕に喘ぐ元料理長を気にすることもなく、ブツダンは元料理長を受け止めた手を握り締めると、一撃。

 漆黒の気を纏った拳が、元料理長を吹き飛ばす。殴打の衝撃が空気を歪ませるほど。

 

「すごいパワー……」

「久しぶりの変身だが……身体はそう鈍っちゃいねぇな」

  

 手を開いて閉じてを繰り返しブツダンは呟く。

 そんな中、ワームが高熱を発しながら脱皮し成虫体へと成長。赤黒い蜘蛛のような姿となったワームはクロックアップを発動し、ブツダンへと迫る。

 だが、ブツダンは特に脅威に感じるでもなく待ち構えた。

 

「速かろうがね!」

 

 ブツダンにワームの攻撃がヒットしようという瞬間、仮面の後頭部から伸びる蛇の尻尾のような触手がワームの首を縛った。

 そして、ブツダンは怪力でワームを頭上へと持ち上げる。

 ワームの身体がくの字に曲がり、いよいよ耐え切れなくなったワームは爆散。

 

「さーて、そっちもお祓いと行こうか……あん?」

 

 ブツダンが元料理長へと必殺技を放とうとした時、室内に赤い薔薇の花弁が降り注いだ。

 次の瞬間、元料理長へと青い光弾が命中し爆発。怪人の魂が分離し、ブツダンの方ではなく、赤いキセキレジスターへと吸い込まれていく。

 

「グランさん……!」

 

 研究室のぶち破られた出入口から仮面ライダーインフェルニティ ダークネスローズが悠々と歩き、室内へと足を踏み入れた。

 

「ったく、人の久しぶりの変身ってシチュエーションでいいとこ持っていきやがって……」

「骸、こんな室内でお前の技を発動したら部屋が崩れる。千佳女史達を巻き込むつもりか」

「相変わらず優等生なこって……」

 

 どこかカリカリとしたような、イライラしたようにブツダンは吐き捨てると変身を解いておもむろに煙草を咥える。インフェルニティもまたグランの姿へと戻り、近寄りがたい雰囲気を放つ骸へと気安く声をかけた。

 

「そちらも相変わらず、戦闘が終わるとイライラだな」

「仕方ないだろ。変身後のデメリットってやつだ」

 

 二人の会話から、千佳達は「ああ、王蛇の……」とそれぞれで理解する。

 

「それで、儚は」

「それが、捕まっているのを助けたと思ったらワームが擬態していた儚で……。本物はどこにいるか……」

「また探さにゃならんか。とはいえ、派手にやっちまったからな。もうとっくに気付かれ……ってわりには、戦闘員の一人も来ねぇな?」

 

 骸の言うとおり、基地の中で戦闘が行われたというのにグレイダーの戦闘員や構成員は一人も姿を現さなかった。警報でもなるものかと思っていたが、至って通常営業のような空気が流れている。

 

「俺達以外にも誰かが動いている……?」

 

 グランが考えを口にすると、大きな爆発音が響き渡り基地全体が大きく揺れて千佳達は立っているのもやっとなほど。

 

「なに!?」

「……どうやら、思ったよりも事は進んでいるらしい。骸、千佳女史達を地上へと逃がせ。俺は儚を救出に向かう」

「分かった」

「グランさん……!」

 

 赤いローブを翻し、グランは駆け出そうとする。その背に、千佳が呼びかけた。

 グランは立ち止まり、黙って千佳を見つめる。千佳からすると黙って見つめられるとグランがどういう感情でいるのか推し量れないので困るが、それでも想いを伝えた。

 

「気をつけて……!」

「……ああ、ありがとう。……それと、この前は、すまなかった」

 

 謝罪の言葉を残し、グランは走り去る。

 

「さっさとずらかるぞ」

「儚ちゃん、大丈夫かな……」

「あいつがそう死ぬタマかよ。さっきのだってきっと儚が暴れてんだよ」

「……そうね。グランさんもいるし、大丈夫よ」

「それじゃあ骸さん、エスコートお願いしますね〜」

「へいへい。俺からすると、お前さんらもこんなとこで死ぬタマには見えんがね!」

 

 皮肉を言うも、その身体は彼女達を守るために動き出していた。

 骸もまた墓守であり、戦士。そして、仮面ライダーであった。

 

 

 

 

 仮面ライダーハカイブ マシンヤイバーがララ怪人態に向け放った必殺の毒刃を切り払い、右半分がトカゲ、左半分がハチのマスクのドクターハカリ怪人態が現れた。

 

「ドクターハカリ? なんのつもりだい」

「私が連れてきた技師が墓守に成り代わっていたなんて。かわいい後輩の仇を取ろうと思っただけですよ」

 

