ひろプリ SAMURAI GIRL HEROISM   作:MOZO

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其の十一

 ヨヨの話によると、裏山に流れている小川にスカイジュエルが落ちていることがあり、近くにあればソラの持つミラージュペンが反応するはずとのこと。

 ソラ、ましろ、シグレは出かける直前にぐずり始めたエルも連れて行こうとベビースリングに抱えて山道を歩いていく。

 ふと、ましろはシグレが腰に携える「ハルサメ」に視線を落とす。

 

「シグレちゃん、刀を持ってきたんだね」

 

「やはり、「ハルサメ」があると落ち着くでござるよ」

 

 刀身は折れて役には立たないだろうが、彼女にとってはこれまで旅路を共にした相棒であり、魂の一部のようなもの。手元にあるべき必需品なのだ。

 

「にしても、本当びっくりだよ。まさかおばあちゃんがスカイランド人だったなんて」

 

「いやはや、世間は狭いとは良く言ったものでござるな」

 

「ということは、ましろさんもちょっとだけスカイランド人ってことですよね」

 

「そういうことになるね」

 

 ましろには4分の1スカイランド人の血統が流れており、俗に言う“クォーター”である。祖母の意外な経歴や自身の出生など最近のましろは驚きの連続である。

 

「やっぱり、ヨヨさんの言うようにわたしたちが出会ったのは運命かもしれませんね」

 

(しか)り。この(えにし)は天より導かれたもの。拙者とソラ殿、そしてましろ殿は出会うべくして出会ったのでござろう」

 

「そうだね!」

 

 「出会いは必然。運命。物語の始まり」。ヨヨが口にした言葉を三人は改めて実感する。

 

「えうぅ~・・・」

 

 と、エルがまたぐずりだし、ソラがあやすも上手くいかない。

 

「よしよし。エルちゃん、元気を出してくれるといいんですけど」

 

 見兼ねたましろは、近くに生えていた綿毛のタンポポを一輪摘んでエルに見せる。

 

「エルちゃん。はい、ふわふわの綿毛だよ」

 

 しかし、気に入らない様子のエルは顔をしかめてそっぽを向く。

 

「そう? じゃあ、これは?」

 

 ましろがタンポポに息を吹き掛けると、綿毛の付いた種が一斉に宙を舞い飛んでいく。この光景を目にしたエルは今日始めて笑顔になった。

 

「ましろさん、上手ですね!」

 

「え?」

 

 その直後、ソラがましろへ称賛の言葉を送った。

 

「エルちゃんのあやし方です! 赤ちゃんにとって大事なのは、今何を感じているのかわかってあげることです。こうしてエルちゃんが好きそうなものがわかったのも、きっとましろさんの優しさの力ですね!」

 

「さよう。ましろ殿は将来、良き母君になられるでござるな」

 

「そ、そうかなぁ」

 

 エルがどうしたら喜んでくれるのか、そんな想いでの行動一つが大切なのだとましろは気づかされる。

 

「よーし、わたしも何かエルちゃんのために━━」

 

 負けじとソラも辺りを探していると、切り株の側に赤い傘に紫の斑点が付いた如何にもヤバそうな色合いのキノコが生えており、ソラは躊躇無く抜こうとした。

 

「待って~! それ毒キノコ!」

 

 手が触れる寸前でましろが慌てて制止させる。

 

「山には危険な植物もあるから、よくわからないものは無闇に触っちゃダメだよ」

 

 が、その横でシグレがキノコをジーッと見つめていた。

 

「いや、案外いけそうな気も。とりあえず拙者が毒味を・・・」

 

「だからダメだってばー!」

 

 無知とは言え、この天然二人組が何を仕出かすか油断も隙もない。家に帰ったら図鑑を見せて教えてあげることをましろは二人に約束する。

 

「えるぅ~!」

 

 再びエルが機嫌を損ね、泣き出してしまった。

 

「きっとお腹が空いたんですね。さっきミルクを飲まなかったから」

 

「じゃあ、ちょっと休憩にしよっか」

 

 ずっと歩き通しだったので、エルのミルクの時間も兼ねて三人も休息を取ることにする。

 

 * * *

 

