【悲報】どうやらワイらは世界の敵らしい…。 作:掲示板ものが書きたい
戦う奴らの実力の関係上本編以上にインフレしてる感。
そしてやっぱファンタジーの魔法とか魔術にはお決まりのもんがあるよなぁ…?
オラッコレがワイ等が隊長じゃいッ!!見せておやりッ!!
追記:一部技名を修正しますた。
とある海域の果て、人類文明の痕跡一つすら見当たらない巨島の荒れ果てた野原にて対峙する二つの影。
夜風が草花を撫でる低く吹き抜ける音は何処から不穏さを想起させる。
一方は灰色のローブを纏う、同じく灰の髪を風に靡かせる壮年の男。
もう一方は光すら呑みそうな程に昏く、闇い黒髪を短く揺らす青年。
灰の男は魔力の高まりからか周囲にチリチリと沸る火花が散り、果てはローブの端にまで燻る火が顕れる。
灰に紛れて覗く瞳は霞んだガラスのようでありながら、その奥には力の根源を見せるが如く種火が意志を燃やしていた。
男の気の高まりに呼応するように取り巻く熱が巡り、やがて草花を焼き始め、急激な大気熱の高まりにより光が捻じ曲がれば景色はゆらゆらと踊り出す。
青年は片手を腰に、反対の手を顎に遣り男の姿を興味深そうに眺めていた。
男は準備が整ったのか、魔力制御へと集中していた意識を青年へと向ける。
同時に熱を伴う強烈な魔力が彼へと向かった。
青年もまたその身に無色透明の魔力を纏い、広がり襲い来る熱の突進を喰らい潰す。
「…もう、良いのかな?」
「ああ」
青年が問えば、男は端的にそう答える。
男の眼はギラギラと殺気に輝き、青年はそれを黒く済んだ瞳で受け止めた。
「それじゃ、お先に———」
そう何かを切り出す青年の言葉が終わる前に、正面に立つ男の姿が火粉と共に散り、青年の背後に現れる。
男は姿を消した刹那の間に身を炎の鎧に包み、彼の背後からその側頭部に目掛けて燃え盛る剛脚を振るう。
「———どうぞ」
だがその脚が捉えたのは青年の掲げる、まるで糸屑でも払うかのように軽く立てられた手の甲だけであった。
火だるまとなった脚が減り込むもその手は唯の一つも動くことはなく、まるで空間に固定されたかと錯覚するほどに不動を貫く。
「ッ、硬過ぎて笑えねぇよ…ッ!」
男は舌打ちをし、背に風を纏い頭上へと飛翔する。
灰のローブが赫く靡き黒い流し目と視線が交差する。
「《
男の呟くような詠唱と同時、左右から迫り上がった二枚の巨岩が、宛ら大口を開けた勇魚の如く青年を喰らう。
巨岩が重なり合うその上空で男が手を広げれば、夜空に浮かぶ星々が霞む程無数の火球が出現する。
「《
男が広げる手を胸の前で交差させるように振るえば、火球が一斉に煌めき、高圧の熱線が放たれる。
熱線の雨は城壁のような二枚岩を容易く貫き、溶解させ蜂の巣に変えた。
グズグズと煙を上げる巨岩を下目に、男が術式を組むと足元に生まれた種火が爆発的に膨張し、一つの大火と化す。
「《
彼が蹴飛ばすように真下に向かって放てば、大火は赫い尾を引いて加速する。
大火は着弾した瞬間、巨岩を押し潰し強烈な熱波を伴って爆発した。
溶解されボロボロになった巨岩は火を纏って砕け散り、噴火の如くその火石を撒き散らす。
男は赫い尾を引き急降下すると一面に瓦礫が広がった空間を縫う様に飛び、その中心部へと赤熱した岩の槍を蹴り飛ばす。
放たれた岩弾は赫い波紋を伴って光の如き速度で着弾した。
…が、そこに痛烈な爆発音が響く事はない。
「…ジェット機よりも速ぇんだけどな」
段幕のように漂う土埃。
開幕の時間とばかりに分かたれるように晴れた先に見えたのは———片手で岩弾を掴み取る青年の姿。
頭上に広がる夜空のような黒の瞳に爛々と赫く緋色が反射する。
そこに上空より見下ろす男の姿が映り込んだ。
青年はまるで渇いた
