ひろプリ SAMURAI GIRL HEROISM   作:MOZO

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其の二十

 UFOランボーグから落ちた━━と思われたツバサだったが、エルのスリングに乗って事なきを得ていた。

 

「詰めの甘い奴らで助かった」

 

 ツバサはランボーグに気付かれないよう静かに追尾する。

 しかし、一人でエルを救い出すのは無謀だと身を以て理解していた。

 

「ボクじゃダメだ。あとはスカイとレイニーとプリズムに・・・・・・」

 

 瞬間、ツバサの脳裏にエルの涙する顔が過る。ここで他力本願なんて情けない真似はできない。ニャシュランの言う通り、自分一人で何ができるかは分からないが、諦めることだけは絶対にしたくない。

 ツバサは覚悟を改め、ランボーグへ接近していく。

 

 * * *

 

「カ~バカバカバ、カバトントン!」

 

 エルをシャボン玉に閉じ込め、カバトンがヘンテコな呪文を唱えると、どんよりとした暗闇が続く異次元の穴が開いた。

 

「お聞きください。プリンセス・エルを遂に捕まえました。これからそちらに連れて行きます」

 

 跪くカバトンは穴の向こうにいるであろう何者かにエル捕獲の一報を送る。

 

「なので、約束通りもっとTUEEEパワーをくださいなのねん! あと、美味しいものも100年分欲しいのねん!」

 

 カバトンはここぞとばかりに報酬を請求する。ご馳走は本来、10年分だったらしいが、そこは頑張りを評価してほしいとのこと。他にもマイホームにふかふかのベッド、たくさんの食料を貯蔵できる冷蔵庫に専属のシェフと、あまりの意地汚さが垣間見えた。

 

「待ったぁ! プリンセスを捕まえたのはこのあっしですぜ。なんで、一生分の酒をたらふく呑ませてくだせぃ!」

 

 ニャシュランが割り込み、彼も欲丸出しの褒美を請求する。

 

「勝手なことを言うな! そもそもこれは、オレがあの御方直々に(たまわ)った任務なのねん。だから手柄は全部オレのものなのねん!」

 

「おめぇさんだけじゃあ、いつまで経ってもプリンセスを献上できなかったんじゃねぇか。あっしのお陰で捕まえたんなら、あっしにも分け前を貰う権利があるってもんだろ?」

 

 二人が褒美の分配で揉め始めた隙に、忍び込んだツバサが息を殺してエルの許へ歩み寄っていく。

 シャボン玉を割り、エルを奪還。そろりそろり脱出しようとした時だ。

 

「おい、気づかねぇとでも思ってんじゃねぇだろうなぁ?」

 

 既にカバトンとニャシュランに勘づかれており、苦境に立たされたツバサは一気に駆け出し、その後ろをカバトンが猛追する。

 

「赤ちゃん泥棒!」

 

「お前には言われたくない!」

 

 丸い通路をひた走るツバサであったが、反対側からひょろ長い影が現れる。

 

「おっと、ここいらが終点だぜぇ」

 

 回り込んでいたニャシュランが行く手を阻み、後方からカバトンが追い付き、ツバサを板挟みにする。

 

「ニッヒッヒッヒッ。観念するのねん━━おわっ!?」

 

 カバトンがツバサを捕らえようと接近した時、落ちていたバナナの皮を踏んで滑り転ぶとそのままニャシュランの方へ滑っていく。

 

「ぶぎゃ!」

 

 衝突し、カバトンの下敷きになったニャシュラン。これはチャンスと二人の身動きが取れない間にツバサたちは再び逃走を図る。

 

「誰だよ、こんなとこにポイ捨てした奴は! ・・・・・・オレか!?」

 

「ボケてねぇで、早く退いてくれ!」

 

 二人がジタバタもがいていた頃、ツバサは侵入してきた窓の隙間から外へ出ていた。

 

「さぁ、エルちゃん。行って!」

 

 エルをスリングに乗せ、ツバサは自分に構わず逃げるよう促す。

 

「急いで、一人で行くんだ!」

 

 しかしエルは、「ツバサを残しては行けない」と言っているかのように離れようとはしなかった。

 グズグズしていたらカバトンたちに追い付かれてしまう。迷ってはいられないと、ツバサもスリングに掴まりランボーグから離脱する。が、案の定重量オーバーで低速でしか飛行できない。

 

「やっぱりスピードが出ない!」

 

 こんな速度では再び捕まってしまい、もう助け出す機会は二度と無いだろう。

 せめて、エルだけでも助かれば━━。

 

「エルちゃん、逃げて・・・」

 

