みんなの冒険譚   作:DCT

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 久々に小説を書きます。昔は心の病気(厨二病)(不治の病)のせいで色んなところに黒歴史を残し、正気に戻った結果「くっ、殺せ!」といった状態に陥り、挫折しましたが、もう一度挑戦してみたくなった(再発)ので頑張って完結目標に書いてみます。もしかしたら途中で正気に戻るかもしれないのでその時は作者を憐れんでください。


最初はレベル1じゃなくても良いよね

 

「はぁ、はぁ……」

 

 長く走り続けていたせいでそろそろ体力が限界に近づいてきていた。額からたらりと汗が流れ落ち、それを拭う暇もなく乱雑に立つ木々の隙間を駆け抜ける。

 地面から飛び出る木の根が作り出す凹凸に注意しながら懸命に走る俺の体力を容赦なく削り取っていく。

 同じような種類の木々が生える森の中、整備された足場なんてどこにもなく、最悪なことに慣れない俺よりここで暮らす奴らは着実に距離を詰めてくる。

 どんどん近づく獣の咆哮に焦りそうになるが、何度も足を取られそうになりながら、しかしそれでも走ることはやめない。

 迎撃する事は可能だが、それは平坦な地で視界が広い場合だ。こんな足場が悪く、木や草が生い茂り視界が狭い場所で戦闘になれば苦戦は免れない。最悪、奇襲を許し、死に至る可能性もある。

 俺は肩下まで伸びる銀色の髪と頭の天辺に生えるうさ耳を靡かせながら、この森の中を走り続ける。

 

「っ!見えた!」

 

 俺の視界の先には森が終わり、短い草が生える平原、そしてその先にいる仲間達が手を振っていた。

 残った体力を振り絞り、全力で走る俺の後には黒い狼の群れが数メートル離れた位置で追いかけていた。

 

 暗い森を抜け、太陽の光を浴びた俺は顔や腕、脚等、身体全体に泥や木の葉がくっついているのを晒されるも気にせず仲間たちの下へと駆けた。

 

「ソウタ!」

「行くよ!『サンダーレイン』」

 

 ソウタ、俺の友人である彼、いや、今は彼女(・・)はいかにもファンタジーの魔法使いが使いそうな杖の先に魔導書を取り付けた武器を掲げ、空に黄色の魔法陣を展開させ、魔法を唱えた。

 そして、魔法陣から雷の雨が降り注ぎ、俺を追いかけてきた黒い狼の群れに直撃し、その黒い毛皮を更に真っ黒に変える。

 

「ごめん、ちょっと残った」

 

 ソウタは杖を降ろすと、あははと笑いながら申し訳無さそうに謝った。

 運良く雷の雨を免れた狼達は仲間の死体を気にも止めず俺達へ殺意を向けて襲い掛かる。

 

「ワイドシールド!」

 

 だが、その狼達の鋭い牙や爪は俺達の前に出た大盾を構えた大男がスキルを発動させ、全て受け止めた。

 狼達は大男の出した五枚の半透明の大盾に遮られ、勢いを止められ、大男の後ろで待機していたもう一人の男が弓を構えて、同時に三本の矢を放つ。

 

「ギャインッ!」

 

 同時に三体の狼の額にそれぞれ矢が刺さり、一撃で絶命させる。

 弓を使う男はフッと笑うと、背中の矢筒から更に矢を取り出して連続して矢を放つ。

 その全ての矢は確実に狼の脳天を貫き、残った狼達を徐々に減らしていった。

 

 群れを率いていた狼のボスは次々に殺られていく仲間達を見て、動揺していた。最初は間抜けな兎が森へと迷い込んできたと思い群れで狩りを仕掛けたが、まさか、自分達が狩られる側になるなんて考えてもいなかった。

