デュエルマスターズ~クソゲーハンター、クソカードを駆る~ 作:Saz_a_Nami
ぬるい。
全力でもなく、本気でもなく、ただただ受け身であった
ゲームの腕前があればどんなゲームのどんなステージでも初見攻略がいけるかと?と聞かれれば、それは当然ノーだ。実力ではどうしようもない初見殺し敵な要素を含むステージというのは当然存在するし、ある程度のパターンが見られるとはいえ、対策の対策の初見殺しも生まれる。事前情報なしにそれらを一発攻略するのは実質的な運ゲーと相違ない。
つまり、レベルデザインの匙加減一つで初見攻略ができるかが決まる性質上、それはゲーマーの腕前を測るものさしとしては不適格と言わざるを得ない。
そう頭の中で言い訳を連ねるが、どうにももやもやが収まらない。
俺が最近挑んでいるデュエキングモード。四六時中、毎日挑戦しているわけではないにしろ、全クリアにはまだまだかかりそうなほどステージを残している。特に際立った難易度とされているステージの攻略はほとんど手が付けられていない状況だ。
現在、メインに遊ぶゲームをシャンフロに据えているため、本腰を入れていないとはいっても遅々として攻略が進まない現状にはこう、クソゲーマーのプライド的にくるものがある。
間違いなく、デュエキングモード自体は俺の趣向に合うものだ。クリアさせることが念頭に置かれていないであろう難易度や、ゲーム性を否定するようなギミック。デザインの優良さでは補いきれないフラストレーションを感じられて実に良い。いや、良くはない。
「ルストモルド、京極は興味が薄い。カッツォとペンシルゴンはリアルが忙しくてログイン率が低くてレイさんは誘うのが気が引ける」
そんなに楽しそうでもなかったし。秋津茜もログイン率が低い方に分類される。旅狼のメンバー自体がそこまで攻略に積極的ではない。まぁ、それも当然でシャンフロにクオリティーでは逆立ちしても勝てないのだ。シャンフロを差し置いてデュエキングモードの攻略に傾注する必要水はほぼない。もっとも、その理屈ではおかしいのはシャンフロの側なのだが。
「ソロでいくのか?」
マルチプレイでは出現するクリーチャーの数がシンプルに増加する。プレイヤーも攻撃に参加できる都合上、数の暴力による攻略を抑制する狙いがあるのだろう。それでもプレイヤーが多いことで得られる対応力のメリットが大きいのだ。それがペンシルゴンが旅狼メンバー全員を巻き込んだ要因なのだが。
ソロ攻略のハードルは高い、というのは俺にとって問題ではない。ただ、相応の時間的リソースを用するだろう。ソロ攻略のためにシャンフロを放り出せるかと言えば悩ましいところがある。
「結局、そんな中途半端な態度が停滞を招いているんだろうな」
タスクが飽和している。シャンフロはほとんど無限の可能性をもつ、シュミレーション染みたゲームだ。無限の可能性はある程度の区切りにたどり着かせるまで中々な量のリソースを要求する。代表的な例であればレベル上げだろうか?俺は
そう、マブダチだ。タスクが飽和しているとはいっても上手いやり方がある筈だ。取り合えずマブダチに相談してみてから考えよう。
気を取り直すように頭を振り前を見直す。いつの間にか進んでいた授業に追いつかせるためにノートにペンを走らせながら残りの授業時間を過ごした。
水晶群蠍は相も変わらず熱烈に俺を歓迎してくれた。こっそり忍び込んで一通りカンカンと鶴嘴を振り回したあと、音に反応し連鎖的に目覚めたヤツ等は鶴翼の陣を敷き俺に大挙を挙げて襲い掛かってきた。どこか充足感をも感じさせる圧巻の光景はボアロパゴスの無限リソース突撃よりも広く、大きく、そして強く、攻略の道筋も見えない。あっちは一応イメンブーゴを止めればクリアできたからな。
「思えばヴォーパル魂も萎れちまってたかもしれねぇな。今日の俺は普段とは一味ちげぇ。あわよくば、だとか甘えはなしだ。真っ向勝負で生き残ってやる!」
各種加速スキルを発動。乗っけから素の速度の最高速へ、そして追加のスキルにより速度を拡張。更なる速度へ。ヘルメスブートにより曲げられた重力の道を駆け低空飛行する。尻尾の間合いから外れながら一歩の踏み込みで反撃を狙える高さ。お前らの自滅だけじゃねぇ、俺手ずから狩ってやる。
「警告:ルーティーンの変化を検知。普段通りの戦法をおすすめします。」
サイナが副音声を多分に含んでいそうな言葉を投げかけてくるが言外に却下。今日の俺は燃え上がっている!悪いが今日のところはインベントリアで休んでいてもらうぜ!
