中野家if ~アナザーエイジストーリー~   作:真樹

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気になること

 午後3時。とあるスポーツジムの扉が開かれた

 

四葉「いらっしゃいませー」

 

五月「お邪魔しまーす……」

 

四葉「五月じゃん。どうしたの?」

 

五月「よかった、四葉いてくれた。入会しにきたんだけど。最近その、ちょっと冗談じゃ済まないくらい、ふ、太っちゃって──」

 

四葉「あーごめんごめん。お客さんとして来てくれたんだね。そしたら入会の手続きするから机の方まで来てくれる?」

 

五月「うん。あの、それとなんだけど私がここに来たことは他の皆には内緒に──」

 

三玖「四葉。言われたセット終わったよ。次何したらいい? あ、五月だ」

 

五月「早速バレてる!」

 

三玖「太ったの?」

 

五月「ストレートに聞かないで! あなたは上杉君ですか!?」

 

三玖「私が……上杉……! そうだよ。私、上杉三玖──」

 

四葉「三玖ー?」

 

三玖「ランニングマシン行ってきます」

 

四葉「よろしい」

 

五月「────行っちゃった……びっくりした、なんで三玖までここにいるの?」

 

四葉「五月と同じ理由だよ。風太郎が一緒に住むようになったから色々気になるようになったみたいで、私がインストやってるジムにこの前入会してきたんだ」

※インスト=インストラクターの略

 

五月「五つ子だなぁ。考えることは一緒なんだね。でも四葉はそれでいいの?」

 

四葉「ちょっと微妙な気持ちはあるけど、運動すること自体は悪いことじゃないしね。それに断ったって他所のジムに行くだけだろうし」

 

五月「それは確かに」

 

四葉「じゃあはいこれ。入会の申込書ね。書きながらでいいからいくつか教えてもらっていい?」

 

五月「うん」

 

四葉「身長は?」

 

五月「知ってるでしょ。159センチ」

 

四葉「聞かなきゃいけない規則なの。次、体重は?」

 

五月「りんご三つ分」

 

四葉「真面目に答えないと追い返すよ」

 

五月「申込書にだって書くとこあるじゃん……うぅ、ごじゅう──」

 

四葉「55キロだね」

 

五月「答える前に当てないで!? ……というかどうして知ってるの!? やっぱり聞く必要ないじゃない!」

 

四葉「次、バストサイズは?」

 

五月「きゅうじゅう──ねえスリーサイズ書くとこ無いけど、本当に聞かなきゃいけないこと?」

 

四葉「ちっ」

 

五月「なんで舌打ちしたの? え?」

 

四葉「何でもないよ。別に抜け駆けで大きくなってないか確認しようとなんかしてないよ」

 

五月「もしかして四葉、私も上杉君を狙ってるんじゃないかって警戒してる?」

 

四葉「別に?」

 

五月「本当に?」

 

四葉「次、風太郎と一緒の生活が始まった最近一番ドキッとした瞬間は?」

 

五月「めちゃくちゃ警戒してるじゃん!? 後それ今後そのイベント起きないようにするつもりだよね!?」

 

四葉「別に?」

 

五月「白々しい……」

 

四葉「次、目標体重は?」

 

五月「リンゴ三つ分」

 

四葉「本当にそのくらいになるまで走らせてあげようか?」

 

五月「……50キロ」

 

四葉「りょーかい。じゃあ残りは書いてくれた内容で全部大丈夫そうだから、これで手続きはおしまいだよ」

 

五月「意外と簡単なんだね」

 

四葉「入会がハードルにならないよう色々と苦労してるのです。まあ本当は後、口座登録とかいるけどね。お父さんのでいいでしょ?」

 

五月「うん」

 

四葉「じゃあ登録しておくよ。会員カードはすぐ発行できるけど、早速今日はやってく?」

 

五月「うん、そのつもり」

 

四葉「わかった。簡単に施設の案内するから後は自由に使ってて。私は書いてもらった申込書の入力終わったらすぐに上がりの時間だから、今日はちょっと傍に付けそうにないや。ごめんね」

 

 

 

五月「本当に走ってるんだね、三玖。お隣失礼するね」

 

三玖「ふっ、ふっ、どうぞ」

 

五月「えっと、動かすためには……あれ? スタートボタンみたいのないんだけど……」

 

三玖「使い方さっき四葉に教わってなかった?」

 

五月「聞いただけで実際に操作してるとこ見たわけじゃないから、えっと」

 