 ツバサはスリングに掴まっていた手を自ら離し、落下していく。

 みるみる小さくなるエルの姿を見送りながら、ツバサは夢をバカにして笑った同族たちの顔や、がむしゃらに飛ぶ練習をしてきた自分を走馬灯に見る。

 

「結局、飛べなかったな・・・・・・」

 

 夢半ばで果ててしまうのは無念ではあるが、最期にエルを救えたのなら悔いは無い。

 儚い運命を受け入れようとしたツバサを突如、体を紫色の光が包み、空中で静止する。

 

「えるぅ~!」

 

 見上げると、エルが両手を広げて自身の念動力でツバサを救おうとしていた。

 だが、その真上をUFOランボーグの影が覆う。

 

「エルちゃん、ボクのことはいいから!」

 

 敵がもうすぐ上空に迫っているにも関わらず、エルは力を止めようとせずツバサを絶対に助ける気でいた。

 が、緑色の光線が放たれエルは吸引されていく。

 

「ブワ~カ、そんな脇役放っといて一人でさっさと逃げときゃ良かったのによ~!」

 

「役立たずの鳥一羽を助けようなんて健気(けなげ)だねぇ。まぁ~ククク・・・、結局それも無駄骨だろうけどなぁ!」

 

 懸命なエルを嘲笑うカバトンとニャシュラン。

 ふと、ツバサの頬に一滴の雫が落ちてきた。エルが大粒の涙を流しながら尚もツバサを救おうとする痛々しい姿であった。

 

「・・・・・・止めろ」

 

 まだ小さくか弱いのに。本当は怖いはずだろうに。こんな自分を助けようと必死で手を伸ばそうとするエル。そんな優しさに溢れた彼女を笑う輩は、決して許さない。

 

「エルちゃんを、笑うなぁぁぁぁ!」

 

 義憤を爆発させるツバサ。刹那、彼の胸にオレンジ色の光が灯る。その光景をスカイたちも目にしていた。

 

「この輝きって!」

 

「プリキュアの輝き!」

 

「ツバサもプリキュアに!?」

 

 茜空に差す夕陽のような力強く眩い光はツバサの覚悟を示す。

 

「もし、ボクに最期が訪れたとして、その時に思い出すのはボクを笑った人たちの顔じゃない。ボクを守ろうとしてくれたあなたの顔です」

 

 光は形を成し、ミラージュペンへと変化する。

 

「でも、それは今じゃない。だってこれからはボクがあなたを守るんだから!」

 

 ツバサはミラージュペンを掴み取る。エルがスカイストーンを生み出せば、彼もプリキュアに。

 

「させねぇ!」

 

 させまいと、カバトンが光線の出力を上げてエルを一気に回収しようとする。

 スカイたちは加勢するべく上空へ跳躍。おそらくチャンスは一度きり。失敗は許されない。

 レイニーがスカイとプリズムの下へ回り、足裏に乗せ膝を限界まで折り畳む。

 

「行けぇぇぇぇぇぇ!」

 

 渾身の脚力でスカイとプリズムを更に上空へ打ち上げた。

 今度はプリズム。スカイを両足の裏に乗せ、力強く押し上げる。直後に光弾を発射して足場を作った。

 

「お願い、スカイ!」

 

 光弾に足を掛けたスカイは目一杯踏ん張り、溜め込んだ脚力を解放。ランボーグ目指し跳躍した。

 

「ハァアアアアアアー!」

 

 突き上げた右の拳がランボーグの直下に命中し食い込んだ。衝撃はカバトンたちのいる操縦席まで伝わり、その影響で光線が止まった。

 

「エルちゃん、今です!」

 

 スカイの合図にエルは叫ぶ。

 

「ぷいきゅあ~!」

 

 エルが打ち出した光はツバサの方へ飛ぶと、オレンジ色のスカイストーンとなる。

 

「プリンセス・エル。あなたのナイトが参ります!」

 

 ツバサはミラージュペンをスカイミラージュに変形させる。

 

「スカイミラージュ! トーンコネクト!」

 

 スカイミラージュへスカイストーンを装填。

 

「ひろがるチェンジ! ウィング!」

 

 バーサライタに『WING』の文字が浮かび、ツバサはステージ状の異空間で変身を開始する。

 

「きらめきホップ! さわやかステップ! はればれジャンプ!」

 

 前髪に隠れていた左目が露となり、後頭部からポニーテールが伸び、頭の左側に小さなシルクハットを被る。

 両耳に丸いピアスが二つ。両手にカバーと手袋を装着。

 オレンジのコスチュームに腰からは燕尾服のように二股に分かれた装飾が施され、両足にブーツを履き、最後はウィンクで決める。

 

「天高くひろがる勇気! キュアウィング!」

 

 夕陽の色を纏い、天空を(かけ)る戦士。キュアウィング爆誕。

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