ひろプリ SAMURAI GIRL HEROISM 作:MOZO
とある廃工場。カバトンが風呂敷を広げ、山積みの食料をガツガツ貪っていた。
「プリキュアめ・・・うめ。次こそは必ず・・・うめ。ギッタギタにして・・・うめ。オレ様の前で跪かせてやるのねん・・・うめぇ!」
次々に食べ物を口へ放り込みながら意気込むカバトン。
フライドチキンに手を伸ばそうとした刹那、何者かが一瞬にしてチキンをかっさらい、その近くで着流しを着て二本の刀を携えた人影があった。
「何するのねん! それはオレのチキンなのねん!」
「ヒック、悪いな~。つまみが欲しくなっちまってよ~」
チキンにかじり付き、腰にぶら下げたひょうたんに入った酒を煽るその者は、後頭部の毛を束ね、切れ長の目、左耳に切れ込みのある白猫の男であった。
「お・・・、お前は!?」
男の顔を見るなり、カバトンは狼狽えて後退りをする。その時、背中に何かがぶつかって振り返るとほつれた黒い胴着を着るゴリラ顔の巨漢がそびえ立っていた。
「わいは相変わらず食い意地だけは一人前でごわすな」
大男を見上げるカバトンは顔を更に引き釣らせた。
「それだけブクブク太ってたら、ろくに仕事もできやしないんじゃない?」
今度は頭上からいけ好かない女の声がすると、髪も忍装束も黄色と黒の縞模様になっているくノ一が二階の手摺に腰掛けていた。
「お前ら、どうしてここに!?」
カバトンが取り乱していると、鉄製の階段を踏み鳴らす音が響いた。
「全員、揃ったようだな」
クワガオーガが階段を降りてくると、三人は駆け足で彼の前に並ぶと膝を付いて
「『ジャドーアローズ』壱ノ矢、ニャシュラン。
「『ジャドーアローズ』弐ノ矢、ゴリドン。御前に」
「『ジャドーアローズ』参ノ矢、バチブンナ。御前に」
「シンエン組」が有する最高戦力の三人が揃い踏みするのだった。
「貴様たちを呼び立てたのは他でもない。あの御方より命ぜられたスカイランドのプリンセス強奪の任に貴様たちの力を借りねばならなくなった」
「おいおい、冗談が過ぎるぜ旦那。高々赤ん坊を拐うのにあっしらの手が必要なのかい?」
ニャシュランの皮肉にクワガオーガは顔色一つ変えない。仮面を被っているのだから当然だが。
「プリキュアなる厄介者共が我々の邪魔立てをしていてな、これまで幾度もなく阻まれてきたのだ」
「シシシ。旦那も手を焼く相手っつーことは、かなりの手練れって訳だ」
話を聞いたニャシュランは牙を剥き出しにして嬉々とした表情を浮かべる。
「ならば、そのプリ
「いえ、その者たちの排除はクワガオーガ様を一に敬愛するこのあちき、バチブンナめにお任せくださりませ」
「影でコソコソと這いずり回るしか能のない陰湿な者に務まるでごわすか?」
「あぁん? 考え無しの脳筋だるまに言われたくはないわ!」
ゴリドンとバチブンナがいがみ合っていると、ニャシュランがユラリと立ち上がった。
「まあまあ、ここは順当に壱ノ矢のあっしが行くのが妥当なんじゃねぇの?」
「抜け駆けするつもりでごわすか?」
「こういう時は一番手が先んじるって相場が決まってるさね」
恨めしそうに睨む二人にニャシュランは得意そうにニヤける。
「良いだろう。任せたぞ、ニャシュラン」
「そうと決まりゃあ、ちょっくら味見してくるわ。ジュルリ・・・」
クワガオーガに見込まれ、ニャシュランは高まる気持ちから舌舐めずりをした。
「・・・・・・で、オレは
* * *
一方、虹ヶ丘家のソラの自室。ソラはエルのミルクを作るため部屋にはおらず、エルが一人だけ残っていた。
