仮面ライダーハカイブ   作:大ちゃんネオ

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GOD OF DEATH LOVE

 前回のあらすじ。

 謎の少女、儚・インフェルニティ・ブツダンブッカ・ソナエモン・ハカイブと出会った私、新田千佳。

 同僚の原先生が怪人になって驚いていたら儚さんが仮面ライダーになって原先生をぶっ倒したのだった!

 

 

 

 

「警察来たわね……」

「ケーサツ……。お父さんから聞きました、悪さするとやってくる奴等……」

「そうよ。あなたも変なことすると警察のお世話になるからね。気を付けなさい」 

 

 木陰からサイゾウ男を倒した爆発炎上の跡に集まる警官達を眺める二人。

 なぜこのようなことをしているかというと、サイゾウ男撃破後にパトカーが来ていることに気付いた千佳が儚を連れて咄嗟に隠れたのであった。

 

「あの、なんで隠れたんですか……?」

「み、身の安全のためよ……」

「身の安全……。ま、まさか悪いことを……!?」

「ちょっと違うから! とにかく、行きましょ……」

 

 そうして、こっそり公園から出ようとした時であった。

 

「千佳さぁぁぁん!!!!!」

「……」

「千佳さぁぁぁん!!!!!」

「……」

「あの、えっと、呼ばれてませんか……?」

「あなたも無視して」

「千佳さぁぁぁん!!!!! 酷いじゃないですかぁ無視なんて!」

 

 駆け寄ってきたのは、交番勤務のお巡りさん。

 よく鍛え上げられた体と短く刈り上げられた髪は頼りがいありそうな雰囲気を出している。男性ホルモンがムンムンと感じられる男らしい男だ。

 

「……」

「あの……」

「ん? 君は誰だい? 見ない顔だね」

「ひぃん!」

 

 儚の顔を覗き込むお巡りさんに、千佳がキレた。

 

「ちょっと、やめてもらえませんか」

「こ、これは失敬! 女性の顔をじろじろ見るなど失礼でした! それより千佳さん大丈夫でしたか! なんでも怪人が暴れてるだの戦ってるだので、俄には信じられないのですが……」

 

 怪人騒動は、この世界ではテレビの中の絵空事。警察からしたらイタズラの通報として処分しても良かったのだが、念のためと出動したのだった。

 その結果、爆発の跡という物が見つかり事態は大事になりつつある。

 

「とにかく私達はこれで失礼します!」

「えっ! お、お送りしますよ!」

「大丈夫です! あともう付きまとわないでくださいね! 次やったら警察にクレーム入れてやりますから!」

  

 行くよ!と儚の手を取り、千佳は足早に去っていく。

 何が何やらと儚は理解出来ぬままに、千佳に引っ張られていくのだった。

 

 

 

 

 

 

 そのお屋敷を見上げた時、間の抜けた声が出た。

 

「わぁ……」

「ここが私の……というか、私達の家、結城荘よ」

 

 バラのアーチが門になって、大きな二階建ての白いお屋敷。庭には花がたくさん咲いていて、とっても綺麗。

 

「とりあえず、ここで待っててもらえる? 私、仕事あるから終わったら色々お話しましょう」

「は、はい……」

「ここ、シェアハウスって言って私以外にも暮らしてる子いるけど、優しい子達ばっかりだから怯えなくていいからね」

 

 うぅ……。

 そうは言っても、怖い人良い人の問題ではなくとにかく人が怖いのだ。

 緊張する……。

 

「ただいま~」

「お、お邪魔します……」

 

 お家の中は、ほんのりと甘い香りがした。

 いい匂い……。

 

「あれー千佳さんどうしたのこんな時間に~」

 

 背筋がビクッと反応する。

 し、知らない人の声……。

 あ……可愛い人。目はぱっちりとして大きくて、よく笑うんだろうなと、慣れた笑顔をこちらに向けている。

 よく手入れされた綺麗な髪を右のサイドテールにしている。

 

「優李、ちょっと色々あってね。またすぐ出るけど。帰ってくるまで、この子の面倒見てて」

「OK!」

 

 二つ返事!?

 こんなわけの分からない(自覚あり)奴を預かるのを二つ返事で了承した!?

 う……こ、この人から強い陽の気を感じる……!

