ひろプリ SAMURAI GIRL HEROISM   作:MOZO

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ここからアニメ9話部分です。


其の十八

 プリキュアのところへ単身飛んで行ったエルを追い掛けるため、決死の覚悟で飛び立つツバサ。だが悲しいかな、いくら羽をばたつかせてもまったく上昇する兆しが見受けられない。

 頑張りも虚しく、ツバサの体は引力に従って落ちていった。

 

「うわぁ~!」

 

 ツバサは為す術無く急降下していくも、途中で木の枝にぶつかったことで落下速度が弱まったり、自身の柔らかな羽毛で地面との激突を緩和したりと偶然が重なったお陰で大事には至らなかった。

 大怪我は免れたものの、ツバサは己の非力さを嘆いた。

 

「やっぱり、ダメなのかな。プニバード族のボクが空を飛ぶなんて・・・・・・」

 

 上空を二羽の鳥が自由に飛んでいるのに、同じ鳥であるはずの自分は地上で惨めに見上げているばかり。バカにして笑っていた仲間の言う通り分不相応な夢だったのだろうか。

 気持ちが折れ掛けていたツバサだったが、今は自分のことよりもエルの身が第一なことを思い出した。

 

「メソメソしてる場合じゃない! エルちゃんを連れ戻さないと!」

 

 ツバサは下向きだった心を奮い立たせ、エルの追駆に再び発起する。

 が、ツバサの目前には長い下り坂が延々と続いていた。

 

「とは言っても、歩いて行ったら連れ戻すどころか街にも着かないぞ・・・」

 

 鳥の姿の歩幅では絶対に間に合わない。困りあぐねるツバサは考えを巡らせ、ある一つの策を閃く。

 ツバサは自身の体型の特徴を活かし、ボールのように坂道を転がり下っていく。エルの無事を祈りながら。

 

 * * *

 

 レイニーはニャシュランとの戦いに手こずっていた。

 こちらがいくら仕掛けてもヨタヨタの千鳥足で躱されてしまい攻撃が定まらない。

 

「酔い()れ・狂い酒!」

 

 ニャシュランが乱雑な斬撃を繰り出し襲い来る。レイニーは必死で捌き切っていくが、ただでさえ二刀流の相手は難儀するというのに、その太刀筋には規則性が無く、一斬一斬がどこから来るのか読みにくいので非常に厄介。弄ばれているかのような感覚にレイニーは困惑する。

 

「・・・・・・くっ、これほどやりにくい相手は初めてでござる。どうしてこんなに?」

 

「ヒクッ。あっしはねぇ、酒を呑みまくって酔えば酔うほど剣技の鋭さが増していくんだよぉ~」

 

 隠し立てもせずニャシュランはひょうたんに入った酒をまた煽る。

 自ら手の内を明かすとは相当な間抜けか、自信の表れか。ともあれ、カラクリが分かりさえすれば策を打ちようがある。

 

「ならば、元を断つまで!」

 

 レイニーはひょうたんに狙い澄ませ瞬く間に疾駆し、横薙ぎに斬り込んだ。

 

「って、そう来るだろうなぁ」

 

 ニャシュランが余裕の笑みを溢すと同時に刃がひょうたんの皮に接触した。

 

 ━━ガキーン!

 

「なっ!?」

 

 鉄鋼にでもぶつかったのような甲高い音を響かせ、刀は無情にも弾かれる。対してひょうたんの表皮はまったくの無傷だった。

 

「このひょうたんは特別(あつら)えでな、ちょっとやそっとじゃ割れねぇんだよっ!」

 

 ニャシュランはひょうたんを振り上げるや、レイニーの頭部に一撃を食らわせる。

 強打されたことでレイニーは脳震(とう)を起こし、体制を立て直すのがままならなくなってしまう。朦朧(もうろう)としている彼女にニャシュランが畳み掛ける。

 

「掻っ斬り!」

 

 ばつ印に引かれる剣光が迫る中、辛うじて意識を保っていたレイニーは力を振り絞り刃を交え防いだ。だが、凄まじい反動に吹き飛ばされ、建物の壁に背中から激突してしまう。

 

「がはっ!」

 

 全身を駆け巡る衝撃と激痛にとうとうレイニーの意識が途切れ、地面へと伏せてしまった。

 

「んだよ、もう潰れちまったのか。あっ、プリンセスの居所を聞くの忘れてたな・・・。まぁ~いいか」

 

 ニャシュランは二本の刀を鞘に収め、倒れるレイニーには目もくれずどこぞへフラフラと歩き去っていった。

 

 * * *

 

