仮面ライダーハカイブ   作:大ちゃんネオ

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私の名は大家さんだ!

 早朝というか深夜というか微妙な時間。とにかくまだ起床には早い時間。二度寝しようと思ったけれど……。

 

「トイレ……」

 

 うーんどうにも寝つきが悪い。

 ストーカー男とか原先生のことで色々ありすぎたせいだろう。

 ひとまず用を足して、トイレから出て……。

 

「ヴェ……」

 

 トイレから出た瞬間、大きな瞳をギラギラとさせた真っ黒な人影と目があった。

 え、心霊現象?

 …………。

 

「うぎゃああああああ!!!!!!!」

 

 私が叫んだ瞬間、結城荘の居室の灯りがついた。

 

 

 

「ちょっともうビックリしたじゃない!」

「は、はい……」

 

 黒い亡霊の正体は、私と同じくトイレに来た儚さんであった。

 目がギラギラとしていたのは、コーヒーを飲んで眠れずにいたためあんな目になっていたとのこと。

 

「私達からしたら、夜中に大声出した千佳の方が迷惑だけど~」

「う……」

「は、儚もビックリしました……」

「誰のせいよ!」

「ひぃん……」

「ふぁ~。とりあえず寝よ~」

 

 まったくもうこんな夜中に……。

 なんだか眠気も覚めた気がする。眠れるかなぁ……。

 

 

 

「ヤバいヤバい遅刻遅刻!」

 

 アラームに気付かなかったなんて私のバカ!

 もう夜中のあれのせいだわ。一人暮らしだったら確実に寝過ごしてた。起こしてくれた望に感謝だ。

 とにかく急いで学校に……の前に!

  

「望! 儚さんお願いね! 夕方頃にあいつ来るから!」

「は~い。それより遅刻するわよ~」

「分かってる! 行ってきます!」

 

 ドタバタと朝を過ごしたくないのに!

 髪を結いながらダッシュ!

 

 

 

 

 

 リオさんが作った朝食を食べてからリビングへ。

 そこで、ノゾミさんから今日のことを伝えられた。

 

「というわけで、夕方にここの大家さんがやって来ま~す」

「オーヤ=サン……」

「ブラックサンみたいな発音~」

 

 とりあえず今日はここに夕方まではいていいらしい。 

 それ以降はまだ分からないとのこと。

 とりあえずは夕方までここで過ごすしか……。

 

「あ、あの……」

「な~に?」

「お、お水場借りてもいいですか……?」

「何かするの~?」

「え、えと、その……ショーリョーマッを水浴びさせてあげたくて……」

「しょーりょーま~?」

「は、はい……朝の日課で……」

 

 昨日はあちらを発つ前に水浴びしてから来た。

 今日もやらないと、ショーリョーマッ不機嫌になる……。

 ショーリョーマッは水浴び大好きだから……。

 

「庭の水道の方がいい~?」

「は、はい……。ひ、広い方が、良いです……」

「それじゃあ庭へゴ~」

 

 ノゾミさんの後ろについて歩き、庭へ。

 畑?か何かの跡があるが、使われていない。

 

「しばらく使ってなかったけど……」

 

 銀の小さな柱のようなものから伸びる、青い管を手にしてノゾミさんは柱についてる何かを回すと……水が出てきた。

 すごい……!

 これ、井戸……だったのか……。

 それに、お水綺麗……。

 

「……水道は初めて?」

「スイドウ……?」

「うん~。ここを回せば、水を出したり止めたり出来るから~」

「はい……! ありがとうございます……! ショーリョーマッ!」

 

 キセキレジスターから呼び出し、水道の前にショーリョーマッを停める。

 スイドウ……これなら水浴びも楽チン……!

 ここを回して……出た、水……!

 

「ショーリョーマッ、今日はすごいキレイな水で水浴びだよ……!」

「……」

 

 ショーリョーマッが瞳を光らせ、首を振る。

 すごい、やっぱり嬉しいよね……。

 私も冷たくて、気持ちいいよ……。

 

「ふふっ……え~い」

「ひぃん……!」

 

 ろ、ローブ取られた……!

