ひろプリ SAMURAI GIRL HEROISM   作:MOZO

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其の十四

 昼休みの教室。生徒たちが昼食を楽しんでいる最中、ソラとシグレは黒板の前に立った。

 

「皆さん、お食事中すみません!」

 

 ソラの声に教室内の全員が前方に注目する。

 

「転校の挨拶をもう一度やらせてください!」

 

 そう言って、ソラとシグレは黒板に自分たちの名前を書いた。ソラの苗字である「ハレワタール」の「ル」の字が逆転しているのと、シグレの「アマヤドゥーリ」の「ア」と「マ」の位置が入れ替わっているのはご愛嬌ということで。

 

「ソラ・ハレワタールです! ましろさんの家でお世話になっています!」

 

「拙者はシグレ・アマヤドゥーリ。ソラ殿と同じく、ましろ殿の家に厄介になっているでござる!」

 

 朝と言い回しが同じのようではあるが、全員そのまま耳を傾ける。

 

「拙者たちは、本当の拙者たちを皆に知られてしまったら奇妙に思われてしまうやもと思い、黙っていたのでござる・・・・・・」

 

「わたしたちは早くこの学校に馴染みたくて、皆さんと仲良くなれるのならそれでもいいと・・・」

 

 ソラとシグレは窓側に立つましろにアイコンタクトをして頷いた。

 

「でも、気付いたんです。やっぱりちゃんと自分のことを知ってもらわなきゃダメだって」

 

 ソラは深く息を吸い込み、声を張り上げた。

 

「わたしは、ヒーローを目指しています! だから、体を鍛えていて運動には自信があります!」

 

 目立たぬようにと自分の得意分野をセーブしていたが、ここぞとばかりに(さら)け出した。

 

「拙者は幼少の頃からサムライに憧れていて、故にこのような喋り方になってしまったのでござる」

 

 シグレも侍言葉を誤魔化さず、胸を張って述べていく。

 

「わたしたちはここに来たばかりで、慣れないことが多くて。でも、ましろさんと友達になって、新しいことをたくさん知って、この学校に通うのもすごく楽しみで」

 

「不出来なことは多々あると思われるが、こんな拙者たちで良ければ皆と仲良くしたいでござる。ソラ殿共々、よろしくお願い致す!」

 

 ソラとシグレは今度こそ自分たちらしい自己紹介をし、頭を深々と下げた。

 やっぱり変に思われているかもしれない。不安と緊張で心臓が高鳴る二人だったが、教室の彼方此方(あちらこちら)から拍手が沸き起こる。

 

「話してくれてありがとう!」

 

「遠くの国からようこそ、ヒーローガールにサムライガール!」

 

「わたしたちはとっくに友達だよ!」

 

 生徒全員から二人へ歓迎の言葉が次々に贈られる。心配も吹き飛んだ二人はましろと微笑み合った。

 と、一人の男子が急いで駆け込んで来た。

 

「みんな大変だ! なんかもう一人転校生っぽいのがいるぞ!」

 

なんでも、その転校生らしき不審者は頭にモヒカンを生やし、購買のパンを買い占めたり、学食のカレーを飲み干したりと傍若無人な振る舞いをしているらしい。

 生徒たちが騒然とする中、モヒカン頭(・・・・・)という特徴に心当たりがあるソラ、シグレ、ましろは視線を合わせる。

 

「シグレさん、ましろさん、もしかして」

 

「嫌な予感がするでござる」

 

「うん。行こう!」

 

 三人は教室を飛び出し、不審者を捜索しに出たのだった。

 

 * * *

 

 学園で騒ぎを起こしていた犯人、カバトンは桜の木の根元に腰掛けメロンパンを頬張って恍惚な表情を浮かべていた。

 そこへ、ソラ、シグレ、ましろが駆けつける。

 

「やっぱり、あなただったのね!」

 

「カバトン、どうしてここに?」

 

「何度悪事を働けば気が済むのでござるか!」

 

 三人が姿を見るなり、カバトンは不敵に笑うのだった。

 

「今日のオレは付いてるのねん! 腹を空かせて空を眺めていたその時、目が覚めるような・・・いや、永遠の眠りに就くような衝撃が全身に走った。その衝撃に導かれて来てみれば、ここは美味しいものが盛り沢山。しかも、お前らも発見した。どうだ、さすがオレなのねん!」

 

 体育の時間にソラが場外へ投げたボールがたまたま当たっただけだというのに、カバトンは誇らしげであった。

 

「戯けたことを。偶然が重なっただけでござろう!」

 

「じゃかましい! 飛んで火に入る夏の虫とはお前らのこと。お前らを倒したあと、ゆっくりプリンセス・エルを捜してやるのねん!」

 

 最後のメロンパンを一口で食べたカバトンは学ランを脱ぎ捨て、右手を地面に(かざ)した。

 

「カモン! アンダーグエナジー!」

 

 黒いオーラが桜の木と一体のクロボーズを包み込む。

 

「ランボーグ!」

 

「クロボーグ!」

 

 桜はランボーグとなって禍々しい姿に。クロボーグは学ランに黒いマスク、モヒカンの代わりにリーゼントを生やした昭和の不良バージョンとなってバットを握る。

 突如現れた二体の怪物に校内はパニックに陥った。

 

「よりによって、あの桜を!」

 

「ましろ殿の大切な思い出が詰まっているというのに。許さぬでござる!」

 

 カバトンの卑劣極まりない悪行に怒りを燃やし、三人はミラージュペンをスカイミラージュに変形。スカイストーンを装填する。

 

「「「ひろがるチェンジ!」」」

 

 ソラの髪は水色のツインテールに変わり、青いコスチュームへ変身。

 

