ワリとクズな主人公が行く! 異世界洗脳!! (仕切り直し)   作:名無しのクズ

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――――前書き――――
 ゲームのイベントとか、仕事とか……単純にモチベーションとか。ストックが尽きました(灰化)


第24話 鉱山都市ノースミナス ~Mining Town of NorthMinas~

「うおぉ、赤くて燃えてるみてぇ……」

 

 赫赫たる空。

 山の纏う濃密な魔によって茜色の空はまるで陽炎のように揺らぐ。

 さながら業火に包まれた街並みのように。

 夕焼けはルートヴィヒならば街並みから人影が消えゆく時間の証。

 だが魔石灯で照らされているとはいえ雑踏は濃い。

 それは採掘された鉱石を精錬し、売り捌く火の絶えない鉱山都市特有の生活。

 採掘師も、精錬師も、鍛冶師も、商人も。

 代わる代わる働き、それを追って商売の途絶えない、通称――『眠れない街ノースミナス』。

 

「おらワクワクすっぞ!」

 

 初めて見る街並み。

 夜の繁華街を知らないヒイラギはその未知に口角を上げ、足取りを軽くする。

 

「おねーさん、その串焼き一本ちょーだーい」

「あいよ」

 

 恰幅の良い屋台主。

 開拓兵だったのか、それともかつて住んでいた村なり街なりがモンスターに襲撃されたのか、肉焼くその腕にはこの世界の日常で、ヒイラギにとってはまだ非日常の傷痕が刻まれている。

 深いそれを隠さないのは。きっとそんなもの、ありふれているからだろう。

 そんなことで人間としての魅力を失わないと社会が理解しているからだろう。

 

「ちなみにギルドってあの建物で合ってる?」

「そうだよ。この街は初めてかい?」

「そ。今日、てかさっき着いたばっかり」

「宿が決まってなくて面白い出会いを期待してるならあたしの弟がやってる『銀梟の風切り羽』って宿がオススメだよ。同類が集まりやすいのか弟みたいに濃い客がよく泊まるんだよ」

「――へぇ、開拓兵も住んでたりする?」

 

 マユゲとの会話が断片的に過ぎる。

 滞在期間中は同じ人物と組み続けること。

 三人目以降の増減は問題ないが、二人目に変更はなし。

 可能ならばそこでも二人目を探してみようと。

 

「もちろん。開拓兵だけじゃないよ、旅の学人にさすらいの部族もいるさ。それに修行の旅の商人やら鍛冶師もね」

「イイネ、そこ面白そうだ」

 

 カラカラと笑いながら宿の場所を教わり、まず先にギルドへ向かう。

 

(なんか、空気感が違うな。街全体も違ったし、ここのギルドはなんというか……なんだろ? ルートヴィヒ以上に賑やかなんだけど……意識の線が、太い? 違うか、細かい? うん……並列思考的っていうか、観察してる感じだと周囲への意識の分配が半端ない?)

 

 空間に満ちた気配と薄い視線の網。

 人一倍それを敏感に察知するヒイラギはここで過ごせば自分も同様になれるかと心を躍らせる。

 

「ねぇ、キミ。そんなところで立ち尽くしてどうしたの?」

「え?」

 

 横から女の声が掛かる。

 真っ先に意識を惹いたのは灰青色の肌。次に紅藤色の髪。

 異世界ゆえに様々な髪色を見て、獣人ゆえにそもそも肌の見えない人間も見て、鱗の肌も見てきた。

 だが見た目はヒイラギやベアトリクス、アデル、シャプレなどと同様の普人種ながら肌色だけが異なる。

 以前の認識との乖離がそこだけゆえ、かえって驚愕が強まった。

 

「お姉さんは……格好的に開拓兵ですか?」

「そ、一般開拓兵よ。ほら」

 

 荷物の直剣二本。

 見せられた胸元に下げられた開拓兵証。それはヒイラギのとは少し意匠が異なるが同様の内容(しるし)がある。

 

「一瞬胸見たでしょ~」

「見た。位置的に仕方ないとはいえ谷間の辺りから出てきてちょっとビックリした」

「スケベ」

「そうです私がスケベ人間です――イカン、話が逸れ過ぎた。え~と、立ち尽くしてる理由ですっけ? この街に初めて来てワクワクしてた感じです」

 

 性欲的理由が全くないと言えば嘘になるが、ほとんど純粋な驚愕からその豊かな胸に目を向けたヒイラギ。

 とはいえ自分が変態的であろうという自覚はあるからつい悪ノリで同調し、相手が初対面であることを思い出してすぐに話を戻した。

 

「なら良ければアタシが色々教えてあげる。どうする?」

「おっ、じゃあよろしくお願いします」

「よろしくね。それと口調は砕けて構わないわよ、同じ開拓兵で同じ街にいる仲なんだから」

「――じゃ、頼むわ」

「ええ」

 

 

 

 頭……眼がイテェ……。

 なんつーか、一日飲まず食わずで本読み続けた時みたいな。……眼精疲労?