不満げなサイナを有無を言わせずに片手間で収納し予備の鶴嘴を振るう。カーンと快音と共に鶴嘴が振り抜かれる。奴らの外殻の破片が宙を舞い、その奥に奴らの驚きが覗いた気がする。
普段も当然全力で挑んでいたが、どこかで最悪死に戻れば大丈夫というセーフティネットがかかっていたような気がする。まぁ素材採取がメインだったからな。意地を張り、どうにか生存しきったことも少なくはないが今回とは趣向がちょっと違う。皇金世代のときの統率された蠍たちを攻略したときとも違う。あれは実質ギミック攻略だった。
孤軍奮闘。まさしく文字通り。孤が軍を相手に奮い闘う。いつものボール遊びではなくクソゲーマーの矜持をかけた闘いだ。
「思っていたけどよぉ!皇帝様なら格がちげぇよな!食えるんだろ、鶴嘴と同じ理屈で!」
突き刺す皇金剣。堅牢と言える水晶群蠍をキメラ種に近いと言わしめるキラキラと瞬く外殻が吸われるように
「夜が明けるまでもかかあねぇ!」
カタパルトによる投射のように宙に舞う蠍たち。戦列を乱さず後列が即座に対応に移りながら俺を取り囲む。懐かしい鉄火の香りに心を躍らせ、勝利に向かって駆け出した。
負けた。物量には敵わなかったよ。
「おかしいな?完全メタ武器もテンションも十全だったのに負けた?」
首を傾げる正眼の鳥面。こう、話の流れ的に勝てるところだったのでは?思えばボルバルザークの時もペンシルゴンに飛ばされたあと相手にもされず拍子抜けしたような気もする。もっとも、その後何回かの挑戦を繰り返し俺が飛ばされダッシュで合流しに戻るのが悪い手ではないことが判明したときは驚いたが。最近巡り合わせが悪い希がする。
「憤慨:異常行動を観測。詳細を報告せよ」
サイナがご立腹である。ウサギ御殿のベットに戻ったおれに気づいたエムルは俺から溢れるヴォーパル魂に驚いたがどこか腑に落ちないでいる俺に気を使い一人の時間を作った。その間にインベントリアからサイナを取り出したのだが、頬を膨らませ機構のついたハンマーを構えている。
あの、エルマさん。俺それで殴られれば死んじゃうぞ?
「提言:契約者の不適切な行動の是正」
いや、分かるぜ?確かに俺はどこかおかしかったのかも知れない。だが、やると決めていた以上サイナを巻き込むのも違うなーというか。
「憤慨:自機への過小な戦力評価を確認。教育を実行します」
いや、そもそも戦力に含めずに試してみたかったんだって。
「疑念:自機を戦力に含めない意義の回答を要求する。契約者は活用できるも対象物は過剰なまでに活用すると記録しています」
え?そう言われると確かにそうだけども…別ゲーの練習も兼ねていたし。でも確かめたいことは大体分かったから。
「契約者の言動の不一致を感知。休憩を提唱します」
サイナの提案に俺は頷く。もともと今日はシャンフロの予定がなかったところをログインしてストレス発散に向かったのだ。もとよりそのつもりである。
ログアウト処理を終え備え付けの冷蔵庫から冷やされたペットボトルの水を取る。体に巡る妙な興奮の正体を思う。
デュエキングモードは何か、別ゲーに似た雰囲気をずっと感じていた。当然ゲームだから別ゲーに似ている要素はあるのだが、なんというか、思想にシンパシーのようなものを感じていたがその正体が分かったのだ。
デュエキングモードとはそもそも、デュエルマスターズの歴史の中で、さまざまなデッキが競い合い、蹴落とし合い、その中で頂点に手をかけたデッキたちを基にして作られたステージ群だ。頂点を決めるデッキどうしの有利不利といった関わりを環境と呼ぶ。有利デッキ、不利デッキの増減が自然界の生物の増減に似た有機的な動きを見せるためにつけられた言葉だ。
故にこそ、それらのデッキの中にはある種の生きぎたなさというか、飢えのようなものが感じられる。貪欲な勝利への欲求。自らの成しえる全てを使った唯一の生存者になろうとする、原始的な力強さ。
数年前、俺が喉元までどっぷりと嵌っていた。今の俺を構成する強い一因にもなっていたゲーム。
デュエキングモードの根幹にあるのは
圧倒的な強者の暴威に晒されながらも自分の弱さをさらけ出すように泥水を啜ってでも、生き延びて見せろ。勝ち切ってみせろ。彼らは生き延びた、と。そんな、サバイバルガンマンでの一日を思い出させるような鮮烈な意思が込められているような気がする。
正直、デュエルマスターズに興味はない。カードゲームを始めようとなると必要な金は青天井まで膨らむだろうし、俺の主食はあくまでもクソゲーだ。シャンフロもところどころクソゲーの片鱗がチラチラと顔を覗かせているんだよな。
だが、この雄たけびを無視するのは性に合わない。気づいてしまったのだ。ならやれるところまではやってやる。カッツォに一通のメールを送り今日のところは寝ることにした。
一日作れ。一気に進めよう。
覚悟はできた。
ここがようやくスタートライン