三玖「まずログインするの。アカウント作りたくなかったらゲストでも入れる」

 

五月「あ、これか。で、スタートと──動き出した。ありがと三玖」

 

三玖「どういたしまして。五月、別械の操作とか苦手じゃないよね? そんなに難しいわけじゃないと思うだけど」

 

五月「うーん、最近新しいこと覚えるのちょっと面倒に感じちゃうことがあって」

 

三玖「…………」

 

五月「どうしたの三玖? 微妙な表情してるけど」

 

三玖「何でも……五月、そういう風に思っちゃう原因とか調べちゃダメだよ」

 

五月「どうしてですか?」

 

三玖「自分が傷つくことになるから……!」

 

五月「よくわからないけど、実体験に基づいてアドバイスしてくれてるのはわかったよ。それにしても、よく走りながら喋れるね」

 

三玖「そんなに早いスピードにしてないし、結構来てるから」

 

五月「本当に上杉君のためにしてるの?」

 

三玖「だらしないところを見せたくないっていう理由で始めたのは本当だけど、元々健康には気をつけてたし」

 

五月「別に三玖はだらしなくなんてないと思うけど」

 

三玖「そうかな?」

 

五月「最近の一花と比べたら全然──」

 

三玖「それは比較対象がおかしいだけ。ああなったら人としておしまい」

 

五月「それ一花の前で言わないであげないでね。絶対に泣くから」

 

三玖「それより五月、ずっと喋ってていいの? 走りに来たんでしょ?」

 

五月「そうだね。三玖がいるからいつも通りの気分になっちゃってたや」

 

三玖「そこのレバーで速さ調整できるから」

 

五月「ありがと。それじゃあ、頑張ります!」

 

三玖「うん、頑張れ────五月? 速度上げすぎじゃない? もっとゆっくりペース上げないと……それもう全力疾走じゃ……五月!?」

 

 

 

四葉「で、転んだと」

 

五月「ごめんなさい」

 

三玖「ごめん、止めようとしたんだけど」

 

四葉「三玖が謝る必要ないよ。スタッフルームに呼びに来てくれてありがとね……それで、五月」

 

五月「はい……」

 

四葉「なんでしゅんとしてるの? 悪いのはこっちだから。初日なんだから私がちゃんと見るべきだったよ────管理が行き届かず大変申し訳ありませんでした」

 

五月「ちょ、やめてよ!? 私がミスしただけなんだから!」

 

四葉「そのミスを"させない"のがスタッフの仕事なんだって。だからごめんね」

 

五月「本当に、怪我もしてないから大丈夫だって。次はさ、ほら、色々教えてくれたらいいから」

 

四葉「うん」

 

三玖「大事にならなくてよかった。私はそろそろ帰るけど、五月はまだやってく?」

 

五月「ううん。私も今日はやめとくよ。次、四葉に見てもらえる時にしようかな」

 

四葉「それもごめんね。もう私もシフト終わりだから。良かったら一緒に帰ろうよ」

 

五月「いいよ」

 

四葉「じゃあ退勤の挨拶してくるから待ってて!」

 

三玖「あ、四葉待って私達も──行っちゃった。とりあえず、着替えてこよっか」

 

五月「だね」

 

 

 

五月「お待たせ」

 

四葉「戻ってきたらどこにもいないから先帰ったのかと思って焦ったよ!」

 

三玖「四葉が話聞かないで引っ込んでいったのが悪い。じゃあ行こ」

 

四葉「こうやって並んで帰ってると、高校の頃を思い出すね」

 

五月「そうだね。私達、卒業してからはバラバラの進路に進んじゃったしね」

 

三玖「一緒に遊びに行ったりとかはしてたけど」

 

四葉「私は仕事終わりだからそんな気分になっちゃうのかもなー」

 

三玖「…………」

 

四葉「…………」

 

五月「…………」

 

三玖「なんか物足りなくなり?」

 

四葉「え、なに急に?」

 

三玖「最近の私達ってもっと賑やかだったような」

 

五月「それはきっと、賑やかなのとやかましいのがいないからじゃないかな」

 

四葉「やかましいって言われてるのはどっちなんだろう……」

 

三玖「最近はフータローとはどうなの?」

 

四葉「さっきから急だね!?」

 

五月「あ、それ私も聞きたい。ほら、一応私達、邪魔しちゃってないかとかも含めて」

 

四葉「別に普通だよ。風太郎も邪魔とか言ってなかったし…………あ、でも」

 

