ひろプリ SAMURAI GIRL HEROISM   作:MOZO

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其の七

 遂にレイニーとクロボーグは立ち合いを始める。クロボーグが繰り出す太刀裁きは凄まじいもので街灯、街路樹、車を斬り裂いていく。

 レイニーはそれらを次々に躱していくが、クロボーグはその巨体に似合わないスピードで太刀を振るい、重い一斬を凌ぐことしかできないレイニーは追い詰められる。

 

「どうした、先ほどの威勢はどこへ行った?」

 

 防戦一方のレイニーをクワガオーガが冷徹に見定める。

 

「そんな無様な戦い方では、クロボーグはおろか俺にすら勝てぬぞ」

 

「くっ・・・・・・」

 

 クワガオーガの言葉に揺さぶられ、自分の未熟さを痛感する。それは迷いとなってレイニーが握る光の刀にも現れる。

 一方のスカイも、電車ランボーグのカウンターによるダメージが残っており、立ち上がることができないでいた。

 

「イヒヒヒ、YOEEE!」

 

 これはもう勝利は揺るがないと確信したカバトンはスカイの痛々しい姿を嘲る。

 そこへプリズムが到着し、スカイへ駆け寄る。

 

「立てる?」

 

「わたしは大丈夫です」

 

 気遣うプリズムを意に返さず、スカイはふらつく足で立ち上がって見せた。と、プリズムと共に駆け付けたエルをカバトンは見逃さなかった。

 

「プリンセスはもらったぁ!」

 

 エル目掛けランボーグが突進。寸でのところでスカイとプリズムはエルを連れて回避した。

 ランボーグがコンクリートの壁に激突したことで瓦礫が戦闘中のレイニーとクロボーグのところまで飛来し、辺りに降り注ぐ。

 

「あの間抜けが、何をしている!」

 

 土煙が起こり、クロボーグはレイニーの姿を見失う。不本意ではあるものの、この隙にレイニーは体勢を立て直すため一時離脱する。

 

「お客様のお呼び出しを致します。プリキュア様ー!」

 

 カバトンはビルから消えたスカイとプリズムを探し回っていた。その様子を少し離れた路地裏で彼女たちは伺っていた。

 

「フゥ・・・、危なかった」

 

 間一髪であったことにプリズムは安堵する。そこへ奇しくもレイニーも合流を果たす。

 

「ソラ殿、ましろ殿。無事でござったか」

 

「シグレちゃんも大丈夫そうだね」

 

 全員が無事なことを改めて確認すると、プリズムはスカイへ再び説得を試みる。

 

「ソラちゃん、今は言い争ってる場合じゃないよ。一緒に戦おう?」

 

「できません・・・・・・」

 

「でも・・・」

 

「友達だから・・・・・・」

 

「えっ?」

 

「ましろさんとシグレさんは、わたしの初めての友達だから!」

 

 スカイ━━ソラの悲痛な叫びが木霊する。

 

「あの日、あの瞬間からわたしはヒーローになるためのトレーニングを始めました」

 

 それは、幼少のソラが自分を救ってくれたヒーローに出逢った後のこと。憧れの人に一日でも一歩でも近づくために、ソラは日夜トレーニングに明け暮れていた。日射しが強い暑い日も、雪が積もる寒い日も、毎日一日も欠かさず彼女は自分を鍛えていた。

 かと言って、ソラも年頃の少女。同年代の女子であれば流行りの服を着飾り、アクセサリーを身に付け、友達と一緒に遊びに行く盛りだ。しかし、ソラは輝かしい青春を犠牲にし、友達も作らず、たった一人で鍛練を続けた。

 

「自分で決めたことです。だから、自分で受け止めるしかないんです」

 

 孤独を紛らわすために、ソラはヒーロー手帳にこう書き記していた。

 

『独りぼっちを恐れない。それが、ヒーロー』

 

 どんなに寂しくとも、ヒーローになるためだと、自らの気持ちに蓋をした。

 そんな彼女がシグレと出逢い、ソラシド市でましろとも出逢ったことで心境が大きく変わった。

 

「でも、友達ができました。ワガママです、わかってます。でも、怖いんです。二人が傷付くなんて、そんなの絶対に嫌だ・・・・・・」

 

 あの悪夢が現実になってしまったら。二人がボロボロになって倒れてしまったら。そんな光景は見たくない。

 

「だったら、一人の方がいい。わたし、一人で戦います!」

 

 二人を守るためなら孤立無援になろうとも戦い抜く。スカイはその覚悟を背負おうとしていた。

 彼女の優しく痛々しい意志を聞いたプリズムは言葉が出なかった。すると、レイニーがスカイの前へ歩み寄っていく。そして、右手を振り上げて━━。

 

「チェストォォォォォォ!」

 

 ガツンとスカイの脳天に手刀を叩き込んだ。

 

「えぇええええ~!?」

 

 レイニーの思いがけない行動にプリズムは驚愕の声を上げ、エルも目を丸くする。

 

「イッタァ~! 何するんですか!?」

 