「君が本気なんだ。全力は出さないけど———」
声だけを残し、青年の姿が男の視界から消える。
「———こっちも本気で
全く同じ声が背後から聞こえた瞬間、男の右肩に凄まじい衝撃が叩きつけられる。
骨が砕ける音が木霊し、直下へと撃ち落とされた。
青年は宙で反転し頭を下に、脚を上に返ると足下に透明な魔力の層を作り、同じく脚を魔力で覆った。
そのまま蹴り出せば反発するようにして飛び出し、男が落下した地点へと突貫する。
そうして両足を構え勢いのままに男ごと地面を踏み抜いた。
大地が蜘蛛の巣の如く砕け、波打つように隆起する。
「ゴ……ァ…ッ!」
———《
男が呻くと同時、青年の足下から爆発するように火が噴き出る。
寸前で男が纏った炎の鎧が激しく燃え盛り、足蹴にする青年を押し除け膨張した。
炎に侵された領域は白熱し、音を立てて溶解する。
不定形から球体となり、勢い良く膨れ上がった炎の天蓋が破裂し熱波を放つ。
「———オラァッ!」
消滅した炎の中から残火を掻き消し飛び出した男は、青年に肉迫しその喉へ掌底を撃ち込む。
青年は上半身を傾け紙一重で躱し、男が突き出す腕を下から掴もうと手を伸ばした。
だが翻したその先、背後から胴を狙う重厚極まる巨岩の槍が音も無く迫る。
青年が伸ばされた腕をすり抜けるように跳躍すると、通過した槍が男を避けるように四散し無数の瓦礫となって浮遊する。
そうして男が指を鳴らすと瓦礫が一斉に着火し、再び弾丸となって雨の如く青年へと降り注いだ。
青年は迫り来る岩弾を見定めるとゆったりとした自然体のまま構えを取り、その手を翻す。
一手、翻す手の腹を岩弾が滑り、後方へと抜ける。
二手、真横から飛来する岩弾を指で割り二分された岩が反対に迫る二つの岩弾を弾く。
三手、後頭部を狙う一塊を蹴り砕く。
四手、五手、六手七手———
流れるような一挙手一投足と目まぐるしく変わる挙動が高密度の炎岩の弾幕の悉くを撃ち落とす。
そうして残る一際大きな岩塊を砕く寸前、背後から青年の頭部へ燃え上がる脚が叩き落とされる。
青年は振り返り様に手刀を放ち男の脚を刎ねた。
———だがその手に返ってきたのは文字通り空を切った感覚のみ。
「分身———」
「———俺らと同類の分際で手え抜いてんじゃねぇよ」
瞬間、男の虚像が失った脚ごと完全な炎へと変貌し、青年を包み込み火柱を上げて炎上する。
同時に岩塊が砕け散り男が姿を現す。
「———《
炎は赤に始まり黄、白、青、そして夜空に溶け込むような蒼へと瞬く間に移り変わり、最後には完全な透明へと変化する。
炎がその姿を失い、莫大かつ高圧の熱エネルギーのみがそこに残された。
無色の炎に包まれた青年の影が、宛ら荒れた水面の如く揺れに揺れる。
「高みの見物っつーなら…その「高み」ごとブチ抜いてやる———」
そう低く唸るように言い距離を置いた男は、両手を翳しその中央へと膨大な魔力を収束させる。
やがて魔力が熱を持ち純粋な熱エネルギーへと変質すると、男は翳す手を片手へと変え、掌に募る熱を指先へ、更に四本から二本指へ、二本から人差し指の一本へと移し、圧縮する。
やがて熱球は青白く輝き出し、完全に内包された熱が内側で解放を望むように暴れる。
そうして次の瞬間、その内側で何かの箍が外れたように強力な熱波と光芒が漏れ出る。
彼が小粒程度の大きさにまで圧縮された熱球を青年の影へと向ければ、その眼が此方へ向かう黒い視線を捉えた。
「———《
———閃光が解き放たれる。
それと同時、揺らぐ炎が掻き消え、中から透き通る魔力を拳に纏わせ弓矢の如く引き絞った青年が現れる。
彼は己目掛けて駆け抜ける彗星を見定める。
そして前方へと大きく飛び出すように踏み込み、限界まで練り上げた魔拳を迎え撃つべく振るった。
———ッッ!!
