ひろプリ SAMURAI GIRL HEROISM   作:MOZO

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其の二

 あげはに同行してソラたちが来た場所は、ソラシド福祉保育専門学校。あげはの用事というのはここの校長と面談するためであった。

 

「ここはね、保育士さんの学校だよ」

 

「「保育士?」」

 

 スカイランドには保育士という職業は無いのか、ソラとシグレにとって保育士という言葉も初耳。無論、どういったことをするのかもチンプンカンプンである。

 

「保育士っていうのは、他のお家の小さい子を預かってお世話する人のこと。あげはちゃん、昔から保育士になりたいって言ってたんだ」

 

「人様の(わらべ)の世話をするとは、大したものでござるな」

 

 派手な第一印象とは裏腹に、しっかりと将来を見据えているあげはにシグレは感服する。

 

「なりたいもののために頑張ってる、偉いよね。エルちゃんは大人になったら何になりたい?」

 

「える?」

 

 聞いたところでエルにはましろの言っている意味がわからないだろうし、何よりまだ気の早い話だ。

 

「ましろさんは何になりたいんですか?」

 

「わたし? わたしはね・・・・・・」

 

 ソラにそう聞かれてましろは考え込む。ましろが将来なりたいもの。それは━━。

 

「特にない!?」

 

「ましろ殿!?」

 

 急に芳しくない顔色になるましろ。実のところ、自分の将来について今まで考えたことが無かった。

 

(いつの間にか、なりたいものとか決まってないとダメなターン? でも、改めて考えるとわたしこれといって得意なこと無いし・・・・・・)

 

 意識すると余計に頭がこんがらがってしまう。

 他のクラスメイトはイラストレーターだの、公務員だの、キュアチューバーだの、既に何かしらの夢を持っている。隣に座るソラとシグレですら、ヒーローに、世界一のサムライと、明確な目標がある。

 こんな自分が何かになれるのか。ましろが疑問に苛まれる中、

 

「ソラ殿、ましろ殿、あれを!」

 

 突然シグレが声を上げ、二人は彼女の指差す方を見た。一匹の紫色の子豚が歩いており、その行く手には(ざる)をつっかえ棒で支え、下には記憶に新しい毒キノコが置いてあった。

 

(えっ、どういうこと。豚さん? っていうかあの罠ナニ? 昭和の罠? しかもあの毒キノコ、この間川で見たやつだよね?)

 

 子豚は罠の手前でチラっとこちらを窺うように振り向く。その顔はどう見ても、カバトンそのもの。

 今時、こんなあからさまで古典的な罠に引っ掛かる者など━━。

 

「豚さんが危なーい!」

 

「このままでは捕まってしまうでござる!」

 

「いや、罠だよね!?」

 

 この状況を真に受けるド天然コンビにましろがキレ良くツッコミを入れる。

 ましろが引き止めようとした時にはソラはもう走り出しており、スライディングして子豚を救出した。

 

「危ないところでした。豚さん、あれは罠ですよ。近寄ってはいけません」

 

「カバトントン!」

 

 救ったのも束の間、子豚はソラの目前で黒煙を濛々(もうもう)と吹き出した。

 

「ゴホッ、ゴホッ・・・。あなたは!?」

 

 煙の中から飽き飽きするほど見慣れた憎たらしい輩が現れた。

 

「このカバトン様が豚に化けていたとは、お釈迦様でも気が付くめい!」

 

「なんてズル賢い!」

 

「卑劣な罠でござったか!」

 

「コントかな?」

 

「えるえる」

 

 三人のボケ合戦にましろが冷静にツッコんで、エルも同感というふうに頷いた。

 

「おのれ、なぜこんなことを!」

 

「ま~だ気付かないのかねん?」

 

 カバトンの手にはミラージュペンが。煙幕を張った隙にソラから奪っていたのだ。

 

「返してください!」

 

 ソラが奪い返そうと突っ込んでいくが、カバトンは後ろへ跳び退き距離を取った。

 

「カモン! アンダーグエナジー!」

 

