ひろプリ SAMURAI GIRL HEROISM   作:MOZO

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其の十九

「━━レイニー! レイニー、起きて!」

 

 ニャシュランの猛攻に倒れたレイニーに誰かが声を掛け、体を揺さぶって起こそうとしている。

 ようやく意識を取り戻したレイニーは傍らで心配そうな顔をするあげはを見つける。

 

「・・・・・・あげは殿。どうしてここに?」

 

「ヨヨさんからの連絡で、エルちゃんを捜してたらあなたが倒れてて。何があったの?」

 

 レイニーは痛めた体を無理矢理起こすと、倒れていた経緯をあげはに説明する。

 

「拙者たちがランボーグと戦っていた最中、ニャシュランと名乗る猫の素浪人が現れ、拙者がその者の相手をしたのでござるが・・・・・・」

 

「猫・・・?」

 

 軽率な判断が招いた敗北にレイニーは悔しさを募らせる。

 

迂闊(うかつ)でござった。酒乱であると相手の力量を甘く見て、挙げ句に事を急いだ結果手玉に取られてしまった。奴の弱点も見極められず、何たる不覚!」

 

「猫の弱点・・・。ネズミ、マタタビ・・・は好物だし。大きな音、生のイカ、・・・それと水?」

 

「そんなことより、早くスカイとプリズムに合流せねば!」

 

「だね。そう言えばさっき、あっちのビルの方で爆発があったけど」

 

 痛みが残る体に鞭を打ち、どうにか立ち上がったレイニーはあげはと共に爆発があったビルの方へ向かった。

 二人がビル付近に差し掛かると、ボロボロになって倒れているスカイとプリズムを発見し駆け寄っていく。

 

「しっかりして、ねぇ! スカイ! プリズム!」

 

「二人共、気を確かに!」

 

 あげはとレイニーの呼び掛けにスカイとプリズムは目を覚ました。

 

「・・・・・・あげはちゃん?」

 

「・・・・・・レイニー。わたしたちは一体?」

 

「二人を捜していたらここに倒れていたでござるよ。それはそうと、一大事でござる!」

 

「あなたたちを追ってエルちゃんが家を飛び出しちゃって!」

 

 自分たちが戦っていた間に急を要する事態になっていようとは。あげはの言葉に焦りの色を見せる一同。

 直後、プリズムが声を上げた。

 

「みんな、あれ!」

 

 プリズムが見る方向に目線を向けると、ニャシュランに捕まったエルとツバサがUFOランボーグの中に連れ去られるところだった。

 

「エルちゃん!」

 

「ツバサくんまで、どうして!?」

 

「質問は無し。二人を助けないと!」

 

 緊迫した状況に取り乱すスカイとプリズムをあげはが冷静に諭し、四人はエルたちの救出を決意する。

 

 ビルの屋上に上がった四人は浮遊するUFOランボーグを見据える。

 

「あんまり良い作戦とは言えないけど。頼むよ、スカイ、レイニー、プリズム!」

 

 スカイたちはあげはが立案した作戦を試みる。

 

「行くよ!」

 

「はい!」

 

「承知!」

 

 三人は同時に力強く跳躍。

 レイニーがスカイとプリズムの下に回ると左足でスカイの、右足でプリズムの足裏を蹴り上げた。

 

「頼んだでござる!」

 

 後のことを二人に託しレイニーは落下。屋上のコンクリートに叩きつけられる。

 次にプリズムがスカイの下に回って両足で打ち上げる。

 

「撃って!」

 

 あげはの合図でプリズムは落ちながら光弾を発射して足場を作ると、彼女もコンクリートに全身を強打する。

 

「レイニー、プリズム、無駄にはしません!」

 

 身を犠牲にして繋いでくれた二人の想いを胸にスカイは光弾を踏み込み、先ほどよりも飛距離を格段に伸ばした。

 手が届くまであと僅かだというのに、またも及ばず。スカイもコンクリートに落下し、三人共々自滅に終わってしまう。

 

「中止!」

 

 三人の痛々しい姿を見ていられず、あげはは作戦を断念する。

 

「ごめん。正直、わたしの作戦に無理があった。もっと別の・・・」

 

「大丈夫です!」

 

「何のこれしき!」

 

「もう一回!」

 

