仮面ライダーハカイブ   作:大ちゃんネオ

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死斗!玉の輿に乗りたい女達

 店内は楽しげな声がちらほら聞こえてくる。

 だが、そこらのチェーン店や安さが売りの場所ではないためか、客層が良く、楽しみつつも落ち着きのある様子が良い。

 季節の花が生けられ、和を全面に押し出した個室に12人の男女が対面していた。

 

「新田千佳、27歳。高校教師です~」

「斉藤望、26歳です~。一応、デイトレーダーやってま~す」

「長谷部莉緒、料理人やってます。25です」

「瀬尾優李です! 駆け出しの声優。これからに期待の22歳! よろしくお願いしまーす!」

「……織笠あゆ。二十歳。大学生」

「は、儚・インフェヴィッ!? な、なにするんですk」

「それではかんぱ~い!」

「か、かんぱい……」

 

 

 西麻布のとある高級和食料理店。

 今、女の戦い(合コン)が始まろうとしていた。

 何故、こんなことになったかというと……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一週間前。

 

「ただいまー」

 

 仕事から帰宅。

 結城荘の廊下を歩きながら帰りを告げる。台所では莉緒が相変わらず料理と向き合って、こちらには見向きもせず。

 なんとなく、莉緒が和食の料理人だからかキッチンではなく台所と呼んでしまう。

 台所を通り過ぎ、自分の部屋に行く前にリビングを覗くと、優李がテレビでゲーム中。それを望が眺めていた。

 

「あ、おかえりなさ~い」

「うん。……なんだか、やたら熱が入ってるわね」

 

 ゲームに熱中している優李を見て言った。

 メジャータイトルの対戦格闘ゲームで、熱くなるのは分かる。それにしたって、優李の熱量には気迫を感じるほどであった。  

 ここ最近は色々とオーディションに合格しているらしく調子の良い優李。

 普段はあまりゲームをしないのに、どうしたのだろうか。

 

「うん~。なんかね、この間のお友達が新しく配信番組やるんだって。ゲームする番組みたいでそれにお呼ばれしたみたいで~練習する~って」

「へぇ、よかったじゃない優李」

「くう! おらっ! えっ、あっ!? え! なんか言った!?」

 

 熱が入っていて聞こえていなかったようだ。

 終わったら改めて言おう。

 

「ぬあっ!? え、あ! 儚ちゃん煽ったぁ!!!!」

「え、対戦相手儚なの?」

 

 先程からプレイ画面を見ていたけれど、優李は終始圧倒されていた。

 それがまさか儚のプレイによるものだったとは。

 

「うん~。あゆちゃんが同じゲームやってて、最初はあゆちゃんが相手してたんだけど、あゆちゃんが飽きたって儚ちゃんに交代して~」

「で、肝心の二人は?」

「あゆちゃんの部屋だと思うけど……」

 

 自分の部屋に行くついでに、あゆの部屋を覗く。

 煽りはよくないぞと注意してやらねば。

 それに、儚はゲームでの煽りなんて知らないはずだから教えたとすれば……。

 

「こ~ら、真っ黒姉妹」

「ノックしろよ」

「あ……おかえりなさいです……」 

 

 あゆの部屋に突撃すると、あゆはベッドに座り、儚はテレビに向かって絶賛プレイ中。

 相変わらず、二人とも服が真っ黒である。

 

「もう、あゆね? 煽りなんて教えたの」

「ああ、優李の奴、耐性ないからつけてやろうと思って」

「まったく……儚、その屈伸するやつやめなさい。マナー的によろしくないから」

「そう、なんですか? アユさんは正々堂々と戦う戦士の掟と仰ってました……」

 

 嘘を教えるんじゃないとあゆを睨む。が、どこ吹く風。

 

「それにしても、上手ね儚?」

「ああ。ちょっと教えたらすぐ覚えたし、応用も自分で見つけるしで、アタシももう教えることがない」

 

 テレビの前で正座し、優李とは対照的に黙々とプレイする儚はプロのようであった。

 

「……案外、静かにプレイするのね?」

「なんかな。変身してる時みたいに口では煽りまくるのかと思ったけど案外そうでもなかった」

 

 そう話していると、突然儚の口から「ヴェッ!」という奇声が。

 さっきまでの冷静さはなくなり、あゆと私の方をオロオロと向くと儚は泣きそうな声で話した。

 

「ど、どうしましょう……ゲームこわれちゃいました……」

「あ?」

 

 どういうこと? 

