ひろプリ SAMURAI GIRL HEROISM 作:MOZO
エルの散歩がてら気分転換にとソラを連れ出したましろとシグレは『Pretty Holic』を訪れていた。
「ねぇ、見て。新しいの出たよ~!」
「これはこれは、なんとも可愛らしいでござるなー」
「・・・・・・・・・・・・」
新商品のシャイニーパウダーを手に取って嬉々とするましろとあからさまに棒読みな台詞のシグレが気を引こうとするも、ソラはまったくの無反応。二人はどうしたものかと途方に暮れてしまう。
店を後にしても気まずい空気が張り詰めて仕方がない。
「何かあった? 話聞くよ?」
堪えかねたましろがソラに不機嫌な理由を尋ねる。
「もしかして、プリズムショットの『ひろがる』ってとこ、スカイパンチの真似したから怒ってる!?」
「違います」
「よもや、先日小腹が空いてしまって、お二人に黙って菓子をつまみ食いしたことがバレてしまったのでござるか!?」
「「・・・えっ?」」
それは寝耳に水だとソラとましろは顔をしかめる。
「そ、それも違います」
「そっか。じゃあ・・・・・・」
ましろは考え込むも、他に原因が思い浮かばない。
と、先に横断歩道を渡ったソラが二人の方へ振り返る。
「ましろさん、シグレさん。プリキュアにはもう変身しないでほしいんです」
「「えっ・・・・・・?」」
それは非情にも、彼女たちの間を走る道路のように三人の絆を分かとうとする言葉だった。
* * *
とりあえず、事情を聞くためにベンチに座る三人。
ソラは最近見る悪夢の内容をましろとシグレに話した。
「そんな怖い夢を見たんだね」
「しかし、それは夢の話でござろう? 無闇に心配することはござらぬよ」
「確かに、ただの夢です。わかってます・・・・・・」
自分の不安が創り出した幻想なのは重々理解している。だが、尚の事それが現実になってしまったらと思うと堪らなく恐ろしいのだ。
「心配してくれてありがとう。でもね、エルちゃんを守らなくちゃ。それにさ、一人よりも二人、二人よりも三人の方が良くない?」
「ましろ殿の言う通りでござるよ。それに『三人寄れば文殊の知恵』ということわざがあると聞いたでござる。拙者たち三人が力を合わせれば怖いもの無しでござる!」
「いえ、一人でやります。わたしがもっと強くなればいいだけの話です!」
二人の説得にソラは頑として聞き入れようとしない。まさかの「プリキュア解散」という空気が漂い始める。
* * *
その頃、カバトンは電車の屋根に上がり、これまでにない気迫を放っていた。
「おでんのカロリーをすべてくれてやる!」
カバトンから膨大な黒いオーラが放出され、彼の体は風船が
「カモン! アンダーグエナジー!」
電車は黒いエネルギーに包まれ、一両丸々ランボーグと化してしまった。
「ランボーグ!」
「やったのねん。ついに生み出したのねん。見ろ、これがオレ史上最高にTUEEEランボーグだ!」
げっそりとやつれたカバトンは電車ランボーグの運転席に乗り込み、律儀に制帽を被るとレバーを引いて発進させる。
「脇役の皆様にお知らせ致しま~す。邪魔くせぇので白線の外側までお下がりくださ~い」
見上げる群衆を望みながら電車ランボーグは彼らの上空を通過していく。
そして、ソラたちもしばらく現れなかったランボーグを目撃する。
「ましろさん、シグレさん。エルちゃんをお願いします!」
ソラは心配するましろとシグレには目も暮れず、一人ミラージュペンを握り構える。
「ひろがるチェンジ! スカイ!」
スカイミラージュにスカイストーンを装填。青いコスチュームを纏い、左肩のマントを
「無限にひろがる青い空! キュアスカイ!」
キュアスカイはビルの屋上へ跳び上がり、電車ランボーグに搭乗するカバトンと相対する。
「フン、一人か?」
