ひろプリ SAMURAI GIRL HEROISM   作:MOZO

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別に投稿している二次創作とは作風を変えて挑戦しています。
どうぞ、お楽しみください。


一ノ巻 ヒーローガールとサムライガール
其の一


 

 いくつもの島々が空に浮く国━━スカイランド。

 果てしなく広がる大空を巨大な鳥、遊覧鳥が一羽飛んでいた。

 彼の背中では、大きなリュックを背負い、鮮やかな青色の髪を右結びにした少女、ソラ・ハレワタールが立ち上がっていた。

 

「わぁ~!」

 

 雄大な絶景を前に感動の声を漏らすソラ。「ちゃんと掴まってないと落ちるで」と遊覧鳥が忠告するも、ソラは臆することなくキョロキョロと辺りを見渡す。

 

「怖くないんか?」

 

 遊覧鳥が心配そうに尋ねると、ソラは笑顔のまま返答した。

 

「これくらいのことを怖がっていたらヒーローは務まりません!」

 

 * * *

 

 スカイランドの王都では多くの人々で活気付いていた。露店がところ狭しと並んで客を呼び込み商売に励んでいる。

 その中を灰色の着流しに藍色の袴姿、左の腰には一振りの刀を携え、艶やかな長い黒髪を後ろで一本に結った少女、シグレ・アマヤドゥーリが颯爽と歩いていた。

 彼女はスカイランドでも珍しい出で立ち故に、すれ違う人々から意図せず注目されてしまう。

 と、シグレは一件の露店に立ち寄った。

 

「ご亭主、饅頭(まんじゅう)を一つくだされ」

 

「あいよ!」

 

 景気の良い返事をする店主からシグレは肉まんに似たホカホカの饅頭を購入した。

 

「お客さん、ここいらじゃ見掛けない顔だがどこから来たんだい?」

 

拙者(せっしゃ)は修行の旅をしており、この都には今しがた着いたばかりなのでござる」

 

 丁度その時、上空で彩り豊かな花火が何発も打ち上げられた。

 

「にしても、随分と賑やかでござるが、祭りでもやっておるのでござるか?」

 

「知らないのかい? 今日はスカイランドのプリンセスの誕生日で国民全員挙げて盛大にお祝いしているんだ」

 

 一国のプリンセスは国民の希望。その生誕の日となれば、お祭り騒ぎになっても無理はないのだ。

 

 * * *

 

 城の近くでは、プリンセスの誕生日を祝うため群衆が押し寄せ、祝福の言葉を送っていた。

 が、その人垣の間を縫うように怪しげな者たちが(うごめ)いていた。すると突然、

 

 ドーン、ドーン、ドーン!

 

 先ほどまでの祝福を彩った花火とは異なり、黒い煙の昼玉が三発打ち上がる。

 それが合図かのように、物陰から、荷物の中から、群衆の中から真っ黒な装束を纏い、頭巾で顔を隠した輩が続々と飛び出してきた。

 何が起こったのか訳がわからず、人々はパニックに陥った。

 黒頭巾たちは城門の前に集まり、腰から刀を抜刀する。

 

「ここより先には一歩も通すな!」

 

 対して城の兵隊も迎え撃つべく槍を構え並び立つ。

 黒頭巾たちが一斉に突撃。兵士たちも迎撃を開始。敵味方が入り交じる大乱戦となる。

 必死で抵抗する兵士たちだったが、黒頭巾たちの戦闘力が勝っているようで徐々に押し返されていく。

 城への侵入を防ぐべく門の扉を閉め始めるも、黒頭巾たちが扉を無理矢理抉じ開けようと幾度も体当たり。押し合いの末、無念にも扉は開け放たれ、賊の侵入を許してしまう。

 城内でも戦闘が続き、花瓶を割り、絵画を斬り裂き、ありとあゆる物を撒き散らしながら争乱が繰り広げられる。

 乱戦の間を、黒い陣羽織を身に付け、クワガタの顎のような角を生やした鬼の仮面を被り、両側に金色メッシュの入った黒髪の男が悠然と現れ出でた。

 その圧倒的な存在感に気圧される兵士たちであったが、すぐさま身を引き締め奮い起った。

 

「怯むな! 我らの威信に賭けて、国王陛下たちとこの国の平和を守るのだ!」

 

「いや。お前たちの平和は、ここで終わる」

 

 鬼面の男は左腰の鞘から刀を抜き放った。黒光りする刀身には稲妻のような刃文が走っていた。

 兵士五人が同時に仮面の男へ攻撃を仕掛ける。が、男が刀を横薙ぎに振るうと、閃光と轟音と共に兵士五人は吹き飛ばされた。

 

「うがっ!」

 

「ぐはっ!」

 

 反撃する隙も無く一瞬にして蹴散らされ、それを見ていた他の兵士たちは恐れ戦くのであった。

 すると、男の背後から紫色の太った豚顔の怪人がノッソノッソと現れた。

 

「ウヒヒ。さすがは『シンエン組』、良い仕事するのねん」

 

「お膳立てはしてやった。あとは貴様に任せる」

 

「言われるまでもないのねん。カバトントン!」

 

 豚顔の怪人は黒煙を上げると、瞬く間にその姿を消し去るのだった。

 

 * * *

 

 一方、王都領空で城から紫色の煙が上がるところを目撃する。

 

「え、えらいこっちゃ!」

 

 様子がおかしい。胸騒ぎを覚えたソラは遊覧鳥に呼び掛ける。

 

「すみません。スピードを上げてください!」

 

「まさか、嘴突っ込む気かい!?」

 

「見て見ぬフリはできません!」

 

 さっきまでのソラとは顔付きが変わり、真剣な眼差しと覚悟を決めた表情を滲ませている。

 

「ワイは適当なとこで引き上げさせてもらいまっせ。しっかり掴まっといて!」

 

 ソラに促された遊覧鳥も意を決して飛行速度を上げる。

 

「ヒーローの出番です!」




シグレ・アマヤドゥーリ
イメージ声優:石上静香
本作の主人公である少女。14歳。結い上げた長い黒髪が特徴。一人称は「拙者」、敬称は「殿」、語尾に「ござる」を付けるなど侍言葉を多様する。生真面目な性格で誰に対しても礼儀正しい態度で接する。逆に不正を見過ごすことはせず、真っ向から立ち向かっていく。修行のため俗世から離れていたこともあり常識には疎く、時折天然な発言をする。
スカイランドで「スカイランド神拳」に並ぶ古流武術「スカイランド剣術」を使用し、世界一のサムライを目指している。
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