ゼウスにそっくりなジジイはダンジョンに用がない   作:ゼウスの髭

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ジュートス

 

「………」

「アイズ」

「リヴェリア……」

「あの少年が気になるのは分かるが、今は宴の最中だ。不用意な発言をしたベートには後で説教をしてやる……だからお前も、今日は楽しめ」

 

 酒場――『豊穣の女主人』にて【ロキ・ファミリア】は遠征帰りの宴を催していた。

 

 皆ダンジョンからの帰還ということもあり、旨い飯と美味い酒で気持ちよくなり自然と笑顔になっている。

 しかしそんな中、1人無表情で俯いているアイズ。彼女は先ほど無銭飲食をした白髪の少年、ベルを思い返し鬱屈とした感情を抱いていた。昔、それも幸せだったころの自分に似たベルに、酷い事をしたと後悔をしている。

 

 そんな(アイズ)の分かりにくい心の機微に気づいたママ(リヴェリア)はアイズに寄り添う。せめて少しでも、そのもやりとした感情が少なくなるようにとリヴェリアは思う。

 

 

 

 ―――ガチャッ

 

 酒場に新たな来訪者を音を告げる、扉が開く。

 

 客は興味本位で、従業員は接客をするために来訪者へ視線を寄せる。

 

 

 

「「「「うげっっっ!!! ジュートスぅぅぅぅぅ!?!?」」」」

 

「やっほ〜ミアお嬢ちゃん、儂が来たゾイ☆」

 

 来訪者――ジュートスと呼ばれる皺の寄ったジジイを認識した瞬間、酒場にいたほぼ全ての女性は胸と尻を隠すように守護(まも)る。それは【ロキ・ファミリア】であろうと変わらない。それはまさに階層主と同等程度の警戒心である。

 

「また性懲りも無く来たのかい、このエロジジイが!!」

「え〜? なんで皆そんな反応するんじゃ?? 儂、なんかやっちゃいましたぁぁぁ???」

 

「リヴェリア様! ここは私たちに任せて御身はお逃げください!!」

「シル! 私の後ろに隠れて下さい!」

「またウチの可愛い子達に触ったら殺すぞジュートスぅぅぅううううッ!!!」

 

 ロキのエルフが、酒場のリューが、そして神ロキがそれぞれの似たり寄ったりな反応をする。蛇蝎の如く嫌われているジジイである。

 

「そんな反応されると傷つくのぉ…………ほほぉ、相変わらずええ乳じゃな!」

「―――――は?」

 

 リヴェリアは瞬きをしていない。

 

 確かにジュートスを警戒し、嫌悪し、一挙手一投足に注目していた。なのにも変わらず、気づけば自分の目の前にジュートスはおり、今、その胸を揉んでいる。

 

 ―――――は?

 

「リヴェリア様に触るなこの下衆があああああああッ!!」

「リヴェリアのおっぱいはウチのもんやボケがあああああああッ!!」

 

 この時ジュートスと酒場にいる全エルフの間に、ゴングの鳴り響く音が聞こえた。尊敬している王族妖精(ハイエルフ)がその胸を揉みしだかれているのだ、普段冷静な姿を見せている彼らはそんなもの知ったことか! とジュートスへ攻撃を仕掛ける。

 

「こわっ、そんなキレんでいいじゃろぉが………ま、皆ええ乳、ええ尻じゃったぞ♡」

 

 ―――ッ!?!?!?

 

 酒場にいたほぼ全ての女性は違和感を抱いた。ある者は胸に手を当て、ある者は尻に手を当てる。

 

「あ! ちゃんと18歳未満のガール(未成年)には手を出しとらんから、安心じゃぞ✌︎」

 

 

 

「「「「―――――死ねええええええええええええッ!!!!」」」」

「ぶるっふぁああああ?!」

 

 酒場の外まで殴られたジュートス。死んでいないだろうか。

 

 そして被害にあった女性、高貴な王族に手を出されて怒り心頭のエルフはジュートスを追うため、外に出て行った。死ぬかもな。

 

 リヴェリアは【ウィン・フィンブルヴェトル】、リューは【ルミノス・ウィンド】、その他の魔導士たちも出来ないはずの並行詠唱を怒りが限界突破して行い出ていく。おいおい、死ぬわアイツ。

 

「ぬわあああああああああああッ!! マジ謝るから許してえええええ!!!」

「「「「赦すわけないだろうクソジジイがああああああああ!!!」」」」

 

 

 

「ハハ、彼も相変わらずだね」

「全くじゃ……。逆になぜまだ生き残ってるのか不思議じゃわい」

 

 酒場に残された男たち、フィンとガレスはいつもの光景に苦笑いを浮かべる。酒場に残された男たち全員が同じような表情だが、実は少しだけおもしろく思っているのは男たちだけの秘密だ。

 バレたら女性達に何をされるかわからないからだ。

 

