ひろプリ SAMURAI GIRL HEROISM 作:MOZO
ましろがキュアプリズムになったことでプリキュアは三人体制に。それに恐れを為したのか、カバトンはおろかクワガオーガすら現れない平穏な日が続いていた。
そんなある晩。自室で眠るソラは酷くうなされていた━━。
不気味で暗い一本道を延々と走っているスカイ、レイニー、プリズムの三人。
その後方からランボーグが迫り、ミサイルを発射した。爆撃に巻き込まれたスカイは地面に伏してしまい、そんな彼女をプリズムが庇うように一人ランボーグに立ち向かう。その時、スカイとプリズムの間に鉄格子が下り彼女たちを隔ててしまう。直後、ランボーグは両目から赤いビームを発射。プリズムはまともに食らい吹き飛ばされ、変身が解けてしまった。
「ましろさん!」
スカイの叫びも虚しく、ぐったりと倒れるましろから返事がない。
視界が切り替わり、レイニーがクワガオーガと剣戟を繰り広げる場面となる。激しく斬り合う両者であったが、クワガオーガに刀を弾かれたレイニーはそのまま刃に斬り裂かれ、ましろと同様に変身が解かれて倒れ込んでしまう。
「シグレさん!」
その悲痛な叫びは届かず、シグレも言葉を発せず意識を失う。
無残に倒れるましろとシグレ。迫り来るランボーグとクワガオーガ。一人取り残されたスカイは恐怖の闇に引き摺り込まれていく━━。
そこで悪夢から覚めたソラ。身体中が脂汗でじっとりと濡れていた。
「また同じ夢・・・・・・」
最近ソラは同じ内容の悪夢を頻繁に見るようになり、熟睡することができないでいる。恐怖が彼女をジワジワと
* * *
まだ陽も昇らない早朝。シグレは竹刀(これまた虹ヶ丘家の物置にあった)を握り、素振りの稽古に打ち込んでいた。かれこれ一時間も休憩無しで振り続けており、額から汗が滴り落ちていた。
「敵わなかった。今の拙者の剣では、奴の足許にも及ばぬのか・・・・・・」
クワガオーガに敗北を期したシグレは、あれ以来がむしゃらに稽古をするようになった。だが、奴との実力差が一日二日とそう簡単に埋まるものではない。それが分かっているため余計に焦ってしまう。
『所詮、剣は敵を斬るための道具。弱者を守るために振るう
あの時の呪いの言葉が頭にこびり付いて繰り返し響いてくる。
シグレはブンブンと
「ええい、未熟者! あんな悪党に怖じ気づいているようでは誰一人守れぬではないか!」
挫けそうな心に渇を入れ、竹刀を持つ手を一層強く握り締める。
「今のままではソラ殿の足手纏いになってしまう。もっと、もっと強くならねば!」
雑念と汗を拭い払うと、シグレは素振りを再開するのであった。
* * *
朝食を終えた後、ソラ、ましろ、シグレ、エルはヨヨの自室でスカイランドにまつわる伝承を聞かされていた。
『それは嵐の晩のことだった。闇の世界の魔物がスカイランドに攻め込んできた。空は黒い雲に覆われ、絶望的な戦いが始まった。
スカイランドの姫は祈った。ヒーローが現れて青い空とみんなの笑顔を取り戻してくれますように。と。
姫の祈りに応えるように勇敢な戦士が現れた。その名は、プリキュア。プリキュアは闇の世界の魔物を打ち払い、スカイランドを救った』
「これは、スカイランドでも当の昔に忘れ去られた古い古い伝説よ」
「伝説の戦士・・・プリキュア!」
話を聞いたましろは武者震いをして抱えているエルに語り掛ける。
「エルちゃん、もう安心だよ。伝説のヒーローが味方だよ!」
話が正しければ、これまで奇跡を起こしてきたエルの不思議な力は伝承に登場するスカイランドの姫に由来するものなのだろう。
その姫を守るのが、プリキュア。つまり自分たちである。重大な使命を帯びていることを知ったましろは俄然気合いが入る。