 

「へぇ、知り合いに勧められてこの街に」

「この世界に来て二週間――今は三週間目だけど、まあ具体的な目的もなかったし。ちょうど良いかなって」

「別に目的がなくても良いんじゃないの? なんとなく楽しい、なんとなく興味がある。大体の人生ってそうだと思うわよ。何か払拭したい過去があるなら別でしょうけどね」

「それで……良いのかねぇ」

「人生なんて誰も強制しないわよ。するのは過保護な親か詐欺師くらい。だってそうでしょう? 社会は生き残るための機構で、その維持に必要な労力さえ支払ってたらそれ以上に要求なんてしないもの」

 

 親と詐欺師が同列なのは笑える。

 ま、それもそうか。

 どっちも善意を装って相手を支配したいだけだもんな。将来とかいう言葉を使って自分の思う姿にしたい奴と、親切とかいう言葉で相手に金を出させたい奴。

 タチワリいな。

 

「そっちは何か、目的とかあったりするか?」

「そうねぇ。真実の愛が欲しい、かしらね?」

「なるほどわからん」

「アタシもわからないもの、キミがわかるワケがないわよ。そもそも愛が実在するのかも、わからないわ」

 

 真実の愛、ねぇ。

 

「俺は最近まで好きって気持ちもよくわかってなかったよ。今も好きとか愛とか、よくわかってないけどさ」

「少し、わかったの?」

「それは一言で表せるほど単純じゃないだろうし、一つでもないと思う。けど俺は……俺に優しい目を向けるアイツが最後、一瞬だけ見せる悲しそうな眼を……どうにかしてやれればと、そう思うよ」

「愛してる?」

「定義次第じゃ、な」

 

 極論、俺はマユゲと一緒にいたいワケじゃない。

 そりゃあ、一緒に幸せでいたいとは思う。

 けど、もしもアイツが……アイツの未来が俺との別れによって幸せになるのなら、そっちの方が良い。

 結ばれるのは俺じゃなくても良いんだ。

 誰か別の奴が、俺といる以上に幸せにしてくれるってんなら、それで良い。

 

「アナタ……愛を理解してないからこそ、愛が重そう。自覚しちゃうと……違うわね、それもあるけどどっちかっていうと自分が軽いんじゃない? あまりに自分を軽視していて、他に感情を向けてしまうと、置いてしまうと、依存してしまう」

「そうか? でもまあ、愛の自覚ないから否定も肯定も出来んわ」

「それはさておき。着いたわ」

 

 頭痛は、マシになったな。

 眼は、たまに瞼が痙攣するけど問題なし。

 全体的な疲労感――脱力感が軽くある。

 

「身体、重い?」

「え、ああ」

「魔負荷が強い、魔負荷耐性が低い。そんなところね」

「魔負荷?」

 

 魔道具の勉強の時に出た単語だな。

 魔負荷。魔力(マナ)脆化とか、魔素(ミスト)脆化。

 人にもあるのか?

 

「もういう魔が濃いところだと具合が悪くなったりするの。強すぎると身体強化とか魔術にも影響が出るわ」

「慣れる?」

「個人差があるわね。適応が早かったら、すぐかしら。このくらいの濃さだと……遅くても二日ってところね」

「そっか」

 

 大丈夫かな。

 俺って短期間で一般開拓兵に上がったし?

 そこそこその手の適性あるだろうから。

 

「じゃ、やりますか」

「敵がどこにいるか、目視で分かる?」

「ん~……」

 

 たしかノースミナスの山上に出現するモンスターは鉱喰蜥蜴()

 それぞれ好みの石を食べて、そこから魔力(マナ)灰分(ミネラル)を補給、消化できない鉱物成分は排出物に、消化したけど体内で利用できない鉱石成分は体表から排出して擬態に用いる――だっけか?

 つまり――見つけ辛ッ!

