夜7時、居酒屋の扉が開かれた。
「五名でお待ちの中野様ー! 大変お待たせしました中へどうぞー!」
一花「久しぶりの皆との外飲みだぁ! やっふぅ!」
二乃「テンション高いわねぇ」
三玖「あんまり騒がないで、恥ずかしい」
四葉「今日は何飲もっかなー」
五月「あまり強いのはやめなよ。体壊してほしくないんだから」
一花「お、個室じゃん。やっぱり五月ちゃんのおすすめの店だけあるねー」
二乃「柴田さんとよく来てるの?」
五月「何故二乃が私の職場の人の名前を知っているの!?」
三玖「前に五月の後を尾けた時に聞いた」
五月「ストーカーみたいなこと言わないで!」
四葉「とりあえず座ろうよ。メニューちょうだい」
三玖「はい」
四葉「ありがと。じゃあとりあえず私はウイスキーの──」
五月「生以外の人いる?」
一花「五月ちゃん、すっかり社会に染められちゃって……」
五月「四葉にいきなり強いの飲ませないためだよ!」
三玖「五月、ビール飲めたっけ?」
五月「ええまあ、普通に」
四葉「五月も大人になったねー」
五月「同い年でしょ」
二乃「ごめん私パス。カシスオレンジに変えさせて」
五月「わかりました。すみませーん! ……えっと、生四つとカシスオレンジで。あ、おつまみは後にします」
一花「それじゃあお酒も揃ったところで、かんぱーい」
一花以外の四人「乾杯」カンッ
一花「フータロー君が楓ちゃんの面倒見てくれるから、こういうの行きやすくなったよねぇ」
二乃「それにお父さんも家にいないから帰りが遅くなっても何も言われないし」
五月「日頃からいないじゃないですか」
三玖「でも、たまに遅くなる日とお父さんが帰ってくる日が重なると凄く怒られる」
四葉「みんなも良い歳なんだから大目に見てほしいよねー」
四葉以外の四人「…………」
四葉「ごめん! 今のは嫌味とかじゃなくて!」
二乃「わかってるわよ」
三玖「四葉のいう通り、ここにいる四人は大人なんだからこの程度じゃ怒らない」
一花「今日のお代全部持ってくれるくらいで全然許してあげるからさ」
五月「すみません大人は三人だったみたいです」
四葉「もう一花を受け流すのも淡々とこなすようになったねー」
一花「せっかくだしさ、早速聞いていい?」
四葉「何が?」
一花「二人目の予定ってないの?」
四葉「ぶっ!? 何言ってるの! 全然ないよ!?」
二乃「本当に? 改めてフー君と一緒に住むようになって実感したけど、結婚五年目でもあんた達全然変わらずじゃない」
三玖「らぶらぶ」
五月「それはもう胸焼けするくらいに」
四葉「ごめん! なるべく気をつけてるつもりだったんだけど!」
一花「あれで?」
二乃「抑えてる?」
三玖「本気で言ってる?」
五月「ぶち〇しますよ?」
四葉「なんで五月が一番キレてるの!?」
一花「とにかく、ここにはソロ活充実させてる年頃の女子が四人もいるんだから日頃の言動には気をつけて──なんで私たちずっとソロ活やってるんだろうね……」
四葉「自分で言ったことで傷つかないで!?」
三玖「年頃の女子?」
四葉「私がツッコミのタイミング逃したからって拾わないでいいよ!?」
三玖「うっ……」
四葉「なんで自分のツッコミでも傷ついてるの!? わざとやってる!?」
二乃「はー、カシオレうまっ」
五月「まだおつまみ来てないじゃないですか。よくそんなに美味しそうに飲めますね」
二乃「何言ってるのよ。酒に合う肴ならあるじゃない。ここに」
四葉「なんでこっち指すの。指折るよ?」
二乃「他人の恋路が酒の肴にならないなら、世の中のラブコメは絶滅してるわよ」
四葉「自分には関係ないから?」
二乃「ぶち〇殺すわよ?」
一花「ズレてるズレてる」
三玖「前にこのネタやらなかった?」
五月「姉妹の会話をネタって言わないでよ」
一花「はー、枝豆うまっ」
三玖「さっきの二乃のって」
二乃「もちろん普段の一花の真似」
四葉「おじさん臭いよ一花」
一花「姉妹でも言っていいことと悪いことってあると思うんだ」
四葉「そりゃ普通は言わないよ。一花以外には」
一花「私の評価について詳しく聞きたいな」
五月「改めて聞く必要ある?」
一花「何も改まってないんだけど。え、もしかして私のおじさん認定って姉妹の共通認識?」
三玖「withフータロー」
一花「……ごめん、傷ついたから帰る」
二乃「グラス空ね。おかわりは?」
一花「……大、一つ」
五月「帰る気ゼロじゃん」
四葉「私もおかわりいい?」
五月「アルコール度数10%以下でなら」
四葉「私だけソフトドリンク飲むのはいくらなんで気が引けるよ」
五月「四葉のアルコールの定義おかしくない……?」
三玖「せっかくだから一花の近況も知りたいな」
一花「三玖がそういうこと聞いてくるの珍しいね?」
三玖「そうだっけ」
一花「そうだよ。いつもなら三日に一回なのに」
四葉「多い多い」
五月「逆に頻度高すぎて進展も何もあったもんじゃないんじゃ?」
二乃「で、どうなのかしら?」
一花「残念だけど面白い話の持ち合わせないなぁ」
二乃「まあわかって聞いてたけどね。一緒に暮らしてるわけだし」
一花「どうでもいい話でいいなら、最近ハリウッドに出ることになったけど」