 

「ロ、ローブ……返して、ください……」

「え~せっかく可愛い笑顔してたのに~。隠しちゃ損よ~」 

「あう……」

「ほら、バイクさんも顔見れて嬉しそうよ?」 

 

 ショーリョーマッ……?

 見ると、瞳を何度も明滅させていた。

 うぅ……ローブないの、落ち着かない……。

 でも、ショーリョーマッが喜んでくれるなら……。

 と、とりあえずこのまま頑張ってみる……。

 

「……」

「……」

「……にへへ」

「……」

「ふんふん~……」

「……儚ちゃんって、本当に仮面ライダーなのね~」

 

 ふえっ……?

 

「は、はい……仮面ライダーです……」

「うん~。昨日、変身するとこも戦ってるところも見たけど~。なんだかこうして、バイクの洗車してる時が一番仮面ライダーっぽい気がする~」

 

 ……どういう感性なんだ、この人。 

 

「望さん、儚ちゃんおはよー!」

 

 ぐわっ!?

 ユ、ユウリさん眩し……。

 陽の気すご……死ぬ……。

 

「あ、儚ちゃんが灰になってる~。オルフェノクみた~い」

「そんなこと言ってる場合じゃないよ!? かき集めないと!」

「ヴェェェェ……」 

 

 儚の灰、仮面ライダース○アで売れるかな……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 大都会東京を一望するとあるビルの屋上に、白衣が靡いていた。

 すらりとしたシルエットの女性はドクターハカリ。墓荒らし集団、グレイダーの幹部である。

 どこか愉しげに、そして見下すように眼下の街を見下ろす彼女の肩に手をかける男が一人。

 

「あら、いきなり女性に触れるなんて野蛮ですね第一営業部長」

 

 ドクターハカリから第一営業部長と呼ばれた男はそんな肩書とは正反対の風貌であった。

 黒く、所々が破けて煤けたロングコートを羽織る短髪無精髭の男。

 

「やめてくんないかなーその昔の呼び方。今じゃほら、悪の秘密結社様なんだからさ。泣く子も黙るクロフト様だぞ」

「えー可愛らしいじゃないですか。第一営業部長」

「だから……。いや、今は大事な話がしたくてな」

「大事な話?」

 

 気だるげだった第一営業……。

 

「クロフトだっつってんだろ」

 

 気だるげだったクロフトの雰囲気ががらりと変わり、鋭い視線がドクターハカリを貫くよう。

 そんな視線を浴びせられても、ドクターハカリは飄々とした顔を崩さずにいた。

 

「霊魂の在庫、一気に減ったからな。お前、勝手に持ち出したな?」

「え、それ確認するの総務の仕事じゃありません?」

「総務課長もこの間インフェルニティの奴等にやられたの忘れたのかよ。そんなこんなで仕事が増えてんだよ俺の。で、どうなんだ」

「たしかに、私が持ち出しました」

 

 しかし、とドクターハカリは白衣の内ポケットから紙を取り出すとクロフトに見せつける。

 霊魂申請書と書かれたそれには首領の印が捺されており、決裁済みであった。

 

「ちゃーんと申請済み、決裁もいただいてますのでご安心を。在庫数の確認をするというのであれば、こちらお持ちいただいても結構ですよ」

「……それならいい。いいが、こんなに霊魂持ち出して何するつもりだ? 最近のライダー一年分以上の怪人が生み出せる数だぞ」

「私が報告にあげたとおり、この世界にも墓守が来ています。ですので、戦力調査のためと墓守討伐のためにも数が必要でして」

 

 にこりと笑顔を崩さずに、ドクターハカリはつらつらと理由を述べる。

 あまりにスムーズに言葉が出てくるので、あらかじめ台本が用意されているようだとクロフトは感じた。

 

