ひろプリ SAMURAI GIRL HEROISM 作:MOZO
レイニーとクワガオーガの
当初は互いに鎬を削り合っていたが、クワガオーガが繰り出す斬撃の一つ一つは重く、徐々にレイニーは押されていく。
「俺の剣を受け切るとは見込んだ通りの太刀捌きだ。だが、それでも俺には及ばぬがな」
「お主こそ、それほどの腕がありながらなぜ世のために使わず悪事の片棒を担ぐ?」
「俺の力を世に知ろ示すためならば、如何なる手段も辞さん」
クワガオーガは然もありなんといった冷淡な口調で言霊を発する。
「剣士として生まれたからには、闘争があってこそ存在価値があるというもの。だというのに、平和などというしがらみがあっては腕は鈍り、剣は錆びていくばかりだ。この生温い平和の世を突き崩してでも、俺は己の強さを証明してくれる」
「なんてことを・・・。お主の傲慢な欲望を満たすために罪の無い人々が傷付いても良いと申すか!?」
「強者は弱者を淘汰し、すべてを支配する権利がある。力無き者がどうなろうが知ったことではない」
「おのれ・・・・・・!」
自らの力を誇示するためだけに、非道の限りを尽くし、弱き者を踏みにじり、平和を奪ってでも戦いを欲する。クワガオーガの
「貴様の剣技、プリキュアなどという小さな器に留めて置くには実に惜しい。俺と共にこの惰弱した世界を打倒し、名を上げてみる気はないか?」
クワガオーガは左手を差し出し、レイニーを修羅の道へと誘おうとする。
「ふざけるな! 拙者は悪を挫き弱きを助けるために剣を振るう世界一のサムライになるのでござる。お主のような邪剣と一緒にするでない!」
当然、レイニーはその申し入れを拒絶。徹底抗戦の意思を見せる。
「愚かだな・・・・・・」
勧誘を断られたクワガオーガは「ブライマル」を翳し、レイニーへ詰め寄っていく。
「スカイランド剣術、一の型。切空斬!」
レイニーは光の刀を横一文字に振るうと風の刃が生じ、クワガオーガに向かって飛んでいく。
「
対して、クワガオーガは「ブライマル」の刀身を高く掲げて縦一直線に振り下ろすと、斬撃は雷の刃となって放たれ、レイニーの切空斬を相殺する。
「スカイランド剣術、四の型。刃利剣旋舞!」
間髪入れず、レイニーは全身を捻り回転して竜巻を発生させてクワガオーガに突っ込んでいく。
しかし、クワガオーガは地面を蹴って竜巻の頂点まで跳躍。渦の中心に切っ先を定める。
「傀我流、弐ノ太刀。
クワガオーガはその身を落雷の如く急降下させ、渦の中に突入。
危険を察したレイニーは技を解いて後方へ回避した。
「傀我流、参ノ太刀。
逃がすまいとクワガオーガは電光石火の俊足でレイニーとの距離を詰め、強烈な一刀を振り下ろす。
レイニーは光の刀を横にして凌ぐも、防ぐだけで精一杯であった。
「くっ・・・・・・!」
ジリジリと重さが加わり、レイニーの膝が今にも屈しそうになる。
「なぜ貴様は技を決め切れないかわかるか?」
追い討ちを掛けるようにクワガオーガは言葉の重圧を加える。
「所詮、剣は敵を斬るための道具。弱者を守るために振るう
悔しいが、クワガオーガの言葉は理に敵っている。レイニーと奴とでは刀を握る覚悟がまったく違う。その残酷な事実をレイニーは肌身で感じ取っていた。
(このまま奴の間合いにいるのは不味い。とにかく距離を取らねば!)
レイニーは力を振り絞り、押し返した一瞬の隙に凶刃の向きを反らすと体勢を立て直すべく空中へ跳躍した。
が、クワガオーガはこれを待っていたというように「ブライマル」を天へと突き上げた。
「傀我流、奥義━━」
「ブライマル」の切っ先から稲妻が放たれると、上空がみるみる黒雲に覆われ、雷鳴が轟きだした。
「
クワガオーガが力強く「ブライマル」を振り下ろすと同時に黒雲から金色の雷が発生。それは竜の形となり、牙を剥いた口を大きく開け、咆哮を響かせながらレイニーへ襲来。
空中では回避する手立てが無いレイニーは雷の竜の直撃に晒された。
「あぁああああああああッ!」
想像し難い衝撃と激痛がレイニーの全身を駆け巡る。
雷撃を浴びたレイニーは力無く地面へと落下し、意識を失った。
「さて、残るは雑魚のみ・・・・・・」
レイニーを退けたクワガオーガは学校の屋上に視線を移した。
* * *
ましろとあげははランボーグからエルを守るために屋上に避難していた。
「大丈夫よエルちゃん。お姉ちゃんたちが守ってあげるからね」
エルにそう言い聞かせるあげはであったが、小型のランボーグが迫って来ており、もう逃げ場は無い。
「あ~、マイクテス、マイクテス。無駄な抵抗は止めるのねん。今すぐプリンセスを連れてこい!」
カバトンがましろたちに向けて拡声器を使い降伏勧告をする。
「ましろさん、出て来ちゃダメです!」
「お口チャ~ック!」
降伏してはならないと叫ぶソラだが、カバトンが無駄口を言わせないためにX印のテープで口を塞ぐ。
そこへ黒い影が下から飛んできて屋上に着地する。レイニーを降したクワガオーガが、3階もある建物をたった一跳びで上がってきたのだ。
