ひろプリ SAMURAI GIRL HEROISM   作:MOZO

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ここから原作6話部分です。


其の九

 数日の間で、このソラシド市は多くの出来事に見舞われた。

 異世界スカイランドより降り立ったソラ、シグレ、エルがましろと出逢ったことを皮切りに、追手のカバトンやクワガオーガとエルを巡る戦いに巻き込まれ、その最中で彼女たちは伝説の戦士・プリキュアへと覚醒する。時に擦れ違い、ぶつかり合いながらも固い絆で結ばれていく少女たちは、街とエルを守るヒーローとして戦っているのだ。

 それから幾日が経ち、季節は春。自室で鏡を見ながら身支度をするましろは青色で統一されたブレザーとスカートを着込んでいた。

 ミラージュペンをキーホルダーのようにバッグに付け、部屋を出たところでソラとシグレと鉢合わせる。

 

「おはようございます!」

 

「おはようでござる、ましろ殿!」

 

「おはよう、ソラちゃん。シグレちゃん」

 

 挨拶を交わす三人。ふと、ましろのいつもと違う出で立ちにシグレが気付く。

 

「はて、どこかへお出掛けでござるか?」

 

「エヘッ、これ学校の制服!」

 

「とっても素敵です!」

 

「うむ。良く似合っているでござるよ!」

 

 ましろの制服姿にソラとシグレは新鮮さを覚えた。

 

「今日から学校だから。ソラちゃんたちは学校って知ってる?」

 

「はい、もちろんです! スカイランドにも学校はありますから、わたしも通ってましたよ」

 

「拙者は寺子屋で師匠から読み書きを習っていたでござる」

 

「寺子屋・・・。シグレちゃんって本当に時代劇の人みたいだね・・・」

 

 ソラと同じスカイランドから来ているはずなのに、時折和風寄りな言動が目立つためややこしいと感じてしまう。

 家を出るましろにソラとシグレも共に付いて行く。

 

「この前、わたし逆立ちしたままどれだけ歩けるかっていうのをやってみたんですけど━━」

 

「拙者も重りを担いで、片足でいつまで立っていられるのか試したことがあったでござる」

 

(あれ?)

 

 ソラとシグレは世間話をしながら然も当たり前と未だに付いて来ている。

 

「そうそう、エルちゃんって眠ってる時、たまに一人でおしゃべりしてるんですよ。かわいいですよね~」

 

「あぁ、あの愛らしさは見ているこちらが癒されるでござるな~」

 

(あれれ?)

 

 一体、どこまで付いて来るつもりなのだろう。「まさか学校まで来る気なんじゃあ」と、ましろは内心勘繰っていた。

 ましろの通う私立ソラシド学園は今学期登校日ということで既に多くの生徒が登校していた。そして、ましろの予想が的中。ソラとシグレは校門まで付いて来ていた。

 

「えっと。ソラちゃん、シグレちゃん、お見送りはここまでで大丈夫だよ」

 

 自然な流れで付いて来た二人は、なぜ校内に入れないのかが不思議だという顔をする。

 

「あなたたち、ここは部外者立ち入り禁止ですよ」

 

 生徒でないソラとシグレに見つけた女教師が注意に入ってくる。

 

「拙者たち、ここより入ってはならぬのでござるか?」

 

「えっ!? 学校は誰でも入れる場所っていうのがスカイランドでは常識━━」

 

「あ~っ!」

 

 危うくスカイランドのことを口走りそうになったところをましろがソラの口を手で塞ぐ。

 

「スカイランドのことは言っちゃダメ~!」

 

 ましろは声を潜め、ソラの耳元でそばだてた。

 ふと、シグレの方は女教師にお辞儀をしながら挨拶をしていた。

 

「師範殿、ましろ殿がいつもお世話になっておるでござる」

 

「はぁ、どうも・・・」

 

「シグレちゃん、ターイム!」

 

 赤面するましろはシグレの腕を掴んで引き下がらせる。

 ましろの中等部二年の初登校はそんなドタバタで始まるのだった。

 

 * * *

 

 ましろを見送り、虹ヶ丘家に帰ってきたソラとシグレ。生徒でなければ学校には入らせてもらえない。それがこの世界の決まりなら仕方がないと気持ちを切り替える。

 

「ならば、わたしたちはわたしたちのやるべきことをやりましょう!」

 

「拙者たちがましろ殿の家に厄介になっている以上、恩義を返さねば!」

 

 ソラとシグレはエプロンを掛け、三角巾を頭に被り、家の手伝いをしようと張り切る。

 廊下の雑巾掛けに(ほうき)掃き、慣れない掃除機に苦戦しながら家中を隅から隅まで綺麗にし、エルの世話をしつつ合間に文字の勉強、ソラはエルを背負いながらの腕立て伏せ、シグレは素振り100本と日課の鍛練。それが終われば皿洗いと、あらゆる家事を(こな)してできうる限りのことは全部やった。

 

「やることなくなってしまいました・・・」

 

 家の中は埃一つ無くピカピカ。洗い物も片付け、勉強も鍛練も一通りやってしまって時間を持て余してしまった。

 

「今思ったのでござるが、こうしてソラ殿と二人きりというのは初めてでござるな」

 

「言われてみればそうですね。シグレさんと二人きり・・・・・・」

 

 そう言われてソラはハッとする。この場には自分とシグレの二人だけ(厳密にはエルとヨヨもいて、それと━━)。

 

(どうしましょう! シグレさんと二人だけだと思うと急に緊張してきました!)