 

「君、名前は~?」

「ひぃっ……!」

「怯えちゃった。……えーい!」

 

 ばさぁっと、視界が一気に明るくなって、自分が何をされたのか理解した。

 

「ひぃん!」

「っ~~~! 美少女っ! きゃわ~!」  

「ひぃぃ!」

 

 だ、抱きつかれた……!?

 なんだこの人……。

 

「ねぇねぇ名前は名前は!」

「あぅ……。儚・インフェルニティ・ブツダンブッカ・ソナエモン・ハカイブです……」

「名前ながwww」

 

 わ、笑われた……。

 自慢の名前なのに……。

 

「私、瀬尾優李! 22才で声優やってるよ~。……まだモブばっかだけど。よろしく儚ちゃん!」

「よ、よろしくお願いします……」

 

 いきなりちゃん付け……。

 やっぱり、陽の者、すごい……!

 

「早速仲良くなったようで何よりだわ。それじゃあ私は学校に戻るから」

「いってらっしゃーい!」

「い、いってらっしゃい……」

 

 チカさんはまた学校へ。お仕事の途中で抜け出してきてくれたから……。

 チカさんは恩人だ。恩返し、しないと……。

 

「さあさあ上がって上がって。あと二人いるからさ~」

 

 あ、あと二人も人が……どうしよう、緊張……する……。

 けれど、ユウリさんはお構い無しに私の手を引いてお家の中へ……。

 

「望さーん! めっちゃかわいいお客さーん!」

「あの……」

「ここリビングね! みんながよく集まるところ」

 

 広い部屋には白い大きなソファーが並んでいる。

 確かに団欒用の部屋のようだ。

 

「優李ちゃーん? お客さんってなに~」

「あっ、ほら儚ちゃん。望さん来た!」

 

 ひっ……。

 ま、また人……。

 

「は、儚ちゃん……? なにしてるの……?」

「か、隠れてます……」

 

 ソファーに頭を挟んで頑張って隠れよう……。

 もう今日出会える人のキャパシティを越えてしまいます……。

 

「優李ちゃ~ん?」

「儚ちゃん出てきて! 怖くないからめっちゃ優しい人だから!」

「ふー! ふー!」

「あら~タイムマシンでも探してるの~?」

「望さん! 違うから!」

「その子~? お客さんって~? 変わった子ね~」

 

 変わっ……!?

 

「あっ、出てきた」

「か、変わった子じゃないです普通の子です奇行とかしないです」

「いやしてたから!」

「面白い子ね~。私、斉藤望。よろしくね」 

 

 ………ッ!

 この人……おっぱい大きい……!

 チカさんもユウリさんも絶壁みたいな胸してたけど、ノゾミさんはすごい……ボイン……!

 

「おーい儚ちゃーん。なんか失礼なこと考えてない~?」

「ひぃん……!」

「優李ちゃん駄目よ脅かしちゃ~。怖かったね~ヨシヨシ」

「あう……」

 

 柔らか……げふんげふん。

 ノゾミさんに抱き締められて頭撫でられるの気持ちいい……。

 

「なんだろう、懐き方に差があるよね。胸囲の格差社会ってやつ?」

「ハカナちゃんいい子~」 

「ば、ばぶぅ」

「赤ちゃんになっちゃった!?」

 

 懐かしい……この安心感……。

 ずっと浸っていたい……。

 何も考えなくていい……全てから解放され、守られているこの幸福……。

 ああ……幸せ……。

 

「それより! 今日あと一人いるでしょ! ほら儚ちゃんこっち!」

「い、嫌です……。おっぱ……ノゾミさんから離れたくありません……」

「おっぱいから離れたくないって言おうとしたよね???」

「私はいいよ~」

「女神……!」

「この巨乳好きが……!」

「じゃあ一緒に行こっか~」

「はい……!」

 

 ノゾミさんに連れられて、もう一人の方のところへ。

 道中、ずっと貧にゅ……ユウリさんの視線を感じたが大きな問題はなかった。

 

「ここがキッチンで~す」

「キッチン……台所……」

「そう! そしてここにおわすはキッチンの番人!」

「ば、番人……!?」

「そう、番人よ~」

 