 体にまだダメージが残っているはずだろうに、エルとツバサを救うまで三人は決して諦めるつもりはなかった。

 

 * * *

 

 プリキュアたちが懸命に救出作戦を行っていた頃。エルとツバサはUFOランボーグの内部に囚われてしまっていた。

 今にも泣きそうなエルをツバサが慰める。

 

「エルちゃん、大丈夫だよ。きっと助かるからね」

 

「諦めなって。無駄に期待させたところで余計可愛そうにさせるだけだろ?」

 

 励ますツバサを居合わせるニャシュランが酒のあてに冷やかした。

 

「そんなことない! 諦めさえしなければ希望はあるんだ!」

 

「じゃあ聞くが、おめぇさん一人でこの状況をどう覆そうってんだ。えぇ?」

 

 ニャシュランに図星を突かれ、ツバサは返す言葉がなかった。

 元はと言えば、自分が無力なばかりにエルが捕まってしまったのではないのか。

 

(何をやっているんだボクは。助けに来たのに、逆に足を引っ張ってるじゃないか・・・・・・)

 

 相も変わらず役に立てない自分に心底嫌気が差す。

 ドアが開くと、カバトンがバナナを二本持って入ってきた。

 

「どうだい、プリンセスを捕まえたぜ。こんな楽勝な任務にどうして手間取っちゃうのかまったく不思議だねぇ~」

 

「フン、お前みたいな呑んだくれにオレの苦労は理解できないのねん!」

 

 ねちっこく絡んでくるニャシュランをカバトンは不愉快そうにあしらった。そして、ツバサを冷ややかな目線で見下ろした。

 

「お前、スカイランドのプニバード族だろ?」

 

「それが何だ!」

 

「ププッ、聞いたことがあるぞ~。確か空を飛べないダッサダサな鳥」

 

 プニバード族の生態を知っている上でカバトンはツバサを嘲笑った。

 

「エルちゃんは渡さないぞ! どうしても欲しいというなら、このボクを倒してからに━━」

 

 刹那、いきなりニャシュランに蹴飛ばされ、ツバサはボールのように壁のあちこちにぶつかって瞬殺されてしまう。

 

「だから言ってんだろ? 空も飛べねぇ、赤ん坊も守れねぇおめぇさんに何ができるんだってよぉ?」

 

 ツバサが動けない隙にカバトンがエルを抱えると、更に追い討ちを掛ける。

 

「お前さ、何でそんなに頑張っちゃってるの? あれか、プリンセスに恩を売っときゃ王様からご褒美貰えるかも~ってか?」

 

「・・・そんなんじゃない」

 

「ああ? じゃあ何だよ?」

 

 体を奮い起たせ、ツバサは真剣な眼差しでカバトンに訴える。

 

「こんな小さい子が知らない世界に放り出されて、助けてあげたいって思うのは当たり前じゃないか!」

 

 下心など何も無い。ただ、エルを守ってあげたい。両親と離れ離れになって心細いであろう小さな女の子の力になってやりたい。純粋な気持ちをツバサは叫んだ。

 そんな彼を、カバトンは愚弄するようにバナナの皮をツバサの頭上に捨てやった。

 

「分からん」

 

 ツバサの正論を足蹴にし、エルを抱えたカバトンとニャシュランは部屋を出て行こうとする。

 

「エルちゃん!」

 

「お前、なんか嫌い」

 

「待て! ━━うわぁ~!?」

 

 カバトンの捨て台詞を残してドアは閉じきってしまい、直後に足元のハッチが開き、ツバサは空へと投げ出されてしまった。

 

「あ~あぁ、せっかくのつまみがもったいない・・・」

 

「あんな青臭いことを言う鳥の肉なんて筋張ってて旨そうじゃなさそうなのねん」

 

「それもそうだな。こっちの世界の食い物の方が旨いしぃ~」

 

 落ちていったツバサを意に返さず、カバトンとニャシュランは操縦席へ向かう。道中でエルが泣き喚くが気にも留めなかった。

 

「ここは遥か空の上。だ~れも助けには来られないのねん」

 

 エルを手中に収め、カバトンは今度こそ余裕の勝利を確信。残りのバナナも平らげて皮をその場に捨てた。

 

「さーて、行くとするか。我らが暗黒の世界、アンダーグ帝国へ!」

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