エルはベッドの上のおもちゃを取ろうと掴まり立ちを試みる。小さな足で懸命に踏ん張ろうとする。が、バランスを崩して後ろへ倒れそうになった。その時、誰かの手がエルの背中を優しく受け止める。
「大丈夫?」
オレンジ色の髪の見知らぬ少年が現れ、エルの無事を確かめる。一体どこから入ってきたのか。この少年は━━。
「エルちゃん、お待たせし・・・」
ソラが出来上がったミルクを持って戻ってきたが、あの少年の姿はもうどこにもなかった。
しかし、ソラは室内に残る気配を感じ取る。窓に目をやるとオレンジ色の鳥が一羽留まっていた。
「鳥さん、誰か見かけませんでしたか?」
鳥に向かってソラが尋ねるも、返事が返ってくることはなかった。
夕食時。ソラは昼間の出来事をシグレとましろに話した。
「ということがあって、部屋に人の気配が・・・」
「えっ、誰なの?」
「そこまでは」
あれから、部屋中を捜してもエル以外には誰も見当たらなかった。だが確かに、誰かがいたように思えてならないのだ。
と、シグレが深刻そうな面持ちで口を開いた。
「実は拙者も、この家に来てから何者かに見られているような視線を感じていたのでござるよ」
シグレもまた、ましろやヨヨとは違う何者かの存在を感知していた。
「もしや、この家には・・・・・・」
「もしかして、オバ・・・オバ・・・!?」
身の毛がよだつ想像をしたソラは顔が青ざめ体が小刻みに震えだす。
「ニンジャが潜んでいるのではござらぬか!?」
「「・・・・・・・・へ?」」
予想の斜め上の発言をするシグレにソラとましろはキョトン。
「ニンジャって、あの忍者?」
ましろはニンジャと聞いて、黒い忍装束を纏い、素早く走り、手裏剣を投げ、巻物なんかで忍術を使うオーソドックスなイメージの忍者を想像した。
「ニンジャとは、影に潜み、気配を消し、誰にも悟られることなく秘密を探る者たちのこと。そして、ニンジャはサムライの天敵であると師匠から聞き及んでいるでござる!」
「ニンジャ・・・、油断なりませんね!」
「忍者って侍の天敵だっけ?」
まさか現代に忍者がいるとは思えないが、ソラとシグレの織り成す天然世界にましろは割って入ることはできなかった。
ニャシュラン
イメージ声優:森田成一
「シンエン組」が誇る三人衆『ジャドーアローズ』の一人。
白猫の姿をした浪人風の男。一人称は「あっし」。後頭部の毛を結い、左耳に切れ込みがあり、金色の猫じゃらし柄が入った黒い着流しを着用し、腰には二本の刀「マタ」「タビ」と酒の入ったひょうたんを備えている。常時泥酔しており、戦いを楽しむ戦闘狂。「アンダーグ二刀流」の使い手で、酒気を摂取するほど剣技が増す。
ゴリドン
イメージ声優:楠大典
「シンエン組」が誇る三人衆『ジャドーアローズ』の一人。
ゴリラに姿の似た大男で袖の無い使い古した黒い胴着を着ている。一人称が「おいどん」や語尾に「~ごわす」を付けるなど鹿児島弁のような喋り方をする。組織一の剛力で粗暴な性格。強者こそ正しく、弱者は不要であると考えている。武器を持たない代わりに体を硬質化させ、「アンダーグ空手」を繰り出す。
(とある牛の武人とは旧知の仲)
バチブンナ
イメージ声優:伊藤かな恵
「シンエン組」が誇る三人衆『ジャドーアローズ』の一人。
組織の紅一点。髪と忍装束が黄色と黒の縞模様となっていて蜂を彷彿させるくノ一。一人称は「あちき」。残忍で高慢ではあるがクワガオーガに心酔しており、絶対的な忠誠心と憧憬の念を抱く。数種類の毒を仕込んだ針を用いり「アンダーグ忍法」を得意とする。