五月「なに?」

 

四葉「最近ちょっと怪しいんだよね。なんかコソコソ電話してて、女の気配がする」

 

三玖「詳しく」

 

五月「事と次第によっては家族裁判をしましょう」

 

四葉「急な前のめり」

 

五月「一花と二乃含め私達は陪審員をします」

 

四葉「なんで海外式?」

 

五月「四葉、私含め姉妹に賄賂の準備を」

 

四葉「買収だよねそれ!? 風太郎を有罪にする気満々じゃん!?」

 

三玖「それで何があったの?」

 

四葉「いや、ほんとにちょっと怪しいってだけなんだよね。部屋に入った時電話してたんだけど慌てて切っちゃって、その時一瞬だけ向こう側から女の人の声が聞こえたんだ」

 

三玖「どんな声だった? 年頃は? 知ってる人そうだった?」

 

四葉「そんなグイグイと……そんなに私のこと心配してくれてるの?」

 

三玖「せんぱ──浮気相手のことを把握しておきたくて」

 

四葉「今先輩って言おうとしたよね? 風太郎を浮気させる方法教わろうとしてない?」

 

三玖「別に?」

 

五月「そのとぼけ方、私の入会手続き覗いてたね?」

 

三玖「そんなことないよ五十五キロ……あ、間違えた五月」

 

五月「どんな間違いですか!? 後やっぱり聞いてたじゃないですか!」

 

三玖「冗談はさておき」

 

四葉「本当に冗談?」

 

三玖「冗談はさておき」

 

四葉「二回言った」

 

三玖「気になるね。相手のことも、フータローの気持ちも」

 

五月「だね。四葉を悲しませるようなことをしてたら懲らしめないと」

 

四葉「別に私はそんなに疑ってるわけじゃ────」

 

三玖「ダウト。じゃあ今日の私達にまでフータロー絡みの話の時に警戒してたのはどうして?」

 

五月「三玖は最近の日ごろの行いのせいじゃないかな?」

 

三玖「ちょっと何言ってるかわからない」

 

五月「ふざけたこと言ってると今度配信を姉妹全員で視聴するからね」

 

三玖「なんで知ってるの……!?」

 

四葉「なんの話?」

 

五月「上杉君のこととは関係ないこと。でも、四葉が気にしてたのなら、今日の態度にも納得。事を荒立てないように私が探りを入れてみるよ」

 

四葉「でも……」

 

五月「迷惑とか思わないで。本人同士だと感情乗って話しちゃうこともあるから、こういう時は第三者が事実確認するのも有効な手だよ」

 

三玖「流石先生。こういうの慣れてる?」

 

五月「まぁね」

 

四葉「五月……ごめん、じゃあ、お願いね」

 

五月「うん、任せて」

 

 

 

 

 

風太郎「くしゅんっ」

 

竹林『なに風太郎、風邪?』

 

風太郎「いや、この感じは四葉辺りが俺の噂をしてるな」

 

竹林『この前の私たちの電話、浮気だとか思われてんじゃないの?』

 

風太郎「あー、あいつが最近よそよそしかったのってそれのせいか?」

 

竹林『え、本当に疑われてるの? さっさと説明しなよ。"嫁の惚気話してたところに本人来たから恥ずかしくて慌てて切ったって"』

 

風太郎「言えるか」

 

竹林「いやこれは本気のアドバイスだから。何だったら今すぐこの電話切って、四葉さんに電話してあげなよ。聞かれてから答えるよりグッと印象良くなるから」

 

風太郎「そういうもんか?」

 

竹林『そういうものだよ。それでよく結婚できたよ』

 

風太郎「同感だ。じゃあ助言の通り今日はこの辺にしとくぞ。あいつに連絡する」

 

竹林『そうしな。今度昔のメンツでご飯でも行こうよ。今更小学校の同窓会なんてないから、個人的なやつ』

 

風太郎「俺当時のやつらとあんまり仲良くなかったぞ?」

 

竹林『私とうちの旦那には勉強教えてもらった恩があるでしょ?』

 

風太郎「たかりてえだけじねえか。まぁ、そういえば碌な礼もできてなかったしな。最近はこうやって連絡取るようになったのも何かの縁だ、場を設けるよ。真田にも言っておいてくれ」

 

竹林『ちょっと』

 

風太郎「なんだ?」

 

(元)竹林『私も”真田”なんだけど?』

 

風太郎「そうだった。じゃあな」

 




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