ひろプリ SAMURAI GIRL HEROISM   作:MOZO

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ここからアニメ第3話部分です。


其の十

「シグレ。サムライにとって刀とはなんだと思う?」

 

 幼き頃の記憶。シグレは師匠から唐突にこう問われたことがある。

 

「うーん・・・。敵を倒す武器?」

 

「それも一理ある。だが、ワシはそれだけではないと考えておる」

 

 師匠は右手を胸の中央に当て、シグレに説いた。

 

「サムライとって刀とは、心そのものであるとな」

 

「・・・・・・心?」

 

「『心技一体となりて、それを成さん』。刀はその者の心の在り方を映す鏡も同じ。剣技と身体を鍛えるだけでなく、共に何事にも折れぬ心を磨けばそれは刀にも宿る。言うてみれば、心の刀(・・・)とも呼ぶべきものだ」

 

 自分も胸に手を置いてみるシグレだったが、コクリと首を傾げる。

 

「・・・・・・よくわかりません」

 

「今はわからずとも、自ずと気づく時が来るだろう。お前にとっての心の刀というものが━━」

 

 * * *

 

 部屋で精神統一をしていたシグレは、師匠の言葉を思い起こす。

 傍らには、折れた「ハルサメ」が虚しく置かれていた。

 

「師匠。拙者の心が未熟だったために、あなたから授かった「ハルサメ」を折ってしまった。世界一のサムライにはまだまだ程遠いでござる・・・・・・」

 

 自分の腕を過信していた。その結果がこの有り様だ。一から修行をし直そうと、シグレは己を律した。

 精神統一を終え、部屋を出て一階に降りたシグレはましろがダイニングで誰かと話す声を耳にする。

 

『まっしろちゃ~ん、早くこっちでの仕事を終わらせて会いたいよ~!』

 

「止めてよパパそういうの! 子供じゃないんだから」

 

『元気でやってる? 寂しくない?』

 

「大丈夫。おばあちゃんもいるし、それに新しい友達もできたし!」

 

 ましろは両親である虹ヶ丘あきら、まひるにリモートで近状報告をしていた。

 

『そっか。今度帰ったら紹介してね』

 

 通話を終えた直後、シグレが不思議そうな顔をして入ってくる。

 

「ましろ殿、誰と話していたのでござる?」

 

「パパとママだよ。今は海外でお仕事してて、別々に暮らしてるの」

 

「ふむ。それはさぞ寂しい思いをしているのではござらぬか?」

 

「本当のことを言うとちょっとね。でも、おばあちゃんや学校の友達もいるし、それにソラちゃんとシグレちゃんとエルちゃんもいるから平気だよ」

 

「であれば、何よりでござる」

 

「シグレちゃんは、お父さんとお母さんと離れて旅をしてて寂しくない?」

 

「拙者も正直なところ、父上と母上が息災であるか気掛かりになる時があるでござる。そんな時は、ましろ殿のように文を書いて互いに達者であることを伝えているでござるよ」

 

「そうなんだ」

 

 気丈に見えるシグレでも、親元を離れていることに不安を感じるのだと、ましろは親近感を覚える。

 

「しかし、このような板一枚で遠くの者と話せるとは誠に面妖な世界でござるな」

 

「板じゃないんだけどね・・・・・・」

 

 シグレがタブレットに興味津々に眺めていた時だ。

 

「えぇ~ん! えぇ~ん!」

 

 エルが号泣する声が響いてきた。シグレとましろがリビングに向かうと、ソラがエルを抱きかかえあやしていた。

 

「よしよし、ミルクですか?」

 

 ソラがマグを渡そうとするも、どうやら違うようでそっぽを向いてしまう。

 

「える、えるぅ・・・・・・」

 

 エルは辺りを見渡す仕草をし始め、まるで誰かを捜しているようであった。

 その行動と心細そうな表情を見たましろはあることに気づいた。

 

「パパとママに会いたいの?」

 

 いつもあるはずの両親の顔も両腕に抱かれる温もりもここには無い。気の毒にそう感じてしまったエルは途端に寂しくなったのだろう。

 

「この年の赤子はまだ父母の側にいるのが当たり前でござるからな。せめて、顔を見せてやれればいいのだが・・・・・・」

 

「できるわよ」

 

 ソラたちの話を聞いていたヨヨが現れ、ある方法を提示する。

 

「これを使えば、スカイランドと通信することができるわ」

 

 ヨヨがテーブルの上に置いたのは、可愛らしい飾りの付いたごくありふれた鏡のように見えた。

 

「これはミラーパッド。好きな場所を映せるの。スカイランドにいるこの子の両親ともお話できるのよ」

 

 そう言ってヨヨは鏡の側面を触れると、鏡面にソラシド市の至る場所が映し出される。

 

「この世界には便利な道具があるんですね」

 

「遠くの者と話せる板に千里を見透す鏡とは、ますます面妖キテレツでござる」

 

「いやいや、そんなの無いよ。おばあちゃん、一体何者なの?」

 

 ソラとシグレを家に連れてきた時から不自然に思うくらい都合が良すぎていた。ここで、ましろは渦巻いていた疑問をヨヨにぶつける。

 

「実はね、私はスカイランド人なの」

 

「そっか~、おばあちゃんスカイランド人なんだねぇ・・・・・・。ス、スカイランド人!?」

 

 まさかの衝撃的な事実にましろの頭の中は大混乱となる。

 話によると、スカイランドで博学者だったヨヨは50年前にこの世界を調べるため来訪したのだとか。

 今まで普通の人間だと思っていた祖母が、実は異世界人であろうとは。未だに現実を疑ってしまうましろであるが、これまでの出来事を鑑みれば信じざるを得ない。

 

「ヨヨさん、もしかしてわたしとシグレさんとエルちゃんがスカイランドに戻る方法を知ってるんですか!?」

 

「えぇ。ちょっと時間が必要になるけど」

 

 ヨヨはその方法を記した分厚い本を置く。中を開くと、スカイランドの文字でびっしり(つづ)られていた。

 

「通信をスカイランドに届けるにはたくさんのエネルギーが必要なの。エネルギー源はこの宝石よ」

 

 続いてヨヨが取り出したのは、青く煌めく鉱物であった。

 

「スカイジュエル! この世界にもあるんですね」

 

 この青い鉱石━━スカイジュエルは、スカイランドでしか採掘されない鉱物で膨大なエネルギーが秘められている。スカイランドの人々はこの石を利用して生活を(まかな)っているのだ。

 

「こんなの見たことないし、簡単には見つからなさそうだね」

 

 半ば諦めそうになるが、エルの悲しげな顔を見たましろは迷いを振り払い決心する。

 

「でもわたし、スカイジュエルを見つけてエルちゃんをパパとママに会わせてあげたい!」

 

「わたしも同じ気持ちです。どこへなりとも行きます!」

 

「子供の幸せを願うは世の常。拙者も一肌脱ぐでござるよ!」

 

 三人はエルのために、団結してスカイジュエルを見つけ出そうと誓い合うのだった。

 善は急げと、ましろはスカイジュエルの在処(ありか)をヨヨに問う。

 

「どこへ行けば見つかるの?」

 

「家の裏山にあると思うわ」

 

「「「どわぁ~!?」」」

 

 入手場所が目と鼻の先だったことに、三人は拍子抜けしてしまった。

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