中野家if ~アナザーエイジストーリー~   作:真樹

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帰ってきた風太郎

 またいつものように夜遅く、喫茶なかのの扉が開かれた。

 

二乃「いらっしゃーい」

 

風太郎「よお、久しぶりだな」

 

二乃「フー君!? いつ帰ってきたの?」

 

風太郎「さっき空港からこっちに着いたばかりだ」

 

二乃「帰ってくるなら連絡してくれたら出迎えに行ったのに!」

 

風太郎「……? 四葉にはちゃんと連絡しといたはずだぞ?」

 

二乃「全然聞いてないわよ。まさか四葉、こんな大事なこと言い忘れてたんじゃないでしょうね……!」

 

 ライン! 

 

二乃「噂をすれば四葉から連絡だわ。

 

 

〈 四葉
 ☏ 三

 

.今日.

 

.
四葉

風太郎そっち行ったかも

ごめんだけどお酒は飲ませないでね

 

21:04

 

......
 
 
..Aa
☻︎..

 

……それより先に言うことあるでしょ……!」

 

 勢いよく開かれる喫茶なかの裏口の扉。

 

三玖「二乃! 四葉からの連絡見た!? フータローがこっちに帰ってきてるって──フータロー!?」

 

風太郎「よお三玖。お前もいたのか」

 

三玖「会いたかった!」

 

風太郎「おい急に抱き着くな、あぶねえって!」

 

三玖「だって、直接会うの三年ぶりくらいだよ」

 

風太郎「たまにあいつらも交えて電話したりしただろ。いいから離れてくれ」

 

三玖「ごめん」

 

二乃「それにしても四葉と一緒じゃないのね。もしかして実家に顔出しに来ただけ?」

 

風太郎「いや、お前らに用があった」

 

二乃「え」

 

三玖「え」

 

三玖「フータロー……それって……駄目だよ、フータローには四葉が──」

 

 

風太郎「とりあえず、一番強い酒をくれ……!」

 

 

二乃「何があった!?」

 

三玖「任せて。四葉のために買っておいたスピリタスが火を噴く時が来た」

 

二乃「来てないわよ! フー君が下戸なのあんたも知ってんでしょ! っていうかいつの間にそのフザけたお酒買ってたの!?」

 

三玖「でも二乃、フータローを酔わせるチャンスなんてこの先あるかどうか」

 

二乃「酔わせて何するつもりよ!? それにフー君もよ! いきなり何言い出してんのよ?」

 

風太郎「俺はもう父親として終わりだ」

 

二乃「……? 何かあったの? 話してみなさいよ」

 

風太郎「さっきお前らの家に寄ったんだ。四葉と楓が待ってたからな」

 

二乃「それで?」

 

風太郎「久しぶりに楓に会った時、言われたんだ。『おじさん誰?』って」

 

二乃「うわ」

 

三玖「南無」

 

風太郎「そりゃ三年も経ってるもんな……! 俺が日本を出た時、楓はまだ一歳だったし覚えてないよな……!」

 

二乃「それは確かに、つらいわね」

 

風太郎「しかもお義父さんもその場にいたんだが」

 

三玖「お父さん今日帰ってきてたんだ」

 

風太郎「楓が俺よりお義父さんに懐いてる素振りを見せた瞬間、俺の方見て妙に勝ち誇った笑みを浮かべやがって」

 

二乃「年々あの人性格悪くなってない?」

 

三玖「というよりあれが素なんだと思う。今までが鉄仮面すぎた」

 

風太郎「いくら昇進のためとはいえ、やはり海外出向なんて断るべきだったか……」

 

二乃「気持ちはわかってあげられるけど、フー君も四葉と楓ちゃんのために決断したことでしょ。今更後悔なんてするんじゃないわよ」

 

風太郎「だが」

 

二乃「楓ちゃんとはこれから思い出作ってあげなさい。四葉には止められてるけどお酒出してあげるから、明日からは切り替えること。落ち込んでるあんたなんてあんたらしくないわよ」

 

風太郎「二乃……」

 

三玖「とりあえず、はい。お水。先に飲んでおくと酔いが楽になるよ」

 

風太郎「おう、さんきゅうな」

 

二乃「待って。ちょっとそのお水貸して」

 

