みんなの冒険譚   作:DCT

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 なるべく地の文を多めに書こうと頑張ってますが、普通のしょうせと比べるとやっぱり少い気がする。


ゲームの中の日常

 

 昨日は酔っ払って殆ど何も覚えてない俺だか、(実際はリリムに告白されたこともそのまま逃げるように帰ったことも覚えてる)今朝目が覚めると自室で装備を適当に脱ぎ捨ててベットの上で枕を抱いて寝ていたことに気がついた。

 寝ぼけた目を擦り、大きなあくびをしながら散らばる装備をメニューに仕舞い込み、僅かに日差しが漏れるカーテンを開けると窓の外では庭の真ん中でマサムネとシオンが特訓していた。

 シオンが曲がったり、上がったり下がったりする不可思議な軌道を描く矢を放ち、マサムネが盾や斧で防いだり迎撃したしする。前後左右色んな方向から襲ってくる矢を対処するマサムネは汗をにじませながらも的確に矢を全て叩き落としていた。時々俺やソウタが混ざるソレは朝の日課となっている。

 

 ふぅーと吐いた息が少し酒臭いことに気づく。昨日は帰ってから直ぐに寝てしまったから風呂に入ってない。

 全身の匂いを嗅ぐと僅かに臭い気がする。一昔前まではこの汗を掻くことも匂いが発生することもゲームなのにリアルで凄いとしか思ってなかったが、半年もここで暮らしていればゲーム何だからこんな機能要らないだろとしか思わなくなった。

 このまま放置するのも不快なので仕方なくシャワーを浴びに階段を降り、一階の浴室へと向かう。

 

 脱衣所で段積みにされていたタオルを一枚取って下着を脱いで用意されていた籠に入れる。既に何ヶ月もやっている行為故に今更自分の体に欲情することはない。

 誰かが間違って入ってこないように立て札をかけ、タオルを片手に浴室に入ると、まるで温泉宿のような広々とした空間が広がっていた。

 入って直ぐ目の前には魔道具によって永遠と綺麗なお湯が流れ続ける大浴場が広がり、左手には人数分の洗い場、右手にはサウナ室があった。

 

 俺は先に体を洗ってから湯槽に入るタイプなので当然向かうのは左手の洗い場だ。

 タオルを洗面器の中に置いてシャワーを手に取り蛇口を捻る。

 ザーっと勢いよく飛び出た熱湯を浴びて身体全体にかかるようにシャワーを動かしていく。

 頭からお湯を浴び、兎の耳に水が入らないよう注意しながら銀色の頭髪を梳かしていく。

 とある有志達によって作られたシャンプーを手に乗せて軽く泡立てる。例えゲームだとしても女の髪は命だと知り合いに徹底的に教え込まれ、男のように爪を立ててガシガシと洗うのではなく、指で揉むように丁寧に洗っていく。

 そして、シャワーで洗い流し鏡の向こうの紅玉(ルビー)の瞳と目が合う。

 

「ふぅ」

 

 小さな吐息をした。

 一昔前までは自分の身体を見るだけで顔を赤くしていたのに、随分と慣れてしまった。何度もモンスターの攻撃を受けて傷だらけになってもその都度ポーションや回復魔法で綺麗に治ってしまうので玉のように美しい肌を常時維持している。

 柔らかい素材でできたボディタオルに石鹸をつけて泡立てる。上から順に体を拭いて行き、普通の人間にはない獣人故に存在する丸い尻尾も丁寧に揉んで、全身に泡が付いたらシャワーで洗い流す。

 

 ようやく体を洗い終えた俺はタオルを持って大浴場にゆっくりと浸かる。

 夜だと大きな窓から満天の星空が見えるが、今は朝なので快晴の空が晴れ渡っていた。

 ずっと街の外にいて満足に身体を清めることもできなかったのだ。今日ぐらいはのんびりと過ごしたい。

 

「ふぅ」

 

 再び息を吐く。

 静かな空間で唯一聞こえるドラゴンの頭を模した湯口からマーライオンのようにチョロチョロとお湯が流れる音を聞き、安らかな時を過ごす。

 時々、こういう風に暮らしていると本当にここがゲームの世界なのか疑ってしまう時がある。むしろ自分は何時の間にか異世界転生を果たし、異世界で生を謳歌してるんじゃないかと思うときがある。

 現実ではありえないメニューを開いたりできるのでここはゲームの世界だと再確認するが、その不安は小さく残り続ける。

 

 二十分近くお湯に浸かりながらゆったりとした時間を楽しみ、長く居すぎると逆上せてしまうのでそろそろ上がることにする。

 浴室を出てバスタオルで体を拭き、メニューから新しい下着と過去に使っていた二軍の装備に着替える。現在使ってる装備は昨日は全く気にしてなかったが、所々泥がついてたり汚いので洗濯しなければならない。デスゲームになる前は装備が汚くなるなんてことは無かったが、今は洗濯しないと汚いままだし、臭いのだ。デスゲームになってからリアル感が増し増しになった。

 

 脱衣所を出てすぐの洗濯機(魔道具)に汚くなった装備を入れてスイッチを押す。これで洗濯から乾燥まで自動でやってくれる。

 愛剣もかなり酷使したので、これを作った専属の鍛冶師に整備の頼まなくてはならないだろう。

 この後の予定を考えながらキッチンへと足を運ぶ。

 

「あっ、エスさんおはよう。風呂入ってたの?」

「おはよう。うん、ソウタは昨日入った?」

 

 キッチンの前の長方形のテーブルの端の席に座り、ソウタが朝食のトーストを食べていた。

 

