あんまりしないんですが、前書きで少しだけ言い訳を……
今回は執筆用機材の新調をしたのでタイピングに慣れるためのお試しがきです。
なので山なし落ちなしの超短編です。
子供の頃から小さな夢があった。
女の子だったら誰もが一度は思い描いだことがある夢。お嫁さん。
その願いが叶った時、私は何をしたらいいのだろうと思ってしまった。
ううん。「しまった」なんて悪い言い方をしてしまったけど本当は全然悪いことだなんで思っていない。
むしろ私の胸の中はずっとポカポカしていて、幸せが絶えずこぼれ落ちそうになってしまうほどなのだから。
「おい四葉。なにニヤニヤしてるんだ」
「ふぇ!? 上杉さん、私ニヤニヤしてましたか!?」
「してたぞ。思いっきりな」
「はうっ!」
いけない。どうやら本当に幸せが溢れてしまっていたらしい。
せっかく上杉さんがまたデートに誘ってくれたというのに変な子だと思われてしまう。
……まあもしかしたら既に思われてしまっているかもしれないけど、本人からはっきり言われているわけじゃないからセーフということで。
「それで行きたい場所は決まったのか?」
「あ、えと、その……まだです」
「あれだけ時間使っといて何してたんだよ……」
「私にだって色々と考えたいことがあるんです!」
「そ、そうか。悪い」
「ごめんなさい! 別に本当に怒ってるわけじゃないです! そんなに落ち込んだ顔をしないでください!」
まただ、いけない。まさか上杉さんと付き合えていることが嬉しくて顔がにやけてしまっていたなどと言えるわけもないから、思わず強く否定してしまった。
どうしようこれで嫌われたら。
「ま、じっくり考えてくれ。あいにく時間だけは嫌というほどあるからな」
「そんな、受験でお忙しい上杉さんの時間を浪費することなんてできません。なるべくパッと行ってパッと帰って来れるような場所をすぐに考えつきますから」
「四葉」
「なんでしょうか。もしかして上杉さんの行きたい場所ができたりしたんですか!?」
「俺のことは気にするな。確かに受験勉強は忙しいが、今日はお前のために一日を使うと決めている」
「ふぇ……!」
「だからここでダラダラしてようと俺の目的は達成されてるし……その、なんだ……楽しんでるから、気にするな」
「上杉さん……!」
嬉しすぎる。
好きだってこの前告白をちゃんとされたって言うのに、あの時と全く引けを取らないほど胸のうちが幸せで満たされる。
ううん。元々満たされているから、もう溢れかえっている。
今すぐこの気持ちを吐き出さなければ私の器が壊れてしまうほどに。
「四葉!? どうした急に抱きついて来て」
「ごめんなさい上杉さん。少しこのままでいさせてください」
温かった。私より体温が高いとか、そんな上杉さんみたいな理屈っぽい意味ではなくだ。
上杉さんと触れ合っている場所から、胸の奥まで、頭の中まで、全部ポカポカして来てまるでお湯の中を泳いでるような気がする。
ずっとこうしていたい。だけど本当にこれで一日が終わってしまうのは勿体無い。でもやっぱりこうしていたい。
頭の中で何度も同じことが堂々巡りで繰り返される。
その間も私はずっとこの温もりを確かめていた。むしろこの時間が終わらないように私は無意識に時間稼ぎをしてるのかもしれない。
私の中の溢れる思いを零さないようにこうしているのに、次から次へと幸せが湧き出てくる。
これじゃキリがないよ。
「四葉……」
「上杉さん。わがままを言ってるのはわかっています。でももう少しだけ」
「いや、そうじゃなくてな」
「え?」
「俺も、もう我慢が無理そうだ」
「!!」
私が包んでいたはずの温もりが、私を包み込んできた。肩から腰へ強く、だけど潰さないように優しく包んでくれる彼の両手は最早私を溶かしてしまうのではないかと思うほど熱かった。
熱すぎて、さっきから零れ続けている私の想いが沸騰しそうなほどだ。
それにそんなことをされたら、満杯のカップに更に注がれるようなことをしたら私は……
「はうぅ……」
「四葉? おい四葉!? 急にどうした!? ここで寝るな!
ここ外だぞ!」
これから私がしないといけないのは、この幸せに溺れないようにしないといけないのかもしれない。そう思ったのだった。