デュエルマスターズ~クソゲーハンター、クソカードを駆る~ 作:Saz_a_Nami
あと、ステージは順番に紹介していくつもりじゃなくて、面白くなりそうなのを選んで出してます。話の流れってこういうのでもそこそこ大事だと思うんです
二体の炎の龍が交じり合うようにのたうつ絵が描かれている門扉を見上げる。塀から胴体が伸びてきて門の上で頭が絡む構図だ。一般的な、零さん家のようなサイズのつくりであれば若干滑稽であったかもしれないが、ここは超獣世界。当然人間サイズではなく巨大クリーチャーでも通過できるようなサイズで設計されており圧倒的な威容を見せている。
「こっちが正門でメンデルスゾーン。ぐるりと回りこめばキャンプファイアーみたいな絵が描かれている火の粉祭りの方に出るわけ。という訳で行ってみましょーう」
音頭をとるペンシルゴン。門扉右下にある小さいクリーチャー用の勝手口を開けて俺らを先導する。
「そうだ、このあと直ぐに連続して戦闘することになるから今の内にバフをかけておくね」
事前に大まかな流れは共有されている。ペンシルゴンの手に杖が現れそこから光があふれる。エナジーライト。ゲーム内の速度が低下し、相対的に思考速度を強化する呪文だ。
「で、最初にくるやつはルストがやるんだったよな?」
後ろに並ぶ機械生命体に視線をやる。メカ・デル・ソル。生物のように振舞う特殊な技術により作られたたクリーチャーたちの総称だ。メカフリークのこいつのことだ。選ぶだろうなと思えば案の定だ。
ルストは頷いて言う。
「まずは肩慣らし。一瞬で片づける。メカの力を刮目するといい」
どこまで本気か分からない表情で言う。まぁ、心配はしていない。機械を扱わせればルストの右に並ぶものはごく少数だろう。
砂利を踏みしめて歩く。当然ながら庭も巨大クリーチャーを基準に作られており尋常ではない広さだ。日本古来の城のデザインであることを加味すると、運動場としても耐えるつくりであろうことは想像に難くない。その広場の真ん中に一体の竜が佇んでいた。
「ルストちゃん。あいつが一体目。ミツルギブーストだよ」
ペンシルゴンの囁きに頷くと無言のままミツルギブーストに近づく。ドゥエカッツォより一回りでかいメカ・デル・ソルのルストよりもさらにでかい、赤い鎧に剣と盾を構える姿は武人そのものっである。
「なんというか、思ったよりでかいね。それに頭もよさそうだよ」
ふよふよと浮かぶ四面体の頭をした、ピラミッドメンに似たトライストーンのモルドが言う。ネフホロと勝手が違う中で相棒の躊躇いのなさに不安になったのだろう。
「レガシーモードクリアしてきてだろ。形が人じゃねーとはいっても自分達で装備作ったり会話して交渉したり、所属に文明って付けるのに遜色ない知性があるのはわかってるだろ。それに、あいつも雑魚とは言うが、デュエキングに選ばれた言うなれば
俺の言葉に四面体に浮かぶ目を細める。
「分かってはいたけど、一筋縄では行かなそうだね」
話している間に重質量が頽れる音がする。ルストがミツルギブーストをスタンさせた音だ。無傷のままモルドに振り返ってピースサインを作っている。
体勢を立て直したミツルギブーストは、俺らを認めたように一礼すると地面に溶け込むように消えてしまった。
「お疲れ様、ルストちゃん。何か言いたいことはある」
無表情のまま言った。
「ミツルギブーストのみ剣でブースト」
モルドの笑いが収まるまでしばらく待つことになった。
襖を開く。直前に倒したメガ・マグマ・ドラゴンを背後に廊下を進む。かれこれ三戦、徐々に相対するドラゴンの強度が上がってきているような気がする。マナが溜まる度に呼び出していた小型クリーチャーが一掃されてしまった。
バトライ閣の攻略は長丁場になる。慎重な立ち回りで消耗を抑えようとはしていたが、ところどころに生傷が目立つようになってきた。
「次の相手は?」
バトライ閣攻略の立案者ペンシルゴンにプロゲーマー特有のスタミナをもって俺らの中で一番余裕のあるカッツォが尋ねる。
ミツルギブースト、メガマナロックドラゴン、メガマグマドラゴンと続けて対峙する敵を当ててきた。相当な下準備をしてきたのだろう。
「それがねぇ、分かんないだな、これが」
俺らは目が点になる。
えぇ?挑む前に「湿気た面で挑戦数重ねて無理やり攻略するの楽しくなーい。もっとちゃんと調べて建設的にやらないとか馬鹿か暴れ牛と同程度だよ」とか言っていた癖にもうデータがないのか?