 あゆと二人で画面を見ると、なにやらおかしなことになっていた。

 儚が操作していたキャラが地面に倒れてめり込み、優李のキャラは何故か連続でダメージを受けているようで、ダメージボイスが延々と発せられ、細かく震えていた。 

 

「……なんだこのバグ」

「開発者も知らなそうね……」

「ひぃん……ご、ごめんなさい……」

「大丈夫だから、電源切れよ」

 

 あゆの言うとおり、それしかもう手はないだろう。

 階段を上がり、抗議の声を発する優李を遮るようにスマホに着信。

 げっ、サンからだ。

 嫌な予感……。

 長年の付き合いなので、分かるのだ。いい話ではないだろうと。

 

「もしもし?」

「千佳、合コンだ」

「は?」

「一週間後、合コンがある。結城荘の総力を以てこれに当たれ。命令を復唱せよ」

「いやいや意味が分からん。なにをミリタリー風に言ってるのあんたは」

「玉の輿のチャンスだぞ」

「行く~!」

 

 

 

 

 

 

 というわけで、合コンである。

 サンが仕事で貸しを作っただかなんだかで、その借りを返すとの条件で合コン……らしい。

 一体何をしたか分からないけれど、サンがセッティングしたものだから相手もエリート揃いのはず!

 しかし妥協はしたくない。

 この合コンに命をかける。

 

 

 

 とでも考えているんでしょうね~千佳は。

 この合コンの勝者はこの私、斉藤望。

 皆には悪いけど~幸せになっちゃいま~す。

 

 

 

 合コンはよく分からないけど、ここは料理が美味しいって評判だったから来てみたかったんだよね……。

 研究しないと……。

 

 

 

 合コン初めてだけどこんな感じなんだ~。

 運命の出会いがもしかしたら……!

 

 

 

 はあ……だるい……。

 なんで興味もない知らないおっさん達と飲まなきゃいけねえんだよ……。

 まあ、タダに惹かれちまったところあるけど……。

 

 

 ……合コン。男と女が戦う場所……。

 そこらの男には負けません……。

 

 

 

 六人のそれぞれの思惑が交差するなか、男性陣の自己紹介が始まった。

 

 

「はじめまして、戸田剛です。ドヨタに勤めてます」

「えっ、ドヨタって車のですか!」

「はい。優李さんは車お好きですか?」

「あはは、実は結構好きで。あんまり話が通じる人いなくてあれなんですけど……」

 

 こんな会話がなされるなか、千佳と望は頭の中に稲妻が走った。

 

(ドヨタ……。日本どころか世界有数の大企業。ドヨタの社員はドヨタの式場で結婚し、ドヨタで家を建て、ドヨタの学校に子供を入学させ、ドヨタで墓を建てると言われるほど。ドヨタの社員であればそれだけ安定した人生が待っている……!)

 

(けれど、この人はドヨタのなんなのかしら……。ドヨタはたくさんの会社を保有しているしディーラーの可能性もあるわ~。それに総合職か技術職か……)

 

 

 

 

「あ、僕は根本京介って言います……」

「根本さんですね~。お仕事は何されてるんですか~?」

「あ、えっと、中林組です」

「えっ、ヤクザ?」

 

(違うわよあゆ!!!!)

 

(国内トップのゼネコン……。昨年の決算売上高は業界一位。平均年収も900万ほど。忙しいとは聞くけれど、平均勤続年数は20年近かったわね~。え? なんでそんなこと知ってるかですって? それは~愛読書は四季報だから~。デイトレーダーなら当然。というか、婚活女子にとってのマストアイテムよ~)

 

(望の最も頼りになる相棒。いざって時、銃弾から身を守ることが出来るぐらいには厚いあれを読み込む望の合コン戦闘スタイルは完璧なデータに基づくマニュアル合コン! 何度も戦ってきたから分かる。やはり望は強敵……!)