 

 だいぶ前からシグレを妙に意識するようになったソラは突然訪れた状況に動揺。頬が赤く染まり、火照っていく。

 

(何か、何かお話を・・・・・・)

 

 この場の空気を和ませようとソラは無理矢理話題を放り込んだ。

 

「・・・きょ、今日は良い天気ですね」

 

「うむ、さようでござるな」

 

「・・・明日も、良い天気でしょうかね?」

 

「どうでござろう。天気予報なるものを見た方が早いのでは?」

 

「ですよね。アハハハ・・・・・・」

 

 ━━雑談終了。

 

(ダメです! 全然会話が続きません!)

 

 シグレが隣にいると思うと頭の中が真っ白になり、どう場を繋げれば良いのか混乱する。挙動不審なソラに抱えられているエルも怪訝な表情をする。

 

「ヨヨ殿に手伝えることがあるか聞いてみるでござるか?」

 

「そ、そうですね。ナイスアイデアです・・・」

 

 ソラは焦りを取り繕うようにシグレに賛同。早速二人はヨヨの部屋を尋ねた。

 

「ヨヨさん、何かお手伝いできることありますか?」

 

「えぇ、丁度良かったわ」

 

 伺ったのは正解のようだ。ヨヨに頼まれ、ソラは数種類の木の実を乳鉢で磨り潰す作業を手伝う。

 

「結構力いりますね、これ!」

 

 見た目よりも木の実は硬く思いの外重労働で、ソラは乳棒に力を込める。

 

「ソラ殿、拙者が代わるでござる」

 

 交代しようとシグレの手が乳棒を握るソラの手に触れる。

 

「あっ・・・」

 

 ソラは咄嗟に手を引き、再び頬を赤らめてシグレが触れた手の甲を擦りながらモジモジする。

 そんなソラの様子を知らず、シグレは力を入れて木の実を磨り潰す。

 

「確かに、力のいる作業でござるな。ヨヨ殿はこれを一人でやっていたのでござるか?」

 

「えぇ。トンネルの完成まではたくさんの手順が必要だから、とても助かるわ」

 

 ヨヨの話を聞いたソラはチクリと胸を痛めた。ヨヨは一人でトンネルを開けるための方法を模索していたのに、自分は不安と苛立ちからなんて恩知らずなことを言ってしまったのだろう。ソラはヨヨの許へ歩んでいくと頭を下げた。

 

「この間はごめんなさい! わたし、自分のことばかり・・・・・・」

 

 先日の非礼を謝罪するソラ。対してヨヨは気にしてなどいないというふうに微笑んでいた。

 

「それよりどう? こっちの世界には慣れた?」

 

「はい。けどわたしたち、お世話になりっぱなしで、皆さんにも迷惑掛けてばかりです・・・・・・」

 

「ヨヨ殿やましろ殿は別の世界から来た拙者たちを快く受け入れてくれたというのに、大した恩を返せず誠に申し訳ない・・・・・・」

 

「そんなことないわ。ソラさんとシグレさんの一生懸命なところ、とっても良いと思うわよ」

 

 近くで見ていたヨヨは二人の利点を大いに称賛する。

 

「戸惑うことも多いけど、こっちの世界は興味深いことばかり。そうでしょ?」

 

「はい。今日見たましろさんの学校もとっても楽しそうでした!」

 

「あそこでましろ殿は多くのことを学び、たくさんの友を作っておられるのでござろうな」

 

「あなたたちも行きたい?」

 

「えっ、いえ! わたしたちはこの家の中でやることがありますし」

 

「ただでさえ厄介になっている上に、学校にまで通わせてもらうのは些か忍びないでござるよ」

 

「そう?」

 

「「・・・・・・・・・・・・」」

 

 ヨヨに本心を見透かされているようで、二人は胸の奥がギュッと締め付けられるように感じた。

 彼女たちの顔色を見たヨヨは一枚のメモを渡す。

 

「ちょっとまた買い物を頼める?」

 

 二人に考える時間を与えるための便宜(べんぎ)を図ってくれたのだろう。ソラとシグレは承諾してお使いへと赴く。

 二人が家を出てすぐ、ヨヨはどこかへ電話を掛けるのだった。

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