「わたしさ、今猛烈にトレーニングがしたい気持ちだよ。ソラちゃん、シグレちゃん、今から一緒にトレーニングしに行こうよ!」
「うむ。その意気でござるぞ、ましろ殿。エル姫を守ることが拙者たちの役目であれば粉骨砕身、全身全霊を
「そんなことより、この世界とスカイランドを繋ぐトンネルはいつ開いてもらえるんでしょうか?」
意気揚々とするシグレとましろとは対照的に、ソラは神妙な面持ちでヨヨに問い掛けた。
「もう少しだけ時間をちょうだい。簡単な作業ではないの。100種類以上の素材を繊細な手順で組み合わせて、それから━━」
「カバトンは簡単にトンネルを開いたじゃないですか!」
いつになく声を荒らげたソラにシグレとましろは驚いてしまう。
「━━ッ!? ごめんなさい!」
ヨヨは懸命にスカイランドに戻る手立てを模索している。なのに、焦燥からとは言え、自分はなんて言い掛かりをしてしまったのか。
我に返ったソラは部屋を飛び出していってしまう。
「ソ、ソラ殿!?」
「ソラちゃん!?」
シグレとましろの呼び声は去っていくソラの背には届かず、二人は様子がおかしい彼女の身を案じた。
* * *
同刻。高架下で営んでいるおでん屋で変装したカバトンが店主に愚痴を溢していた。
「悪ガキの頃からここはからっきしで。でも、こっちにゃ自信あったのねん! なのに、プリキュアとかいうめちゃくちゃTUEEE奴が現れてよ・・・・・・」
「そうですか・・・」
「しかも、三人目まで爆誕。オレの立場はどうなるのねん!?」
エルを奪取することもできず、プリキュアにも連戦連敗続き。身の振り方を嘆くしかなかった。
「昼間から酒浸りとは、呑気なものだな」
と、のれん越しから冷淡な男の声が。クワガオーガの背から醸し出される威圧感にカバトンはギョッとした。
「何の成果も出していないというのに、こんなところで油を売っていていいのか?」
「それを言うなら、この前、キュアレイニー相手にスタコラと逃げた癖に。お前だって人の事を言えないのねん!」
「俺は逃げた訳じゃない。奴の力量を見定めたかっただけだ。最も、あれでは俺が本気を出すまでもなかったがな」
「オレだってプリキュアが三人に増えなければ上手くいっていたのねん! 次こそはアイツらをコテンパンのメタメタにして泣かしてやるのねん!」
「次こそ、か。そう悠長にはしていられないぞ」
すると、周囲の空間が歪み、不気味な雰囲気が漂い始めた。
『プリンセス・エルはまだ手に入らぬのか?』
どこからか恐ろしげな女性の声が木霊し、それを聞いたカバトンの紫色の顔が青ざめていく。
『役立たずめ、どれだけ私をガッカリさせるつもりだ』
「も、申し訳ありません!」
血相を掻いたカバトンは両手を地に付けて平伏する。そして、クワガオーガも膝を折って跪いた。
『いつまでもチャンスがあると思うでないぞ。プリンセスを私の許に。良いな、カバトン』
「御意・・・!」
『クワガオーガよ、お前には期待をしている。今後もカバトンに助力をし、何としてでも任務を遂行するのだ』
「仰せのままに。すべてはアンダーグ帝国繁栄のため」
二人の忠誠を聞き入れた後、声の主は気配を消し、周囲も元の空間へと戻るのだった。
(クソ・・・・・・。なんでコイツばっかり優遇されるのねん!)
「これ以上あの御方の機嫌を損ないたくないのなら、精々良い結果を出すよう励むことだ」
苦虫を噛んだような顔をするカバトンを尻目に、クワガオーガは忠告を残して去って行った。
「オヤジ、全部もらうぞ!」
屋台に戻ったカバトンは店主に注文すると、大皿山盛りのおでんが出てきた。
「プリキュア、今日がお前たちの最期の日なのねん!」
熱々のおでんを貪りながらカバトンは宿敵への雪辱を晴らすと誓うのだった。