 

「アレ? なんか形状が特殊っぽいし」

「外れ~。アレは多分他の開拓兵の魔術痕。正解は~、アレでした!」

「……どれ?」

「だから、アレ」

「……どれ?! 石とか岩とかしかないよ!」

「あの欠けた岩見えるでしょ? その隣」

「――アレ?! 本当にか!?」

 

 いや、岩にしか見えんて。

 ウッソだろオイ。

 

「じゃ、やってみよっか」

「ほぼ岩――よし、やってみる」

 

 鉱物は全身を覆ってる。

 背中側は特に装甲が厚い。

 けど装甲が厚いからって堅牢ってワケじゃない。

 アイツは鉱物から魔力(マナ)を吸収してるから必然的に排出硬化した全身の鉱物は魔力(マナ)欠乏状態にある。

 体内精製で純度は上がってるけどその特徴を構成するのに必要な要素が欠けてる。

 

「――遅いよ」

「――るせぇ」

 

 魔力を読んで、物質の強度を感知して、石目を――打つ!

 

()ッ!」

 

 何処だ、どこだドコだドコダ――ここッ!!

 

「ぅしッ!」

 

 切っ先入ったぁッ!!

 このまま――。

 

『キュルォォォォォオオオッ!!』

 

 るせッ!?

 ――魔力が乱れ!?

 

「しゃらくせぇッ!!」

 

 ンなこと今更関係ねぇッ!

 武器の魔力が吹き飛ばされるってんなら身体強化で砕くだけッ!

 ――しッ! 予想通り!!

 

「傷口致死量まで抉ってやんよ!!」

 

 分泌して硬化するってこたぁ、そこ引っぺがせば外部からの損傷皆無の弱弱皮膚が出んだろ。

 それに硬化と自重で皮膚と癒着してるだろうからカサブタ同然って予想もドンピシャぁッ!

 

「へへッ! 血ぃダバダバじゃんよ」

 

 海悪魔(サハギン)より強いけど――一週間の道中で色んな種類と戦ったからイケる。

 こっちの有利を押しつけりゃ多少の実力差はなんとかなるのは実践済みよ。

 

「あ~、手がヌメヌメする」

「……体内は石が詰まってる可能性が高いからキミの硬さじゃ素手はオススメしないなぁ」

「……確かに!」

 

 まだ消化されてない鉱物だから魔力が十分に残ってて硬いし、生体の中に素手突っ込んでる分魔力による防御も阻害されてる。

 運よく当たらなかったけど、普通にやりゃ石で傷つくな。

 

「素直に切れば良いんじゃないかな? ――こんな風に」

「……ワォ」

 

 えっぐ……。

 装甲ごと一撃で両断?!

 まず斬撃飛ばすってどうやんのさ!?

 

「すっげぇ……」

「キミもすぐ出来るようになるよ。強くなるんでしょ?」

「――ああ」

 

 やりますとも。

 やってやるよ。

 

「キミがどれくらいここに居るのかわからないけど……希望するなら教えてあげるわよ」

「本当か? じゃあよろしく頼む。ついでに知り合いから滞在中同じ奴と組み続けろって言われてるんだけどそれも良いか?」

「ええ。よろしくね、アタシは――クアークよ」

「俺はヒイラギ――……クアーク?」

「何?」

 

 待て待て待て待てッ!

 おい、ちょっと待てい。

 アっレぇ? その名前、どこかで聞いたような気がするなー。

 どこだろー?

 ……マぁジかぁ?

 本気で言ってるのかよ。

 

「ヨロシクオネガイシマス」




――――後書き――――
伝言掲示板・

伝言紙一〇五二『坑道調査員たちの意見交換所』
――
オスカー:流れ無視して悪いけどよ、最近モンスターが硬くなってないか? 降星歴177年6月14日

アーサー:手応えの話だと俺にはわからないけど確かに研ぎや修繕に出す頻度は少し上がったな。お陰で金の貯まりが悪い 6月14日

アヴリーン:調べてきた。魔石買取数一割増、素材買取数三割弱増 6月15日

アーリック:流石はギルド職員だ。買取時に測定した含有魔力量は調べたか? 6月15日

アヴリーン:調べてない。――調べてきた、平均3上昇 6月15日――6月16日

アーリック:通常のモンスターならばほとんど変化なしと認識する程度
      だが硬度に重点を置いたこの地においてはその変化は体感できる、か 6月16日

ガーランド:ここ半年で自分が活動した各坑道でのモンスター遭遇地と遭遇数、遭遇種、素材残留数を纏めたから役立てるといい 6月16日

クアーク:行動の性質が少し変わってるわ。間合いの測り方、踏み込みの時の姿勢の変化、攻撃の時の角度、体感だから詳細はそっちで詰めてね
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