みんなの冒険譚   作:DCT

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 最初からスタートしろよと思う方がいると思いますが、既に何度も挑戦し撃沈済みです。申し訳ない


三話目で過去編とかどうなってんの?

 

「今日も1日生還したことに乾杯!」

「「「乾杯!」」」

 

 一ヶ月前にゲームの世界に突然閉じ込められ、デスゲームが始まって少しつづ落ち着いた今。俺達は『勇者の飯処』でそれぞれ注文した料理を前に、ガチンとお互いのジョッキを叩き合う。

 店内はゲームの攻略に精を出すプレイヤー達が今日の戦果を出し合ったり、互いに情報交換をしながら美味しい料理に舌太鼓を打つ。始まったばかりの頃の陰気な雰囲気は少なくなり、歌声や笑い声が絶えない陽気な場所となった。

 

 リリムや青髪の猫耳を生やした女の子がちょろちょろと酒場の中を動き回る中、俺達は今日の戦果を自慢し合っていた。

 

「ぷはっ!今日だけで最初の頃の十倍は稼いだな!」

「うん。あの頃に比べたら連携も上手くなったし、効率よくモンスターを狩れるようになったよね」

 

 エールを一気に飲み顔を赤くした俺は高らかに言う。それをちびちびとエールを飲むシオンがしみじみと頷く。

 

 デスゲームが始まった日はとにかく四人でどうしようどうしようと言い合うだけですぐに行動できたりすることが出来なかったが、次の日からモンスターを狩ってLvを上げて生存率を上げていこうと取り決め、今ではスライムやゴブリン程度じゃ片手間で倒せるくらいには強くなった。

 それは現在でも続いて、十分にLvを上げたら次の場所へ、また上がったら次の場所へと移動し、未だLv10未満が八割もいる中、俺達は全員Lv15を達成していた。ゲーム内の掲示板スレなんかではLv10超えのプレイヤーを上級冒険者と呼んでいるっぽい。

 

「お金にも余裕が出てきたし、自分達だけの家とか購入したいよね」

「宿屋は金がかかるからな。今後何時までこの世界にいるか分からんけど、家があれば色々便利な機能を付けれるし、良いんじゃない?」

 

 ソウタが口にポテトを頬張りながら言うと、マサムネがラーメンを啜りながら答える。

 家の購入については俺も賛成だった。

 

 宿屋は一人一泊するのに50G、俺達は四人で二人部屋を二つ借りて泊まっているので200Gだ。最初の頃はモンスターと戦うのも怖く、剣を適当に振り回したり、見当違いの方向に魔法を放ったり、しっちゃかめっちゃかで一日500G稼ぐのがやっとだった。宿屋に200G、食事に200Gくらい、余ったお金でポーションや装備を整えてお金を貯金する余裕なんてどこにもなかった。

 だが、上級冒険者になった俺達は一日5000Gは確実、多い時は10000G稼げるときもあったお陰で、貯金はそれなりに貯まっていた。

 家を購入すれば毎日払ってる200Gが無くなる。つまり、ポーション等の消耗品を何時もより多めに買えるようになるのだ。死が当たり前になったこの世界でポーション一つで運命が変わると言って過言ではない。家を買うということは俺達の生存率にも繋がるのだ。

 

「家買うなら安いのだと20万Gは最低限必要だから……ギルドの依頼(クエスト)二つ、三つ受ければ貯まると思う」

「クエストかぁ……プレイヤー名義のクエストはほぼぼったくりだからギルド名義のやつがあれば良いんだけど……」

「無理だろ。掲示板で独占してるプレイヤーがおるって噂になっとる」

「実際定期的にギルドに通ってるけど、ギルド名義のクエストなんて一度も見たこと無いよ」

 

 ソウタが注文していたステーキをナイフとフォークで切ろうと悪戦苦闘しながら言う。

 

 クエストにはプレイヤー名義の委託依頼とギルド名義のデイリークエストと呼ばれる毎日更新される依頼がある。プレイヤー名義の委託依頼の内容はプレイヤーがギルドに依頼を出して、他のプレイヤーがその依頼をクリアしてお金を貰うシステムだが、基本的に相手プレイヤーの利益ばかり考えた物で、適正価格での依頼は全くと言っていいほどない。