「まだ、食べたら入る」

「そっか」

 

 ソウタは昨日と同様の金色の装飾がされた紫色のローブを身に纏っていた。同じく金色の装飾がされた紫色のとんがり帽子を外して黄緑色のボブカットの髪とエルフの尖った耳を見せていた。

 

「今日はどっかに行くの?」

「後で匠の鍛冶屋に行って剣を整備してもらいに行くかな」

 

 皿に乗った食パンをギザギザのナイフで食べる分だけカットし、レンジ(魔道具)に入れてセットしながらソウタの質問に答える。

 

「ふーん。って事は今日は休み?」

「別に三人でクエストとか行ってもいいよ。俺はここでゆっくり過ごすけど……」

「いや、僕も休む。以前買った本とかまだ読み終わってないし」

「じゃあシオンとマサムネにも今日は休みだって伝えとくか」

 

 チーンと音がなりレンジの扉を開けるといい感じにこんがり焼けたトーストを取り出す。

 いちごジャムをたっぷり塗ってソウタの隣の席に座りパンの耳の方からパクリと食べる。

 

 ピンポーン

 

「ん?」

「誰か来た?僕が見てくるよ」

 

 トーストを頬張っていると、来客を知らせるチャイムが鳴る。

 何だかファンタジー世界っぽくない音だが、これがないと来客が来た時に困ってしまう。

 

 丁度朝食を食べ終えたソウタが玄関へ向かって行く。

 俺は残っているパンを一気にパクパクと口の中に放り込んで食べる。

 

 すると、ソウタが見覚えのある女性を連れて戻ってきた。

 

「カスミ!」

「久しぶりだな。エス」

 

 ソウタの後ろから現れたのは以前から変わらない姿のカスミだった。小さな装飾品等は多少変わっているが、装備や武器は単純に強化しただけで見た目は全く変わってなかった。

 

 一瞬食べていたパンが喉につまりかけたが、水を飲んで押し流す。

 

「『嫉妬』のレイド戦以来だっけ?」

「そうだな。二週間ぶりだ」

 

 カスミとは昨日リリムに話したオークキング戦後もちょくちょくパーティを組んだりして様々な場所を冒険した思い出がある。前回は複数のクランの精鋭達や他のパーティと協力してゲームのラスボスである魔王を封印する七大ボスの内の一体『嫉妬の蛇(レヴィアタン)』のレイド戦で共闘している。

 

 この世界から脱出するにはゲームをクリアするしかない。その為には魔王の討伐は必須だ。故に魔王を封印から解くために七大ボスを先に倒さなくちゃならない。七大ボスはそれぞれが七つの大罪を冠して、オークキングのようなエリアボスとは一線を画す。プレイヤー50人から100人で挑み、間違っても一人や二人で戦う相手じゃない。体力も攻撃力もエリアボスとはさらがな違い、圧倒的に上だ。

 七大ボスは世界の何処にいるか分からず、プレイヤーが自力で情報を集め、探し出せなければならない。半年経った今でも七大ボスのうち『怠惰の牛(ベルフェゴール)』と『嫉妬の蛇(レヴィアタン)』の二体しか討伐できていない。残り五体のうち、四体は情報も居場所も分からないが、『傲慢の獅子(ルシファー)』は居場所は分かっているが、現状挑んでも全滅する(・・・・)ことが確実なので誰も手を出さない。

 

 俺はカスミに席に座るように促して、キッチンでお湯を沸かし、来客用の紅茶を入れる。

 

「いやー、実は昨日カスミと初めて会ったときの話をしたんだよね」

「というと、オークキングの時のか……」

 

 俺は紅茶をカスミの前に置いて、迎えの席に座る。隣にはソウタが座っている。

 

「アレはカスミさんも黒歴史でしょ」

「確かにな、あの時は自分の未熟さを思い知ったよ」

 

 カスミがふふっと笑いながら紅茶を飲む。

 笑っていられるのはカスミにとってもう既に乗り越えた過去だからだろう。

 

「俺もあの戦いがあったからここまで成長できたと思ってる」

「私もだ」

「……」

 

 あの時怯えていただけのソウタはぐっと言葉を詰まらせていた。ソウタもその後の戦いで覚醒しているので気にする必要は無いと思うが、忘れられない黒歴史なのだろう。

 

「そういえば今日は何か用があって来たのか?」

 

 このまま過去の思い出話に花を咲かせるのも一興だが、わざわざ俺達が住む屋敷まで来たのだ。何か要件が有るのだろうと話を切り出す。

 カスミは微笑んでいた表情から一転して困ったように目を伏せる。

 

「何かあったの?」

 

 ソウタが心配そうに問うと、カスミは少し間を空けてから口を開いた。

 

「……白銀の雪原に行ったことはあるか?」

「まあ、一応」

「あのモンスターも湧かない(・・・・・・・・・・)ただ雪が降り続けるだけの場所のこと?」

「ああ」

 

 過去に興味本位で一度行ったことのある俺は知っているが、ソウタは噂でしか聞いたことが無いので少し首を傾げていた。

 白銀の雪原は本当に雪が降るだけの何もない場所だ。モンスターも湧かないし、取れる素材も雪や氷だけ、木や草花等の植物もなく、一面銀世界の景色が綺麗なだけの場所だ。

 だが、そんな何も無い筈の場所の事を話すということは、何も無い所に何か有ったのだろう。

 

 俺は話を進めるよう促す。

 カスミは真剣な表情でそれを言った。

 

「……ダンジョンが見つかった」

「「っ!?」」

 

 

 

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