「そもそもデュエキングモードのステージ構成ってさ、カードで
つまり、火文明のドラゴンなら
その言葉と同時に次の部屋への襖を開く。今まで同様しっかりした造りの和室だ。他と同様に人間サイズから掛け離れたボス戦になりそうな雰囲気の広さに、しかしそれまでとは気配が違っていた。
メガマグマとマナロックはでかかった。その巨躯に見合った力強さと攻撃範囲により俺らは警戒しつつも攻撃をもらい、しかし袋叩きにして打倒してきた。部屋の中にいたものはちがった。
サイズは人間程度。されど重金属で身を包み構えを崩さない膂力は人間離れしているし、鎧の隙間に覗く皮膚は変色し、鱗のようになっている。
なにより異質なのは徒手空拳であることだ。竜の犇めく爆熱天守。その中で単なるヒューマノイドが徒手空拳でいることが尋常でないことの証である。
「うげ、よりによってだよ。モルトネクストじゃん」
苦い顔を浮かべるペンシルゴン。事前に概要は聞かされている。フィジカルで前の二体を上回っており、そのくせ攻撃が二重に発生する。また、爆熱天守のギミックを作動させるらしく、動きが二倍速くなるか行動の度天井からドラゴンが落ちてくるようになる。一番火力のある敵だ。
「サンラク君、ルストちゃん。突っ込んできて。ドゥエカッツォ君は二人が抜けてきたときの対処に待機、モルド君はビーム打って時間を稼いで!お姉さんは切り札の準備するから」
これも予定通り。ペンシルゴンの言う切り札の仔細は知らないが、役割分担に異論はない。カッツォの野郎の仕事が少ないぐらいだが、一番安定したパフォーマンスを発揮するのはあいつだから護衛役に適任なのだろう。
状況を整理しながらルストと並んで走り出す。人の形だったシルエットが変形により四足歩行に変形する。足裏のバーナーを吹かして加速するルストに若干遅れながら依然として構えて動かないモルトネクストに一太刀入れる。応えた様子はない。
動き出しが遅い。大量の増援がくるギミックが作動しているようだ。
「ルスト!このノロマ、俺たちで袋にしてやるぞ!」
言いながら横に回り込み続けて斧を振るう。俺と挟み込むように位置取るルストはレーザー兵器を起動させる。
モルトネクストの動きは機敏ではない。俺とルスト、たまにモルドの波状攻撃は防ぎきれないようで時々良い一撃が入る。しかし徐々に慣れてきたのか、防御の隙が減り防がれる割合が増えてきた。これでは削り切れない。
「サンラク、足止めに切り替えるべき」
ルストの忠言に攻撃を緩める。もともとの役割は足止めだ。倒しきれたら万々歳というだけで、倒しきれないのも承知の上だ。ペンシルゴンが切り札を切れずに倒されることが最悪だ。モルトネクストの妨害を念頭に位置取りしなおし迎撃に思考を切り替える。
「ぬぐぅおっ、重たっ」
反撃の一撃を防ぐ。はじかれるように殴られた結果俺の体は数メートル後ろに下がる。モルトネクストに行動を許すことになった。
後方から何かが落ちてくる音がする。大型ではない。精々が中量級。
「う、わ、とぉ」
後背から声が聞こえる。トライストーンは接近戦に適正のない種族だ。よりによってヘイト分散のために孤立していたモルドの近くに落ちやがった。いや、ヘイトは取れているから予定通りではあるのか。
再びドラゴンが落ちてくる。今度はこっち側、乱戦する俺らとモルトネクストに割り込むように現れた形だ。敵が多い。ちょっと俺らじゃ対処しきれそうにないが、ペンシルゴンはどうするつもりなんだ。
「なぁ、ペンシルゴン。俺ってどういう風に死んだんだ?」
結局負けた。俺は途中で、攻撃の前触れもなく死んでしまったためどんな経過があったのかが分からなかった。前衛張ってたのに攻撃に反応できずにやられたのが本当に情けない。
しょぼくれた俺を見て、ペンシルゴンは苦笑すると上を指さした。
「ん?あいつ⤴ってことか?」
ペンシルゴンの真似をするように空を指さす。おかしいな。あいつ⤴は幕末の住民。デュエルマスターズの世界にはいない筈だが…
「どういうことを考えているかはしらないけど違うよ。
モルトネクストは倒しきったのは覚えている。ペンシルゴンの切り札、アトランティスがうまく嵌り、モルトネクストを討ち果たす道を切り開いたのだ。しかしその直後、先に進む襖が開きミツルギブーストの格闘バージョンのようなドラゴンが現れた途端、轟音と共に俺とルストが石のようになってしまったらしい。
動き出す爆熱天守とさらに現れるドラゴンたちに抵抗叶わず敗北した、と。
「クソゲーでは?」
「ぐぅの音もでないねぇ」
ルストとモルドはネフホロをやるために既にログアウトしていたらしい。苦笑するペンシルゴンとカッツォに見られながら俺は再び、今度は全力で叫んだ。
クソゲーーーーーー!
爆熱天守はまだ底を見せていない。デュエキング、それは歴史の深奥であるが故に
切り札については当然進化もできますよってことです。ゲーム的にね