風太郎「なんだよ……?」

 

 スンスン

 

二乃「どギツいアルコール臭がするんだけど? 三玖?」

 

三玖「なんのことだか」

 

二乃「とぼけんじゃないわよ!?」

 

三玖「でもちゃんと透明だからお水だよ」

 

二乃「あんたは色でしか飲み物判断できないのかしら!? だいたい蒸留酒は大抵透明よ!」

 

三玖「それにほら、ちゃんと火も点く」シュボッ

 

二乃「普通水に火はつかない! さっきのバカげたお酒入れたって自分で白状してるようなもんじゃない!」

※スピリタスは火気厳禁です。現実では爆発するので絶対に真似しないでください。

 

風太郎「お、おいお前ら……」

 

二乃「今日三玖はフー君に飲み物出すの禁止! あたしが用意するわ。ほら、すっごい薄いジントニック。あんたはこれで十分よ」

 

風太郎「お、おう。さんきゅ……美味いな」

 

二乃「一応これで商売やってるからね」

 

風太郎「だが三年前はこの店で酒なんて出してなかったろ。それなのに今じゃずいぶん手慣れた様子だし、案外お前らも変わってきてるんだな」

 

二乃「そうよ。女はいつだって綺麗になり続けてるんだから」

 

三玖「フータローはあんまり変わってないね」

 

風太郎「まあ向こうにいたころは仕事しかしてなかったしな。それにこの歳になるともう成長とかないしな」

 

二乃「とし……」

 

風太郎「どうした?」

 

二乃「な、なんでもないわ……最近のあの子たちとの会話を思い出しちゃって……それよりフー君こそ大丈夫?」

 

風太郎「何がだ?」

 

二乃「お酒、ほとんど飲めないんでしょ? もう酔い始めてたりしない?」

 

風太郎「ああ、全然大丈夫だぞ。というかそもそも、俺は自分では別に飲めないと思ってないしな」

 

二乃「そうなの?」

 

三玖「そういえばフータローがお酒飲んでるところ自体見たことない。どんな風に酔うか知らないかも」

 

風太郎「結構前に四葉と、その時は五月もいたっけな、三人で飲んで以来四葉からもう飲むなって言われてんだよ」

 

二乃「覚えてないだけで粗相でもしたんじゃない。酔っ払いって結構そういうことあるから」

 

風太郎「そうなのか……」

 

二乃「ま、ヤバいと思ったらすぐ言いなさい。ちゃんと本物のお水も置いといてあげるから、こまめに飲むこと」

 

風太郎「ああ、悪いな。三玖」

 

二乃「え?」

 

風太郎「ん?」

 

二乃「フ、フー君、今私のことをなんて……?」

 

風太郎「三玖だろ?」

 

三玖「私は?」

 

風太郎「二乃……悪い、もしかして間違えたか?」

 

二乃「三玖こっち来て」

 

三玖「うん、フータローはゆっくりしてて」

 

風太郎「お、おう」

 

 

 

二乃「私から見たらフー君、全然酔ってないように見えるんだけどどういうこと?」

 

三玖「悪ふざけしてるようにも見えない」

 

二乃「でもだからこそ、大真面目に私たちのこと見間違えたってことよね?」

 

三玖「まさかフータロー、お酒飲むと私達の見分けつかなくなるんじゃ……?」

 

二乃「だとしたら四葉が飲ませたがらないのも納得ね……ちょっと電話で四葉に謝ってくるわ。フー君の相手してあげてて」

 

三玖「わかった」

 

 

 

 

 

二乃「戻ったわ。四葉、フー君迎えにこっち来るって──」

 

(頭に派手なリボンを付けた)三玖「ほらほら、風太郎もっと飲んで♪」

 

風太郎「今日はずいぶん機嫌がいいな四葉。お前が酒を勧めてくれるなんて」

 

三玖「久しぶりに会えたんだもん! それでさ風太郎、この後二人で夜の街へ出かけに──」

 

二乃「油断も隙も無いわねこの泥棒猫!」

 

三玖「……戻ってくるの早い」

 

風太郎「お、一花、お前も来たのか」

 

二乃「二乃よ! フー君はちょっと黙ってて! 三玖、あんたいい加減にしときなさいよ!?」

 

三玖「ワタシヨツバダヨー」

 

