TSビッキーとヤンデレ393   作:勝機を零した、掴み取れん

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昔書いたやつのリメイク的なやつです


ヤンデレ──それはひとつの愛の形

「ねぇ、立花くん。これからみんなでカラオケ行かない?」

 

 一日の授業が終わった放課後。

 

 緩いパーマがかかった茶髪の()()──立花響はクラスの女子に話しかけられていた。

 

「えっと……その、どうしようかな」

 

「他の女の子も来るし、立花くんも来てくれたらきっと盛り上がると思うけどなぁ」

 

 彼はあまり人と遊ぶ事がなかった。そのため、こうして誘われる事は嬉しいことでもある。

 だから彼は少しだけ悩んでしまっていた。

 

 そんな時。

 

「……なに話してるのかな?」

 

「……未来」

 

 彼の背後から……白くて大きいリボンを結んだ黒髪の少女で響の幼馴染──小日向未来が現れた。

 

 彼女は笑顔でクラスの女の子の方を見るが、その笑顔は全く笑っていなく、どこか殺気立っていた。

 

「な、なに……? 私は、立花くんに話しかけてたんだけど……」

 

 クラスの女の子は未来の凄みに圧倒され、思わず動揺してしまっていた。

 

「そっちこそ、私の響に気安く話しかけないでくれるかな……?」

 

 そう言って未来はゆっくり目を開き、少女を睨む。それは殺意ともいえるものに満ちており、ハッキリ言えば普通の人間に向けていいものではなかっただろう。

 

「ひぃ……! ご、ごめんなさい!」

 

 恐らく今まで浴びた事のないだろう視線にその子は酷く怯え、その場から逃げるように教室を出ていってしまった。

 

「あ、ちょっと……!」

 

 響は思わず呼び止めようとするがその子はもう居なかった。

 

「まだ何も返答してなかったんだけど……」

 

「響、帰ろう?」

 

「……うん」

 

 いなくなってしまったのはしょうがない。そう思った響はカバンを背負って席を立ち、再び笑顔になった未来と一緒に教室を出ていった。

 

 

 ────

 

 

 響と未来の二人は帰り道を歩く。お互い手を繋いでいて、未来はとても嬉しそうな表情を浮かべている。傍から見れば二人は中々お熱い恋人同士としか思えないだろう。

 

「今日も響の家に行ってもいい?」

 

「うん、いいよ。でも……俺は一人暮らしで家には誰も居ないんだから、いちいち聞かなくても大丈夫だよ?」

 

「だけど、都合の悪い日ももしかしたらあるでしょ? 例えば……響がベッドの上にエッチな本置いたままだったりとかさ」

 

「……っ! さ、流石にベッドに置きっぱなしにしたりしないって!」

 

 急に変な事を聞かれてしまった響は顔を赤くし、少し大きな声を出してしまう。

 

「……ふーん。家にはあるんだ?」

 

「……あっ」

 

 しまった。そう思った彼は冷や汗が止まらなかった。

 

「……別に、あっても大丈夫だけどね。響だって男の子なんだから……」

 

(良かった。怒られるかと思った)

 

 てっきり彼女に怒られると思っていた響だったが、未来は怒ることなく逆に肯定してくれた。その事に心の中では安堵していた。

 

 

 

 

 そんな他愛もない話をしながら、二人は響が一人で住んでいるアパートの部屋の前に来ていた。

 

 響はドアの鍵を開け、未来は彼に着いていくように中へと入る。

 

「お邪魔します〜」

 

「別に言わなくてもいいけどね」

 

「ダメだよ響。こういうのは大事なんだから」

 

 部屋の中は綺麗に保たれており、六畳程のワンルームではあるが、高校一年生の彼一人が暮らすには充分な大きさでは無いだろうか。

 

「一人暮らしにはもう慣れた?」

 

「ある程度は……って感じかな。最初はわからないことばかりだったけど、未来が色々手伝ってくれるから助かったよ」

 

「響のお母さんから、響の事を頼まれてるからね。多分、私が居なかったら響が一人暮らしするなんて許して貰えなかったよ?」

 

「ははは……そうだよね。昔、あんな事したんだから……」

 

 彼は一瞬だけ、曇った表情をする。

 それを未来は見逃さなかった。

 

「……未来?」

 

 彼女は響の頬を優しく撫でた。

 

「でも、大丈夫。これからも私が響の面倒を見てあげるから……安心してね」

 

「……ありがとう、未来。やっぱり未来は優しいね」

 

 先程までの暗い表情はなくなり、響は彼女に優しく微笑んだ。

 

 今日の事も何も追求されていないし、安心して過ごせる。彼はそう思っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……だけどね、今日の出来事は許せなかったかな……」

 

「……えっ?」

 

 そしてそんな事を思ったのも束の間、響はベッドに押し倒された。

 

「放課後、クラスの子にカラオケ誘われた時……なんですぐに断らなかったの?」

 

 彼の腰の上に馬乗りになった未来は問い詰める。先程の明るい表情の未来はどこへ行ってしまったのか。響を見つめる彼女の瞳は暗く、どこか狂気に満ちていた。

 

「……ごめん。急に話しかけられたから、なんて答えればいいかわからなかったんだ」

 

 響は彼女に少し気圧されながらも、聞かれた事に答えようとする。

 

「……そうなんだ。でも、本当は行こうか悩んでいたんでしょ? きっと、あのまま私が話しかけてなかったら、響はその子と一緒にカラオケ行ってた」

 

「そ、そんなつもりじゃあ……」

 

「……嘘。だって響、その子に誘われた時……嬉しそうな顔してた。中学校の時と違って、自分の事を知ってる人がいないから……普通に接してもらえるのが嬉しかったんだよね?」

 

「……っ!」

 

 その言葉に響は思わず表情を再び曇らせてしまう。

 思い出したくもない昔の記憶が過ぎってしまったからだ。

 

「昔の事……思い出させちゃったよね……ごめん。でもこれは……響の事を想って言ってるんだよ?」

 

「どれだけ遊んでも……仲が良くなったとしても、人なんて簡単に裏切る。友情なんて本当に薄っぺらい……。響なら一番わかってるでしょ?」

 

 未来は彼の耳元まで顔を近づけ、甘く囁く。

 

「……でも私は、ずっと響の味方だよ? それも響はよくわかってるはず。私はどんな事があっても絶対に響の事を裏切らない。例え世界中の人達が響の事を嫌いになっても……私は絶対に響の味方だから。だって私……響の事が大好きで、響のために生きていこうって決めたから……」

 

「だからね……」

 

 

 ──私の事だけをずっと見ていて。

 

 

 

 ──私の傍にずっと居て。

 

 

 

 ──私だけを信じて。

 

 

 

 ──私だけのために生きてほしい。

 

 

 

 そう言って未来は、恍惚とした表情を浮かべながら彼にキスをする。

 

 舌を深く絡ませ、嬲るようにするキスの音、そしてお互いの息遣いがこの静かな空間に響き渡る。

 

 そして響は……それをなんの抵抗もなく受け入れてしまう。

 

 それはまるで……お互いが一生を添い遂げる誓約をするかのようなものだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──死ぬまで一緒だよ? 響

 

 

 

 

 

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