 広いキッチンで一人、トントントントンと小気味よいリズムを奏でる短い黒髪の女性がいた。

 精密機械の如く、等間隔で刻まれていくネギ。

 ただ切られただけなのに、美味しそう……。

 

「莉緒さーん!」

「……」

「……き、気付きませんね」

「一回集中するとすごいからね~。莉緒さん、高級料亭で働いてて、休みの日もずっとキッチンにいるんだよ」

「料理への情熱がすごいのよね~。ちょっと、集中力が凄すぎるのが問題なんだけど……」

 

 確かに、すごい集中力だ。

 猫背な私が、自然と背筋を伸ばすぐらいには。

 

「あ、包丁置いた。莉緒さーん!!!」

 

 ユウリさんが大声で呼ぶと、その人は背中に電流でも走ったかのようにビクッと身体を震わせた。

 

「ビッ……クリした。なに?」

「千佳さんのお客さんの儚ちゃん! 今日一日預かってるから挨拶!」

「は、儚・インフェルニティ・ブツダンブッカ・ソナエモン・ハカイブです……」

「そうなんだ。ふふ、名前、長いね」 

 

 にこやかに微笑むこの人は、美人だ。

 切れ長な目に長い睫毛、そして巨乳。

 

「……はっ!」

 

 もしやここ、巨乳と貧乳でバランスを取っている……?

 

 巨乳 ノゾミさん リオさん

 貧乳 チカさん ユウリさん

 

 ちょうど二人ずつでバランスを……。

 

「おーい儚ちゃん? 何を考えているのかな~?」

「視線で丸わかり~」

「長谷部莉緒。よろしく」

「よ、よろしくお願いします……」

 

 莉緒さんは名乗ると、また調理に戻っていった。

 本当に料理好きなんだな……。

 そう感心すると、腹の虫が鳴いた。

 そういえば、まだ今日は何にも食べてな……。

 

「お腹空いてるんだね。なに食べたい?」 

「えっ……」

 

 さ、さっきはユウリさんの声も聞こえてなかったのに……。

 お、お腹の音の時はこんな耳がよくなるなんて……。

 

「莉緒さんはお腹の音には敏感だからね!」

「何が好き? 何が食べられない? アレルギーはある?」

「あ、あ、あう……」

 

 あ、圧すごい……。

 そんなにいっぱい聞かれると……。

 

「莉緒ちゃん、おまかせだって~」

「分かった」

 

 あれ、なんか、勝手に決まった。

 え、あの、注文……あれ、もう集中しちゃってる……。

 

「大丈夫よ~。莉緒ちゃんのご飯、なんでも美味しいから~」

「出来るまでこっちで待ってよ~!」

「あ、は、はい……」

 

 ユウリさんに連れられて、またリビングへ。

 うう……バラエティー豊かな人いっぱい……。

 朝から疲れる……。お布団、恋しい……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「千佳さーん! 大丈夫ですかー!?」

「何も問題なんてないから大丈夫も何もありません~!」

 

 くっそ、このストーカーお巡りめ……!

 どこまでも着いてきてもう……!

 あー早く学校に着かないかなぁ。

 

「千佳さん! 千佳さんの好きな男のタイプはどんな奴ですか? やっぱり、俺みたいに男性ホルモンむんむんなワイルドな男ですよね」

 

 ……はぁ。

 男らしいのは好きだけど、ストーカーしてくる奴が男らしいだろうか。

 

「好きな男のタイプ、ねぇ」

「ええ!」

「足の速い男」

「そうそう足の速い男……へっ?」

「私より足の遅い男とか、論外なので。それじゃあ!」

 

 これでもずっと陸上一筋だったのだ。

 通勤時はスニーカーなので走っても問題なし。あと今日はスカートじゃなくてパンツスタイルだしね。

 

「え! ちょっと千佳さんフライング!?」

「ははっ! 見たかストーカー男!」

 

 などと、調子に乗って笑い飛ばした。

 朝から色々あって疲れていたのだ仕方ないということにしておくが、これが後々面倒なことに繋がるのをまだ私は知らなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「え、あのストーカー男と会ったの」

「は、はい……」

「なんだっけ、津木(つき)(まとい)さんだったかしら?」

 