「意外だな」

「なにがです?」

「俺ぁ、てっきりあんたは手柄とか興味ないのかと思ってたが、墓守を殺ろうとしてたとは」

「まあ、手柄に興味ないというのもありますが。せっかく仮面ライダーのいない世界を選んできたというのに、いるんですもの。障害は全力で取り除くべきですわ」

「……そうだな。ま、今後も真面目に働いてくれりゃそれでいい。ただし、組織を。首領を裏切るようなら」

 

 乾いた銃声。

 クロフトの手に握られた銃が、煙を上げていた。

 ドクターハカリは微動だにせず、ただ彼女の黒い髪が何本か、風に乗って飛んでいっただけ。

 

「……ええ、分かっていますわ。拾っていただいた恩義があります。組織のため、働かせていただきますわ」

 

 頭を下げ、ドクターハカリは組織への忠義を口にした。

 睨み付けるクロフトは、銃をコートの中に収めてドクターハカリに背を向けた。

 

「……午前の業務終了。昼飯の時間だが、どうする。奢るぞ」

「部長が行くところ、おじさん臭いので嫌ですわ~」

「いいだろ別に~。安いし早いし美味いぞ。あと部長じゃない」

「あとずっと奥さんのことと娘さんのことばっか話すのもちょっとあれですね~」

「え!? 他の女性社員からはウケ良いぞ!?」

「気遣ってるだけですよあれ。おじさん上司の家庭事情とかクッソどうでも……あっ。おじさん上司の家庭事情とかどうでもいいので」

「取り繕っても遅いし無駄だからな猫被り!」

 

 なんやかんや言いつつ、ドクターハカリはクロフトに奢ってもらいに昼食についていくのであった。

 そんな中、ドクターハカリが街に解き放った霊魂達が肉体を得ようと、取り憑ける人間を探している……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 目を覚ますと、お昼ごはんの時間だった。

 リビングのソファーで寝かせられていて、目覚めたことに気付いたノゾミさんが声をかけてくれた。

 

「大丈夫~? 食欲ある~?」

「あう……はい……」

 

 大したことしてないはずなのに、げんきんにもお腹が空いていて恥ずかしい……。

 そういえば、ショーリョーマッは……。

 

『!』

 

 あ、よかったちゃんと庭にいてくれた……。

 窓から見れて安心……。

 

「灰になった人に出すべき料理ってなんだろね?」

「火を通したものは避けた方がいいかしら~?」

「じゃあ野菜スティック! はいどうぞ儚ちゃん!」

 

 ヤサイスティック……。

 緑、白、橙……細長くて、固い……。

 みずみずしい……。

 

「ほらポリポリ食べて!」

「ポリポリ……」

 

 ポリポリ……。

 ポリポリポリポリ……。

 ごくん。

 

儚の胃「んだよこれ! こんなん入れられたら逆に腹が空くぜ!」

 

 ぐぅぅぅぅぅぅぅ~~~~!

 

「あら~おっきいお腹の音~」

「あう……」

「普通にちゃんとご飯食べた方がいいね」

 

 普通にしっかりご飯食べた。

 おかわりもした。

 

 

 

「回覧板きた~。近所で下着泥棒出たって、気を付けないと」

「ここ最近連続してるらしいわね~」

 

 そんな会話を、聞くだけ。

 特に、やることが、ない。

 お昼食べた後、なんとなくリビングに居座ってるけれど、手持ち無沙汰……。

 ノゾミさん、メガネかけて真面目な顔して板みたいなの見てるし……。

 ユウリさんは……まあいっか。

 

「いや良くないよ!」

 

 心を読まれた!?