「あれが神々も認める『英雄』だったとは信じられん」

「―――オラリア史上最高のLv.9、【雷帝】ジュートス。ま、200年以上も昔の話だから、僕も全盛期の彼は知らないけどね。でも、オラリアに降り立った『黒竜』をたった一人で追い払った逸話はあまりにも有名だ。子供の頃は僕も彼に憧れていたよ」

 

「も、もう赦してぇぇぇ……」

「黙れゴミ。お前は全ての女の敵だ。最期に私の魔法で焼き尽くしてやる」

 

 

 

「………本当に不本意だけど、ね」

「フィン、酒を注いでやろう」

「ガレス……ありがとう、飲んで忘れるよ」

 

 

 

 

「非道い目に遭ったのぉ……」

 

 あの後、ジュートスは女性に殴り蹴られ、最期に魔法で焼かれたりしたようだが、その理不尽なまでのアビリティとスキルでしぶとく生き残り、今までバベルの広場でリヴェリアの魔法(氷付け)にされていた。

 

 充分に堪能できたし、寝床に戻るかと思っているとダンジョンから人が出てきた。

 陽は昇り始めたばかりのこんな時間から出てくる冒険者に少しばかり興味を持ったジュートスは、その冒険者に近づく。

 

「ほぉ……(わっぱ)ではないか」

 

 白雪のようなふさふさの白髪、中性的な童顔赤目、全体的にウサギのような少年だった。

 その少年――ベルは傷だらけだった。

 

 

 

 

 何時間、ダンジョンに潜っていたんだろうか。

 

 時間感覚なんてなくて、ただ自分が情けなくて、強くなりたくて、モンスターと戦っていた。

 

「……もう、朝だったんだ」

 

 暗闇に慣れていた僕の目は、朝日が眩しすぎてつい目を細める。

 上ばかり見ていて下の注意が疎かになっていたのか、躓いてしまう。

 

「ッく」

 

 

 

「大丈夫かのぉ?」

 

 次に来るだろう、転げる痛みに耐えるために目を瞑っていると誰かに抱き止められた。少し土臭くて、お日様の匂いがする、何故か懐かしい匂い。

 お礼を言おうと思って、僕は顔を上げ―――

 

「――え? ………おじい、ちゃん?」

 

 死んだはずのおじいちゃんが、そこにいた。

 

「む、幻覚を見ておるのか? 儂はお主のおじいちゃんではないぞ」

 

 え? じゃあ、そっくりさん?

 

 あまりにも似ていたから勘違いしたけど、よく見ると確かに僕の知ってるおじいちゃんとは違う点があった。目の色だ。あと、少しだけ皺が多い気がする。

 

「ご、ごめんなさい。すぐ退きます!」

 

 疲れた身体に無理をして、すぐ起きあがろうとするが傷ついた身体は中々動かない。多分今、僕はすごい不細工な動きをしている。

 

「仕方ないのぉ〜。よいしょ」

「うわわ」

 

 おじいちゃんにそっくりな人は、ため息をつくと僕の腕を取り、器用に背負われた。

 今僕は、俗に言うおんぶをされている。しかも知らない人に。

 

「さぁ、帰り道はどっちじゃ?」

「えぇ?! そんな悪いですよ! 自分で歩きます!」

「立てなくなる程疲れとる童を放ってはおけん、ここはジジイの好意に甘えておけばいいんじゃ」

 

 さぁ行くぞ、とおじいさんは僕の意思を無視して歩き始める。

 行き先も言ってないのに、何故かへ向かっている。それを不思議に思ったけど――ダメだ。疲れて何も考えられない。

 

 なにより、この人におんぶされて僕は安心している。懐かしんでいる。

 

 まるで、おじいちゃんに背負われていた昔に戻ったみたいで。

 

 瞼が自然と下がっていく。音が、遠くなっていく…………

 

 

 

「寝たか……。道は、こっちかのぉ?」

 

 僕が寝た後も、この人はすいすいっと本拠への道を間違う事なく歩いて行った。

 




ステイタス

ジュートス・ケラウラ

Lv.9
《基本アビリティ》
力:SSS1500
耐久:SSS1500
器用:SSS1500
敏捷:SSS1500
魔力:SSS1500
《発展アビリティ》
直感:SS
耐異常:A
剣士:S
魔防:B
治力:B
精癒:C
潜水:E
竜特攻:―
《魔法》
【ジュピター】
・付加魔法
・詠唱式【我、雷の化身なり】
・追加詠唱式【雷には、何者も追いつけず】
・最終詠唱式【雷は、万物を破壊する】
《スキル》
【献身弱者(ジュートス・オリジン)】
・弱者を守護る想いの丈により効果変動
・基本・発展アビリティの経験値獲得量上昇
【愛妻蒼空(ユーピテル)】
・【ジュピター】使用中に限り発動
・全アビリティに高域補正
・空中踏破が可能
【雷神一撃(ゼウス・レコード)】
・任意発動
・一撃だけステイタスを超越した攻撃を放てる
【変態執念(ヘラ怖ああああああい!)】
・特定動作条件の達成後、発動
・アビリティ『耐久』に超高補正
・発展アビリティ『堅守』の一時発現
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