インパクトと同時にカッ、と目を潰すような光が瞬いた。
青年の魔拳が不動を貫き、彗星はその魔力を燃料に鎧を灼かんと進み続ける。
極まる力と極まる炎は互いに押される事はあれど引く事はなく、その在り方は共に盾を貫く矛の如し。
そうしてとある一瞬、一際強い光が放たれた瞬間二つの力は交差した。
青年は拳を振り抜いた姿勢で静止し、突き抜けた閃光は次第に細く消えて行く。
「…熱いね」
青年は踏み込んだ脚を引き、握り込んだままの拳をその視界に写した。
そこには軽い火傷を負った己の手の甲があった。
小さき一等星は青年の魔力の鎧を貫き、その肌に確かな傷を与えたのだ。
「———サウナから出て来たみたいな顔しやがって…自信無くすぜ」
彼の正面へと男が降り立つ。
男が青年を見る視線からは納得やら呆れやらといった感情は見て取れても、驚愕やら焦燥などといったものは無い。
「そんな軽いモンじゃないよ、熱いのは苦手だからね」
「…どうだかな」
和かな様子でそう返す青年は、その体を男の方へと向ける。
それを臨戦態勢に入った合図であると理解している男は呼応するように構えた。
「———じゃ、今度は俺の番ね」
その呟きを聞いた瞬間、男は魔力ごと焼く程に熱を激らせる。
一瞬で絶巓にまで達した超熱は炎の領域を形成し、踏み込む全てを煮え上がらせる。
だが青年は当然の如くその絶界を突破し、数歩の間を僅か一歩にて詰める。
次に男の視界に映った物は彼の姿———ではなく彼の拳。
「ガ…ッ———!」
そうしてやって来る意識が吹き飛びそうな程の衝撃と、上下左右が入り乱れる景色。
男がようやっと自身が殴り飛ばされたと理解するのは地面に叩きつけられ、ゴムボールのように跳ね上がった時であった。
地面を抉った彼は、数度叩きつけられるとその身を捻り荒々しく着地する。
顔面から散ったであろう血がボタボタと垂れ地面を穢した。
「…ア゛ァ゛…クッソ…ッ!痛すぎんだろ…ッ!」
彼は片手で顔面を掴むようにして覆うと、その掌にへばり付いた大量の血を睨み付ける。
そうして手を握り込み手の内で血を発火させ、燃やし尽くす。
「結構本気で殴ったつもりなんだけど、元気だねぇ…」
「クソ痛ぇよ!ふざけんな!」
いつの間にか男の背後に立っていた青年が不思議そうにそんなことを宣うのに対し、重症の割に活気のある大声で毒付く男。
彼はため息を吐き灰色の髪を掻き上げる。
「…ったくよぉ…ホント、気持ち悪りぃくらい強えなぁ」
「まだ一発貰っただけでしょ」
「ペッ…一発目だから分かんだよ」
男は口に溜まった濃い血を地面に吐き出すと青年に向き直る。
「じゃあもう止める?」
「…ハッ、冗談…油断しただけだっつーの」
「…戦闘中に油断するのはどうかと思うよ」
「うっせぇ」
男は不敵に笑うと肩を伸ばし再び魔力を巡らせる。
青年もまた拳の骨を鳴らし、男に応えた。
その拳には既に火傷の痕は見当たらない。
「俺はどうせ王都で死ぬからな…その前に自分の力がどんなもんかくらい知っときてぇんだよ」
「…それ、俺じゃ強すぎて測れないんじゃない?」
「言ってろ。最強ぶっ飛ばすのも乙だろうが」
「…成程革命か。なら———」
青年が腰を落とす。
「———是非ともやってみてくれ」
次の瞬間、影を置き去りにするような速度で男の眼前へと踊り出た青年が刈るような上段回し蹴りを放った。
男は反射的に身を屈め翻した。
髪先が擦れる音など気にも止めず折り曲げた脚を踏み抜き、切り返すような掌底を下から打ち上げる。
青年は上半身を後方へと引き、回し蹴りの回転を維持したままに身を横転するように浮かせると、両脚を揃え男の脇腹を蹴り抜いた。