「諦めろ。頼みの綱のプリキュアはもういない」
レイニーの敗北を聞かされ、ましろは愕然とする。彼女が敵わなかった相手に生身で太刀打ちできるはずがない。
更に、屋上の出入口から衝撃音が。小型のランボーグがすぐそこまで迫っていた。挟み撃ちにされ、完全に退路を断たれる。
「おとなしくプリンセスを渡せ。さもなくば・・・」
クワガオーガが「ブライマル」の切っ先をちらつかせ、ましろたちを脅迫する。
自分たちの身も危険だが、下では拘束されているソラがどんな目に遭わされるか。
「行かなきゃ。ソラちゃんとシグレちゃんを助けなくちゃ・・・・・・」
「そんなの分かってる。でも、どうすれば!?」
絶体絶命の状況下にあげはは戸惑い打開策の検討が付かない。
「それでも行かなくちゃだよ!」
友達が危機的状況に陥っているのに、自分はいつも怖がって、助けられて━━。
そんな自分はもう嫌だ! ましろがそう念じた時、彼女の胸からピンク色の光の玉が現れると、ミラージュペンに変化した。
「わたしが・・・プリキュアに?」
ソラとシグレの時と同じ。ということは自分もプリキュアになれる。そうすれば、ソラとシグレを助けることができる。
ましろはミラージュペンを手に取ろうとした。
「やめろ!」
カバトンが叫び声にましろの手がピタリと止まる。
「脇役なんかがプリキュアになれるもんか! お前に何の力がある、自分だって分かってるんだろ、ほら!」
心の奥底では、自分なんかがプリキュアになっても足手纏いになるだけなんじゃないか。何より、やはり恐怖心が勝ってしまう。カバトンに図星を突かれ、手がこれ以上伸ばせられない。
「早くプリキュアにならなきゃだよ。でも、わたしなんかじゃ・・・・・・」
躊躇っているましろ。そんな彼女にあげはが真面目な顔つきで語り掛ける。
「ましろん。プリキュアっていうのが何なのかわたしにはわからない。でも、そんなのどうだっていい」
あげははわかっていた。ましろはとっくに答えを見つけているはずだと。あとは、ほんの少し背中を押してやれれば。
「馬鹿な真似は止せ。奴の言う通り、それは貴様のような弱者には分不相応な代物だ。例え手にしたところで、何の役にも━━」
「そこ、うるさい!」
口を挟んできたクワガオーガにあげはは臆せず一喝。それからすぐ話を続けた。
「ましろん、本当に大事なこと言わせて。あの日・・・」
* * *
幼い頃、あげはが引っ越すことに反発して家出した時。彼女は夕焼けの差す土手で一人膝を抱えて泣いていた。
『ここにいたんだね。お家に帰ろう』
捜しにきたましろが悲しみに暮れるあげはの背中に優しく呼び掛ける。
『お手紙出すよ。電話もするよ』
励まそうとするも、傷心のあげはには逆効果だった。
『ましろんは悲しくないの!?』
『悲しいよ。でも・・・・・・』
あげははましろの顔を見た途端にハッとする。ましろは微笑みながら両目から大粒の涙を溢していた。
『わたしが泣いたら、あげはちゃんはもっと泣いちゃうでしょ?』
その瞬間、あげははましろの暖かな優しい心に救われたのだった。
* * *
「あの日、わたしはましろんに教わったよ。優しいっていうのは強いってことなんだって」
ましろの優しさに励まされ、勇気付けられた。だから、今度は自分の番だ。
「わたしなんか? そんなこと言うな、そんなこと誰にも言わせるな! ましろんには優しさっていう誰にも負けない力があるんだよ!」
敵を圧倒するだけが強さではない。人の心を照らす優しい光こそ、ましろが持っている一番の強さなのだ。
『ましろさんは、今のましろさんのままで良いんです』
『ましろ殿には周りを思いやる優しさという力があるでござる』
ソラもシグレも言ってくれた。優しさは誰かを救えるのだと。
その時、とうとうランボーグが出入口の屋根を突き破った。意を決したましろはミラージュペンを掴んだ。
「ぷいきゅあ~!」
エルが叫ぶと、あの紫の光が放たれ、ましろが受け取るとピンク色のスカイストーンとなった。
「ヒーローの出番だよ!」
ましろはソラとシグレ宛らにミラージュペンとスカイストーンを掲げる。
「スカイミラージュ! トーンコネクト!」
ミラージュペンをスカイミラージュに変形させ、スカイストーンのツマミを押して装填。
「ひろがるチェンジ! プリズム!」
バーサライタに『PRISM』の文字が浮かぶと、ステージ状の異空間で変身を開始。
「ひらめきHOP! さわやかSTEP! はればれJUNP!」
髪はえんじ色からピンクのロングヘアーに変わり、白いリボンが結ばれる。
白とピンクを基調としたワンピースドレスを身に纏い、腰にウエストリボンが添えられる。白いロンググローブとロングブーツを装着して、変身を完了させる。
「ふわりひろがる優しい光! キュアプリズム!」
柔らかに煌めく白いコスチュームは彼女の優しさを象徴させる。
その名は、キュアプリズム。