ひろプリ SAMURAI GIRL HEROISM 作:MOZO
とある朝。ソラは自室で姿見を見ていた。今日からましろと同じソラシド学園に初登校。青に統一された制服を着て何度もポーズを取って有頂天になっていた。
「似合ってるよ!」
夢中になっていたところを部屋に入ってきたましろに目撃され、ソラは少し恥ずかしそうにしながらましろに尋ねた。
「そうですか?」
「うん。ソラちゃんと学校行くの、すっごく楽しみ!」
「わたしもです!」
浮き足立って仕方がないというようにソラは笑顔を見せる。
そこへ、同じく制服に着替えたシグレが顔を出した。
「シグレちゃん、制服ちゃんと着れた?」
「うむ・・・はい、一人で着られたでござ・・・いますわ!」
「えっと・・・、うん?」
何やら今朝のシグレの様子がおかしい。笑顔が引き吊っていてましろは違和感を覚える。
「さぁ、早くしないと遅刻するでござ・・・いますことよ!」
そう言って急々と降りて行ってしまうシグレ。彼女が気になるソラとましろはだが、とりあえず今は追及しないでおくことにした。
三人が玄関で出発の準備をしていると、エルがハイハイをして後を追ってきた。
「えるぅ~・・・」
見上げるその瞳で「置いて行かないで」と寂しさを訴え掛けてくる。エルの気持ちを察した三人はいたたまれなくなる。
「エルちゃん、私と遊びましょうか。楽しいお話ならた~くさん知ってるわよ」
ヨヨがミラーパッドの鏡面に触れると、絵本のイラストが浮かび上がる。それを見たエルは上機嫌になってヨヨの許へ這っていった。
「ヨヨさんには何から何までお世話になってしまって。もし学校でスカイランドから来たことがバレたら大騒ぎになってしまいますし・・・」
「拙者・・・わたしたち迷惑を掛けっぱなしで。どれほど感謝してもしきれないでござ・・・いますわ」
「案ずるより産むが易し。まずはやってみないと」
「わたしも二人をフォローするから」
「ヨヨさん、ましろさん・・・」
「お二人共かたじけな・・・でなくて、ありがとうでござ・・・います!」
ソラとシグレの不安に凝り固まった心が二人の優しさを含んだ言葉にほぐされていった。
「行ってらっしゃい。学校楽しんできてね」
「「「行ってきます!」」」
ヨヨとエルに見送られ、ソラ、シグレ、ましろは学園へ向かって元気良く歩み出した。
* * *
私立ソラシド学園に到着したソラとシグレは、奇しくもましろと同じ2年2組となり、教卓の前で担任から紹介される。
「ソラ・ハレワタールさんとシグレ・アマヤドゥーリさんは海外からの転校生だ。外国生活が長いので不慣れなこともあるだろうが、そこはみんなでサポートしてほしい」
「ソラ・ハレワタールです。ましろさんの家でお世話になってます。よろしくお願いします!」
「シグレ・アマヤドゥーリと申す・・・申します。ソラど・・・さんと一緒にましろど・・・さんの家に住まわせてもらっているでござ・・・います。どうぞ、よろしく願い・・・お願い申したてまつ・・・ます!」
緊張のあまりたどたどしい自己紹介をする二人にクラス中から快い拍手が送られた。
その後、ソラはましろの右の席に、シグレはましろの前の席に座ることとなった。
「変なこと言ってませんでしたか?」
「おかしな奴だと思われでもしたら・・・・・・」
「きっとみんなともすぐ友達になれるよ」
上手く自己紹介ができたか自信の無い二人をましろは励ました。
と、早速ましろのクラスメイトがソラとシグレに質問をし出す。
「ましろんと一緒に住んでるんだ」
「いいなぁ。楽しそう!」
「はい、すごく楽しいです!」
「ここに来て、右も左もわからない拙者・・・わたしたちに親切にしてくれてて」
初対面でありながらそこはこの二人、持ち前の明るいさで思いの外受け答えすることができ、ましろも安堵した。その矢先、
「何て国から来たの?」
「「スカイランドです(でござる)!」」
(━━うん!?)