 今朝のことをそれとなく話すと、ユウリさんが心底嫌そうな顔をした。

 まあ、あまり女性受けはよくないだろう。

 しつこく、つきまとう男というのは。いや、男でなくともしつこいのは駄目だと思う。

 

「ほんと、千佳さんも災難だよね~。美人で損してるっていうかさ~」

「いい人見つければいいんだけどね~千佳」

「いやぁ、千佳さん中身オスだから無理っしょ!」

 

 

 

 

 

「ぶぇっくしょん! あー、ちくしょう」

「にちせん、くしゃみおっさん過ぎ~」

「あんたらもいずれこうなるわよ。はい、じゃあそういうわけで佐々木さん。この文、訳して」

 

 

 

 

 

 

「なんだっけ? 靴紐ほどけてたの直してあげたんだっけ?」

「見知らぬ男の人のね~。すごいわ~」

 

 それで惚れられちゃった……と。でも、チカさんらしいとも思う。

 まだ付き合いは短いけれど、チカさんの面倒見の良さに助けられたから、その優しさがあの人らしさなんだと思う。

 

「お待たせ、ご飯作ってきた」

 

 り、リオさんが私の前のテーブルに置いたのは……えっと、これはたしか……。

 

「お箸使えるか分からなかったから、おにぎりにした。あと、卵焼きとソーセージと……これ、浅漬け。食べてみて」

 

 アサヅケ……?

 野菜みたいだけど、どこか透き通ってる。

 フォークを渡されて……ええっと、どれにしようかな……。

 お、お腹、空いてるからこのオニギリ?にしようかな……。大きいから、食べ応えありそう……。

 

「そうそう手掴みでいいんだよ」

「食べる時は、いただきますって言うのよ~」

「イ、イタダキマス……」

 

 ぱくっと、一口……。

 

「ヴィッッッッッ!?!?!?!?」

 

 ばたん、きゅー。

 

「ええええええ!?!?!?!?」

「ハカナちゃーん?」

「どうしたんだろ……。口に合わなかったのかな……」

「いや今気にするところそこじゃないから! いやでも……。なんか、幸せそうな顔で倒れてる……」

「美味しい……ヤミー……ヴェヘヘ……」

「よかった……。ほら、もっと食べて」

「莉緒さん気を失った人におにぎり押し付けない!!!」

 

 遠くが騒がしい……。

 けど、なんだか楽しそう……。

 あ……故郷が……戦士の墓場が見える……。

 お芋ばっかりだった戦士の墓場……。外の世界には、美味しいものが、ありました……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 宝蔵町交番。

 津木纏の勤める交番である。

 そこで、津木は上司と二人でいたが……津木の様子はおかしかった。

 足の速い男……。

 足の速い男……。

 

「おーい津木、さっきからなにぼんやりしてるんだ」

「足の速い男……」

「えぇ?」

「足の速い男……」

「足の速い男? どうしたんだ津木。足が速くなりたいのか?」

 

 上司は津木に朗らかに話しかけるも、津木の耳には届いていなかった。

 目は虚ろで、気もそぞろ。

 うわ言のように足の速い男と呟き、その心には……隙が生まれていた。

 心の隙、それは幽魂につけ入る隙。

 津木に向かい、物陰から風に乗って二つの青い火の玉のようなものが飛んでいく。

 そうして心の隙に、入り込んでいく……。

 

「ぬおっ!?」

「津木!? どうした津木!?」

「うおおおお!!!!!!」

 

 津木の肉体が変容していく。

 チーターのような体表、肩から上にはカタツムリのような意匠が、そして手足に纏う鈴虫の羽が袖のように揺れていた。

 

「足、速いぞぉ!!!!! うぉぉぉ!!!!」

「津木ぃ!」

 

 あっという間に姿が見えなくなった津木が変貌した怪人。

 向かう先は……恋する人のもとである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 めっっっちゃ疲れた…………。

 朝から色んなこと起こりすぎっての。ストーカー男にもつきまとわれるし、ああもう定時で帰ってやる!

 そう決意した私は無敵。

 あれやこれやとパパッと終わらせ、帰り支度を整え誰かに声をかけられる前に学校から脱出!