「無限にひろがる青い空! キュアスカイ!」

 

 シグレの髪は白銀に変わり、銀色のコスチュームへ変身。

 

「幾重にひろがる雨の波紋! キュアレイニー!」

 

 ましろの髪はピンクに変わり、白いコスチュームへ変身。

 

「ふわりひろがる優しい光! キュアプリズム!」

 

 そして、三人は揃って名乗りを上げた。

 

「「「ひろがるスカイ!プリキュア!」」」」

 

 変身を完了させたプリキュアは、ランボーグにクロボーグ、学ラン姿のクロボーズたちと交戦を開始。

 スカイの近接攻撃にプリズムの光弾で桜ランボーグを圧倒、優勢に持ち込む。

 レイニーはクロボーズを蹴散らし、クロボーグが振るうバットも往なすとそのバットを光の刀で輪切りにして丸太にする。

 

「むむむ・・・。これならどうだ、ランボーグ! クロボーグ!」

 

 劣勢と見たカバトンの指示で桜ランボーグは根元をバットの柄に変え、クロボーグが掴んで合体ボーグとなる。

 クロボーグがランボーグを振り抜くと、桜吹雪が発生。猛烈な風圧にスカイ、レイニー、プリズムは吹き飛ばされて校舎の壁に激突する。

 

「今日こそ覚悟しやがれ、プリキュアさんよ~!」

 

 逆転した戦況に高笑いのカバトン。だが、プリキュアは屈することなく立ち上がった。

 

「勝負はここからです!」

 

 スカイとプリズムは跳躍すると、校舎の壁を伝って走りながら合体ボーグを撹乱(かくらん)。クロボーグがランボーグを振り桜吹雪を起こすもまったく当たらない。

 そこへレイニーが突進していく。合体ボーグは桜吹雪を放つが、レイニーのその瞬間を待っていた。

 

「スカイランド剣術、四の型━━」

 

 レイニーは光の刀を左側に構えて体を捻り、右側へ高速回転。発生した竜巻が桜吹雪と混ざり合い、薄紅色の竜巻に変化した。

 

「刃利剣乱舞・改。桜花ノ舞!」

 

 桜の竜巻に合体ボールとカバトンは巻き込まれ、渦の中を洗濯物のように大回転させられる。

 

「め・・・目が回る~」

 

 竜巻が消えるとカバトンは地面に落ち、その上から合体ボーグがのし掛かった。

 

「重ーっ! 何ト~ン!?」

 

「決めますよ、レイニー!」

 

「承知!」

 

 敵が身動きを取れなくなったところでスカイとレイニーがスカイミラージュにスカイストーンWレイニングを装填する。

 

「スカイブルー!」

 

「レイニーシルバー!」

 

 スカイとレイニーは互いの手を繋ぎ、スカイミラージュを高々と頭上へ挙げると巨大なバーサライタが出現。中から大剣を降臨させる。

 

「「プリキュア・シャワー・ドロップストライク!」」

 

 二人がスカイミラージュを振り下ろすと、大剣が合体ボーグを一刀両断にした。

 

「「スミキッタァ~」」

 

 ランボーグは浄化され桜に戻り、クロボーグは消滅していった。

 

「カバトントン!」

 

 どさくさで難を逃れたカバトンは黒い煙と共に退散するのであった。

 

 * * *

 

 激動の一日が過ぎ、すっかり下校の時刻になってしまった。

 

「転校初日。色々あり過ぎてあっという間に終わってしまいました!」

 

「カバトンも現れて、バタバタしたでござるからな」

 

「終わり良ければ全て良しだよ」

 

 ましろの言う通り、クラスとも打ち解けることができたし、カバトンから学園を守った。慌ただしくも充実した日だったとソラとシグレはそう感じていた。

 

「いたいた。ヒーローガール! サムライガール!」

 

「ソラちゃん、シグレちゃん、ましろん!」

 

「一緒に帰ろう!」

 

 つむぎ、るい、あさひの呼ぶ声がして、三人は駆け寄っていく。

 

「待ってくれ~、シグレの姉貴~!」

 

 ふと、シグレの名を呼ばれて振り返ると先刻返り討ちにした意地悪トリオがシグレを姉貴呼ばわりして走って来るなり、三人は彼女の前で土下座をした。

 

「俺たち、アンタにコテンパンにされて目が覚めた。これからは心を入れ換えて真っ当に生きようって。だから、俺たちを姉貴の子分にしてほしい!」

 

「い・・・いや、拙者に子分などは」

 

 いきなり子分を志願されてもシグレは困惑するばかりだ。

 

「用があれば何だって言ってくれ!」

 

「肩をお揉みしましょうか?」

 

「カバン、お持ちしますよ?」

 

「ダメです! シグレさんの肩を揉むのも、カバンを持つのもわたしがやります!」

 

「何故ソラ殿まで!?」

 

 こうして終始、今日が賑やかに幕を閉じるのであった。

 

 * * *

 

 夕陽に染まるビル群。その内の一棟の屋上にクワガオーガが一人佇んでいた。

 

「もはや、悠長に事を長引かせる訳にはいかない・・・」

 

 未だエル強奪の任務は果たせず、これ以上の失態の上塗りは避けるなければ。クワガオーガは自身の影からクロボーズを一体召喚する。

 

「『ジャドーアローズ』を召集しろ。『シンエン組』の総力を結集し、何としてでもプリンセスを手中に収めるのだ!」

 

 クワガオーガに命じられ、クロボーズは影の中へと潜っていった。

 夕焼け空はやけに紅く、血に(まみ)れたかのようにおどろおどろしさを増していた。




原作7話部分終了です。
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