 ドクターハカリへと疑いの目を向けるララであるが、それを晴らさんとドクターハカリは刀の切先をハカイブへと向け、高速移動。一瞬でハカイブの眼前まで距離を詰め、強烈な突きを放つ。

 

「がはっ!」

 

 高速移動により威力を増した突きはハカイブの胸部を穿つ。火花をあげながらハカイブは吹き飛んで硬く冷たい床を転げた。

 地面に伏しながらハカイブ、儚の頭の中は混乱していた。

 

「なんで……お姉ちゃ……っ!」

 

 儚が口を開くと同時にドクターハカリが再び迫る。その口を開かせまいと。

 ハカイブも二度目の攻撃は受けまいとチェイサーヤイバーを振るって応戦。互いに高速移動の能力を発動し、戦闘員達が撃った銃弾がスローモーションで飛び交う工廠内を駆け巡りながら剣戟を演じる。

 一度距離を取った高速の戦士二人が互いに工廠の端から助走をつけ中央で衝突。鋼と鋼がぶつかり合い、それぞれの仮面が刃越しに睨み合う。

 

「儚……事を起こすのが早すぎよ」

 

 ハカリが小声で語りかける。

 

「こうなった以上は仕方がないわ。このままここを潰すわよ」

「お姉ちゃん……」

「いくわよ。私に合わせなさい」

 

 ハカリの言葉にハカイブは頷きで返し、鍔迫り合いを終わらせ後方へと飛び退く二人。銃弾は本来の速さを取り戻し、工廠の床や壁に命中し火花を散らす。

 一呼吸入れ、再び高速の領域へと飛び込む二人。火花散る中を駆け、剣を交える二人。

 二人は戦っているかのように見える。見えるだけ。それはさながら演舞であった。

 事前に準備していたわけではない。だが、二人の息は正に阿吽の呼吸。攻撃をいなし、躱し、弾く。何度も何度も応酬を繰り返す。

 ハカイブが放った毒の斬撃波をハカリが回避する。ハカリの横顔を通り抜ける斬撃波は上階の通路からハカイブを狙っていた戦闘員へと命中し、爆ぜる。

 二人の戦いの余波が、戦闘員達を刈り取る。

 

「チッ……研究者が戦場なんかに出るから!」

 

 被害が拡大していく状況を見過ごせず、ララは二人の戦いへと飛び込んでいった。

 高速移動を連続で発動し続けるハカイブとハカリ。それにも関わらずだ。

 

「でやぁ!!!」

 

 牙の生える口から炎を噴き出すララ。炎は床に向けて放たれ、工廠一面を焼き尽くすほど。すなわちそれはハカリをも巻き込む攻撃である。

 工廠の中では火炎によりあちこちで爆発が起こり、

 

「くっ……ララ隊長なにを!」

「はっ! まともに連携も取れないような奴は私の仲間にはいらないんだよ! それに、あんたはどうにも胡散臭いしね!」

 

 ララはもはやハカリ諸共ハカイブを倒す心づもりらしい。だが、ハカイブにとってそれ以上に重要な事がある。

 

「ショーリョーマッ!」

 

 焦熱地獄と化した工廠の中、ショーリョーマッもまた炎に包まれていた。

 自律走行出来るショーリョーマッではあるが、まだ万全とは言い難い状態。このままではまずいとハカイブはショーリョーマッのもとへ急ぐ。それをララが見逃すはずもない。

 バッタの如き跳躍力でハカイブを上空から強襲。鋭い爪の生えた手で切り裂こうと迫る。ハカイブはチェイサーヤイバーでララの攻撃を受け止めるも、マシンヤイバーはパワーに劣り、膝をついてしまう。

 

「ぐっ……」

「ふっ……ドクターハカリ! 裏切り者じゃないっていうなら、今ここでこいつにトドメを刺しな!」

「っ……」

 

 ララの攻撃を防御するのに必死なハカイブは身動きが取れない。まさに、ハカイブを倒す好機に他ならない。

 裏切り者でなければ。

 ララはハカリを試していた。本当に裏切り者でないのかを。

 

「……」

 

 ハカリは無言のまま刀を鉄板の床に突き刺し、右腕にチェーンソーを生成。回転する鎖の刃が唸り、ハカイブを断ち切ろうと駆け出す。

 そんな、嘘だ。儚は姉が自分を殺そうとしてきたことに絶望を覚えた。

 

「っ……おね……!」

「はあっ!!!」

 

 ハカリのチェーンソーが振り上げられた瞬間、銃声。ハカリの胸部に数発の黄色い光弾が命中し、火花を上げてハカリは倒れた。

 

「なにっ!?」

「あれ、は……」

 

 デッキから舞い降りる戦士。

 仮面ライダーグレモリー。

 バツ字を刻んだ仮面がハカリとララを見据えると、光弾を放った銃から黄色の光刃を発し、逆手で構えた十字の剣でララへと攻撃を仕掛けるのであった。

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