デュエルマスターズ~クソゲーハンター、クソカードを駆る~   作:Saz_a_Nami

7 / 9
 運ゲーには二つ、パターンがあります。

一つ、試行回数による上振れ狙い

もう一つが、試行回数を稼がせず、上振れさせない。


どっちも数パーセントの負けの目をぬぐい切れないですね。


第四戦:ミラクルとミステリーの扉

 バトライ閣の攻略は断念することになった。ペンシルゴンによると、津波の如く押し寄せるドラゴンは想定していたけど星が襲ってくるのは聞いていない、とのこと。そこそこ粘ったらしいが、結局星に吐かされたリソースのせいで爆熱DXバトライ武神に詰め切られて負けたらしい。

 ペンシルゴンが当初想定していた以上の難易度のため、それぞれの翌日の予定などを鑑みて攻略の中止を決定した。俺とルスト達は学生なのでともかくカッツォとペンシルゴンは正真正銘の社会人だ。勝てるかどうか不透明なゲームのために本業をおろそかにできないと考えるのは当然だろう。

 とはいえ、だ。俺はクソゲーマーである。そしてこのゲームを始めたのはバトライ閣を始めとしたクソ難易度ステージを攻略するためである。思っていたよりも難しいからあきらめま~す?そんな風に納得できるようなら海パン覆面でフェアクソを殴ってない。

 

 というわけで特訓だ。デュエルマスターズサーガではなくシャングリラフロンティアにログインした俺はエムル送られベヒーモスに来ていた。

 

 デュエルマスターズサーガにはシャンフロでいうスキルと呼べるものがない。代わりにカードゲームを踏襲してマナというトークンを消費して効果を発揮するカードを使いクリーチャーに対抗する。

 つまり、アクションについては自前でほとんど補わなくてはならない。

 長年積み重ねたゲーム経験のもと、人に自慢できるぐらいにはサポート抜きのアクションはできるクチだと思っていたが、どうにも足りないらしい。思えば対人でも負けることが多かったような気がする…比較対象がおかしいのかもしれないが。

 ともかく、今の俺ではDPSが不足しているのではと思った。そして以前も利用したおあつらえ向きの修行場を思い出したのだ。

 

 今俺がいるのはベヒーモス三層。九層にて行われた象牙式閉鎖環境生存レースのトップ何位かを集めたボスバトル用施設だ。前はスキルの促成栽培が目的だった。今回は知性が高い大型とのタイマン練習のためのサンドバッグになってもらう!

 

「象牙。こいつら好きなだけ倒しても良いんだよな」

 

「えぇ、できれば開拓に注力してほしいところですが、それが我が子のためになるのなら構いません。ストックはまだまだあるので」

 

 こいつこのキメラティックな不思議生命体どものクローンなんかも作ってるんだろうな。本格的にラスボス臭が漂ってきてる。始原眷属・眷族らよりはマシなんだろうが。

 ともあれ利用できるだけ利用してやろう。便利なものを使えるだけ使いたおすのはゲームの基本だからな。

 

 

 

 象牙の作品は実にバリュエーション豊かだ。偉大な科学者の名前にあやかった名を持つおぞましい継ぎはぎの機能を持つ怪物たち。およそ倫理観を無視して造られたそれらは、しかし独自のアプローチから明瞭なコンセプトを持つ。

 例えばワットー12ー4は腕から電撃を放ち、スタンさせたまま殴り切るインファイト型。チャンドラー8ー2であれば収縮する毒性の粒子を散布し削り殺す、といった具合だ。

 シャンフロは大型モンスター相手にスキルなしでタイマンすることが推奨されるゲームデザインではない。刹那理論やら進化現象やらといったフレーバー的な説明があるが、メタ的に言えばハイファンタジーが舞台のMMOだからだ。

 にも拘わらずアバターの素のスペックだけで戦えば当然しんどい。

 

「極めて非効率ですね。いくら封臓により身体能力が向上しているといっても内燃現象も外燃現象も使わず、あれらを打ち倒すとは。我が子よ、ジークらが報われないではないですか」

 

 象牙が何やらぼやく。数度リスポーンしながらも連戦を続けぼやけた頭ではうまく認識が働かない。

 

「うるせー。基礎練に効率なんてほとんど関わらねぇだろ。いいから次もってこい」

 

「そうしてあげたいのですが、サンラク。あなたに来客ですよ」

 

 はて、来客?心当たりのない言葉に首を傾げる。有象無象に集られるのは嫌なのだが、反射的に白い布を被る。

 

「こんにちは!サンラクさん。象牙さんにいると聞いて来てしまいました!」

 

