ゲームが上手いコミュ障底辺配信者が成り上がる話 作:グラタン二世
サウンドエフェクトは耳の聞こえない人・聞こえにくい人向けに作られた設定である。銃声や足音などが画面上に情報として表示されるというものだ。これだけ聞くとこの設定を使えば簡単に銃声や足音の距離が分かり、戦いやすくなると思われるかもしれないが、もちろん扱いにくいところもある。
それは画面上にかなり詳細な情報が表示されることだ。情報量の多さから処理しきれなくなってしまう可能性がある。
普通の人は急に使用すると慣れなくてどうにもできないだろう。だが──
「そこそこ慣れてきたなぁ…」
如月カイは何故か数時間で慣れてきていた。
◇
「うわっ…情報量多いな」
初めてサウンドエフェクトという設定を知り、試してみるとかなりの情報量に驚いた。銃声はもちろん足音もかなり詳細に分かる。銃声は武器の名前まで分かるし、足音は100メートル以上離れていても分かるようになっている。
(…耳が聞こえないって大変だ)
俺は片方だけしか聞こえなくなっていないために日常生活は割とできる。両耳とも聞こえないない方は俺とは全く違う日常を送っているのだろう。
「中々キツイな…」
この情報量を捌きながらプレイするのは大変だ。大会までに慣れていかねば。まぁ大会は明日だけど。
───数時間後
「しゃあ!チャンピオン!」
サウンドエフェクトを使い始めてから数時間。チャンピオンを取ることができた。最初は情報量の多さから操作がおぼつかなかったがカジュアルマッチでならチャンピオンが取れるようになった。
「そこそこ慣れたなぁ…」
普通なら慣れるのにもっと時間がかかるだろうが、カイの驚異的な集中力によりたった数時間で慣れてしまった。
しかし、数時間やって1回のチャンピオンでは意味がない。Raising cupはたった5試合しかしない。その5試合で一度もチャンピオンを取れなかったら優勝は厳しいだろう。
「まだ、やらねぇと」
カジュアルマッチで数時間に1回のチャンピオンだと、足りない。まだまだやらないと追いつけない。
◇
時間は午後3時。スクリムの開始まではあと5時間程ある。
「…ということで!やっていこう!」
「はい…!……ところで星乃さんは…?」
「あ〜ひかりちゃんはお仕事だね」
「なるほど…」
「ひかりちゃんって動画編集めちゃくちゃ上手いからよくそういう系の仕事してるんだよね」
「大変ですね…」
「いや、今はカイさんの方が大変でしょ」
確かに、と言いたいところだがどう考えても自分の耳よりも仕事の方が大変だと思う。というか星乃さんが家にずっといる理由って動画編集ばっかりしてるからなんじゃないだろうか。
「とりあえず、デュオ行ってください」
「りょうか〜い」
SKさんに急かされマッチングを開始する。…その間にSKさんに聞くべきことがある。
「…Raising公式からの声明を頼んだのはSKさんですか?」
◇
「まぁ、そうですね」
「そうでしたか…ありがとうございます。そこまで動いてくれて」
「これもこの大会でみなさん…特にカイ君が批判されないようにするためです」
今日起きたら俺の声明以外にRaising公式からも声明も出されていた。内容を要約すると、如月カイの耳が片方聞こえなくなった。そのため、サウンドエフェクトという設定を使うがこれは大会参加者全員同意の上で了解されたので如月カイ個人を批判するのはやめてほしいというものだった。
「結構疲れたんですよ?」
「まぁ、だよね。僕たち以外の全チームに話したんだから」
「本当にありがとうございます…!」
俺達以外の全チームに話したとなると…19チームと対話したことになる。俺達の為にチームを回ってくれたのは本当にお疲れ様です。
「ここまでしたんです。絶対に勝ちましょう」
「もちろんです…!」
「絶対勝たないとね!」
そんな話をしている内にマッチングが完了し、カジュアルマッチが開始された。今回のカジュアルマッチは連携UPが目的である。
「じゃ、ひかりちゃんが来るまでやるぞー!」
◇
「こんちは〜やってる〜?」
「あ、ひかりちゃん!お疲れ〜」
「お疲れ様です」
開始から約2時間後、星乃さんも合流した。
「身体バキバキだわ〜」
「だよね〜座ってるとそうなるよ」
「運動しないと…」
「そう言って続いたことないでしょ」
「ない!」
「誇れることじゃないからね!?」
「そういうイツキだって運動できないじゃない!」