 

 

 

 

「早川智也です~! 俺は金融関係なんすけど~」

「銀行、とかですか?」

「そんな感じっすね。四菱銀行なんすよ~」

「銀行は安定ですよね」

 

(その認識は甘いわよ莉緒ちゃ~ん。メガバンクの平均勤続年数は10年前後。熾烈な競争社会なのよ~。それにこの感じ……確実に総合職(偏見))

 

(けどそれだけ働いてても銀行の平均年収ってあんまり高くない印象なのよね……)

 

(甘いわね千佳~。銀行は窓口を担当する一般職も大量に採用するからそれで低く見えるだけ。総合職ともなれば手厚い福利厚生や手当、ボーナスがあるわ~。けれど、やはり安定とは程遠い……。転勤もあるし……いつパートナーが競争から落ちるか分からない不安と共に生活することがあなた達には出来るかしら~)

 

 

 

 

「俺はゲーム関係で~。あ、天堂忍っていいます」

「わ~、え、ベンテンドーとかですか~?」

「そうですそうです」

「すごーい! わたしゲーム好きなんです~!」

 

(ベンテンドー……いわゆる、借金のない企業。6000億ほどの預金があるわ。つまり、そうそう潰れることがない企業ということ。ゲームはともかく財務が安定している企業っていいわね~。ただ……今、ここに来ている男性陣の中では年収が少し下がりそうね……)

 

 

 

 

「町田勉……ビクルートで働いてます……」

「よく聞きますよね~! わたしもバイト探しでお世話になりました~!」

 

(ビクルートのどれかを明かしなさ~い。就活メインと思いきや、しゃらんとかボットペッパー、ゼグシィとかもやってるし~人材派遣もあるわね~。就職、結婚、住居、旅行、飲食……これだけ手広くやってればグループ企業だらけになるわ~。それに、起業家精神を求める社風だから独立していくことが多いわね。ビジネス誌を読んでると起業家の元ビクルート率の高さに驚くことになるわよ~。つまり、この町田という男もいずれ独立する可能性がある……それを考えると……)

 

 

 

 

「高橋遥輝です~。自分はヤマバです」

「楽器のですよね」

「え、バイクとかもやってますよね!」

 

(どっちかしら……。楽器のヤマバとバイクがメインのヤマバ発動機……。発動機の方は二輪車部門が独立した会社だけれど、どちらも多角的な経営が特徴……と言われているけれど、メインとなる事業は二つぐらい……。それにやっぱり総合職か技術職か……。もうメーカー勤務者は分かりにくいわ~。金融関係みたいにもっと分かりやすくチャラついてほしいわね~)

 

 

 

 

 

「莉緒さん料理人なんだ~」

「はい」

 

 四菱銀行勤務の早川が莉緒に狙いをつけて話を振った。

 

「へえ~いいな~俺も「俺も莉緒さんの料理食べたいって言うぞ儚」

「俺も莉緒さんの料理食べたいな~……はっ!」

「ほ、本当にアユさんの言うとおりに……! すごい……!」

 

(お前らは何やってんだ真っ黒姉妹ぃぃぃ!!!)

 

(チッ……やはり最大の敵は無能な味方……!)

 

「もう~莉緒さんの料理食べたいなんて当然のことでしょ~」

「そうよ~高級料亭務めなんだから」

「マジすか! 板前さんってやつですか!」

「まあ、まだまだですけど」

 

 男は面子を気にする。

 男の面子を潰すなどという愚を婚活女子は絶対に犯してはならないのだ(望曰く)

 

「本当に莉緒ちゃん料理好きで~お家でもずっと料理してるんですよ~」

「わぁ、本当に好きなんですね~」

「はい」

「……」

 

 ……会話が続かない!

 そう、望と千佳はそれを分かっている。

 分かっているからやっているのだ!

 一見、莉緒を持ち上げているように見えるが、このコミュニケーション力の無さを知らしめているのだ!

 大人気ない!

