狸と牛とキヴォトスと   作:聖成 家康

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最近、創作の楽しさを思い出せた気がします。
他人からの評価を気にせず、ただ”やりたい“からやる。
これも全てブルアカのおかげ。


さぁお前もブルアカ最高と叫びなさい!!


別離ⅲ:牛の邂逅

 

 強烈な臭いが鼻腔を擽り、吾妻道長は「臭ッ」と叫びながら飛び起きる。

 

 それも当然。彼が目覚めたのは、どこかも検討がつかない、薄暗い廃れた町中のゴミ溜まりのど真ん中であったからだ。

 

 道長はぽかん、とした様子で辺りを眺める。

 

「何処だここは……」

 

 腰に巻き付けたデザイアドライバーを触り、彼は思い出す。

 

 

 ――俺は確か、タイクーンと。

 

 

 

俺の家族はもう戻らない

 

 

力づくで連れて帰るぞ

 

 

自分だけが幸せになって、それでいいのか!?

 

 

家族の幸せを願って、何が悪い……

 

 

 

 ――激闘の軌跡が、彼の脳裏に過る。

 

 一歩、否、あの力を持つ彼には到底及ばなかった。

 責任を取れなかった自分を、道長は酷く責める。

 

「でも……なんで俺はこんな所に」 

 

 どこかデジャブを感じる光景に、道長は困惑していた。

 

 こんな廃れた街に見覚えはない。

 何より、あの戦いに負けた後――。

 

 

 彼は頭を動かすより先に、体が動いた。

 

 ゴミを蹴り飛ばしながら道へと出て、左右を確認する。

 

「人気のねぇ場所だな……」

 

 道長は不気味さまで覚える。

 彼が叶えた、世紀末な世界の影響なのか……と思うと、なおさら罪悪感と責任感が湧き上がってくる。

 

「あいつを探さねぇと……またあいつは……」

 

 少し重たい頭を振り切って、彼は歩き出す。何処に辿り着くかの検討さえつかぬまま。

 

 

 道長は歩いても歩いても同じような景色しか広がっていない街に、早くも嫌気が差していた。

 

「クソ……ベロバの奴ら、また何か新しいゲームでも企てやがったのか?」

 

 道長はふと、晴天広がる空を見上げる。

 

 そして、ある違和感に気がついた。

 

「なんだ……あの輪っかみたいなの」

 

 空に浮かぶ、幾何学模様を思わせる巨大な円と思いしき物の一部。

 それは神秘的な気迫を漂わせたまま、空中で微動だにせず滞在している。

 

「……何かおかしいぞ」

 

 足を止める道長は、近づいてくる足音に気づく。

 

 彼が振り向いた先。

 辿ってきた道の奥から、大量の人型ロボットが迫り来ていたのだ。

 

 盾と銃で武装した、黒いロボット。

 

「……!! 仮面ライダー!?」

 

 仮面ライダーにしては随分と屈強な身体だが、道長の目にはそうとしか映らなかった。

 

 

 罪なき人々を次々に襲うライダーなのだとすれば……。

 

 

「――ここで俺がぶっ潰してやる!」

 

 数が多いため、()()()を捨ててしまったのが惜しまれるも、道長は臆すること無くゾンビバックルを取り出した――

 

はずだったのだが。

 

「?……なんだこのバックルは」

 

 何とも()()()()()()に染まった、ゾンビバックルと思って取り出したバックル。

 何処となくゾンビの外見と酷似してはいるのだが――。

 

 それに困惑していると、敵は見たこともない拡張武装で一斉掃射を開始する。

 道長は近くの車の影へ身を隠し、体勢を整える。

 

「くそっ……! 無い! あれを落とすなんて……!」

 

 仕方なく、もう一つの手を使うことにした。

 

 

『SET』

 

 

 ブルーのラインが目立つ、片割れのバックルを差し込む。

 

 

「変身!!」

 

 

『GREAT』

 

 

 黒いスーツを纏う道長。紫の牛を模したヘルメットが装着させた直後、まるでパイロットのゴーグルを思わせる武装が装着される。

 

 仮面ライダーバッファ レイジングフォーム。

 自分には少々似合わぬ武装だが割り切るしか無い、と道長は覚悟を決める。

 

 

『READY FIGHT』

 

 

 円を描きながら現れた剣――レイジングソードを握り、弾丸の濁流の中へ身を投じる。

 不思議なことに、その弾丸の威力は信じられないほどに弱く、ダメージを全く感じなかった。

 

 力一杯剣を振るい、黒きライダー達を斬り倒していく。

 

 レイジングソードに溜め込まれていくパワー。敵を数回斬りつけただけで、それは最大限まで溜まった。

 

 

『FULL CHARGE』

 

 

 剣に付いたバックルを取り外し、ドライバーへ装填する。

 

『TWIN SET』

 

『TAKE OFF COMPLETE JET AND CANNON』

 

 何処からともなく現れる巨大な武装に、黒きライダーらしき存在たちは畏れ慄いたのか少しだけ後退する。

 

 肩に砲台を担いだような、敵と似た屈強な姿へと変貌したバッファ。

 その砲身を、敵の大軍へと向けた。

 

 