 

「よぅし、脱出成功! さっさと帰ってあの子から話聞かないと」 

「千佳さぁぁぁぁん!!!!!」

 

 最悪な声……と振り返り、血の気がさっと引いた。

 今朝に引き続き、二体目の異形と出会ってしまった。

 超高速で私のもとへ辿り着いたそれは、私の顎に手を添えた。

 

「やぁ千佳さん! 君の求める足の速い男になったよ!」

「ちょっ……! やめて!」

 

 カタツムリの部分がぬちょっとして気持ち悪い。

 もうただでさえ気持ち悪い男がもっと気持ち悪くなってどうすんの!

 

「離して!」

「痛いっ!?」

 

 足を踏みつけたのが効いたらしく、痛がっている隙に走って逃げる。

 鞄からスマホを取り出して優李に連絡。

 

「もしもし優李!? 儚さんは!?」

「もしもーし。儚ちゃんなら今ねぇ、莉緒さんの料理食べて気絶してから望さんが介抱してねぇ……」

「ハカナちゃん可愛いわねぇ」

「ばぶぅ」

「赤ちゃんになってる」

「赤ちゃんになってる!?」

 

 すっかり打ち解けて何より!

 じゃなくて!

 

「儚さん起こして! 怪人に追われてるの!」

「え? 怪人? 私が言えたことじゃないけど仮面ライダー見すぎじゃない?」

「いいから! 宝蔵高校近くの工場に逃げ込んでるから頼むわよ!」

 

 通話を切って、隠れる場所を探す。

 走りながら考えたけど、足であいつに勝つのは無理。なら、隠れた方が安全。

 ここは入り組んでるし、逃げ道もそれなりにある。

 頑張って、ここでやり過ごそう。

 

 

 

 

 なんだったんだろう、今の電話。

 さながら啓太郎が巧にオルフェノクが出たって伝える時みたい。まああの人、555好きだからなぁ。 

 とりあえず、言われた通りにはしますか。

 

「儚ちゃーん?」

「ばぶぅ」

「なんかー、千佳さんが怪人出たとかなんとかで~」

「ばぶ……えっ」

 

 怪人が出たと聞いた儚ちゃんの目の色が変わった。

 さっきまで赤ちゃんだったのに!

 

「ちょっと儚ちゃん!?」

 

 ドタドタと駆けて外に出た儚ちゃんを追いかける。

 儚ちゃんは小さな本のようなものを取り出して細い筆で何かを書き込み、声を張った。

 

「ショーリョーマッ!」

 

 ボンっと煙を立てて現れたそれは緑色の流線型のボディーのバイクだった。

 フルフェイスのヘルメットを被った儚ちゃんはバイクに乗り込み、アクセルを吹かして走り出して────。

 

「待って儚ちゃん! 場所! 場所分かるの~!?」

 

 走り去る背中に叫ぶと、儚ちゃんはUターンして戻ってきた。

 

「あ、あの……場所、教えてください……」

 

 ……はぁ。

 現実はやはり啓太郎と巧のようにはいかない。

 

「道案内してあげる!」

 

 儚ちゃんからヘルメットを受け取り、儚ちゃんの後ろに乗った。

 バイクの後ろなんて、なんかヒロインっぽい!

 

「儚ちゃんぎゅー!」

「……固」

「あぁ?」

「ひぃん!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あはは! なんだか恋人らしいなぁ!」 

「ざっけんな!」

 

 隠れていたけれど、すぐに見つかってしまい結局追いかけられることに。

 ハイテンションで楽しむ奴のおかげで捕まりこそしていないが、いつまでも続く方が私にとっては辛いだろう。

 

「早く儚さん来てぇ!」

「誰ですかそれは! 俺と千佳さん以外、この世界にはいらない!」

 

 怪人の姿が消えたと思うと、一瞬で私の目の前に現れていた。

 

「んなっ!?」

「さあ、愛しあう二人はキスをするもの……」

 

 近付く異形の顔。

 キスったってどこが唇か分かりゃしない。 

 いや、する気は毛頭ないけど!

 

「チカさーん!」

「なんだ!? うおっ!?」

 

 突然現れたバイクが、怪人を吹き飛ばした。

 そのライダーが儚さんであることは、一瞬で分かった。

 ヘルメットを取って、バイクから降りた儚さん。

 その後ろに……優李!?