 

「織笠さん大学生か~若いな~」

「そっすか……」

 

 あゆはそもそも合コンに乗り気ではない。

 それなりに良いところのご飯と酒をタダでいただけるというので来たのである。

 

「あゆちゃんさ~せっかく来たんだから楽しもうぜ~」

 

 早川はかなりグイグイ来るタイプのようで、席を立つとあゆと儚の間に割って入り、あゆと肩を組もうとする。

 早川の手があゆに触れようとした瞬間、あゆの口角が上がった。

 

「なっ……!」

 

 早川の手首を白い手が掴んでいた。

 繊細な手つきのわりに、早川の手の動きを完全に封じ込める程度には力が入っていた。

 儚からすれば、大して力をこめてはいないが。

 

「いつの間に……」

「アタシに触ろうとしたら、儚が自動的に防御するから」

 

(ちょっとぉ!? ダービーのイカサマ見破ったスタープラチナみたいになってるじゃない! やめて! お願いだから変なこと起こさないでぇぇぇ!)

 

「あ、あはは~もう早川さ~ん。おさわりはNGですよ~」

「あゆちゃんもまだ二十歳で慣れてないんです~。ごめんなさいね~」

「あ、ああ……す、すいませんねぇなんか」

 

 変なことになりかけた合コン。

 千佳と望の機転で早川の面子を潰すことなく進行していく……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 青山霊園。

 グレイダーの幹部候補、ヒラリーが夜の墓場を一人歩いていた。

 ここを抜ければすぐ、西麻布である。

 

「んー、そろそろだな。この辺りで働いてるって情報だけど本当かなぁ……」

 

 スマホの地図アプリを見ながらヒラリーは呟く。

 再び歩きだそうとした時であった。ヒラリーの目の前に、黒衣に包まれた謎の人物が一人、現れる。

 ヒラリーは直感で即座にこの人物がなんであるかを言い当てた。

 

「……墓守か」

「……」

 

 その墓守とされる人物は何も語らない。

 だが、行動で示した。

 黒衣から、腰に巻かれた墓守ノベルトをヒラリーへと見せつける────。

 

「仕事増やさないでほしいな~。まあいいや。リハビリにはちょうどいいってね」

 

《トゥームグレイダーバックル!》

 

 ヒラリーはトゥームグレイダーバックルを腰に巻き付け、両手で二本のトゥームをバックルに差し込み、起動させる。

 

《ドラゴンオルフェノク》

《グラファイト》

 

「憑装」

 

 ヒラリーの顔に浮かび上がる龍の顔。

 ウイルスが増殖していくようなエフェクトに包まれ、ヒラリーの肉体が変化する。

 巨大な角を備えた龍人に。

 

「灰にしてやるよ」

 

 宣うヒラリーに意を介さず、黒衣の墓守は紫色の表紙のキセキレジスターを開帳。

 細筆で書き込み、変身を始める。

 

《ボディ 蜂女》

《アーマー 仮面ライダーカイザ》

 

「……」

 

 黒衣の墓守は無言のままキセキレジスターをベルトに装填する。

 ベルトのおどろおどろしい声だけが、墓場に響く。

 

《蜂女×仮面ライダーカイザ》

《蜜に毒を 罪に罰を 怪異呪縛!》

《仮面ライダーグレモリー ストレンジカース》

 

 黄金色の閃光が黒衣の墓守を駆け巡る。

 背景には蜂の羽が広がり、墓守の身体を包み込むとその墓守……仮面ライダーグレモリーの変身が終わる。

 闇夜に浮かび上がる、金の奔流。

 妖しく、大きく輝く緑色はバツ字に切り裂かれた巨大な瞳。

 胸を覆うアーマーは黄と黒の同心円が二つ並びどこか扇情的。

 墓守ノベルトには青い腰布とΧを思わせる装備が提げられていた。

 グレモリーはその装備────クイーンブレイガンを手にすると、全身を走るのと同じく黄金の刃が発生。切先をヒラリーへと向ける。

 

「はっ……! さあ、やろうか」

 