 既に三十以上いた仲間は自分を残し誰もいなくなった。残る自分も同じように殺されるのだとしたら、少しでも自分達の矜持を賭けてあの、自分達を嵌めた兎に一矢報いてやろうと逃げず、ここで奴を仕留めようと決心した。

 

 他の狼より一回り大きい狼は大盾を構える大男の隙をついて飛び越え、後にいた俺を狙って飛びかかる。

 長距離を走った俺は疲労困憊といった状態で、息を整えていた。

 狼はその隙だらけの姿に笑みを浮かべ、首へ喰らいつこうと鋭い歯が揃った口を開く。

 

(エス)さん!」

 

 弓を持った男が俺の名を叫ぶ。

 

 Sは狼の存在に気付いたがもう遅い。この大きな口はもう止められない、そう、狼は確信した。

 だが、その口は牙が届くことはなく、首から数センチのところで止まってしまった。

 何が起こったのか分からないまま狼は地面に転がり落ちると、自分の頭が落ちた事にようやく気付く。そして最後にいつの間にか剣を振り抜いている兎の少女の姿を捉え暗闇に意識を落とした。

 

「ふぅ~」

 

 俺は大盾を持った大男、マサムネを飛び越えて近くまで迫っていたことに驚いたが、この世界に閉じ込められて(・・・・・・・・・・・・)何度も経験した反射神経で、剣を振り抜き狼の首を斬り落とした。

 剣には狼の血が僅かに付いてしまったが、時間が経つとポリゴンとなって消えていった。

 黒焦げになっていた狼も、矢で射抜かれた狼も、俺が斬った狼もドロップアイテムを残し、全て光の粒子となり、消えていく。

 

《レベルアップしました》

 

「ん?一週間ぶりか?」

 

 最近は世界の攻略よりも依頼(クエスト)を受けることのほうが多かったから強敵と戦うことが少なく、経験値もあまり稼げなかった為、レベルアップするのに時間がかかったのだろう。

 久方ぶりに聞いた機械音声のレベルアップの知らせに、俺は一息ついた。

 

名前:S 性別:女 種族:兎人

Lv56→57

HP1365→1388(1488)

MP775→788(888)

STG620→627(897)[1031]

VIT285→290(546)[573]

INT175→178(208)[218]

RES175→178(299)[313]

DEX285→290[304]

AGI545→552(662)[794]

LUK285→290[304]

ステータスP0→5

・スキル

『アビリティソード・炎』

『ナインスラストシャイン』

『スパーキングコメット』

『獣化・兎』

『縮地』

『四段ジャンプ』

『アクセラレーション』

『気配察知』

・称号

剣王 Aランク冒険者 モンスターキラー 韋駄天 ジャイアントキリング 蛮勇 戦闘狂 兎人族の英雄 

・装備

武器:天炎剣ヘブンズブレイズ

頭:水晶花の髪飾り

腕:白兎の紅炎グローブ

胴:白兎の紅炎メイル

腰:白兎の紅炎スカート

足:白兎の紅炎ブーツ

装飾品1:兎人族の英雄の指輪

装飾品2:吸血姫の首飾り

 

 新しく入ったステータス(ポイント)はいつも通り、STGに3、AGIに2振っておく。

 

 ステータスウィンドウを閉じた俺は狼が落としたドロップアイテムを拾う三人を手伝う。今回で目当てのドロップが落ちていなかったら、また森の中を周回して十キロマラソンをさせられる羽目になるので、この回でレアドロップを引きたいところだ。

 この黒い狼の落とすアイテムは大抵牙や爪、毛皮等で低確率で骨や肉、魔石が出る。そして、超低確率でレア素材の『黒狼の鋭眼』という目玉を落とす。

 この素材がどう使うのか分からないが、武器や防具、装飾品、はたまたポーションや料理等で使用されたりする。正直目玉を身につけるとか食べるとか気持ち悪いが、効果は絶大なので、需要はある。

 

「おっ、おおっ!あったぞー!」

「マジで!やったじゃん!」

「これでエスさんも開放されるね」

 