 何故反射的にこれを被ったのか?自身の行動に困惑しながら元気の良い声に応える。

 

「お、おう。久しぶりだな、アキツアカネ」

 

 青い髪の忍者風の装備を付けた少女、秋津茜は俺たち旅狼の一員にして光属性担当だ。旅狼の他メンバー同様、独自路線を行く彼女とは友人ではあるが絡みが少ない。メジェド神姿の俺を見ても臆さず笑顔を絶やさない。

 

「最近はエムルさんに聞いてもいないことが多いって聞きますから会えるうちにあっておこうと思いまして。それで、いきなりでなんですが相談がありまして…」

 

 語尾をしぼませる秋津茜。ナチュラルに仕草があざとい。溢れる後輩力により成り立つあざとさだ。ペンシルゴンがやっていたら鼻で笑ってやるところである。

 

「デュエルマスターズサーガの練習、手伝ってくれませんか!」

 

 

 

「くそ、秋津茜!扉が開くぞ!」

 

 デュエキングモードで挑戦できるステージは歴代優勝デッキのみではない。上位入賞デッキにもスポットライトが当てられている。もっとも、優勝デッキに比べれば難易度は優しめになっている。

 そんなステージの一つ、ミラクルとミステリーの扉は、他のステージとは毛色が大きく異なる。序中盤はギミックからランダムでクリーチャーが出てくるのだ。逆に言えばギミックが作動しなかったり、でてきたクリーチャーが無視できる類のクリーチャーでなければ押し切りを狙える。DPSチェックの性質が大きいステージと言える。

 

「サンラクさん、間に合いません!」

 

 悲鳴のように秋津茜が言う。火力が足りない。一回目のギミック作動時には何も出てこなかった。望外の幸運に押し切ってイージーウィンに終わるかと思ったが、そう上手くはいかないか。

 キュピズム染みたデザインの扉のようなものから光が漏れ出し巨大クリーチャーの輪郭を形作る。槍を構えるドラゴンが姿を為した。

 

「サンラクさん、あれは私が引き受けます。門の破壊をお願いします!」

 

 言うが早いがドラゴンに駆け出す秋津茜。反論を挟む余地もなくドラゴンと対峙し始めた。秋津茜の種族はティラノドレイク。運動性能は高い種族だ。秋津茜のVR適正を考えればしばらくは持ちこたえられるだろう。

 即座に動けなかった不甲斐なさを振り払いながら斧を振りぬく。もうかなりボロボロになってきた。しかしまだ完全に壊れるには時間がかかるだろう。

 後ろでは秋津茜の奮闘する音が聞こえる。俺の邪魔はさせまいと、振るわれる槍を相手に飛んで跳ねて転がっての大立ち回りだ。どうしようもない焦燥が斧を振るう腕を早める。横から、袈裟に。回転させた扉を削る。

 だが、そうなるだろうとは薄々感づいていた。俺が扉を壊しきるより前に秋津茜がミスをした。

 

「きゃっ」

 

 年相応の悲鳴が聞こえる。槍の柄に打たれ、空中にその身を投げ出された。

 

「ごめんなさい、サンラクさん!」

 

 投げ出された状態から、扉の様子を見て顔を歪めたのが見えた。時間を稼ぎきれなかったことを確信したのだろう。そして叫んだかと思うと最後にこう言い残して槍に貫かれた。

 

 

 ()()()()()、発動。

 

 

 

 やはりと言うべきか何と言うべきなのか、秋津茜の最後の行動のおかげで攻略は成功した。

 ヴィルヘルムのあの巨体に見合うサイズの槍に貫かれた瞬間にティラノドレイクの最強呪文、ティラノリンクノヴァが発動し、門を粉々に破壊しつくしたのだ。残ったコアのようなものを俺が破壊すると、ヴィルヘルムを倒す前にリザルトへと移ったのである。

 

 星龍の記憶から使用されるカードはランダムなはずなのだが当たり前のように最強呪文を引き当てて、運が良かったです!と隣で笑うこいつはなんなんだろうか。光属性ともなれば乱数を自在に扱えるということなのだろうか。クソゲーでヒロインのパフェのために桃を集めた日々を思い出す。ひょっとして星龍の記憶は最強の呪文なのではないだろうか。

 その後、こっそり自分でも星龍の記憶を何回か試したら何も発動せずゲームオーバーになった。

 運ゲーはやはりクソ。




豪運の持ち主もまた、デュエキングに挑む資格あり
  しかし運に頼るのは最終手段と心得ろ


秋津茜の種族、パラサイトワームも候補でした
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