男は数メートル吹き飛ばされるも《
勢いを完全に殺すと同時、男の背後に無数の術式陣が展開され高密度かつ超硬度の拳が飛ぶ。
砕き、往なし、打ち落とし、視界の全方位から襲い来る乱打を捌き切る青年へ体術による強打を挟み更なる追撃を加える男。
だがそれでも魔力の高まりと共に加速し続ける青年の迎撃は次第に男の魔術展開速度を上回り、遂には迎撃は反撃へと転ずる。
そうして、青年の一撃にも等しい連打が同時に放たれた乱打の雨を叩き落とした。
続く青年の胸部を狙った貫手を肩を擦らせるようにして躱し、呼吸を合わせて人中を同じく貫手で打つ。
しかし青年もこれを翻し肩を通り越す。
両者の腕が交差し纏う魔力がぶつかり合う。
重なる両者の視線には、上から見下ろす者、そして下から見上げる挑戦者という違いはあれど、変わらぬ闘志が燃えている。
「っ、君魔術師じゃないの?」
「そりゃ零距離ならサンドバッグになれってことか———よッ!」
男は腕を引き抜き連動するように反対側からこめかみを目掛け打ち抜く。
だが寸前で差し込まれた手の甲がそれを受け、お返しとばかりに男の顎へとハイキックが飛ぶ。
「グ…ッ、ォ…!」
首が吹き飛んだと錯覚する程の衝撃で顎をかち上げられた男は意識を大きく揺さぶられ後方へと崩れる。
「———ま…だダァ…ッ!」
揺れる視界の中己の額を殴りつけ、頭蓋へと極限まで威力を抑えた《
黒い幕が下ろされかけた視界が弾けるように開けた。
光が差し込んだ己の頭上目掛けて振り下ろされる脚を捉えた彼は身を返し、飛び上がるように翻す。
零距離を通過する大斧の如き剛脚が空気を裂き、大地を放射状に割る。
男は風を巻き上げ上空高くへ飛び上がった。
「ッ、ぐッ…!」
しかしその寸前、耳を劈くような破裂音と共に男の腹に強烈な衝撃が走る。
眼下に視線を遣れば、そこには掌を男へと向けた青年の姿が映る。
「(魔力弾…ッ!)」
凶悪なまでの魔力量とそれを圧縮する技術が成す、曰く簡易的な遠距離攻撃。
ソレを青年の人外じみた魔力量とその質で扱えば男にとってはそれだけで脅威であった。
彼は青年の間合いが決して零距離などではないということを思い直す。
青年は男の動きが鈍った隙に飛び上がり足首を掴むと、上下が引き裂かれるような勢いで振り回し地面へと投げ打ちつける。
「ァ゛…ッ———《
男は全身を駆け巡る鈍い痛みと吐血を耐えつつ衝撃を最小限にまで抑え瞬時に離脱すると、更なる追撃を仕掛けんとする青年を九層もの岩の壁で覆う。
そうして両手をその檻の上空へと突き出し魔術を展開すれば、檻の真上に小山の如き巨岩が現れる。
彼が伸ばす両手を引き絞るように動かすと、形作られた巨岩が粘土の如く捩れ、更に鋭い錐へと変形した。
「———《
両手を振り下ろした瞬間一瞬で最高速度にまで加速し、急降下した先にある九層の壁を貫く。
しかしその大槍も檻ごと内側から砕かれ、土煙を上げて散り散りとなる。
青年が視界を塞ぐ土埃を腕の一振りで纏めて払えば、その視界に広がるのは己以外の見当たらない荒野のみ。
「…流石に強いね」
彼はそう言ってゆっくりと夜空を見上げる。
雲は一つも無く、まるで夜の都会をそのまま映し出したように美しい星々が煌めいている。
先の戦闘が嘘のように静かにささめく夜風が青年の頬を撫でた。
———だがその静寂を束の間の夢と打ち砕くように、夜空に巨大な術式陣が次々と現れる。
星空を侵略するように宙という宙を覆い尽くした幾何学体が一斉に緋く輝き出せば、ただ一人の人間から生まれたとは思えない厖大な魔力が渦巻いた。
「魔術って本当に凄いよね…俺も使いたかったよ」