 龍の牙を思わせる双刃を振るい、ヒラリーは駆ける。

 ヒラリーが牙を振り下ろすと同時にグレモリーは鋭く鋒を疾走させる。

 夜の黒に突き刺さる黄色の閃光。

 ヒラリーがパワーで攻めるなら、グレモリーはスピード。

 鋭く、素早く。

 夜を彩りながら剣は翻る。 

 しなやかに、鮮やかに。

 

「ははっ。グレモリーなんて聞いたことないけど……やるじゃん」

「……ま……んだ……」

 

 ここに来て、グレモリーが口を開いた。

 

「ん?」

「邪魔なんだよ……!」

 

 力強い踏み込みでヒラリーとの距離を一気に詰め、顔面目掛けて刺突が放たれる。

 が、ヒラリーはそれを首を傾け回避。

 龍の牙がグレモリーの肩を打ち付ける。

 火花が上がり、後退するグレモリーであったが。

 クイーンブレイガンを逆手に構えると、銃口から黄色の光弾が放たれヒラリーに直撃。

 

「ぐっ……!」

「……!」

 

 光弾を連射し、グレモリーは後退していく。

 夜の闇に徐々に溶けていき、やがてグレモリーから放たれる黄と緑の光も見えなくなると光弾の連射も終わる。

 しばし警戒するヒラリーであったが、これ以上の戦闘はないと怪人態から人間態へと戻る。

 すると、それを見計らっていたかのようにスマホが震えた。

 

「お、ハカリちゃんからだ。もしもし」

「あ、もしもしヒラリー君~? なんか戦闘データ取れたんですけど~」

「ああ、ちょっとね~。墓守とやりあってね。ハカイブじゃないよ」

「ハカイブではない墓守、ですか……」

「そ、グレモリーだってさ~。知ってる?」

「さあ? 聞いたことありませんね」

「ふーん、そっか。にしても、やっぱりまだ少し痛むなぁ。本気で殺り合おうとすると身体が痛んでさぁ。ハカリちゃん、なんとかならない?」

「残念ながら医者ではないので~。それでは~」

 

 切られる通話。

 画面をニヤリと見つめたヒラリーは、踵を返した。

 

「やっぱ身体本調子じゃないし今日はもう帰ろ~。いつでも出来る仕事だし」

 

 誰に聞かせるわけでもない独り言を、無数の墓石達は聞いていた。

 この男の目的とは一体なんなのか……。

 

 

 

 

 

 

 

 

「え、声優さんって言ってたけど大丈夫? スキャンダルとかさ」

「そうそう。最近は声優さんもよくテレビで顔出したりしてるじゃん」

「大丈夫ですよ~。女性声優なんて大体彼氏いるんですから~。男の人も結婚してるけど公表してなかったりしますし~」

「へえ、そうなんだ~」

 

 合コンは意外な展開を迎えていた。

 なんと、優李が、意外と人気!

 

「意外は余計だよ!」

 

(まさか優李がこんなに攻めてくるなんて……。それに、男性陣のこの食い付きっぷり……)

 

(芸能界の話は大体食い付きが良いから仕方ないわね~。優李ちゃん、幼児体型だからマークしてなかったけど強敵かも~)

 

(それに、なんといっても……)

 

 若さ!

 千佳は現在27歳、望は26歳といわゆる結婚適齢期。

 対し、優李は22歳になったばかり!

 明るくコミュ力も高い優李に若さまで備わり、歴戦の合コン者である千佳と望すらも苦戦。

 

(莉緒はさっきから出される料理の研究に夢中でそもそも話に入ってこない! あゆは最初のあれがあったから手が出しにくい! それに20の子にはなかなかアタックしにくいはず! 儚は……)

 

「にへへ……ツマ美味しい……」

 

(ツマをツマツマしてる~!? やめて! 居酒屋で料理が全然来なくて仕方ないからツマ食べるみたいな! 貧乏くさいことここではやめて~! ……にしても、優李なんてお子ちゃまにこんな人気が集中するなんて、この千佳の目をもってしても……!)

 

(甘かったね二人とも。この合コンはわたしのもの! 女性声優だって彼氏が欲しいんだよ!!!)