 

「うそ!? マジの怪人!?」

「優李! ついてきたの!?」

「ほら、儚ちゃん道案内しなきゃで」

「とりあえず、今は離れるわよ! 邪魔になるから!」

 

 邪魔って何のことと訊ねる優李の背を押して建物の影へ。

 儚さんは……既に変身の用意をしていた。

 

《ボディ 蜘蛛男》

 

「え、なにあれ儚ちゃん胸でか」

「分かるけど、今はやめなさい」

 

《アーマー アナザーアギト》

 

 合掌し、折本を閉じた儚さんは瞳を閉じる。

 

「変身」

 

《蜘蛛男×アナザーアギト》

 

《始まりの死 魂の遺志 怪奇強襲!》

 

《仮面ライダーハカイブ アサルトゴシック》

 

 今朝も見た、アナザーアギトと蜘蛛男が合わさった姿。

 暗緑の格闘戦士だ。

 

「なんだお前!」

「仮面ライダー、ハカイブ……。かかってきなさい、えー……チーターカタツムリスズムシ男」

 

 いや相変わらずな怪人の名前。

 ネーミングセンス、磨いた方がいい。

 そうこう思っている間に、戦いが始まる。チーターカタツムリスズムシ男……長いからストーカー男でいいや。

 ストーカー男がハカイブへと殴りかかるが、ハカイブは冷静に攻撃を見切って危なげなく紙一重で回避する。

 そして、一撃。拳を叩き込む。

 

「ぐおっ!?」

「すぅぅぅ……」

 

 漲る力を見せつけるように、ハカイブは拳を構える。

 いいぞ!

 そのままストーカー男をぶっ○せ!

 

「俺と千佳さんの邪魔をするやつは……許さん!」

 

 次の瞬間、ハカイブが火花を上げて宙に舞っていた。

 

「儚ちゃん!」

「なにあれ……。まさか、クロックアップ!?」

「見ました千佳さん! 俺、足早くなったでしょう!」

「ふざけんな! ファイズアクセルとかなら足早くなったって言うけどクロックアップはなんかもう別物でしょう!」

 

 けどやばい!

 クロックアップにはクロックアップか高速で動ける能力で対応しないと基本的にはまずい。

 ハカイブに……それがあるか?

 

「無問題です……」

 

 立ち上がったハカイブが、バックルから折本を取り、筆を手にしていた。

 

《ボディ 魔進チェイサー》

 

 ハカイブアサルトゴシックの変身が解け、儚さんは紫と銀色のインナースーツを身に纏っていた。

 機械的な意匠が見られ、よく見ると細かいパーツ達が並んでいるようだ。

 

《アーマー 仮面ライダーサソード》

 

 折本が閉じられ、合掌。

 今、新たなる姿へとハカイブは変身する────。

 

「変身」

 

《魔進チェイサー×仮面ライダーサソード》

 

《鋼の番人 刃の貴公子 死神毒剣》

 

《仮面ライダーハカイブ マシンヤイバー》

 

 形成されていく装甲は蠍に似て、車のパーツが混ぜ込まれたように見えた。全身には車のマフラーのようなパイプとオレンジのチューブが走る。

 紫と銀の戦士の手には、青いクリアーな刃の刀が握られ、蠍の鋏を模した緑の複眼は右目を黒い装甲が覆っていて、頭頂部に生えた蠍の尻尾はまるでちょんまげのよう。

 眼帯をした剣豪といったイメージだ。  

 額のクリスタルは、アサルトゴシックと共通のようでもある。

 

「……死神に代わって、剣を振るいます……」

「姿が変わったところで!」

 

 再び、ストーカー男の姿が消える。

 またクロックアップをしたようだ。しかし、今のハカイブなら……!