 逆に、ギルド名義の依頼は、ゲーム側から設定されたものだから全て仕事に見合う報酬が用意されてかなりおいしいとされている。

 だが、最近は一部のプレイヤーが徒党を組んでギルド名義の依頼を独占しているらしい。毎日のようにギルドに居座っていて依頼が出たら速攻で全部奪って受諾するセコいプレイヤーが何人がいるのだ。一度、他のプレイヤー同士で喧嘩になったこともあり、先に手を出したプレイヤーがこの街の平和を守る騎士団に連行されていくところを確認されている。そのせいで下手に暴力に訴えることができず、文句を言ってものらりくらりと躱されてしまう。今じゃ、プレイヤー同士で依頼を取り合う物取り競争となり、一部では今日は誰が取るか掲示板内で賭け事も行われているようだ。

 

「やっぱりコツコツとモンスター狩ってお金を貯めるしかないか……」

 

 そう言ってエールをごくごくと飲んでいるとガラガラと店の扉を開けて大きなリュックを背負い、灰色のローブで全身を隠し、フードを深く被ったプレイヤーらしいき人物が入ってきた。

 怪しげな格好の人物の登場に店内で騒いでいたプレイヤー達は一瞬で静かになりその人物に注目した。

 

「えっと、いらっしゃいませ!お一人様でよろしいですか?」

「悪いが飯を食べに来たわけじゃない。この中にエス、シオン、ソウタ、マサムネという名のプレイヤーはいるか?」

「えっと……」

 

 リリムがいつも通り接客しようと話しかけたが、怪しいプレイヤーはリリムに構うことなく店内を見渡し俺達の名前を呼ぶ。

 リリムは困ったように俺達の方を向く。

 

 どうする?とシオンが目で訴える。正直俺達の知らない奴だしこのまま無視したいが、いつも世話になってるリリム達従業員を困らせたくはない。

 

「俺達がそうだけど」

 

 俺は席を立ち上がり怪しいげなプレイヤーに返事をする。

 怪しいげなプレイヤーはこっちを見てそのまま普通に近づいて来た。

 

 店内に謎の緊張感が走る。

 怪しいげなプレイヤーは俺達の前まで来ると深く被ったフードをゆっくりと取る。そして、隠していた素顔が露わになった。

 黒い髪を肩まで伸ばした可愛らしい顔立ちをした十代中盤の少女だ。耳が尖っていることからエルフのプレイヤーだと言うことが窺える。

 

「あなた達の噂は知っている。頼みがある。どうか私の話を聞いてもらえないだろうか?」

 

 少女は真面目な顔で頭を下げ、俺達に懇願してきた。

 いきなりのことで呆気に取られた俺達は直ぐには反応できなかった。突如重苦しい雰囲気が漂っていた店内で、怪しかった人物がフードから綺麗な顔を覗かせ、体を90度近く曲げて叩頭する姿は少しの間その場の時間を止めてしまう程の衝撃があった。

 正気に戻り、とにかくこのままじゃ行けないと思った俺は慌てて彼女に向かって言う。

 

「取り敢えず話は聞くから座ってよ」

「本当か!ありがとう」

 

 少女は顔を上げて嬉しそうにそう言った。

 俺は少女を席に案内すると他の三人が「大丈夫か?」と聞くように視線を投げかけて来たが、話だけ聞いてみようと合図した。

 店内のプレイヤー達はと言うと、チラチラと俺達が気になっている様子だったが、先程と同じように自分達の会話に戻っていった。ちなみにリリムだけはウェイトレスの仕事をしながら心配そうな顔でこっちを見ている。

 

「話って何?」

「……どこから話せば良いか分からないが……まず、私の名はカスミ。Lvは10、見ての通りエルフで風魔法中心の魔法アタッカーをやっている。クランには所属してない。ソロでフリーで活動してる。今回はあなた達に話を持ってきたのは、クランに所属しておらず、現時点で高Lvのプレイヤーだったからだ」

 

 俺が話を促すと、少女は自分の自己紹介をするところから話し始めた。

 Lvが10と言うことはギリギリ上級冒険者に当てはまる。そして、クランに所属せず、ソロで活動しているというのが本当なら彼女はかなり凄腕のプレイヤーになる。

 

 この世界でソロで活動するという事はとてもじゃ無いがまともとは言えない。

 

 例えば森でゴブリンとの戦闘時、スタンを取られたら一発アウトでタコ殴りにされ確実に死んでしまうし、群れで活動するウルフ系のモンスターに出会えば数の暴力で押し切られて死んでしまう。

 他にも街中でも一人でいることは推奨されてない。基本モンスターが入りこまないセーフティゾーンにも関わらず何故かと言うと、今いる全てのプレイヤーが善良という訳では無いからだ。

 

 元々このゲームではセンシティブな行為が出来るようになっていて、両者の同意があればヤれないことはない。だが、デスゲームに変わってから何故か、その同意するシステムが無くなっており、デスゲーム開始数週間で数十名の女性アバタープレイヤー(・・・・・・・・・・・)が街中で襲われている。