 

「儚ちゃん、私に当たりキツイよねぇ。私何かした~?」

「あ、いえ……ユウリさんからは何もされてないですけど……」

「うん?」

「ち、小さい頃にいた場所……親戚がたくさんいたんですけど、その人達は軒並み貧乳で……。貧乳達から虐められて……」

「私はそんな悪い貧乳じゃないよ! 善い貧乳だよ!」

 

 なんだ善い貧乳って。

 貧乳の9割は私を虐めてくる……胸に優しさが詰まってない奴等、それが貧乳……。

 

「もう虐めたり絶対しないから仲良くしようよ~」

「シャー!」

「そんな借りてきた猫みたいな……」 

「儚ちゃ~ん。こっちおいで~」

「はいっ!」

 

 ああ、やっぱりこっちだ。

 こっちがいい。

 優しさが詰まっている……。

 にへへへへへへ……。

 

「なんなのこの格差は」

「儚ちゃん、優李ちゃんは優しい子だから心配しなくていいのよ~」

「ユウリさんは陽キャだし、貧乳だから苦手です……」

「あらそう……。優李ちゃん、役満だって~」

「私がなにしたって言うんだよぉぉぉ!!!」

 

 ユウリさんはなにもしてない……。

 貧乳に生まれた不幸を呪うがいい……。

 

「うわーん! 私も美少女に懐かれたいよ~!」

「儚ちゃん、優李ちゃんにも懐いてあげて?」

「しょうがないですね……」

「そんな嫌々なら懐かなくていいよっ!」

 

 プンプンといった擬音が本当に聞こえてきそうなほど頬を膨らませるユウリさん。

 かわいい人だ。

 

「優李ちゃん拗ねちゃった~」

「あう……どうすれば……」

「う~ん。そうだ、儚ちゃんのベルト、見せてもらってもいい~?」

「は、はい……」

 

 ローブから墓守ノベルトを取り出して、望さんに見せる。

 すると……。

 

「儚ちゃんのベルトだぁ!!!!!」

「すごい食い付き……!」

「わー! え、近くで見ていい触っていい?」

「ど、どうぞ……」

「やったー! 本物の変身ベルト~! ばり良か~!」

 

 バリヨカ……?

 

「優李ちゃんはライダーオタクの中でも特に、ベルト好きだからね~」

「興奮してつい方言が……。そう! ベルトに限らずライダーのアイテム大好き! いずれベルトの声を担当したい! なんならライダーにもなりたかったり……てへへ」

 

 ベルトの声……。 

 そういえば、まったく考えたことなかったな。普通にそういうものだと思っていたから。

 変身する時の音声を入れた人がいたのか、どうなんだろ私達のベルト。

 

「なんだろう材質はこれ……金属のようで違うような……」

「あ、魔竜の皮です」

「魔竜! ファンタジー……」

 

 ちなみに墓守ノベルトの生成に必要な素材は

 魔竜の皮×6

 霊馬の毛×8

 ハカバライト鉱石×5

 である。

 

「儚ちゃんのベルト見せてもらったし、お礼に私のベルトも見せてあげる! 来て!」

 

 ユウリさんに引っ張られて、2階のユウリさんの部屋にお邪魔すると部屋中にベルトが飾られていた。

 こ、これはもしや……。

 ユウリさんは夜な夜な仮面ライダーを誘拐して解体してベルトだけを集める猟奇的なベルトコレクターなのでは……!?

 

 以下、儚の妄想。

 変な手術室。

 拘束された仮面ライダー(?)と白衣を着た優李。

 

「や、やめろぉ! ぶっとばぁすぞぉ!!!!」

「ひひひひひ!」

 

 非情にも仮面ライダー(?)にノミを打ち付ける優李。 

 そして、優李の手には仮面ライダー(?)から剥ぎ取ったベルトが……。

 妄想終わり。

 

 あわわわわ……!

 ま、まずい……儚も殺られる……!

 

「ヒィン!?」

「儚ちゃんどうしたの!?」

「は、儚まだ死にたくありませんー!!!」

「なに言ってるの儚ちゃん!?」

 

 やっぱり貧乳は悪い奴なんだ! 

 貧乳嫌い!!!!!