「僕は食べても太らないからいいんです〜!」
そして合流した途端、なんか言い合いが始まった。まぁ稀によくあるので放置しとけば良いだろう。
「はいはい。落ちついてください」
「SKさん!絶対イツキが悪いよね!?」
「まぁまぁ落ちついて」
「そうだぞ〜ひかりちゃん。落ちつきな〜」
「誰のせいだとお思いで?」
「それは僕のせい…?」
「なんで疑問形なの…?……まぁいいわ許す」
「わーい」
とりあえず収まったらしい。喧嘩するほど仲が良いって言うし、これはこれでありなのかもしれない。
「では全員揃ったので連携UPカジュアルマッチ再開しましょう」
「はーい」
「おけおけ」
「了解です」
スクリムまではあと3時間程。その間にさらに連携を高めよう。そうしないと勝てないのだから。
◇
「そろそろスクリムだね〜あと20分ぐらい」
「それまでに食べるからご飯持ってくるわ〜」
「あ、俺も持ってきます」
ひかりちゃんとカイさんが夕食を部屋に持ってくるために離席する。僕は近くに残ってたパンがあったので試合の合間に食べていた。
「SKさんはご飯持ってこなくていいの?」
「私は近くに残りものがあるのでお構いなく」
SKさんは相当僕たちの試合を見て、アドバイスをくれている。
「SKさんはなんでこんなに色々してくれるんですか?」
純粋な疑問。今までに大会は出たことはあってもコーチはいたことがなかった。こんなにも色々してくれるものなのか。
「私はコーチとして呼ばれましたから。だからこのチームを優勝に導くために色々するのは当然なんです」
…すごいなぁ。本当に僕たちのことを見ててくれるんだ。
「もう一つは普通に楽しんでほしいからです」
え…
「勝ちに行くのもいいんですけど、それ以上に楽しむべきです。いずれこの大会が糧になる日が来るんですから」
「持ってきたよ〜」
「戻りました」
タイミングよく、2人は帰ってきてくれた。
そうか。楽しむべきなんだね。楽しんで勝つ。それでいいんだ。
◇
午後8時過ぎ。スクリム5日目が始まる。大会前最後のスクリム。
「よし!やるぞー!」
「おー!」
「頑張りましょう…!」
キャラの選択が完了し、降下に移る。今回も全員のキャラ選択は変わらない。カイがキーラン。イツキがレイサーでひかりがヴァラを使用する。しかし、一つだけ変わったことがある。
「あと数秒したら移動するよ」
「了解です」
「おーけー!」
IGLがカイからひかりに移ったことだ。理由はカイが自身よりひかりの方が指揮に向いていると感じたからだ。それが一番の理由だが他にも判断力の高さや声が通ることだ。
もちろん安全地帯などのゲームの情報はカイの方が持っているので、そこの部分は協力してやる方針となった。
「うーむ中々物資集まらないね」
「この場所はしょうがないよね〜」
スクリムの序盤からこのランドマークで漁っているがずっと物資の集まりは良くない。それも承知でこの場所にした。今の今まで近くのランドマークにいるはずのaliaさんと初動ファイトしていないのは奇跡なのかもしれない。
「さー行くよ」
「はーい」
安全地帯はそれほど遠くはない。そして次以降の安全地帯もほぼ分かっている。まずは最終安地付近になるであろう場所を取る。
◇
「さぁ、行くっすよ」
「了解」
「分かりました」
サトウケンタのチームはスクリム5日目まで悪くはない成績を維持していた。
(…悪くはないっすけどね)
そう、言うほど悪いわけではないのだ。けど──
(勝ちたいっすよね…)
大会に参加するからには全力で勝負し、1位を獲得したい。
1位を取れたのは初日の1回だけ。それ以降は取れても2位まで。メンバーは毎日長い間abcxをプレイし努力しているのだ。それが報われないなんておかしな話だ。
「敵、近くです…!」
さぁ、今日こそは勝つぞ。そして明日も勝つ。
◇
「うわ〜安地遠いね〜」
「まぁこの場所最北端って呼ばれてるからね」
「なんでここ取ったんだっけ?」
「ランドマーク争いが激しかったから」
「あーそっかそっか」
綾川あいかチームは女性3名で構成されたガールズチームだ。しかしガールズチームだからといって舐めてはいけない。あいかをはじめとした2人のメンバーはエイムもキャラコンも強い。
しかし、スクリムの総合順位は良いわけではない。それがこの大会のレベルの高さを表している。
「さて、そろそろ移動しよっか」
「うん」