 

 今現在はとあるクランが設立され、そのような犯罪は少なくはなったが、0ではない。そのような理由でソロでの活動は推奨されてない。信頼できる仲間とパーティを組むことが一番安全だ。

 彼女が今でも不自由なく活動できているということはそれらを跳ね除けられる実力が有るという証明になる。

 

「……なるほど、それで?」

 

 ソロで活動していることに驚きはしたが、話を進めるためにも俺は続きを促す。

 

「あなた達は『エリアボス』と言うモンスターがいることは知っているだろうか?」

「確か、各エリアに存在する複数のプレイヤーで討伐が推奨されているモンスターだよね」

「前までは倒しても一日で復活してくるモンスターだったけど、今は一回倒したら二度と復活してこないやつ」

「けど、情報によれば見たことのない攻撃や行動をしたり、NPC同様にリアルな会話もできるらしい」

 

 カスミが質問すると、ソウタ、シオン、マサムネの順でそれぞれエリアボスについて知っていることを話す。あと、付け足して加えるとするなら最大で六人までしか同時に挑めないことだ。

 これらの情報はとあるクランが実際にエリアボスを討伐して手に入れたもので、各プレイヤー達に掲示板を通して伝達されている。知らないのは掲示板を見てないやつだけだ。

 

「知っているなら良かった」

「それで、エリアボスの話をするってことは……」

「ああ、エリアボスを私達で退治したい」

 

 カスミが真剣な顔つきで言う。

 エリアボスはプレイヤー達にとって討伐すれば、多くの経験値やアイテム等が得られる美味しい獲物だ。故に倒すことを目標にする者は多く、実際にこの一ヶ月で二つのクランが六人パーティで既存の6体のエリアボスを討伐するため行動していた。既に全てエリアボスは倒され、残っていないと思われていたが、今更俺達に頼んでくるという事は……

 

「未知のエリアボスか……」

 

 途中から周囲に聞こえないように小声で話していたが、細心の注意を払ってここにいる俺達以外聞こえないくらいの音量で喋る。

 カスミはコクリと頷く。

 

「でも何で僕達なの?他にもLvが高いプレイヤーはいるでしょ?」

 

 シオンが首を傾げて質問する。確かに、シオンの言う通り俺達以外にも高レベルのプレイヤーはいる。特に上級冒険者が何人も集まるクランが二つ存在し、クランに所属せずともLvが10以上のプレイヤーは少なからずいる。

 俺達に話した理由がわからない。

 

「まず私はクランに所属していない点から上位クランのプレイヤーに話せばクラン内でパーティを組まれ討伐される可能性が高いからクランに所属していないプレイヤーから選びたかった事。フリーでも特定の相手とパーティを組むプレイヤーが多く、殆どが最大の六人で行動していて、五人、四人で活動しているプレイヤーが良かった事。最後に、上級冒険者と言えど、強さはピンキリでPS(プレイヤースキル)が高く、私との連携が取りやすいパーティが良かった事から四人で活動し、掲示板でも噂になるほどの強さを持つあなた達に話を持ってきた」

「なるほど、でも俺達がカスミからエリアボスの情報だけ貰って横取りする奴だったらどうするんだ?」

 

 理由を聞いた俺は声をかけてきたことに納得した。カスミの言うクランに所属せず、四人で活動し、自慢じゃないが、PSもそれなりにある。だが、彼女は俺達が裏切る可能性があることを考慮しているのだろうか?

 

「その時は私の目が節穴だっただけだ。勿論それなりの報復はさせてもらうが……するのか?」

「しないよ。人を騙すのは好きじゃないし、カスミに嘘をついたら怖そうだ」

 

 俺はカスミの目を見据えてきっぱりと否定する。言った通り人に嘘をつくことは気分が良いもんじゃない。それに、その鋭い目が殺ってやるぞと物語っている。

 

「それでは私と一緒にエリアボスを討伐してくれると見ても構わないだろうか?」

「良いよ」

「OK」

「大丈夫」

「問題ないよ」

 

 

 カスミの質問に俺達はそれぞれ肯定の言葉を口にする。

 それを聞いたカスミはホッとしたように安堵の表情を浮かべると、再び頭を下げて礼を言った。

 

「取り敢えず、日時と待ち合わせ場所を決めよう。あっ、そう言えばそのエリアボスの名前ってわかる?」

「オークキング、私の見たエリアボスは三メートルを超える巨体の王冠を被ったオークだ」

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