 顎髭を揺らしながらちまちまとゴツい手で牙や爪、毛皮を掻き分けていたマサムネが見つけた『黒狼の鋭眼』を掲げ、野太い声で歓声を上げる。ソウタと弓を持った男、シオンが同じように喜び拍手する。

 

「死ぬほど走らされた。この恨みは忘れない」

 

 俺も見つかった事は嬉しいが、このために何回も走らされた事は許してない。例え、俺以外のメンバーが黒狼から逃げ切れないとしても、あの複雑(クソみたい)な地形を何往復もさせられ、毎日毎日狼達と鬼ごっこ(逃げる側)したのはかなり辛かった。

 

「仕方ないよ。僕は魔法アタッカー兼ヒーラーだからAGIには最低限しかステータスP振ってないし、マサムネはゴリゴリのタンクでAGIは無いに等しい。シオンもそこまで速いわけじゃ無いから、適任はエスしかいなかった」

 

 ソウタの言う通り、パーティ内で魔法を一番使う彼?彼女?は基本INTとMPにしかステータスPを使ってないし、わざわざAGIを上げる魔法を使っても先にMPが尽きる。マサムネも種族がドワーフだからAGIは元々低いよう設定され、一切ステータスPを振ってない。シオンも振ってない訳じゃないが、スキルにAGI上昇のものはないし、俺のほうが圧倒的に速い。

 

「だとしてももっと何かあったでしょ。わざわざここまで引っ張って来る必要あった?」

 

 何度も思ったが、森の中へ一人黒狼を探し回り、皆のいる平原まで連れて行くより、全員で森の中に入ってその場で狩ってしまえばいいと思っていた。せめてタンクのマサムネがいればあの最悪な足場でも苦戦すること無く奴らを殺し切る自身があった。一人だとあの数を相手するのに命懸けで何時間も長期戦を強いられてしまう。

 いくら過去にモンスターの大群相手に一人で戦い続けた経験があったとしても、次もうまくいくとは限らないのだ。

 

「あのくらい密集した森の中だと、僕とソウタさんはほぼ戦力外になるし、万が一逃げなくちゃならない時にマサムネさんが足の遅さで絶対逃げ切れないでしょ。なら、エスさん一人に行ってもらって一人で狩れるなら狩る。無理ならここまで引き寄せて全員で殺るしか案が浮かばなかったんだよ」

 

 確かに、シオンの言う通りシオンとソウタは遠距離アタッカー故に遮蔽物が沢山あるどころじゃ普段の戦い方ができないし、マサムネの鈍足じゃ万が一の時に逃げられない。ならいっそ俺一人だけがあの森の中に入ったほうが安全だというのは頷ける理由だ。

 俺もそれ以外の案が浮かばなかったので反論はできなかった。

 

「はぁ~」

 

 俺のため息と共にシュンとうさ耳と尻尾が垂れ下がる。この世界に来た半年前から俺の感情と共に色んな反応をするこれ(うさ耳と尻尾)は最初こそ恥ずかしくて何とかならないか模索していたが、どうにもならないことを知り、今では気にしないことにしている。

 

「目的のものも手に入ったし、帰ろうぜ」

「帰ったらご飯食べに行かない?僕達、最近は携帯食しか食べてないから久しぶりに美味しいもの食べたい」

「じゃあいつものところにする?僕はハンバーグが食べたい」

 

 俺の落ち込みを無視して、三人は拠点にしている街へと歩き出す。美味しいご飯なら俺だって食べたい。

 

「俺を無視して先に行くなー!」

 

 俺は走って三人の後を追いかけ、平原を駆け抜けた。

 そして、俺達四人で他愛ない話をしながら遠くへ見える大きな城塞都市へと向かった。




 ステータスについてですが、素の数値+ステータスP(装備)[称号]の補正数値になってます。条件次第ではこれ以上になったりもします。
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