「はいはーい」
手に入れたランドマーク的に安全地帯の遠さは予想内。だから使うキャラは全員機動力特化。
「安地近づいてヴァラウルト使うよ〜」
「今日こそ良い順位取るぞ〜!」
「「「おー!!」」」
◇
「いや〜安地いいね」
「まぁ苦労して中心近くのランドマークを取ったからな」
「そんなに苦労しましたでしょうか…?」
「普通に大変だったけどな〜?」
「思いの外すんなり取れたけど」
「そこは嘘でも苦労したって言えよ」
laughチームは序盤のランドマーク争いを制し、マップの中心近くのランドマークを獲得していた。
他の部隊も来ていた時期もあったが実力でぶっ壊したのでスクリム1日目の4試合目から誰も来なくなったのだ。あおいが苦労をしていないと感じるのも無理もない。
「しっかし…この安地は分かりやすいな〜」
「この大会のリーダー格ならみんな分かるだろうな」
「私でも分かりますからね…」
今回指定された安全地帯は長くこのゲームをプレイしているなら分かるであろう安地だった。セオリー通りならこのままいれば問題はない。
「とりあえずここは待ちだね」
「はーい異議あり!」
「異議は認めません」
「はいはいそうですか〜」
今日もlaughチームは変わらない。
「そういや、水無瀬さんのところ大丈夫なのか?」
「あ〜確かに。大丈夫そうだった?」
「えぇ。あのチームなら絶対大丈夫です」
「へ〜楽しみだな〜」
◇
「ん〜そこそこやなぁ」
「そろそろ移動します?」
「そうやね」
RUINチームはマップの中心ではないが移動には困らないようなランドマークを手に入れていた。そして物資に関してもカイの所に比べれば十分な量が手に入る。
「もうちょい安地に高台あればな〜」
「まぁこの安地やとおれ達の強味は活かせへんな」
今回の安地は高台があるにはあるが狙撃を長い間チクチクするような高台ではない。終盤どころかほぼずっと住宅街での戦闘になるだろう。
長距離の戦いを得意とするRUINとsizukaは少しばかり大変だ。近距離の戦闘が全くできないわけではないし、別に苦手でもないがスナイプが好きな彼らにとっては死活問題である。
「とりあえず…そこの高台行きますか?」
「…そうやな」
◇
「さて、移動しようか」
「はい!」
「了解です!」
第1収縮開始まであと一分程。早くもaliaチームは移動を開始していた。
(一応近くに水無瀬さんのチームいたな。倒しに行ってもいいけど…)
もちろんaliaも近くのランドマークにイツキ達がいるのを知っていたが──
(今日はやめておこうかな)
今回は戦わない選択をした。しかし、いずれ戦うときが来るだろう。
◇
「そろそろいどうするよ」
「はーい」
「はいはーい」
現在スクリム総合順位1位、SuRarチームは移動を開始していた。
「ずっと思ってるけどSuRarさん日本語上手すぎない?」
「オレ、ニホンジンだよ」
「普通に信じそうなんだけど…」
「ナチュラル嘘やめてね」
あまり信じられないがSuRarは日本人ではなく、海外の人である。日本語が上手すぎるのでよく間違えられる。
「とりあえずそこをとるよ」
「おけおけ」
SuRarチームのメンバーは2人共弱くはないがめめちゃくちゃ強いわけではない。と、言いたいところだが十分にリーダーを張れるぐらいの力を持っている。
パワーバランスが壊れている気もするが、他のチームも大体同じような感じなので問題ない。1部隊が壊れていたなら他のチームのバランスも壊せば逆に安定するのだ。
「きょうも勝つよ〜」
「もちろん」
「あったりまえよ」
◇
第1収縮終了時、残り部隊数−−−19部隊。
「うわっ多い!」
「なんとか入りたいね」
「あそこなら空いてますよ」
「良かった〜ありがと如月さん」
かなり早く安地移動したつもりだったが、既に多くの部隊が住宅街を占拠していた。
なんとか空いている場所を見つけることができたのでそこへできるだけ早く向かう。すぐに取れれば良かったが──
そんなに簡単にポジションを取ることはできないらしい。
「戦うよ!」
「了解」
「おけ!」
スクリム5日目、大会前最後のスクリム。
──戦闘が、始まる。
全然投稿できてなくてすみません。テスト期間なので5月はこれ以上投稿できるか分かりませんがご了承ください。
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