 

「大丈夫よ儚ちゃん。あれは全部オモチャだから~」

「ノゾミさん……」

 

 いつの間にか、ノゾミさんも来ていて扉の前に立っていた。

 ノゾミさんがいるだけで安心感が違うな。

 やっぱり巨乳が一番だ。

 

「そうだよ儚ちゃん! これオモチャだから!」

 

 オモチャ……?

 え、でもこれ本物っぽい……。

 

「すごいでしょ~。これは大人のための変身ベルトっていって、大人用のオモチャなんだよ」

 

 大人用のオモチャ……。

 

「儚ちゃん、変なこと考えたでしょ~」

「ひぃん!」

 

 なぜバレた……。

 

「儚ちゃんも巻いてみる?」

「えっ、良いんですか?」

「もちろん! オモチャは遊ぶためにあるんだよ! それに、仮面ライダーが他の仮面ライダーのベルトしてるとこ見てみたい的なね?」

 

 というわけで、ベルトを選ぶ。

 どれがいいかな……。あ、これ黒くて機械っぽくてカッコいい……。なんかよく分からないバッテンのなんかもついてる……。

 

「お、カイザギアだね。よーし巻いてあげよう」

 

 カチャカチャと、ユウリさんが腰にベルトを巻いてくれた。

 おお……なんだか、新鮮……!

 

「バックルの携帯電話を抜いて、913、enterで変身だよ」

「きゅー、いち、さん……」

 

《Standing by》

 

 しゃべった……!

 

「そしたらバックルに挿して! 変身!」

「変身……!」

 

 カシャッと填めて……。

 

《Complete》

 

 おー……。

 な、なんかすごい……!

 

「いいねいいね~。あ、ちなみになんだけどね」

「はい?」

「そのベルト使うと死ぬから」

「ヴェッ!?!?」

 

 死ぬ……?

 儚死ぬの……?

 どうしよ……やっぱり貧乳は悪い奴等だったんだ……。

 お父さんごめんなさい先に逝きます……。お母さんに……会える、かな……。

 

「冗談! 冗談だって! オモチャでそんなことならないから!」

「ユウリさん……!」

「わー! ごめん、ごめんって! ちょっとからかっただけだって!」

 

 あー、せっかく上がってたユウリさんとの友好度が下がった……。

 まあいいや、儚にはノゾミさんがいる……。

 

「あれ、ノゾミさんもベルトつけてる……」

「ふふ~。私、一番このライダーが好きなのよ~」

 

 そう言って、ノゾミさんはバックルにあるグリップを捻った。

 

《ALPHA》

 

「ふふ~。アマゾンっ」

 

《BLOOD AND WILD! W・W・W・WILD!》

 

「おお~カッコいいです……!」

「でしょ~? 私イチオシの仮面ライダーはアマゾンズ。あと、最近はブラックサンにもハマってるの~。よかったら今から見る~?」

「見たいです……!」

 

(見かけによらずエグいライダー好きなんだよな~望さん……。千佳さんも裏でブラッド&ワイルド望とか売れない芸人みたいなあだ名つけてるし……)

 

「ところで儚ちゃん!」

 

 いつもニコニコしてるノゾミさんの目が開眼した!?

 

「儚ちゃんは死んだライダーのお力をお借りしてるんでしょ!? アマゾンアルファは!? シグマは!? ネオはネオアルファは!?」

「ひぃん……運営に聞いてみます……」

「運営とかあるんだ!?」

「その……墓荒らしに持っていかれてしまった魂や、10年前の戦いのゴタゴタで所在不明となった魂なんかもあって……。ハカイブはもっといろんな姿になれるらしいんですけど、今は3つの姿にしかなれません……」

 

 奪われた魂も戦いの中で見つかるかもしれないし、グレイダーと戦っていけばきっと他の形態にもなれるはず……。

 うん、この世界で頑張っていこう……!

 

 そう、決意を新たにした時だった。

 窓の外に、白い手が見えた。

 ここ、2階……!

