今ではお茶を一服して病気が治ったとか幻覚を見たなどという話は信じがたいが、日本の茶道を「薬物を利用して仲間意識を高めるための儀式」として位置づけている欧米の民族学者の記述を読んだりすると、彼らにとって茶は特別な飲料であったことが理解できる。*1
天蓋プラネ@成功者
コンプラ〜、あなたの人生の羅針盤! 天蓋プラネでーす!
お前ら昨日なにしてた? 私はねぇ、デート! 今日はねぇ、エヘッ、夕立夕日ちゃんとデートに行ってきた話をするよぉ!
あとねぇ、後半にライブの練習した話もする!
知らないバカのために説明しておくとね、夕日ちゃんは個人勢で、正式にデビューしてからは四ヶ月くらいの大型新人! 相方もいて、古城葵さんって言うんだけど、今回は夕日ちゃんとだけ行ってきた! なんかね、私のファンらしくてぇ、クフッ、めっちゃ知ってくれてたぁ!
〈社交辞令だぞ〉そんなことないもんね。私が好きなものとか全部知ってくれてたし! お前らそうやって人を疑ってるとぉ、私みたいにデートできないよ? 〈そうだな、プラネみたいにデートできないな〉わかればいいんだよ、許す! 〈意味が分からないバカが最強〉エッ、なに? アッ! さっきの嫌味!? こいつ……! っていうかいま私のことバカって言った?
夕日ちゃんとはね、私の凸企画で知り合ってね、お礼も兼ねてご飯に誘ったの。私から! 戦場でも味方の死体を盾にして
まあ? 夕日ちゃんは私のファンだから? 快諾だったよ。エヘ、プラネさんの都合のいい日にお会いしましょうって! それで駅で待ち合わせたんだけどね、夕日ちゃんめっちゃ早く来てた! 私も時間に遅れないように二十分前行動してたのに、それより早いの!
それで、私を見てすぐに「夕立です」って声かけてくれて! よくわかったねって言ったら、「オーラがありますから」って! オーラがあったんだって、オーラが! やっぱ見る人が見ればわかるんだナァ!
〈まあプラネなら見ればわかる〉フフン、まあね。オーラが凄いから! 〈負のな〉おい、楽して叩こうとすんな! アンチはもっと字数を使え!
なんの話だっけ。ああそう、それで駅出てね、お店まで案内したの。お寿司屋さんね、私の行きつけの。いや、事務所の金で食べるときしか行ってないけど、まあ行きつけの! お寿司屋さん。
夕日ちゃん、知っててくれてね! 「もしかして、プラネさんが配信で言ってたお店ですか? 炙りサーモンが美味しいお店」って言ってた! 最初はちょっと鎌をかけたのかなって思ったけど、ガンダム効果? みたいな。でも、炙りサーモンは占い師でも当たらないよね!
〈バーナム効果?〉それ! 〈なんでわかるんだ〉私とリスナーはあっつーい絆で結ばれてるからね! 〈バカが好きそうな食べ物を言えば当たる〉は? 炙りサーモンは王道でしょ! バカはケチャップ醤油マヨコーンとか、アボカドピーマンピザポテトとか、キッズ寿司を頼むの! 〈王道なら当たるやん〉あれ……そうか……? いや、騙されない! 何が楽しくて私と夕日ちゃんの仲を切り裂こうとするの!? 嫌い! それに、夕日ちゃん他のこともいっぱい知ってくれてたし!
それでねぇ、個室でゆっくり話したよぉ! 初対面なのにすごく話しやすかった! 〈気を遣われてるんだぞ〉うっさいなぁ! こっちは盛り上がってたんだから、水をささないでよ!
ふつう初めての人と話したら、会話のノリとかテンポとか、様子見の時間があるじゃんね? でも、それがほとんどなくてね、なんか初めて話した気がしなかった! 前世でソウルメイトだったり? 〈配信見てくれてるからじゃない?〉そうかも……。ねえ、ふつうに論破しないで?