 スカイとプリズムもまた、カバトンが搭乗するUFOランボルギーグと攻防を繰り広げていた。光線を掻い潜りながら二人はビルの壁を駆け上がっていく。

 

「「ジャンプ!」」

 

 二人はビルの屋上の手すりを踏み台に浮遊するUFOランボーグに向かって力の限り跳躍した。

 

「へなちょこジャンプで届くもんか!」

 

 いくらプリキュアの力で身体能力が上昇したとは言え、上空のランボーグとの高度が足りない。

 二人の強みは連携して補い合うところ。プリズムがスカイの下に回り込むと、彼女の足裏を思い切り蹴り上げ飛距離を伸ばす。あと少しでスカイの手が届く。

 というところで、ランボーグは後退。あっさり避けられてしまう。

 

「ズルくない、それ!?」

 

 プリズムが思わずツッコむが、相手も飛んでいるのだから一定の場所に漂っている訳がない。

 スカイは空中で留まろうとジタバタ足掻くも体力を消耗するだけだ。

 

「もう限界です~!」

 

 健闘虚しく、スカイは真下へ落下していく。そこへ容赦無くランボーグの光線に狙われ、スカイはギリギリのところで躱していく。

 

「スカイ、使って!」

 

 プリズムが光弾を数発撃ち出すとスカイはそれらを足場に活用。どうにか無事に着地することができた。

 安心したと思わぬ内にランボーグは光を収束させ、エネルギーを充填していく。

 

「なんかヤバそうな予感がしてるの、わたしだけかな?」

 

「いいえ、ヤバヤバです!」

 

 かなりマズい状況であることは一目瞭然。スカイとプリズムは戦略的撤退のため駆け出した。

 直後、ランボーグが最大出力の光線を発射。爆風に巻き込まれ、二人は吹き飛ばされてしまった。

 

「オ・レTUEEE! と言いたいところだが、プリキュアもまあまあTUEEEし、ここで油断するから負けるのねん」

 

 今回のカバトンはこれまでの経験から大分慎重な様子。レーダーで辺りを捜索すると二つの反応を捉え、モニターに気絶しているスカイとプリズムが映し出される。

 

「見っけ」

 

 確実にトドメを刺そうとしたカバトンだったが、レーダーに別の反応が。スリングに乗って飛ぶエルがモニターに映る。

 

「まっ、こっちだな」

 

 プリキュアを痛めつけるよりも本来の目的であるエルの捕獲を優先する。

 すると、またレーダーに反応。モニターに映されたのは、オレンジ色の羽毛を生やした一羽のプニバード族であった。

 

「カバトン、エルちゃんに手を出すな。ボクが相手だ!」

 

 ツバサは声を張り上げ、勇猛果敢にカバトンと対峙する。

 

(・・・・・・って、どうやって相手するつもりなんだろうボク!?)

 

 威勢は良かったが、その後の策がまったくのノープランであった。

 固まるツバサにランボーグから光線が放たれる。

 

「邪魔すんな、脇役!」

 

 反撃する術も無く逃げ惑うツバサ。そこへエルがツバサと並走する形で飛来してきた。

 

「えるえる!」

 

「エルちゃん! 離れて、危ないよ!」

 

 巻き添えになってしまうとツバサが避難を促すが、エルは離れることなく「乗って!」と訴えているかのようだった。

 エルの意思を察したツバサはスリングに乗り込んだ。

 

「ありがとう、エルちゃ・・・うん?」

 

 ツバサが乗った途端、スリングの飛行速度が落ちる。元々一人用に作られているのだから、重量過多になってしまうのは当然なのだ。

 と、スリングの後部を何者かに掴まれ完全に止まった。

 

「コイツが例のプリンセスか。こりゃあ『鴨が葱を背負ってやって来る』ってよりかは、『赤ん坊が鳥を乗せて飛んで来る』だな」

 

 ニャシュランがしたり顔でエルたちを捕らえるのだった。

 

「その手を離せ!」

 

 ツバサが飛び掛かるも、ニャシュランに呆気なく摘まみ上げられる。

 

「丁度(さかな)が欲しかったところだ。おまけのおめぇさんは、焼き鳥にでもしてやるか。ブハァ~」

 

「うぅ、酒臭い・・・・・・」

 

 酒気を含んだ吐息が掛かり、ツバサは堪らず嘔吐(えず)く。

 ニャシュランはUFOランボーグへ手を振って合図を送った。

 

「チッ、ちゃっかり横取りしやがって。掃除機光線発射!」

 

 不平不満を漏らしながらカバトンは渋々ボタンを押す。ランボーグから緑色の光線が放たれ、エルとツバサを抱えたニャシュランを回収する。

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