 しかも、白い手は窓ガラスを叩いて……。

  

「ひぃん!?」

「わっ!? ……って、また……」

 

 ……?

 ユウリさんもノゾミさんも、なんだか慣れた様子……。

 ていうかユウリさん窓を開けて……!?

 

「大家さん! 普通に入ってきてくださいよ!」

 

 え……?

 大家さんって、たしか今日会う予定の人……。

 壁をよじ登ってきたであろう、大家さんが窓から入ってくる。

 ……貧乳か。

 

「この壁、登ってくれって言ってる」

「言ってませんって! あ、儚ちゃん紹介するね! この人が結城荘の大家さん!」

 

 大家さん……。

 この家の持ち主というから、もっと大人の人を想像していたけれど、そういえばチカさん幼馴染みって言ってた……。

 けど、童顔だからかユウリさんぐらいの歳にも見える。

 細身ですらっとした、髪も短めでちょっと中性的な人。

 

「どうも、結城荘の大家さんの大矢サンです」

「え……?」

「大家さんの大矢サン。よろしく」

「駄目だ儚ちゃん。宇宙猫になってる」 

「紛らわしい名前なのは分かってる。仕方ないんだ、両親がもの○け姫のファンで息子ならアシタカ、娘ならサンにしようって決めてたから」

「儚ちゃ~ん? 戻っておいで~」

 

 ……はっ!?

 いけない、混乱してしまった。

 

「は、儚・インフェルニティ・ブツダンブッカ・ソナエモン・ハカイブです……」

「うん。文字数稼げるいい名前だね」

「褒め方~」

 

 ひぃん……。

 名前、お気に入りなのに……。

 

 ひとまずリビングで話そうということで、再びリビングへ。

 ユウリさんが大家さんと儚にお茶を出してくれた。

 

「話は全部千佳から聞いてる」

「あう……。えと、その……信じてくれるんですか……? 戦士の墓場から来たとか、仮面ライダーとか……」  

「うん。それに、千佳は嘘は言わない。住むとこ探してるんでしょ」

「は、はい……」

「だったら、ここに住めばいい」

「はい……え? ええ!?」

 

 そ、そんなさらりと……。

 でも、いいのかな……。

 

「でも、家賃とかどうするんですか? 儚ちゃん、戸籍も何もないからどこも雇ってくれないと思いますけど……」

 

 ノゾミさんの言うとおり……。

 お父さんがこっちの世界と来た時と違って、今の時代は身分の分からない人は雇ってもらえないらしい。

 これではお金を稼ぐことも出来ない……。

 

「その点も大丈夫。儚には、住み込みで働いてもらうことにしてもらう」

「住み込み……?」

「どういうことですか?」

「実は……最近、ここ絡みで変な噂がたってしまって」

 

 変な噂……?

 

「美人しか入居出来ない物件なんて噂が流れて不審者がうろついてるみたいで……」

 

(津木纏のことだ)

(津木纏のことね)

(ストーカー男のことかな……)

 

「そこで、警備員を雇おうと思ったんだけど……。なかなかお眼鏡に敵う人がいなくて……」

「どんな条件で出してたんです?」

「面のいい女」

「そりゃなかなかいないよ!!!」

 

 美人な警備員さん……。

 たしかに、探すの難しいと思う……。

 この世界のことはまだ詳しくないけど、戦士の墓場でも警備員さんは、ほとんど男の人……。

 女の人少ないし、そこから更に美人となると……。

 

「大体美人しか入居出来ない物件ってほとんど合ってるじゃないですか! 大家さんが顔で選んでるんだもん!」

「いやーそれほどでも……」

「今のどこに褒めてる要素あった?」

「私好みの美人探すの大変だった。5人も集めた、褒めろ」

「褒めるか!」

「とにかく、美人で強くて私好みの顔してる儚は私的にも欲しい。儚は住む場所と給料も手に入れることが出来る。どう?」

 