あ、それでね、夕日ちゃん、本当にVTuberが好きでね、うちの箱のこととか全部知ってるし、他の箱にもめっちゃ詳しいの! 夕日ちゃん、親分の最初の動画から見てるんだって! 伝説の目撃者だよねぇ。
でも最近は多すぎるから全然追えてないらしくて、そうだよねぇ、私も箱内の配信でさえ全部追えてないし、一万人? とかいるんでしょ、VTuber。今から参入するのは厳しいよねぇって、ちょっとしんみりしちゃった。でも、そんな中で個人勢やって、ここまで成果出してるのは凄いよねぇ。本人は運だって言ってたけど、運があっても実力がなかったらどうしようもないし、そんな中で同接三四〇〇人いる私は最強だな!
……ア、嘘嘘! 戻ってきて! 今のなし! 戻れー! ふう……チビらせやがって。〈漏らしたのか〉あれ、こう言わない? あっ、ビビらせやがってか。あと女の子に〈漏らしたのか〉ってデリカシーなさすぎ。デリカシーなさすぎ罪でキショショ島に流刑です。
〈他にどんな話したの?〉いい質問! 最近流行ってるコンテンツとか、今やりたい企画とか、三期生のメンバーのいいところとか、活動に関係ある話が多かった!
私のことはね、フヘ、言葉のリズムがいいからずっと聞いてられるんだって! なんかねぇ、俳句みたいに、五・七のリズムを結構使うらしい! そういうの意識してもできないし、無意識でやってるなら、エヘッ、天性の才能だって!
〈俺は前から気づいてたよ〉なら早く言え! 〈気づくのも凄い〉ね! 聞きやすいなとか思っても、言葉のリズムを聞こうとか考えないよ、ふつう。これって私がバカだからじゃないよね? 〈大丈夫、俺もバカだから〉自分をバカに貶めてまで私をバカにしたいわけ? 〈言われてみればリズムがいい気がする〉やっぱわかる人にはわかるんだナァ〜!
じつはね、話がそんなに盛り上がらなかったら仕事を口実にして逃げようって思ってたんだけど、アッ、これ言っちゃだめなやつ? まあ言っちゃったから続けるけど、結局、仕事の時間ギリギリまで話し込んじゃった!
二軒目も行ったよぉ! 喫茶店! 夕日ちゃんに
机はアンティークっぽいし、椅子もなんか黒張りで、私が焼いたパンみたいにふっかふかなの! どうしてこんなお店知ってるの? ってイケボで訊いたら、一回来てみたかったけど、一人で入る気になれなくて、せっかくだからこの機会に、って! くぅ〜! めっちゃいい後輩!
〈いつも女の子連れ込んでそう〉ねえ、ほんと失礼! よその人に失礼なこと言わないの! 〈王子様やん〉ね、ほんとそんな感じ! 〈ホストとかハマりそう〉奢ってもらった私は、貢がれた側だし? 〈ホストも初回無料だぞ〉エッ、そうなの? 〈場所による〉無料のところもあるんだ、へえぇ……あ、行かないよ? 〈知ってる〉〈知ってる〉〈知ってる〉やっぱりなんだかんだで私のこと信頼してるんだぁ、フフン。〈チビリだもんな〉ビビリね! ……ン? ビビリでもないよ!
で! メニュー見てびっくりしたよね。メニューに金額、書いてないの! えっ、大丈夫なやつ? って思ったけど、夕日ちゃん平然と注文してて、まあ夕日ちゃんの奢りって言うから、同じの頼んじゃった!
店員さんが目の前で
〈オシャレは我慢だからな〉へ~、プラネタリアンでもオシャレとか気にするの? あ、ごめんね。いまのべつに嫌味じゃないから。〈嫌味じゃないならなんだよ〉じゃあ嫌味ならなんなの? 嫌味ならなんだってんだよぉ! ……ふう。
〈味はどうだった?〉うーん……美味しかったんだけど、ごめん、正直わかんない! 〈バカ舌だからな〉それはハンバーグゼリー軍艦みたいなジャリンコ寿司頼むやつでしょ! 〈シンプルバカってこと?〉ち・が・う・!