 

(このプレッシャーは……! やるわね優李ちゃん……! かくなる上は……)

 

 千佳と望は頷き合い、意思疎通。

 にこやかに優李達の会話に混ざりにいった。

 

「もう本当に優李ちゃん、お家でもムードメーカーで~」

「ほんと、優李といると飽きないんです~」

「え? えへへ、そうかな~」

 

(なんだ? まさかこの二人、諦めた? 敗北を認めた? わたしの力の前にひれ伏した! ふふはっ! やはり若さは強さ! アラサーがぴちぴちの二十代前半に敵うわけ────)

 

「この間は家に入り込んできたゴキブリを見てギャアアアアア!!!!!って叫んだんですよ~。もう流石声優さんって感じの声量で~」

「この前もあゆ達にイタズラされて激辛にされたカレー食べて叫んでたし~」

「あっ、優李ちゃんはいじられキャラなんすね~」

「そうなんです~。うふふ」

 

(こ、これは!? そんな! わたしのモテライフポイントがどんどん減少していっている! なんで!?)

 

(甘かったわね~優李ちゃん。今のあなたには道化属性が付与されたのよ~)

 

(ど、道化!? このわたしが!?)

 

(そう! そして、そんな道化をあらあらうふふ、もう仕方ないわね~と笑う女は────)

 

 モテる!!!

 

(今の優李ちゃんは、女ではなく道化として見られているのよ~。私達のために笑いを提供してちょうだい)

 

(くっ!? このアラサー二人がぁぁぁ!!!!! まだだ! まだ終わらんよ! わたし以上の道化! 儚ちゃんを召喚して……なにっ!?)

 

「あ、あれ? 儚ちゃんは?」

「トイレ行ったぞ」

 

(そんな!?)

 

(ふっ……万事休すね優李!)

 

(なかなか面白かったわよ~。まあ、まだまだお子ちゃまってことを胸に刻みなさ~い。その平坦な胸なら刻みやすいでしょう?)

 

(ちくしょぉぉぉぉ!!!!!!!)

 

 優李は心の中で叫んだ。

 こんな展開があってたまるかと。

 わたしはあのアラサー二人に及ばなかったのだと。

 

「ふふ、本当に優李ちゃんは────」

「あ、あの……」

 

 話を遮り、町田が声を発した。

 これまでほとんど口を開かなかった町田は、意を決したように話し始めた。

 

「その、大矢さんは……今日はどうして来られなかったんですか……?」

「え……?」

 

 千佳は即座に察した。

 この町田という男は、サン狙いだったのだと。

 しかしサンは現れなかった。

 めんどくさい。行きたくない。

 代わりにお前ら行ってこい。というのが、今日の合コンに結城荘の入居者達が駆り出された理由。

 それを正直に話せるわけもなく……。

 

「えーっと、サンはちょっと忙しいみたいで……」

「あー、大矢さん忙しいって言ってたもんな~」

「そんな……そんな……僕は大矢さん狙いだったのに……!」

 

 町田の感情が爆発。

 それに呼応し、怪人の魂が町田に取り憑いた。

 緑色のステンドグラスのような意匠が施された怪人。

 目のような部分は突き出て、鞭を床に叩き付けて怒りを露にした。

 

 

 

 

 

 ふーすっきり……。

 お料理美味しくて満足……。

 なんで知らない男の人達とご飯食べなきゃなのかは、よく分からないけど……。

 

「申し訳ありません通ります~」

「あっ、いえ……あっ」

「ん? あっ! お前は!」

「ストーカー男……!」

「千佳さんと一緒にいた変なガキ!」

 

 ま、まさかこんなところまでストーカーしてたなんて……!

 

「す、ストーカー……! 警察に通報しますよ……! あ、あれ? ストーカー男、あなたは警察なはず……」

 

 ストーカーというか、普通に働いてる……?