魔術が生んだ文字通りの
上空へと顕れたソレは、時に人の願いを叶えるとも言い伝えられる。
だが今の光景を見て手を組んだ者は総じて己の命を救わんと希うに違いない。
正にこの世の終わりを暗示するような緋星が青年の双眸に映る夜空を埋め尽くす。
———《
展開されるは満開の流星群。
一つ一つが小さな都市程度であれば容易く圧壊させる、死を孕んだ緋き星々が地上の全てを清算せんと降り注いだ———
———黒が滲む。
瞬間、地上目前へと迫った滅亡がソレを遥かに上回る黒の破滅によって儚くも砕かれる。
とある一点を中心として噴火する黒は空気を圧壊させる大質量を無に、地表を灼く焦熱を零へ。
ソレらを消し飛ばして尚余りある絶望を以てその尽くを塗り潰す。
大地が、大気が、天が怯え慄き、溢れる恐怖を吐き出すが如く揺れ、震え、轟く。
地上は星の一つさえ存在しない完全な闇にて覆われたのだった。
天より黒を見下ろす男はまるでつまらない喜劇でも見たかのように鼻で笑う。
「…ま、分かってたけどな」
眼下にて黒を渦巻くのは真性の怪物であり、己のような人間如きが届きうる存在ではないのだと、そんな分かりきっていたことを再認識し己を嗤う。
仮にも四節二重詠唱。
こんなにもあっさりと潰されては魔術師としても、戦士としても笑うしかないだろう。
「…アレしか、ねぇかぁ」
男はまだ一つ、その内に秘めたままの魔道を思い起こす。
それは地底から仰ぎ見、ただ手を伸ばすだけの凡人が怪物達の喉元までその爪を掛ける可能性を見出す復古の業にして神業を超えた人の術。
そして、彼が行き着いた魔道の果て。
「どうせ引きニキにあげた頃にゃあ満足に披露出来ねぇんだ」
男は宙を舞う姿勢を正し、ローブの影へと隠れた腕を出す。
そうして宙に放り出した脚を折り———坐禅を組む。
「…それに、お前かあのバケモンどもくらいにしか見せれねぇしな」
手持ち無沙汰の手を胸の前で合わせ、左の人差し指を立て、それを右手で軽く握り込む。
「———火傷くらいは覚悟しろよ?」
小さく、しかし自尊に満ちた声でそう溢した彼は、静かに瞳瞑り———
「《———
———そう、始まりを綴った。
地上へと、そんな厳かな声が響き渡る。
それと同時、大地の東西南北に四つの巨大な術式陣が現れる。
———四方に描かれた術式陣からは其々の淵に沿って遠方からでも見渡せる程の火球が生み出され、並ぶ。
「…これは」
黒を纏った青年は突如として届いた声と顕現する魔術に唖然とし、その元凶がいるであろう天上を見上げた。
———東西南北その中央に、正方形を描いた四方の幾何学体を結ぶ新たな陣が輝く。
———遍く全ての中心の地に降りた太陽が如き特大級の炎が焦熱と共にその姿を形創る。
青年は展開した莫大な黒の魔力を己の下へと収束させその身に纏う。
闇をも呑み込む絶対なる覇気を神々しき超熱の陽が照らし尽くし、その厄災の姿を暴き出す。
———
———衆生へ綴る忠言を締める言葉が木霊すれば、太陽へ、そしてそれに侍るようにズラリと列ぶ小さき天体達へと御神体を添えるが如く其の焦熱ごと巨岩の層が包み込み、御尊顔を地上に晒す。
———真なる光の到来を告げる句が穢れた地上へと降り注ぎ、列ぶ仏、そして中心に御座す日の化身より天を、地を照らして余りある極光が差し込んだ。
———そうして、宇宙の真の姿を模した怪仏は終末を以て地上を救わんとその眼を開く。
———世界が光に包まれた。
黒に侵され、焦熱に灼かれた、荒れ果てた荒野はまるで層を一つ剥かれたように草花一つ残っていなかった。
夜空から舞い降りた男は魂ごと抜けていくのではないかと思わせるような盛大な溜め息を吐いた。