 それは……。

 考えるまでもないかも……。

 ここの人達、みんな優しいし、面白いし、住んでお金が手に入るなんて良いことづくし……。

 

「や、やります……!」

「よし、それじゃあ……。早速、仕事してきて」

「へ……仕事……?」

 

 おもむろにスマホ(って言ったっけ)を見せつける大家さん。

 そこにはなにやらどこかの家の前でうろつくサングラスとマスクをした怪しげな男の人がいて……。

 

「って、ここ家じゃん!」

「体型からして津木纏じゃないわね……」

「防犯カメラの映像。というわけで、頼んだ儚」

「へ、ちょっと待ってください心の準備が……! ま、まずなにすればいいですか……?」

「警察に通報するから取り押さえて」

「わ、分かりました……」

 

 ひぃん……いきなり実戦……。取り押さえる……取り押さえる……。

 えっと、玄関から行った方がいいのかな……。

 それとも2階から飛び降りる……?

 裏口とかあるかな……。

 あ、庭からこっそり出れば……。

 

「あ」

 

 庭から出ようとしたら、不審者も庭に入ろうとしていたとこだった。

 咄嗟に逃げ出す不審者。

 追いかけなきゃ……!

 あの程度なら一瞬で追いつく……!

 

「ひぃ!? なんだあいつ速いぞ!? 逃げるんだ……逃げるんだぁぁぁぁ!!!!!!!」

「あっ!?」

 

 不審者に怪人の霊魂が二つ取り憑き、異形の姿へと変わった。

 獣が2種類……。

 男の人だったけれど、胸に下着をつけているようだった。

 

「ムササビードルとズ・メビオ・ダ……!」

 

 怪人は超スピードで助走をつけ、跳躍。

 ムササビのように飛膜を広げて滑空を始めた。この滑空も速い……!

 走りながら指笛を吹き、ショーリョーマッを呼んで墓守ノベルトを腰に巻き付け、キセキレジスターにお力をお借りする魂の名を記す……!

 

《ボディ 魔進チェイサー》

 

《アーマー 仮面ライダーサソード》

 

「変身」

 

《魔進チェイサー×仮面ライダーサソード》

 

《鋼の番人 刃の貴公子 死神毒剣》

 

《仮面ライダーハカイブ マシンヤイバー》

 

 走りながら、紫のアーマーを全身に纏う。

 変身完了と同時にショーリョーマッも合流し、飛び乗って加速。

 更にクロックアップ!

 大きな通りに出て、ほとんど停まっているような速さの車?達を追い越していく。

 あいつの名は……ヒョウムササビでいいや。

 ヒョウムササビは……あそこだ。

 しかし、あの高度ではマシンヤイバーは攻撃出来ない。

 周囲を見渡して……あの建物なら、いける。

 走るショーリョーマッの上に立ち、反動をつけてもらってジャンプ。

 高い建物の屋上に着地と同時にクロックオーバー。

 そして、フォームチェンジ。

 

《仮面ライダーハカイブ パニッシャーマグナム》

 

 紫の剣士から、紅の銃撃手へ。

 専用武装ガイストマグナムの折り畳まれた銃身を起こしライフルモードへ移行。 

 狙いを定めて……撃つ。

 

「ぎっ!?」

 

 弾丸はヒョウムササビに命中し、滑空から墜落へ。

 そして、取り押さえるのであればこの姿の方がいいだろう。

 

《仮面ライダーハカイブ アサルトゴシック》

 

 今度は紅の銃撃手から暗緑の格闘戦士へ。

 建物の屋上から跳躍し、建物から建物へと糸を飛ばして摩天楼の合間を飛び交う。

 そして、ヒョウムササビが墜落した場所へと着地。それと同時にヒョウムササビへと糸を伸ばし、右腕を縛り拘束。

 

「何者だお前! 俺の邪魔をするな!」

「仮面ライダーハカイブ……。下着泥棒の言うことを聞く気はありません……」

「う、うるせぇ!!!」

 