 

「うぐっ……。あの、怪人になったところを上司に見られて……上に報告されてクビになったんだよ……! あとストーカー男じゃなくて津木纏だ!」

「それは……御愁傷様……」

 

 それに関しては可哀想。

 まあ、儚はなんにも悪くないのでそれぐらいしか感想が出てきませんが。

 

「今は知り合いがやってるここで働かせてもらってるんだ。頼むから仕事も恋路も邪魔しないでくれよ?」

「仕事は真面目にやってどうぞ……。ストーカーは通報……」

「ストーカーじゃない。愛のチェイサーさ────」

「きもっ。あとダッシュ使わないでください。というか、儚についてこないでください……」

 

 話をしながらなんとなく歩いていたけれど……まさか、儚にまでストーカーを!?

 

「ついていってない! 俺は飲み物を運んでるだけだ。そういえば、お前が来ているということは千佳さんも来てるのか?」

「お前じゃありません、儚です。儚・インフェルニティ・ブツダンブッカ・ソナエモン・ハカイブって立派な名前が儚にはあります」

「長いなぁ名前。寿限無みたいな名前の人間と初めて会ったぞ。それで千佳さんは!?」

「来てますよ。今日は皆さんとゴーコンに来てます」

 

 そう言うと、ちょうど儚達の個室に到着。

 ……なんだか、ストーカー男が固まっている。

 まあいいやと戸を開けると……。

 

「そんな……そんな……僕は大矢さん狙いだったのに……!」

 

 怪人……!?

 なんで!?

 

「ああ儚ナイスタイミング! ……って! ストーカー男!? なんで!?」

「千佳さん……どうしてこんな……! なんで合コンなんか! 合コンなんかしてるんだぁぁぁ!!!!!」

 

 ストーカー男までワニみたいな怪人に!

 二体も出てくるなんて……めんどくさい……。

 とりあえず、ここでは闘えない。

 緊急事態なので、ごめんなさい。

 心の中で謝ってから……ストーカー男を掴み、走る。

 もう一体の怪人も掴んで、助走をつけて……壁をキーック。

 二階だったので、掴んでいた二体を地面に叩きつけて儚は優雅に着地……。

 近くを歩いてた人達はみんな逃げてった……よし。

 

「ストーカー男の方には……ワニ獣人とカニアマゾン。もう一体は……カメレオンファンガイアとサラセニアン!」

 

 キセキレジスターで取り憑いた魂を解析。

 くぅ……尺が厳しいから、サクッとやる!

 キセキレジスターに速筆で書き込んで……。

 

「変身!」

 

《仮面ライダーハカイブ マシンヤイバー》

 

 紫の毒剣士マシンヤイバーに変身。

 

「うおおおお!!!!!! 千佳さぁぁぁぁん!!!!!」

「大矢さぁぁぁぁぁん!!!!!!!」

「に、似た者同士……!」 

 

 大きなワニが二本足で立ち上がったような姿に、カニの脚が生えたみたいなストーカー男の怪人態は見た目以上に素早いし、パワーもある……。

 緑の方は鞭をめちゃくちゃに振ってくる……。

 め、めんどう……。

 二体の攻撃を掻い潜りながら、キセキレジスターを手に取り書き込む。

 

「仮面ライダー……シザース」

 

《ウェポン シザースキャンサー》

 

 ハカイブの隣に並び立つ、銅色のカニさん。

 

「行っておいで……あのワニストーカーカニ食べていいから」

「シャアァァァ!!!!」

「えっ!? 共食いになっちゃうよ!?」

「シャアァァァ!!!!(特別意訳※問答無用)」

「ギャアアアアア!!!!!!」

 

 さて、今のうちに……。

 

「クロックアップ……」

 

 バックルのキセキレジスターを一度閉ざして、開帳。

 

《死神毒剣! 死神毒剣! マシンヤイバーブレイク!》

 

 シザースキャンサーがガジガジしているワニストーカーカニにチェイサーヤイバーを突き立て、まず一体。

 続いてあっちの緑色……

 

「あれ? いない……」

 

 緑色、どこいった……!

 探している間にクロックアップが終わって……ワニストーカーカニは爆発……したけど……。

 突然、背中に衝撃。驚いていると、今度は鳩尾に。

 肩、後頭部。

 攻撃が、姿が見えない……!

 

「カメレオンファンガイアの力……!」

 

 姿が見えないんじゃ、クロックアップしたところで意味がない……。

 こうなったら……!