「…これでようやっと、アイツの全力に脚掛かったってところかね…」
地面に転がる小枝が、足先が触れただけで砂の如く崩壊する。
あまりにも無法で無秩序な破滅の先には形ある物など何も残らないのだ。
「…あの魔力は、引き摺り出したんだがなぁ…」
しかし男はこれが完全な敗北などとは思っていない。
凡人には凡人の、底辺には底辺の勝利が存在する、というのが彼の持論だ。
あの化け物の皮を剥いだ、それだけでも割と満足しているのだから己は器が小さいと自嘲する。
「———やっぱ強いよ、君」
男の隣から聞こえて来る。
見れば、相変わらず人畜無害そうな黒髪黒目の青年が立っていた。
「…そりゃあ皮肉か?」
「いいや、本音だよ」
「…お前からすりゃ、あんなモンそこら辺の小石小突いた程度だろうがよ」
「流石にそれは俺を過大評価しすぎたよ。岩を殴り砕いた気分さ。」
「変わんねぇよ」
「…それに、さっきのは結構危なかったよ」
誰が言ったか、その破壊力ならば青年の足下に届かんとする怪物達と同格と。
仲間内ではそんな評価を下される男からしても、隣に居る存在は遥か遠くに霞んで見えない。
男はつくづくこんな存在が産まれ落ちたこの世界が可哀想だと同情し、嘲嗤う。
「もう少し魔力の展開が遅れていたら本当に大火傷してたかもしれない」
「…そんなチャチなモンじゃねぇんだけどな」
世界が青年の機嫌を伺うようにまた一吹きの夜風が靡いた。
男はその場にドカッ、と座り込みそのまま腕枕で寝転がる。
「
「あんなモンタイマンじゃ産廃だろうが。誰が好き好んで相手にあんな隙与えんだよ」
「あーあ」と心底興醒めしたとばかりに天を仰ぐ男。
青年はそんな彼を見下ろし、同じようにその場に胡座をかいて座り込んだ。
「…なぁイッチ」
「スレ以外じゃ皆名前で呼び合うんじゃなかったっけ?」
「お前は『アインス』じゃねぇだろ。俺は筆頭様に言ってんだよ」
「…」
何かを言おうとするも、やがて閉口する青年。
男はそれを一瞥すると口を開いた。
「…俺等が死んだらよ、いつまでこの世界に俺等のことが残るんだろうな」
「…さぁね。魔王が三百年も色濃く語り継がれてるんだし、俺等なら千年は残るんじゃない?」
「大した自信だな」
「魔の王様如きには負けないさ」
「…ハッ…まぁ、それでこそ俺等の大将だぜ」
そう当然の如く言い放つ青年に、男は呆れと安堵を含んだ苦笑いを浮かべる。
そうして、すぐそこに迫る未来にてその命を燃やす
———それはまるで、何かを祈っているようにも映った。
「ところでよ、イッチ」
「だからアインスだって…何?」
「俺の詠唱、カッコよかった?」
「…まあまあ良んじゃない?」
「…結構良い線行ってると思ったんだがなぁ」
彼らはやっぱり彼らであった。
詠唱の書き方を修正したんですがどうでしょうか…
・《
戦式魔術である《四節二重詠唱:
宇宙の中心に御座す狂える本尊を模したこの大魔術は破格の威力を誇り、力を欲し喘ぐ凡人へ救いの手を差し伸べる。
詠唱:
———
———
・炎の分身
純粋な魔術というよりは技術。
文字通り炎で作った偽物の分体であり質量が無いため物理的なダメージをつけない代わりに質量攻撃は出来ない。
・《
炎魔術第四節詠唱。
純粋な熱エネルギーの爆発であり、金属であろうと容易に蒸発する絶対的な熱空間は砕けた硝子の如く景色が揺らぐ。
・《
炎魔術第四節詠唱。
一点突破型の破壊に特化した熱球を放つ魔術であり、その威力は他の四節詠唱を遥かに凌ぐ。
内側では核融合が起きてあり、漏れ出す光はその一部。
なお隊長オリジナル魔術で、名前の由来は