この死亡フラグに救済を! 作:華麗なるアクシズ京都
トリップでもいい、憑依でも良い、転生でもいい。アニメやラノベの世界に行きたいと思ったことがあるやつは多いと思う。もちろん俺も、そんな君たちの仲間だった。
ヒロインを! ハーレムを! 強敵を! 天下無双を! チート能力を! 原作ブレイクを!
常日頃からそんなファンタジーを夢見る俺は、気が付くと真っ白な空間に立っていた。
「知らない天井だ!*1 いや、待つんだ俺。360度どこを見ても白くて、天井があるのかないのか分からねぇ! そうか、ならば言い直そう。見えない天井だ!」
とにかくだだっ広いよく分からない空間に来たら何か言わないといけない気がした俺である。
「--------」
おかしい、何も反応がない。
こういう場合って、あれじゃね? なんか超越的な存在が俺の反応を切欠に話しかけてさ、物語が始まる流れだと思ったんだけど。
おーい神様! いたら返事してくれー!
せっかく考えた俺混信の知らない天井ギャグがスベッたみたいな空気になっちゃってるから!
……寂しい。
「はあ……、そんなはずないか。こりゃ夢だな」
ちくしょう。アニメを見ながら寝ちまったからか。
いかにも神様転生みたいな空間の夢を見るなんて。どうせ夢ならもっとファンタジーな夢が見たかった。
異世界転生出来ると思ってたのに。神様との掛け合いとかいろいろシュミレーションしてたのに。
「まあ、せっかくの夢だしな。場所もそれっぽいし、かめはめ波の練習でもやっとくか*2」
舞台は精神と時の部屋。気分はもちろん孫悟空である。
「か~め~は~め~」
うーし! ナイスな感じだ!
なんとなく気が溜まっている感じ。行ける、今なら行けるぞ俺!
異世界転生出来なかった怒りを、この一撃に全て注ぐ!
「あっ、すいません。転生管理事務局日本担当のサタナチアです! 遅れました!」
「波ぁ?」
どこからか、美しい女性の声が聞こえた。
「すいません! 転生ですよね! これ、神様転生ですよね! 恥ずかしいんでもうさっさと転生させてもらっていいですか!」
「え? いや、あの説明とか大丈夫ですか? どうして俺は死んだのか? みたいな定番のやり取りとか」
「大丈夫だ、問題ない!」
「それ完全に大丈夫じゃない人の返事なんですけど。というか、神様相手にネタに走るとは、実はあなたけっこう余裕あるんじゃ……」
恥ずかしい、恥ずか死ぬ!
「俺は夢見る17歳と書いて中2病な高校生! 死んでようが、神の気まぐれだろうが問題ナッシング! 転生できるなら喜びはしても悲しまない! 今俺すげー転生したい気分だし! もはや恥ずかしくて輪廻の輪に帰っちゃいたい気分だから、転生させてくれるなら早くして! 俺のハートが壊れる前に早くして」
「いや、あなたがそれでいいならば。分かりました、では転生世界はランダム、転生特典もランダム、何に生まれるかもランダムな邪神お姉さんの気まぐれコースでよろしいですか?」
「いや、さすがにそれは待ってくれ! 生まれるのは人間ベースにしてくれ! さすがに転生特典がゲート・オブ・バビロンで、生まれ変わったらダンゴムシとかだと困るんだけど」
異世界で世界最強のダンゴムシが誕生してしまう。外来種駆除ルートはさすがに嫌じゃ!
「いいじゃないですか最強のダンゴムシ! 男子たるもの、一度は最強の存在を目指したいはず。追加で巨大化能力とか付けてあげますから、怪獣映画みたいに異世界を破壊と混沌に染め上げましょうよ?」
ナチュラルに心を読まれた!
ごめんなさい、ダンゴムシは嫌です、ランダムはやめて!
「男が一度言った言葉を撤回するなんていけません! 間違えた、面白そうだから却下です!」
「邪神様マジ邪神!」
「あはは、いくら褒めても転生先をマンボウにして、転生特典をヒエヒエの実以外の悪魔の実にするくらいしかしてあげませんよ?