二乃「往生際が悪いわね!」

 

三玖「ミクジャナイヨー」

 

二乃「それは他所から怒られるからやめて!」

 

三玖「でも二乃、冷静に考えて」

 

二乃「なによ」

 

三玖「私たちは一体、何のために喫茶店をやり始めたの……!?」

 

二乃「自分の夢のためじゃないの!?」

 

三玖「私達の夢はおいしい料理を色んな人に食べてもらうこと。お酒は本当は関係ないはず。でもお酒をメニューに載せようって言い始めたのは二乃だよ? いざというときフータローに飲ませるためじゃないとしたら、二乃は何で夜にバーみたいな営業をしようと思ったの?」

 

二乃「恥ずかしながら、モテるためね」

 

三玖「本当に恥ずかしい理由……」

 

二乃「仕方ないじゃない! カフェの店員なんてオフィスラブも到底望めない出会いもない職業なんだから!」

 

風太郎「モテるためってお前……その、なんだ。よければ俺の会社のヤツでも紹介を──」

 

二乃「待ってフー君。正直涎が出るくらいありがたい申し出だけど、フー君には、フー君にだけはそういう気の使われ方はされたくない……!」

 

風太郎「なんでだよ。言ってることが矛盾してるぞ」

 

三玖「これは複雑な乙女心を分かってないフータローが悪い。五つ子以前の問題」

 

風太郎「?」

 

二乃「とにかく! 私のことは気にしないでいいから、あんたは四葉だけ見てればいいのよ!」

 

 カランカラン

 

勇也「うーっす、四葉ちゃんから連絡もらって風太郎預かりに来たぞー」

 

風太郎「あ、親父」

 

勇也「あの子もこっち向かってるってよ。お前トラブル起きるの分かってんだから酒飲むなよ。四葉ちゃんの身になってやれ」

 

風太郎「さっきもこいつらの様子がおかしかったし、何のことだ?」

 

勇也「自覚なしか……悪いな嬢ちゃん達。後はこっちで預かるわ。迷惑かけたな」

 

二乃「いえ、迷惑とかは特に」

 

三玖「お義父さん、四葉が迎えに来るって言ってましたね。風太郎今日はどこに泊まるつもり?」

 

風太郎「ああ、四葉から話聞いてないなら言っておかなきゃだったな。泊まりとかじゃなくて、海外出向が急に終わったんだよ」

 

二乃「え、じゃあ四葉達と一緒に東京に行っちゃうの?」

 

風太郎「それが会社が変な気を使いやがってこの辺の支社へ異動になってな。今あいつらと一緒に暮らす部屋を探してんだよ」

 

三玖「じゃあ、最初の質問に戻るけど、今日はどこに泊まるの?」

 

風太郎「まあ、ここの二階に四葉達を泊めるか、俺がお前らの部屋に居候だな」

 

二乃「!!」

 

三玖「!!」

 

勇也「普通に考えてうちだろうな。嫁入り前の嬢ちゃん達と一緒に住まわせるわけにいかねえし。ちとあの部屋の大人3人と子供は狭いかもしれな──」

 

二乃「お義父様。息子さんは責任を持ってお預かりします」

 

勇也「おお? いや、二乃ちゃん今の話聞いて──土下座はやめてくれよ!?」

 

二乃「三玖、私達が何のために喫茶店をしていたか思い出したわ」

 

三玖「夢のためでしょ?」

 

二乃「フー君のためよ! というわけでお義父様、許していただけなければ今後晩酌時はお義父様は出禁とさせていただきます」

 

三玖「ひどい掌返し」

 

風太郎「ハンドスピナーってこういうののことを言うのか?」

 

三玖「それは違う」

 

勇也「おいおいそりゃ無いぜ……まあ、嬢ちゃん達がいいなら別にいいけどよ。俺もここ来れなくなるの嫌だし」

 

風太郎「親父もそんなに入り浸ってるのかよ……」

 

 カランカラン

 

四葉「風太郎ー、迎えに来たよー。お酒飲んじゃったらしいじゃん。三玖に悪さされてな──」

 

(土下座中の)二乃「あ、四葉いらっしゃい」

 

四葉「なにごと!?」

 




オマージュネタがあることだけ、一応申告しておきます。
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