 例の如く、カバトンは手からアンダーグエナジーを放出。罠に使っていた毒キノコに憑依するとランボーグに変貌する。

 

「ランボーグ!」

 

「ギャハハ! プリキュアになれないお前なんか怖くないのねん!」

 

 勝ち誇るカバトンを前にソラは苦悩する。奴の言う通り、プリキュアに変身できなければランボーグとまともに戦えない。

 歯痒く思っていたその時、触手が伸びてくるとソラの体に巻き付いて拘束する。

 

「アァッ!」

 

 ソラはそのまま手繰り寄せられ、ランボーグに捕まってしまった。

 

「ソラちゃん!」

 

「ソラ殿!」

 

 ソラを人質に取られ、ピンチに陥る二人。そこへ、

 

「ましろん、シグレちゃん、こっち!」

 

 校舎の玄関からあげはが二人を誘導するため叫んだ。

 

「お願いです、エルちゃんを安全な所に!」

 

 ソラは自身よりもエルを優先するように懇願。

 ソラの身を案じるましろ。と、シグレは逆に一人前へと進む。

 

「ソラ殿は拙者に任せるでござる。ましろ殿はエル姫を連れて早く!」

 

 シグレはましろにエルを託し、単身でソラの救出を決意する。

 二人を気に掛けるましろだが、彼女たちの想いを汲んでエルと共に校舎へと駆け込んでいく。

 

「これ以上の悪行、許してはおけぬ!」

 

 シグレはミラージュペンとスカイストーンを構える。

 ミラージュペンをスカイミラージュへ変形。スカイストーンを装填する。

 

「ひろがるチェンジ! レイニー!」

 

 シグレの体は輝きに包まれ、銀色のコスチュームを纏った。

 

「幾重にひろがる雨の波紋! キュアレイニー!」

 

 キュアレイニーへと変身を遂げ、ランボーグと対峙する。

 

「ソラ殿、(しば)しの辛抱でござる! 今、拙者が━━」

 

 光の刀を握り、ソラを助けるべく駆け出そうとした、その刹那。

 

 ゴロゴロ、バリバリバリ!

 

 頭上から轟音を鳴らして雷が落ちてきた。レイニーは寸でのところで後方へ回避、難を逃れた。

 しかし、空は雨雲一つ無く晴れ渡っているというのに、なぜ雷が落ちてきたのか不可解でならなかった。

 

「不意を突いたとはいえ、あれを躱すとはやはりできるな」

 

 レイニーの左側から男の声がし、そちらを向くと黒装束を纏った鬼面の男が黒刃を手に歩んできた。

 

「何者でござる!?」

 

「『シンエン組』頭目。クワガオーガ」

 

 おそらくカバトンの仲間であろう新手の出現で、レイニーに緊張が走る。

 この隙にキノコランボーグは小型のランボーグを生み出し、校舎に逃げたましろたちを追撃する。止めに行こうとしたレイニーをクワガオーガが阻んだ。

 

「お主に構っている暇は無い!」

 

「生憎と、俺は貴様に用がある。ここを通りたければ俺を踏み倒していくことだな」

 

 クワガオーガは妖刀「ブライマル」の黒光りする刀身を差し向け、身構える。

 やむを得ないと悟ったレイニーも光の刀を構え、臨戦態勢に入る。

 

「いざッ!」

 

「参るッ!」

 

 両者は同時に斬り込み、二振りの真剣が激しくぶつかり合った。




クワガオーガ
イメージ声優:中村悠一
アンダーグ帝国に属する強襲部隊「シンエン組」の頭目。黒装束に陣羽織を纏い、クワガタの顎を模した角の付いた鬼面を被る謎の男。
非常に好戦的で強さに貪欲。自らの力を誇示するためならば、平和を壊してでも戦いを欲している。また「強者は弱者を蹂躙し、すべてを支配する権利がある」ことを心情としており、弱者ひいては弱さに通ずるものを見下す傾向がある。
「傀我流」という我流剣法を使い、シグレをも上回る剣技を持つ。アンダーグ帝国の支配者の力を宿した妖刀「ブライマル」を用いり、雷を駆使した斬撃を得意とする。
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