 

「クロックアップ……」

 

 ハカイブもまた姿が消える。

 視認出来ない速さの時の中に、二人はいるのだ。  

 そして、二人の姿が再び現れる。

 

「な、なぜぇ……」

「速いだけでは、勝てませんよ……」

 

 ハカイブがストーカー男を、圧倒していた。  

 やっぱりこの子、強い。

 激昂したストーカー男が襲いかかってくるのに合わせ、一太刀。蒼い斬撃が迸ると同時に、紫色の粘液が飛び散る。

 鋒から滴るそれは、毒。

 斬られた箇所から染み込むそれは、ストーカー男の身体を蝕んでいるようだ。

 動きが、悪くなってきている。

 大振りな攻撃は回避に容易く、反撃の斬が次々と叩き込まれていく。

 

「……これも、使いましょうか……」

 

《ウェポン 歌舞鬼番傘》

 

 ハカイブの左手に握られる、緑と赤の番傘。

 ストーカー男の目の前で開かれたそれは、ストーカー男の視界を緑と赤に染め、ハカイブの姿を隠した。

 

「ぬっ!?」

「さあ、どこから突いてあげましょうか……」

 

 ハカイブの肘の先から伸びるマフラーに紫の炎が灯る。

 そして繰り出される、超高速の刺突の連続。

 ストーカー男からはどこを狙われてるかも分からぬ攻撃は、防御のしようがない。

 最後の一突きで吹き飛ぶストーカー男。そこへ、番傘を回して起こした桜吹雪でストーカー男は空高く。

 その隙に、ハカイブはバックルの折本を閉じて、開くという動作を行う。

 必殺の合図だ。

 

《死神毒剣! 死神毒剣! マシンヤイバーブレイク!》

 

 腰に溜める刀から、滴る毒液。

 全身のマフラーから青い炎が噴き出して、力が解放されていく。

 ハカイブの眼前に落下してくるストーカー男。そこで、ハカイブはクロックアップを発動させる。

 

「クロックアップ……」

 

 落下速度はほぼ零へ。

 ハカイブの目の前でほぼ停止したストーカー男は、まな板の鯉。

 次々と繰り出される神速の斬撃が、ストーカー男を切り裂いていき……。

 

《クロックオーバー》

 

 爆発と共にクロックアップが終わり、緑色の炎がハカイブを照らした。

 刀の毒を払うとハカイブの変身は解け、儚さんの姿へと戻る。

 そして、ストーカー男が儚さんの足下に転がっていた。

 

「儚ちゃん!」

「あ、優李さん……」

「おいこらストーカー男! これに懲りたら二度とつき纏うなよ!」

「あ、は、はい……!」

 

 よっしゃストーカー撃退!

 逃げるなっさけない後ろ姿を見ていると、高らかに笑いたくなる。  

 

「え、ガチの仮面ライダーなの……?」

「ま、まあ……」

「ウッソまじで!?」

「あなたも見てたでしょうに……。とにかく、ありがとね。今朝に引き続き、一日で二回も助けられちゃった」

「いえ……まあ……えへん」

 

 あ、調子乗ってる。

 分かりやすいのよね~、この子。

 

「とりあえず帰りましょ! 莉緒さんの晩ごはんが待ってるから!」

「リオさんのご飯……!」

「そういえば、儚さんご飯食べて気絶したって本当?」

 

 なんでも、美味しすぎて倒れたらしい。

 儚さんがいたところでは、お芋ばかりだったので感動したと。

 頑張って莉緒の料理が美味しかったことを伝えてくれた。

 舌足らずで、幼げに。

 ただ、思ったよりもあそこに適応してくれてよかった。

 今日一日、がたがた震えることになるかもと思っていたから、安心出来たようで良かった……。

 

 

 

 

 

 結城荘に到着。

 すっかり日も落ちた。

 今日一晩でも、ここに泊まれたらいいな……。

 

「おい、誰だよそれ」

「ひっ、ひぃん……」

 

 黒髪に金が混ざった、服装黒ずくめの女の人が、に、睨み付けてきて……。

 

「晩ごはんごちそうさまでした!」

「儚さん! まだ食べてないでしょ! ちょっと待って!」

 

 あの人、怖い……!

 ここ、怖いとこだった……!




仮面ライダーハカイブ マシンヤイバー

仮面ライダーサソードと魔進チェイサーの力で変身した姿。
クロックアップはもちろんのこと、高速移動も可能なスピード特化フォーム。
専用武器チェイサーヤイバーは青い特殊素材の刃で、毒液を纏うことで斬撃の威力を高めると共に、相手を毒に侵す。
必殺技は超高速で斬撃を叩き込むチェイサースコーピオンスラッシュ。

ハカイブ専用マシン ショーリョーマッ
全身緑色の流線型のボディのオフロードバイク。
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