 ヒョウムササビは左手の鋭い爪で糸を断ち切り超スピードで接近。

 しかし、助走には短い距離のため最高速には至らず。

 マシンヤイバーになる必要もなく、カウンターのパンチを命中させる。

 よろめくヒョウムササビ。自身が高速で動いた反動でダメージも大きいだろう。

 

「あなたは既に、このハカイブの蜘蛛の巣に囚われている────」

 

 追撃の拳が唸る。

 反撃する間も与えない。

 アサルトゴシックの力強い拳は確実にヒョウムササビの急所を穿ち、追い込んでいく。

 

「終わりです……」

 

 ヒョウムササビの鳩尾に、掌底を打つ。

 打つと同時に掌から蜘蛛の巣が広がり、ヒョウムササビを覆い縛り、バックルのキセキレジスターを操作。

 閉じて……開く!

 

《怪奇強襲! 怪奇強襲!》

 

《アサルトゴシックブレイク!》

 

 足下に広がる、アサルトゴシックの紋章。両足に収束していき、力が漲るのを感じる……。

 

「とうっ……!」

 

 昂りと共に飛び上がる。

 闘気を纏った右足を突き出し、身動きが取れないヒョウムササビへと加速。

 大砲のような蹴りと言われる、アサルトゴシックキックが炸裂。

 吹き飛んだヒョウムササビを背に着地。そして、爆発。

 下着泥棒に取り憑いていた怪人の霊魂が二つ、宙へと浮かんでいく。キセキレジスターをバックルから取り外し、開いたまま霊魂の方へと向け、回収。

 戦士の墓場へとお帰りいただく……。

 よし、一件落着……。

 

「あ、確保……」

 

 気を失った下着泥棒を担いで……結城荘に戻るでいいのかな?

 とりあえず、そうしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 家に帰ってくるなり、パトカーが停まっていたので何事かと望から聞き出す。

 

「儚さんが下着泥棒を捕まえに行った!?」

「追っかけってたきり、戻ってこなくて……」

「迷子になっちゃったのかなぁ……」

 

 追いかけて、道が分からなくなって戻ってこれなくなったんじゃ……。

 探しに行こう。

 儚さん、まだこっちに来てたったの一日。

 変な輩に騙されたりしてしまうかもしれない。事件に巻き込まれて一面を飾ってしまうかもしれない。

 

「探しに行きましょう!」

「え、ええそうね……」

 

 そうして、玄関に行くとガチャリとドアが開いた。

 

「あ……も、戻りました……」

 

 扉を開けたのは謎の男……下着泥棒?を軽々と肩に担いだ儚さんがいた。

 

「え、それ下着泥棒……?」

「は、はい……。怪人になったので倒して……とりあえずここに戻ろうと思って……」

「え、えーと……とりあえず警察! さっきお帰りになったとこで申し訳ないけど警察!」

「う、うん!」

 

 優李に電話させて、とりあえずえーとどうすればいいんだ。

 下着泥棒が目を覚ましたらどうしよう。

 え、縛っておけばいいかな……?

 

「あ、儚戻った?」

 

 リビングからいつも通りの感情を読めない、クールっぽい表情をしたサンが顔を出した。

 

「も、戻りました……」

「サン! あんたいきなり下着泥棒捕まえに行けとかなに考えて……」

「あ、戻ったじゃないか。今日からここは儚の家でもあるわけだし……」

 

 今日から儚さんの家でもある……?

 ということは……。

 

「サン!」

「ん、今日から儚はここの警備員兼雑用係兼コスプレ係」

「あんたねぇ……まあいいや。とにかく……おかえり()

「……! た、ただいまです……!」

 

 今までで一番明るい笑顔。

 これから同居することになるから、さん付けもいらないだろうと呼び捨てたけど気にしてないようだ。

 入居者が増えて、また騒がしくなるなー!

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