美味しかったよ? 美味しかったけど、伝える語彙がなくて。でも、高そうな味がした! あと何杯か飲めば開く気がしたんだけどね、扉! もう少しでなんか掴めそうな気がする!
それでね、私がトイレに行ってる間に会計済ませてくれてて! めっちゃスマート!
なんかね、所作? が洗練? されてるっていうか、とにかくスマートなの! この人に付いて行ったらいいんだろうなっていう、安心感。カリスマっていうとちょっと違うんだけど、なんていうんだろ、うーん、〈スパダリ?〉そうそう、スパダリ!
〈スーパーダージリン?〉お前船降りろ。でも、あのお茶、なんていうんだろ。ダージリンではないことは確かだけど、飲んだことない感じで面白かった! また飲んでみたいな。
〈値が張りそうなのだとセイロンティーとか?〉聞き取れなかったんだけど、漢字でね、
〈大紅袍?〉あ、これこれ! このだいこう……〈だいこうほう〉ふーん、そうなんだ。〈えっ、大紅袍???〉何、有名なの、これ。〈20グラムで250万ってマ?〉お茶に二五〇万もするわけないじゃん! 騙そうとしても無駄だよ!
〈最高級のやつはそれくらいする〉……え、本当? いやいや、いやいやいやいや…………エッ、本当じゃん。いまお前らWikipedia編集した? 本当じゃん! 二五〇万!? お茶って一杯淹れるのに何グラム使うの? 〈3グラムくらい〉ええっとぉ……〈37万〉……三十七万? エッ……最高級じゃないよね。アッ、ホラ、香港のは五十グラムで七万円って書かれてる! それなら……〈4200円だね〉ウン……四二〇〇円……。私、ふつうにおかわりしちゃった……喉乾いてて……。〈税込み4620円だぞ〉い、一万円……?
待って、ちょっと待って、いま通話してみるね。
アッ、もしもし夕日ちゃん!? いま大丈夫!? 配信中だけど!
「大丈夫ですよ。先日はありがとうございました。とても幸せな一日でした」
ウン、ありがとう……フヘッ、じゃなくてね!? ッスー、奢ってくれたよね、お茶。
「ああ、はい。配信見てたので、事情はわかってます」
わかってますじゃなくてさぁ! いくらだったの、あれ!
「えー……? こういうのの値段聞くのって、タブーじゃないですか?」
確かにマナーは悪いけど、値段が値段だから、ね?
「プラネさんにとっては安いと思いますよ」
焦らすな!
「仕方ないですね。五五〇〇円です」
高いよ! 五五〇〇円!? あのサイズで!?
「プラネさんに奢ってもらったお寿司のほうが、いい値段しましたけど」
ウッ、食事の値段言うのはタブーでしょ! カッコつけたかっただけだし! それにお寿司はいっぱい食べたし! 一杯じゃないし!
「さすがプロですね。とても面白いです」
キッ、嫌い! 夕日ちゃん嫌いぃ! 私にベンチャー系の中年社長しか飲まないような成金ティーを飲ませて、何が目的!? お茶の味が染みた肝臓を美味しくいただくつもり!? ていうか私、二杯飲んじゃったけど!?
「飲んでましたね。でも、美味しかったならよかったです。わたし、昨日誕生日だったんですよ。せっかくだし、プラネさんと美味しいもの食べて、楽しく過ごしたいなって、奮発しちゃいました」
エッ、誕生日だったの!? 言ってよぉ! 用意したのに、プレゼント!
「プラネさんと過ごせたことが何よりのプレゼントですよ」
エッ、エヒュッ! ヤッ、やっぱ好き! 好きだけどぉ!