 

《仮面ライダーハカイブ パニッシャーマグナム》

 

 仮面ライダースカルとアポロガイストの力をお借りして、更に……!

 

「仮面ライダーG4……!」

 

《ウェポン G4ミサイルランチャー》

 

 召喚された白い四つのミサイルを備えたミサイルランチャーを肩に担ぐ。

 その間にも、見えない攻撃がハカイブを襲う……けど、パニッシャーマグナムには効かない……!

 パニッシャーマグナムの黒い瞳が青く輝くと……見えた。

 数秒先の未来。

 

「そこっ!」

 

 振り返りながら、ミサイルを二発発射。

 しかし、ミサイルは透明な鞭が叩き落とし爆発してしまう。

 

「狙いどおり……!」

「なっ!?」

「お前の名は……緑男にしておきます! ファイヤー!」

 

 爆煙を裂いて、残っていた二発のミサイルが飛翔。

 鞭で迎撃することも出来ず、緑男にミサイルは直撃。

 こうして、二体の魂融合怪人は退治され、一件落着……。

 

 

 

 

 

 

 

「一件落着じゃなーい!!!!!」 

 

 翌日の結城荘。

 合コンは、有耶無耶のままに終わるは壁が壊れたのは何故かなど警察まで来て取り調べを受けることになったのだ。

 幸い、怪人騒動によるものということで誤魔化し、すぐに帰ってはこられたが……。

 

「はあ……ハイスペ男との合コン……。次の機会は~……」

「大家さん! またセッティングしてください! お願いします! 自分やれます!」

 

 リビングのソファでくつろぎ、紅茶を嗜む結城荘の大家、大矢サンに土下座する優李。

 しかし、サンはダメと首を振った。

 

「今回はたまたま貸しを作った代わりにセッティングしたんだ。そうでなかったら合コンなんてやらないよ」

「ちくしょー!」

「はあ……結婚が遠退く……」

「大丈夫だよ。千佳には私がいる」

「百合は趣味じゃなーい!」

「あ、ちなみに今回の参加者達からみんなに伝言が」

 

 その言葉に千佳と望、優李が食いついた。

 

「な、なんて!?」

「もうあの人達とはこりごり。だって」

「「「うあああ!!!!」」」

 

 膝から崩れる三人を横目に、儚は近くにいた莉緒に問いかけた。

 

「リオさん。結局、ゴーコンってなんなんですか……? 男女の戦いの場とのことですが……」

「……合コン、噂には聞いている。盛りのついた男と女が、体に悪い飲み物を飲みながら不道徳な行為に及ぼうとする不埒な会合だと……」

「名護さんじゃねーか」

 

 これまた近くにいたあゆがつっこむ。

 

「よく分かりません……」

「そうだね、私もよく分からなかった」

「莉緒さんもかよ!」

 

 またまたあゆがつっこんだ。

 

「不道徳な行いってなんでしょう……?」

「悪いことって意味だよね……。だったら、昨日のあれは有耶無耶に終わって良かったってことじゃない?」

「でも、チカさん達は残念そうにしてます……」

「そうだね……。あ、ねぇ、あゆちゃん。不道徳な行いって何かな?」

「えっ!? それは、その……あれだろ……セッ……」

 

 顔を赤らめ、恥じらいからあゆはそれを言葉に出来なかった。

 そんなあゆを、儚と莉緒を真っ直ぐ見つめている。

 

「セッ……なんですか?」

「なに? あゆちゃん? 教えて?」

「セッ、セッ……セタァァァップ!!!!!」

 

 そう叫び、あゆは逃げ出した。

 走り出すあゆの背を眺めながら、儚と莉緒は間違った知識を植え付けられた。

 

「仮面ライダーXって不道徳かな?」

「あう……戦士の墓場に情報ありません……」

「あの二人には保健体育を教える必要があるな……」

 

 女だらけの結城荘。

 今日も男っ気がまったくない女の園。

 ……であったが。

 




次回 仮面ライダーハカイブ

『逆襲ストーカー男』にご期待ください!

「にへへ……儚、この人と結婚します……!」

「「「「「えええええええ!?!?!?!?」」」」」
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