二乃「全然どうでもよくないわよ!?」
五月「一花、またアメリカに行くの!?」
一花「すぐ帰ってくるけどねー」
四葉「すご……一花どんどん女優として成功していくね」
一花「ほんと、ありがたいことだよね。好きで始めた夢がどんどん大きな形で成功していくんだから」
五月「一花のそういうところは本当に尊敬するよ。私も自分の夢を仕事にした身だから、背筋が伸びる気がする」
二乃「向こうでイケメン捕まえたら連絡しなさいよ?」
一花「やだなぁ、そんなことしたら邪魔しに来そうだからしないよ」
二乃「バレたか」
一花「否定して?」
三玖「帰る時も連絡してね」
一花「もちろんするけど、なにお出迎えしてくるの? やさしー」
三玖「残念だったね会、開くから」
一花「やっぱいいかなー……」
四葉「ていうか前提に捕まえられないっていう意味含んでない?」
一花「二乃はどうなの?」
二乃「何もなし」
三玖「本当? この前当たりのご飯引いたって言ってたじゃん」
二乃「え、私ご飯のこと聞かれてたの? 恋バナじゃなくて?」
五月「ていうか二乃、やっぱり合コンのことご飯としか思ってないんじゃ……」
二乃「失礼ね! ちゃんと男目的よ!」
一花「今度業界の人のツテで教えてもらった美味しいご飯屋連れてってあげるから……」
二乃「だから違うってば!」
四葉「でも二乃って結構とっかえひっかえじゃん。そろそろ六人目の彼氏できる予定だと思ってたけど」
二乃「本当に何もないってば。私、気がついたのよ」
四葉「何が?」
二乃「やっぱフー君のこと好きだわ」
四葉「ブチコロス」
二乃「嘘に決まってるでしょ。あの頃の気持ちは忘れないけど、流石にちゃんと前向けてるわよ」
四葉「だよね、よかった」
一花「こういう会話できるようになったのも、時が経ったからだよねー」
五月「本当に。高三の学園祭の後なんて、まるで針の筵にいる気分だったよ。ね、三玖?」
(涙目の)三玖「ぶち、ころす…………!!」
二乃「ごめんごめんごめん! 本物いたわ!」
二乃「あんたいい加減フー君のこと諦めなさいよ」
三玖「諦めてる……グスッ……」
二乃「説得力ないって」
五月「四葉、気分悪くしてたら三玖の代わりに私が謝るから。三玖も本気で彼のことを忘れようとはしてるんだけど」
四葉「別に大丈夫だよ。昔からだし。いい加減慣れたよ。それに」
一花「それに?」
四葉「自分の旦那にマジコイしてる人の話、ちょっと気分良いし……///」
一花「すみませーん! この店で一番強いお酒をこの人に!」
四葉「はい喜んで!」
一花「本人が返事しないで! これ罰だから!」
二乃「四葉も性格が悪くなって……」
五月「上杉君譲り? お父さん譲り?」
二乃「フー君譲りでしょ。私たちは性格悪くないし」
四葉「喧嘩売ってる?」
三玖「……グスッ……楓ちゃんに移らないといいけど……」
四葉「これから気をつけます」
五月「流れ的に次は私かな」
一花「話が早くて助かる♪」
二乃「それで柴田さんとはどうなの?」
五月「本当に何もないってば。ただの職場の同僚」
三玖「本当に?」
五月「このメンツで隠すことでもないでしょ」
四葉「自分以上の恥がもう出揃ってるから?」
五月「心の中当てないでよ」
一花「だから否定してっ!」
五月「そういえば告白はこの前されたかなぁ」
一花「すみませーん! この店で一番お酒強いやつを私に!」
二乃「二番目に強いやつ!」
三玖「三番目……!」
四葉「一花と同じの!」
五月「四葉は四番目……ちが──全部キャンセルでっ!! みんな生と、一個だけカシオレおかわりで!!」
一花「二杯目かんぱーい」
一花以外の四人「かんぱーい」
二乃「それじゃあ五月、詳しく」
五月「詳しくっていっても、断ったけど」
一花「ホワイっ!?」
五月「一花、"why"ね」
三玖「なんで断ったの?」
五月「普通に私には合わないと思ったから」
四葉「意外。五月だったら『私のことを好きになってくれる方なら』とか言うのかと」
五月「何それ」
二乃「合わなかったって、顔?」
五月「二乃みたいに面食いじゃないって」
三玖「じゃあ性格?」
五月「それでもないかな」
四葉「まさか、人類じゃなかったとか……!」
五月「張り倒すよ?」
一花「収入とかだったりして……なんちゃって」
五月「そうそう」
一花「一番外れてて欲しかった……!」ダアンッ
二乃「ごめん五月」
三玖「流石にそれはちょっと」
四葉「引くかも……」
五月「何で!? この歳で結婚するからには安定した将来を望める殿方を望むべきだと思うのですが!?」
一花「一理あるけど……ちなみに五月ちゃんの合格ラインは?」
五月「お父さんと同じくらい」
五月以外の四人「…………」
五月「え、何?」
一花「それじゃあこれからは、将来が潰えた姉妹の一人を慰労する会と言うことで」
二乃「異論なし」
五月「別に潰えたわけじゃないでしょ」
三玖「確かに、お母さんとほとんど同じ顔とほとんど同じ性格の五月なら、もしかしたらあるかも……?」
五月「でしょ?」
四葉「でもお母さんが結婚したのって23とかでしょ? 私たちは──」
五月「……………………夢から覚めました」