「独りぼっちを恐れない。それがヒーロー!」
孤独を噛み殺すスカイはランボーグに向かって跳躍。力を溜めた右手を打ち出した。
「ヒ~ロ~ガ~ルスカイパーンチ!」
先手必勝と技を放つスカイであったが、ランボーグが繰り出した拳と衝突。力負けして弾き返されてしまった。
「キャー!」
強烈な一撃にスカイはコンクリートに叩き付けられる。これまでのランボーグとは桁違いの強さに早くもピンチに。
「このままではソラ殿が。拙者たちも加勢しに行くでござる!」
「でも、エルちゃんを一人残していく訳にはいかないよ!」
ソラからは「変身しないでほしい」と懇願されたばかりだが、彼女の危機を黙って見過ごすことなどできようか。しかし、エルをこの場に置き去りすることもできないし、誰かが側で守ってやらなければならない。
困りあぐねていた二人だったが、突如エルの乗ったスリングが淡い光を帯びたと思えば、そのまま宙に浮いたではないか。
「えるぅ~!」
これもエルのプリンセスとしての力なのか、毎度のことながら驚嘆する二人。ましろは以前ヨヨが『色々と役に立つと思うわ』という言葉を思い出す。
「おばあちゃん、ありがとうすぎるよ!」
「しめた! これでソラ殿のところに行けるでござる!」
この好機を逃すまいと、二人はミラージュペンを手に取る。
「「ひろがるチェンジ!」」
「レイニー!」
「プリズム!」
二人は同時にスカイミラージュにスカイストーンを装填。シグレは銀色の、ましろは白のコスチュームへと早変わりする。
「幾重にひろがる雨の波紋! キュアレイニー!」
「ふわりひろがる優しい光! キュアプリズム!」
二人は変身を遂げ、キュアレイニーとキュアプリズムとなる。
いざスカイの許へ走り出そうとした時だ。
「カバトンの奴め、
背後からの殺気にレイニーが感付き振り返る。そこには因縁の宿敵の姿が。
「クワガオーガ・・・」
急を要する事態だというのになんと厄介だろうか。クワガオーガを前にレイニーとプリズムは生唾を飲んだ。
「あの時の勝負の続きであれば、受けて立つでござる!」
「こちらとしても望むところだが、プリンセス奪取の任務が先決でな。貴様たちの相手はコイツにしてもらう」
クワガオーガの影の中から一体のクロボーズが現れた。集団で押し寄せて来ても難敵とは言い難いクロボーズをレイニーたちは脅威だとは感じられない。それがたった一体でどうしようというのか実に不可解だ。
すると、クワガオーガは「ブライマル」を抜き放ち、地面へ突き立てた。
「アンダーグエナジー。解放!」
漆黒の刀身から黒いオーラが吹き出すとクロボーズの体を包み込み、巨大な姿へと変貌させた。
「クロボーグ!」
その怪物は頭頂にランボーグと同様のモヒカンが生え、3m超えの太刀を振り上げる。
思いもよらぬ展開に驚くも、レイニーは意を決したかのように銀色の刀を握り締める。
「拙者がこやつの相手をする故、ましろ殿はソラ殿を頼んだでござる!」
せめてプリズムだけでもスカイの許へ向かわせるため、レイニーは壁役を買って出ることに。プリズムはレイニーを一人残していくことに躊躇いを感じるも、彼女の意志を汲むことにした。
「シグレちゃんも気を付けて」
プリズムはスカイに助けるべくひた走り、レイニーはクロボーグを迎え撃つべく刀を構えるのであった。
クロボーズ
「シンエン組」が要する黒子に似た姿をした戦闘員。
常に集団で行動し、指揮官の指示に従う。実はアンダーグエナジーによって動く人型の傀儡で自我は存在しない。一体あたりの戦闘力は低く、ある程度のダメージを与えると墨汁状の液体となって崩壊する。
クロボーグ
クロボーズがアンダーグエナジーを注入されてランボーグ化した姿。
ランボーグと同じく巨大になり頭部にモヒカンが生える。戦闘力も一体で一小隊分相当となる。所持する武器も個体によって異なる。