 森の開けた場所にレジャーシートを敷き、休憩時間を過ごす一行。

 エルにミルクを飲ませた後、軽食にとましろは持ってきたパンをソラとシグレに振る舞った。

 

「う~ん、ふわふわ。とっても美味しいです!」

 

 白く柔らかな生地の食感に中のクリームの程好い甘さが口いっぱいに広がった。

 

「これまた美味でござる。この料理もこの世界に伝わるものでござるか?」

 

「ううん。そのパンはわたしが作ったんだよ」

 

「これ、ましろさんが焼いたんですか?」

 

 ましろは博識(ソラとシグレから見て)な上に料理上手なことに二人は感銘を受ける。

 すると、ソラはパンの形に注目した。

 

「あれ、もしかしてこのパン雲の形ですか?」

 

「スカイランドをイメージしてみたの。どういうところかわからないけど、名付けてくもパン!」

 

「拙者たちの故郷を想って作ってくださるとは、痛み入るでござる」

 

 三人はくもパンを掲げ、本物の雲のように青空と重ね合わせる。

 

「エルちゃん、くもパンですよ。ふわふわ~」

 

 ソラがエルの目の前でくもパンを揺らすと、エルは上機嫌になって笑ってくれた。

 

 * * *

 

 休憩を終えて一行が先に進んでいくと視界が開け、たくさんの石が転がり、清流に穏やかに流れる小川に辿り着いた。

 

「おばあちゃんが言ってたのはこの川だけど・・・・・・」

 

 小川と言っても範囲は広く、どこも石だらけでこの中からスカイジュエルを探し出すのは一苦労だろう。

 頼りはソラのミラージュペンのみ。

 

「さぁ、宝探しの時間です!」

 

 ミラージュペンを(かざ)し、反応を確認しながらしらみ潰しに探していく。

 探索してしばらくすると、岩がいくつも積み上げられたロックバランシングが建てられていた。

 

「す、すごい! 一体誰が何のために?」

 

 崩れそうで崩れない絶妙なバランスで積まれた岩々は壮観であった。が、

 

「へくしっ!」

 

 ドンガラガラズドーン!

 

 エルがくしゃみをした途端、積まれた岩は一気に崩壊してしまった。

 

「「「あ・・・・・・」」」

 

 茫然とする三人。まさか、赤ん坊のくしゃみ一つで崩れるとは。

 

「・・・・・・この世は諸行無常でござるよ」

 

「・・・・・・ですね」

 

「二人共、見なかったことにしようとしてない?」

 

 誰が作ったかは定かでないが、こうなることは誰にも予期することはできなかった。不慮の事故だったのだ。ソラとシグレは自分たちにそう納得させようとしていた。

 気を取り直して探索を再開すると、今度は真ん丸の巨石を発見。それにソラのミラージュペンの羽根部分が淡く光り反応する。

 

「まさかこの中に? な~んて」

 

 ましろは軽い冗談で言ったつもりなのだが。

 

「やってみましょう!」

 

 ソラはミラージュペンとリュックをましろに預けて巨石の前に立つと、両腕をゆらり動かし太極拳のような独特な構えをする。

 

「あの構えは、スカイランド神拳!」

 

「スカイランド神拳!?」

 

「スカイランド剣術に並ぶ古流武術で、構えによって高められた気で打ち出される一点集中の拳は岩をも砕くと言い伝えられているでござる!」

 

 鳥が翼を羽ばたくような動きをした後、ソラは握った拳で渾身の一撃を繰り出した。

 

「ホァー!」

 

 拳が直撃すると、巨石はパックリ真っ二つに割れるのだった。

 

「本当に割れた!?」

 

 ソラの妙技に驚愕するましろ。割れた巨石を見ると、中には渦巻き型の化石があった。

 

「あっ、化石!」

 

「押忍!」

 

「これはまた、随分と大きなうん━━むぐっ!?」

 

「シグレちゃん違うからね。これはアンモナイトっていう昔の生き物の化石だからね」

 

 シグレの口をましろが手で塞ぎ、発言を強制終了。並びに適切な解説をした。

 

「確かにお宝だけども・・・・・・」

 

 ミラージュペンは淡い光りのままで変化は無く、探索は振り出しに戻ってしまう。

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