油断したのか、ソラとシグレは無意識にスカイランドの名を発してしまい、ましろは表情を凍らせた。
「それってどこ?」
「別の世界です!」
このままペラペラと口を滑らせてしまうと二人が異世界人であることが明るみになってしまう。
「ソ、ソラちゃん・・・」
「ま、間違えました。今のは忘れてください!」
ましろに耳打ちされ、ソラは口を滑らせるところだったことに気付く。一方のシグレは、自分の口を両手で押さえ青ざめた顔になっていた。
「わたし、ついうっかりスカイランドのことを・・・」
「ごめん、すごくサラッと言っちゃってたからフォローできなかった・・・」
ソラはすぐさま発言の訂正をしようと言い繕う。
「あの、わたしたちが住んでいたのはスカイランドではなく・・・」
「確か、虹ヶ丘さんのお祖母さんの話では、スカンジナビア半島の国だと」
ヨヨは学園側に仮の出身地を伝えていたらしい。帰ったらヨヨに大いに感謝を述べなければとソラとシグレは思った。
「そ、そうなんです!」
「ヨヨど・・・さんの言う通りその、すかいらんじなびあの方の国でござ・・・いますことですの!」
「発音が本場っぽい! 他の言葉も言って!」
止めどなく質問攻めをしてくるクラスメイトたちに、さすがのソラとシグレもタジタジになる。
(みんな、もうそれ以上は・・・!)
「ほらほら、一気に質問しすぎだ。ハレワタールさんとアマヤドゥーリさんが困ってるぞ」
ましろの願いが通じたのか、担任から助け船が出された。
「あ、はい。あまり質問されるとスカイ━━じゃなくて、困ってしまいます!」
ソラもそれに乗じて苦笑いをしながらどうにか誤魔化すのだった。
朝のホームルームが終わり、窓際で既にぐったりしているソラとシグレにましろが付き添う。
「はぁ~、疲れる・・・・・・」
「二人共、大丈夫? まだ一時限目前だけど・・・」
こんな調子で一日乗りきれるのかましろは心配になってきてしまう。
「ましろさん、わたしはとんでもないことに気付いてしまいました」
唐突にソラは神妙な面持ちでましろに語り掛ける。
「どうやらわたしは、何でも正直に話してしまうところがあるようです」
実例として、あげはと出会った際もスカイランドのことを隠そうともせず口走ってしまっていた。ソラの性格上、秘密が露見されるのも時間の問題だろう。
「ところで、シグレちゃんは朝から何だか変だよ?」
登校する前からシグレの異変をましろは指摘する。
「実は、先日・・・・・・」
それは、この間の出来事。
シグレがヨヨの手伝いで一人で買い出しに行った時のことだった。
「いらっしゃいませ」
「勘定をお頼み申すでござる!」
シグレはいつもの侍言葉でレジの店員に商品の会計を頼んだ。
「合計で730円になります」
「では、これをお納めくだされ」
丁重に1000円札を店員に渡し、おつりを受け取った。
「ありがとうございました。またのお越しをお待ちしています」
「うむ。また
シグレが謝意を込めて挨拶をして店を出ようとした直前、後方で「フフフッ」と店員の堪え笑いが聞こえ、途端に羞恥で赤面してしまったという経験をしたそうだ。
「拙者は知ったのでござる。実はこの世界で拙者のような喋り方をしている者は誰一人いないと!」
通りで今日はシグレの「ござる」を聞いておらず、違和感を覚えていたのだ。「今になって分かったんだ」とましろは胸の内でツッコミを入れた。
「わたしたちが早くクラスに馴染むには、これ以上質問されないよう目立たない方が良さそうです!」
ソラの無茶苦茶な提案にシグレも同調する。
「ならば、拙者も墓穴を掘らぬよう喋らない方が良いでござるな!」
「お互いにこの難局を乗り越えましょう!」
「うむっ!」
ソラとシグレはがっしり手を組んで決意をし合う。ましろはそんな二人を心配そうに見ているしかできなかった。