『LOCK ON』

 

『COMMAND TWIN VICTORY』

 

 

 砲台に収縮する水色のエネルギー。

 バッファは敵の攻撃を諸共せず、一切体勢を崩さずに敵を一瞬のうちに壊滅させるほどのエネルギーを照射。

 

 爆風と爆炎を浴び、バッファは安堵の息を吐く。

 

 次々に倒れていくそれを見て、バッファは違和感を覚えた。

 

「仮面ライダーじゃ……ない?」

 

 そう、彼が戦っていたのは仮面ライダーなどではない。完全なる無機質なロボットだったのだ。

 

「なんでこんな物が……」

 

 ゴミのように散らばったそれを見下ろし、バッファは変身を解こうとしたが、背後から何者かに撃たれ、その手を止める。

 

「次はなんだ!!」

 

 苛立つバッファが振り返ると、そこには一人の少女が立っていた。

 

(女……しかも、子供……?)

 

 彼女を見据えたバッファは、次々に驚くべき点を見つけていく。

 彼女の頭に浮かぶ天使のリングのようなもの、そして当たり前のようにこちらへ向けている拳銃。

 

 髪は長く、黒いマスクを纏ったその少女は鋭い目つきで彼を伺っていた。

 

「お前は何者だ。私と同じ依頼を受けた同業者か何かか」

「あ?」

 

 少女は拳銃を下ろさず、彼にそう尋ねた。

 

「依頼? なんの話だ」

「……違うのか」

 

 何やら彼女は勘違いをしている様子なので、バックルを引き抜き、変身を解除した。

 

 人の姿の道長を見て、少女は少し驚く素振りを見せる。

 

「……人……」

「あぁそうだ。俺は人間だ」

「だがヘイローがない……どういうことだ……?」

 

 ――ヘイロー。

 それが何を意味するのか彼には分からないし、なぜこんな子供が銃を持っているのかも分からなかった。

 

「ここは何処だ」

「……? ここはゲヘナ自治区の外れにある廃墟街だ」

「……あ?」

 

 ゲヘナ自治区。そんな名前の街を彼は知らない。単純に聞いたことがないだけか、とも思ったが、少なくとも日本にそんな名前の街はない。

 

「次は私の番だ。質問に答えろ。お前は何者で、誰から言われてここに来た」

 

 少女は銃を向けたまま彼に尋ねる。

 

「俺は吾妻道長……気がついたらここにいた」

「はぐらかすな。怪しいようなら、私は容赦なく撃つ」

「なっ……」

 

 トリガーに指をかけた少女を見て、道長は信じたくはない確信を得た。

 

(こ、ここは俺の知る世界じゃねぇとでも言うのか!?)

 

 警察でもない日本人が銃を持ち歩くなんてあり得ない。ましてや、彼女は仮面ライダーや未来人に見えない。

 信じたくは無いが、道長はこういう展開を何と言うのか知っていた。

 

 

「異世界転移……」

 

 

「何を馬鹿な事を言っている。さっさと言え」

 

 

 少女は銃を下ろそうとしない。

 道長は手を上げ、彼女に敵意が無いことを必死に訴えた。

 

「お前とやり合うつもりはない。話を聞け」

「……」

 

 その様子を見て、彼女はようやく彼を敵ではないと認識したのか拳銃を下ろす。

 

「吾妻ミチナガと言ったな。気がついたらここにいた……それはどういう意味だ?」

「そのままの意味だ。俺はこんな所を知らないし、そもそも……そのゲヘナとか言うのも分からない」

 

 少女は驚いた様子で、拳銃を腰に巻き付けたホルスターに仕舞った。

 

「……お前、まさか」

 

 彼女の言葉に、道長は手を上げたまま首を傾げるのだった。

 

 

 ◇

 

 

「学園都市キヴォトス……?」

 

 少女が焚いた焚火の火に縋りながら、道長は聞き返した。

 

 彼女から、この訳のわからぬ世界の事について色々と聞いては見たがいいが、道長にはどれも理解できない情報ばかりだった。

 

「あぁ。数多の学園が集まる都市。その学園がそれぞれの自治区を統治し、街が形成されている」

「待て待て……理解が追いつかない」

 

 頭を抱えながら、道長は少女に懇願する。

 

「無理もないだろう。お前は多分――キヴォトスの外から来た人間だからな」

「あぁそうだ。絶対そうだ」

 

 道長は何度も頷きながらそう繰り返す。

 

「……待て。何故俺が此処の外から来た人間だと分かる……? 似たような奴が他にも居るのか」

 

 少女が被っていたキャップのつばを摘みながら囁くように言う。

 

「お前とは少し勝手が違うが、キヴォトスの外から来た人で……私の――大切な人だ」

 

 その言葉を聞いた道長は、何処か“彼”の姿を少女に重ねずにはいられなかった。

 そう囁いた少女の声はどこか虚しそうで、希望を持っていないような、そんな表現ができる声音だったからだ。

 

「そういえばお前……名前は」

 

 道長はずっと忘れていた事を彼女に問う。

 

 蒼い瞳を彼に向け、少女はマスクを外してから、一呼吸置いて名乗る。

 

「錠前サオリだ」

 

 

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