デュエルマスターズ~クソゲーハンター、クソカードを駆る~ 作:Saz_a_Nami
駆け巡る電流、刺激、インスピレーション。
めでたい時期、今、この瞬間!
初投稿です。
ビギニング:スタート
筋肉が解けるように体から光があふれ視界が白に染まる。どこからか旋律が届き、美しい歌声とのハーモニーが奏でられる。白に染まった視界の中に滲み出すように映像が浮かび上がってきた。
武装したドラゴン、深海のクリーチャー、反目しあう天使と悪魔の王、巨獣を呼び出す儀式場に混合した無双の竜。小型のモンスターたちが群れを成し駆け出し炎と水の双剣により薙ぎ払われる。
怒涛のように押し寄せた無数の幻想的な戦いの光景の最後にはセピア調の映像が差し込まれる。人だかりの中で青年と大人が向き合い何らかのカードを繰っている映像だ。それも白い光に包まれると一面にタイトルロゴが現れた。
「やってやるよ、
自然と俺、ことサンラクの口から声が漏れる。
デュエルマスターズを基にしたファンに向けたアクションゲーム、デュエルマスターズレガシー。
元々、デュエルマスターズとはカードゲームである。それも神ゲーの部類に属する。カードゲームにも神ゲーにも明るくない俺はデュエルマスターズについてほとんど知らず、悪友たるプロゲーマーにこのゲームの存在を教えられたときには遊戯王の親戚かなにかかと勘違いした。因みに遊戯王は旧時代のクソゲーの中に一部名前を聞いたことがあり知っていた。
カッツォが言うところによると、神ゲーとまでは行かないようだが良ゲーといえるゲームらしい。当然俺は疑問に思った。なぜそれを俺に勧める?
生粋のクソゲーマーである俺はクソゲーが何故にクソといえるのか、判別するための感覚を取り戻すために良ゲーを遊ぶこともある。しかし現在はシャンフロもネフホロ2もある。良ゲーは十分に間に合っている。クソゲーで絆を紡いだカッツォである。それが分からない筈もない。
しかしあいつはきざったらしく顔の前指を振り言った。
「確かに概ねは良ゲーって評判だよ。ビジュアルも優れているしアクションもまぁシャンフロには劣るけど悪くはない。ゲームのつくりもよくできている」
おおむね?
「そう、概ね。一つ、理不尽染みた、カードゲーマーどころか熟練のアクションゲーマーですらクリアできないクソコンテンツがあるらしいんだ」
そういう訳である。マルチプレイにも対応しているモードらしいのでチャレンジに手伝ってもらえないかと誘われたわけだ。
新緑の息吹が吹き抜けるフィオナの森を斧を振りながら歩きつつ思う。
感触としてはアップデートされたコスモバスターぐらいの自由度で体を動かせる。決まった動きを再現するアクティブスキルのようなものはないらしい。ステータスとパッシブスキル、そして武器や仲間との協力で育成していく素直なアクションだ。
種族に獣の特徴とマナへの親和性を持つビーストフォークを選んだがいい感じだ。取り合えず、ストーリーモードに当たるレガシーモードを一通り攻略する分には単純な肉体スペックでどうにかなるだろう。ティラノドレイクやデスパペットあたりと悩んだが正解だったかもな。背後の茂みからの物音を頭頂部の耳が拾い咄嗟に片方の手斧を投擲する。近づいて見ると小型の虫の化け物が目を回して倒れていた。
「しかし、デザインがところどころグロテスクだな。本当に対象年齢10歳か?」
更なる気配が辺りから聴こえる。囲まれているようだ。
「カッツォはレガシーモードの難易度はそこまでだって言ってたな。とっとと終わらせてカッツォに合流するか」
襲い掛かるジャイアントインセクトを半身で躱しはたき落としながら。テンションを上げる。
クソゲーマー、しかしそれもまたゲーマー。クソゲーでも心を燃料にテンションを上げられる生態をしているだけであり良ゲーでも真っ当?に楽しむこともできる。やってやるよ、デュエルマスターズ!アクションゲーマーの前にひれ伏せ!
フィオナの森に犬頭の蛮族の笑い声が響き渡った。
「サンラクはそろそろ始めたかな?」
湖に釣り竿を落としながら一人のヒューマノイドが独り言ちる。長い髪をたなびかせ、体の関節各所を機械で武装した中世的な出で立ちだ。どこか儚げで、しかし彼を守る装甲はところどころ凹み薄汚れている。歴戦の証である。
汚染された水文明の住人たちの避難先、その小島の一つである。見回せば水生生物がモチーフであろう見た目のクリーチャーたちの姿がちらほらと見える。異端であるヒューマノイドの彼を遠巻きに警戒しているようである。
「レガシーモードはアクションゲーマー向けというよりも、既存ファンであるカードゲーマーでもちょっと時間をかければクリアできる程度なんだけどねぇ」
疲れたようなため息をヒューマノイドは吐く。釣竿の先の浮きが水面の揺れに合わせて波紋を作る。しばらくこうしているが何かが釣れそうな気配は感じられない。
「爆熱天守、魔導管理室、メメント守神宮、ジョー星。かつての環境を蹂躙したといわれる圧倒的な力を持ったカードたちを参考に、神歌の力が引き出した特殊な世界」
メタ的に言うところの
「散発的にクリア報告は上がっているけれど全てが攻略されたわけじゃない。一強とも言えるほどの圧倒的な強さを誇ったデッキたちは未だにクリア者ゼロを保っている」
販売戦略としては変な話である。既存のデュエルマスターズプレイヤーや元プレイヤーたちを対象にした、決してガチ勢仕様の硬派なアクションではない筈なのにクリア困難なコンテンツを用意するのは筋が通らない。気持ちよくプレイ終了とさせない、いやな後味を産みゲームの評価を下げうるものだ。
どこか腑に落ちなさを抱え、手慰みに落ちていた石を湖に投げ込む。浮きがつくる波紋よりも二回りほど大きい波紋ができ石が沈む。
「競技として限界まで競い合うとハイエンドたちの魔境になるのはどこの業界も変わらないものなんだね」
金に輝く流星や車いすの蛮族、韓国の最高の対応力、マスクド般若のことを思い浮かべる。誰も彼も、日本で随一の戦績を誇る自分ですら一歩譲る圧倒的な強さを誇るGH:Cにおける最上位プレーヤーたちだ。死力を尽くしあって、そのうえで敗北を喫していることを思えば、デュエキングモードの難易度も分からなくはないところがある。
「商品づくりでそれをやるのは違う気がするけれど」
そんな具合に上の空であった彼は気づけなかった。釣り竿の浮きの下に何やら巨大な影が現れていたことを。
「部分的には間違いなくクソゲーだよ。サンラクも少し気にィluプぐうぇぁ」
水中から現れたトラの模様を持つ腕に足をつかまれ宙づりにされる。二の腕に長いヒレを持つ黄色い魚人のようなクリーチャーがなにやら不機嫌そうに彼を見下ろす。その頭にはたんこぶができていた。何やら汚い悲鳴が漏れ出たが、それを気にする余裕もないパニックに陥った。
「ティガウォック⁉なんでここに、急に⁉つかまれた!」
どうにか脱出したドゥエカッツォはその後十分近く追い掛け回されることになった。