邪神って誉め言葉なんだ。
「やめてください、生まれた瞬間海洋生物なのに即座に溺死とか、スペランカーもびっくりなネット上で囁かれるマンボウの最弱伝説に新たな1ページが刻まれちゃう!」
ていうか、特典がヒエヒエの実だとしてもマンボウなら海の影響を無効化するどころか、そのまま自分の能力で凍死しそう。
いや、さすがにそれはないよね。いくらマンボウが弱くても、
「はあ、はあ、か弱い人間の困ってる姿とか興奮する。何故なら私は邪神だから! 人間のがっかりした感情とか大好物なのです! どうしましょう、いっそミジンコとか食品サンプルとかもっとヒドイ存在に転生させて困らせたい……いや、やはりダンゴムシかマンボウ」
へ、変態だああ!
「え? マジで? このノリだと俺、マジでダンゴムシかマンボウですか?」
スリザリンは嫌だ、スリザリンは嫌だ! いや人間なだけ今ならスリザリン大歓迎だけど。
「ご安心下さいお客様。私は確かに邪神ですが、半分は優しさでできています。今ならお客様が全力前回でかめはめ波の練習をしていたシーンを、神様専門動画サイトにアップさせてくれるだ けで! 好きなキャラクターになれちゃうかも!」
邪神からの提案に、ちょっとだけ迷った。
「この野郎!さっきから声だけで姿も見せないで好き勝手言いやがって!」
最終的には転生先よりも、羞恥心や邪神に対する怒りの法が勝った。元々はこの声の主が遅刻しなければ、こんなことにはなっていないのだから。
「いや違うんですよ? 私があなたの前に姿を現さないのも優しさなのです。アレですよ、人間が私を見たら発狂デス。ちなみに最後のデスは発狂死のデスとかけていてですね」
「怖! つまらない邪神ジョークが気にならないくらい怖い!」
さっきから声しか聞こえないのには、そんな理由が。マジもんの邪神じゃねえか!
「仕方ないですね。ならば出血大サービス! 今ならあなたのご自宅のパソコンとハードディスクの中身を」
「おいやめろ!分かった、かめはめ波はアップして良いから! だからお願い、それだけはやめろおお!」
「やめろ? 人に頼みごとをする、ましてや上位存在たる神様に頼みごとをするのにやめろですか。……あなたの葬儀の際は、お経の代わりにハードディスク内のポエムを読み上げさせ、クラスメイトのSNSにもかめはめ波の練習動画をアップしてあげましょう、さぞ愉快な状況になるでしょうね。物事には、頼み方というものがあるのでは?」
「申し訳ございません! お願いします、やめてください邪神サタナチア様! 俺のかめはめ波が神様たちのささやかな愉悦になるのなら、喜んでピエロになりましょう! いやピエロをやらせてください」
俺は誠心誠意即座に土下座して謝罪した。
「わーい、契約成立ですね! いや本当に素晴らしい仕事をしましたよ! ちなみに優しい私は出血大サービスで、あなたのご自宅のパソコンとハードディスクの中身を破壊してあげましょうかと言うつもりでした。プークスクス」
この邪神、すげームカツク。あたふたする俺のことをあざ笑って楽しんでたな。
でも確かにハードディスクを破壊してくれるのはかなり嬉しいサービスだ。かめはめ波は恥ずかしいが、これでダンゴムシ転生だけはなくなった。
もしかして、この声の主は意外と善良な邪神なのではなかろうか。
……いや、善良な邪神って何だよ。
「では、あなたの憧れのキャラクター名を教えてください」
俺は声の主に言った。
「ニャルコさん! ニャルコさんの八坂真尋みたいに、モテモテになりたいです!」
先ほどからけっこう楽しく邪神と話していたので、邪神が出るアニメの主人公をイメージしてしまった。
「八坂さんですね? 本当に八坂さんでいいんですね?」
「もちろんだ。俺もニャルコさんみたいな銀髪美少女に好かれたいぜ!」
「くくく、全て了解です。あなたの願い、確かに邪神サタナチアが聞き届けました。転生特典はランダムになりますのでお楽しみに」
意識がだんだん遠のいて行く。いろいろあったけど、ありがとう邪神サタナチア様。
夢か現実化、自分が死んだと聞いて本当はかなり動揺していたけど、あなたとの会話が楽しくて、気が付けば悲しい感情は消えていた。俺、異世界でも明るく楽しくがんばるよ。
「あなたの次の人生には数多くの死亡フラグが待ち受けているでしょう。私はそんなあなたを面白おかしく見守っていますからね。なんじに破壊と混沌の祝福がありますように」
おい!ちょっと待て!最後にとんでもねえ科白が聞こえたぞ!
頑張れ作者、亀投稿を卒業して立派な魔族になるんだ。
邪神サタナチアの名前の由来は、犬に追いかけられる可哀そうな女子高生悪魔が元ネタです。