「見損なったでござる! そのような弱音を吐くなんてソラ殿らしくないでござるぞ!」

 

 自分たちを蔑ろにして一人で無茶をしようとするスカイをレイニーは許せなかった。

 

「ソラ殿はそんなに拙者たちが信用ならぬでござるか? 足手纏いでござるか?」

 

「違います! 違います、けど・・・・・・」

 

 真っ向から激情をぶつけてくるレイニーに対してスカイは口籠ってしまう。

 

「見~つけた!」

 

 頭上から憎たらしい声が響く。ビルの隙間からランボーグが覗き込んでいた。ランボーグはビルの壁を破壊しながら迫ってくる。四人は崩れてくる瓦礫を掻い潜って退避する。

 

「わたしが囮になります!」

 

「まだそれを言うでござるか!」

 

 尚も一人で戦おうとするスカイ。レイニーは彼女の言動に苛つきを募らせる。

 ランボーグからの攻撃をギリギリで躱す。そこへクロボーグも乱入し、太刀を振り回してきた。敵の波状攻撃を凌ぎつつ彼女たちは走り続けた。

 

「拙者たちが友であることでソラ殿が一人戦おうというのであれば、今より拙者は友を止めるでござる!」

 

「えぇ・・・・・・」

 

 レイニーからまさかの「友達止める」宣言にスカイは息を飲んだ。

 

「これより拙者たちはエル姫を守る同志でござる!」

 

「そんなの言葉遊びです!」

 

「ならば、相棒。顔馴染み。同じ釜の飯を食う仲。他に何かあるでござるか?」

 

「知りません!」

 

 猛攻を避けながら二人の口論は熱を帯びていく。

 

「わたしは二人には傷付いてほしくないと言っているのに、どうしてわかってくれないんですか!」

 

「わかっておられぬのはソラ殿の方でござろう! 拙者だってソラ殿の役に立ちたいと一層日々の鍛練に励んでいたというのに!」

 

「ちょ、ちょっと二人共!」

 

 段々と語気が強くなっていく二人を見兼ねてプリズムが仲裁に入ろうとした時だ。

 

「えるぅー!」

 

 二人のただならぬ様子にエルが泣き出してしまった。

 

「け、喧嘩してるんじゃないんですよ!」

 

「心配なさるな姫、拙者たちは仲良しのままでござるから!」

 

「そうそう。泣かないで、ほら!」

 

 エルを宥めようと、プリズムはスカイとレイニーと肩を寄せ合って仲良しアピール。

 彼女たちが立ち止まったところへ電車ランボーグが上部の白色灯の表示を『特急』に切り替え、猛スピードで突進。衝撃で三人は吹き飛ばされ、一人残ったエルを捕らえようと魔の手が伸ばす。

 プリズムがエルを庇い、ランボーグの前に立つ。片や、屋上まで登ってきたクロボーグがレイニーに向かって凶刃を振り下ろそうとしていた。

 

「ましろさん、シグレさん!」

 

 それはあの悪夢と同じ情景。プリズムはランボーグの攻撃に倒れ、レイニーはクワガオーガに斬り裂かれる場面がフラッシュバックとなって蘇る。

 

「ダメェー!」

 

 スカイは届かぬ手を伸ばしながら叫んだ。

 しかし、スカイの杞憂とは裏腹にプリズムは光弾を二つ発射。ランボーグはそれを両手で受け止めると、

 

「煌めけ!」

 

 プリズムの掛け声と共に光弾が閃光を発し、カバトンとランボーグの目を眩ませた。

 そしてレイニーも、クロボーグの斬撃を上空高く跳んで回避し、

 

「邪魔をするなぁ!」

 

 右足を突き出し、クロボーグの眉間に強烈な蹴りを見舞った。クロボーグは反動でビルからまっ逆さまに落下していき、地面に直撃した。

 想像していた悲劇と違った展開にスカイは茫然とする。

 

「あなたが心配だよ、助けたいよ。気持ちは同じ」

 

 向かいのビルからプリズムは自分の思いを投げ掛ける。

 

「それって、一緒に戦う理由にならないかな?」

 

 そう述べると、スカイへ手を差し伸べた。

 レイニーもスカイの隣へ歩み先ほどとは打って変わって穏やかな口調で声を掛ける。

 

「ソラ殿が拙者たちを友として大切に思い、悩み苦しんだことは痛いほどわかるでござる。それがワガママというのであれば良いではござらぬか、ひいろおが必ずしも友を作ってはならぬという決まりはないでござろう」

 

 彼女もまた、プリズムと同じくスカイへ手を差し出した。

 

「友であるからこそ、ソラ殿が苦しんでいる時は拙者たちが力となり、支えになるでござる。だからソラ殿も、拙者たちを信じてくだされ」

 

 その言葉にようやくスカイは気付かされる。ヒーローが孤独である必要はないと。信頼し合い、共に困難に立ち向かう友達がどんなに頼もしいものなのかを。

 スカイはレイニーの手を取り、二人はプリズムの許へ一跳び。彼女とも手を繋ぎ合い、掛け替えの無い友情を噛み締めるのだった。

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