ひろプリ SAMURAI GIRL HEROISM   作:MOZO

34 / 37
其の二十一

 四人目のプリキュアの誕生に一同は見惚れていた。

 

「キュア・・・ウィング・・・」

 

 自由に空中を舞うウィングは騎士(ナイト)の如く優雅にエルを抱きかかえる。

 

「空を飛ぶプリキュア・・・」

 

 夢が叶った彼の姿を目の当たりにしたスカイは胸中から熱いものが込み上げ、両目が潤んでいた。

 

「ツバサくん、頑張ったね!」

 

 と、食い込んでいた右の拳が抜け、スカイは落下する。そこをウィングが見事に掴まえる。

 

「離さないで!」

 

 スカイとエルを連れ、ウィングはレイニーとプリズム、そしてあげはの許へ降り立つ。

 

「ウィング! エルちゃん!」

 

「お主の勇敢な姿。(しか)と見届けたでござる!」

 

「やるじゃん、少年!」

 

 二人が無事なこととウィングの快挙に歓喜が上がる。

 

「飛べた・・・」

 

 当のウィングは自分が飛べた現実に未だ信じられないといったようだった。

 以前、父のカケルに飛び方を聞いた際に『必死だったから』と答えていたことを思い返す。自分もエルを救いたい。その必死な想いが奇跡を起こしたのだ。

 

「こいつはたまげたなぁ。益々おもしれぇ連中だぁ」

 

「全然おもしろくないのねん! 認めねぇ、空が飛べたから何だってんだ! TUEEEのは、このオレだ!」

 

 はしゃぐニャシュランを他所に憤慨するカバトンはランボーグに光を収束させ、再び強化光線を発射しようとする。

 

「またアレがくるよ!」

 

「もう撃たせません。だって、キュアウィングがいるんですから!」

 

 スカイたちはウィング希望を見出だしていた。エルもまた、彼を応援して後押しする。

 

「はい。行ってきます、プリンセス!」

 

 皆からの期待を背負い、ウィングはランボーグへ真っ直ぐ飛翔する。

 

「来るなら来いやぁー!」

 

「一度やると心に決めたことは絶対に諦めない。それがヒーロー! そう、ボクは決めた。プリンセスを守るのは、キュアウィングだ!」

 

 ウィングの体がオレンジの光を纏い、流星のように突撃していく。

 

「ひろがる! ウィングアターック!」

 

 ウィングの強力な一撃がランボーグを直撃。推力を失い、墜落していく。

 

「もう嫌! なんで負けるのねん!」

 

 カバトンは制御不能になったランボーグを置いて退散。

 ニャシュランも墜落する間際に脱出し、レイニーたちのいるビルの屋上へ着地した。

 

「つくづく楽しませてくれるじゃねぇかぁ。おめぇさんらはよぉ!」

 

 ニャシュランは「マタ」と「タビ」を抜刀、臨戦体制となる。

 緊張が走る中、レイニーが光の刀を握り対峙する。

 

「拙者と今一度立ち合うでござる!」

 

「一回負けたおめぇさんがどう楽しませてくれるってのかなぁ? 酔い踊れ・狂い酒!」

 

 ニャシュランがまたも乱れ斬りを繰り出し強襲。レイニーは刃の嵐を捌いてどうにか凌いでいくが、まるで(らち)が明かない。奴に付け入る隙ができれば。

 不意に、先ほどあげはが口にした言葉が記憶の泉から浮上した。

 

『猫の弱点・・・。大きな音、生のイカ、・・・それと水?』

 

(・・・水!)

 

 秘策を閃いたのか、レイニーはニャシュランから飛び退いて距離を取ると、光の刀を左側に構えたと思えば右へと振り払った。

 一瞬警戒するニャシュランだったが、何かが起こる気配は無かった。

 

「何かあるのかと思えばただの虚仮威(こけおど)しかぁ? なら、これで終わらせてやらぁ!」

 

 脅威は無いと悟ったニャシュランは二振りの刀をレイニーに向け振り翳し構える。

 

酒呑(しゅてん)羅生角頭(らしょうかくず)!」

 

 突き出した切っ先を鬼の角に見立て、ニャシュランは一直線に猛進。レイニーの胴体を貫いた。

 ━━かに見えたが、レイニーは白い霧となって消失してしまった。

 

「・・・なっ、幻だと!?」

 

「スカイランド剣術、五の型。おぼろ幻霧!」

 

 頭上で声がし、見上げればレイニーの姿が。

 「おぼろ幻霧」は刀身から発せられた細かな水滴を広げ、幻影を投射して相手を惑わす技である。

 そして、レイニーが光の刀に水滴を集約させ、一つの大きな水泡を作り上げた。あげはの言葉を思い返したレイニーは理解した。自分は『雨』を司るプリキュア。ならば、水を操ることは道理であると。

 

「これで酔いを覚ませ!」

 

 レイニーは水泡をニャシュラン目掛け放り投げ付ける。水泡を頭から被ったニャシュランは全身びしょ濡れとなった。

 

「・・・・・・ち、ちべたい」

 

 あまりの冷たさにニャシュランは体を縮こませる。

 今が好機と、レイニーは刀を時計回りに回して浄化技を繰り出す。

 

「ひ~ろ~が~る~レイニーセイバー!」

 

「ウヒィ~!?」

 

 直上からの一斬に恐れ戦いたニャシュランはギリギリのところで後ろへ転ぶように回避した。先ほどまで強気だったが、今では借りてきた猫かと情けない様を晒す。

 

「ニャシュランラン!」

 

 呪文を唱え、額の黒い結晶が赤く光ると黒い煙と共に退散していった。

 一方のスカイとプリズムも決着を付けようとしていた。

 スカイミラージュにスカイストーンWシャイニングを装填。上空に出現させたバーサライタにUFOランボーグを吸い込む。

 

「「プリキュア・アップドラフト・シャイニング!」」

 

「スミキッタ~」

 

 バーサライタから気流が放出され、ランボーグを浄化。元のドローンへ戻った。

 戦いが終わり、スカイたちは新たな仲間ウィングを称えた。

 

「ウィング、やりましたね!」

 

「えるるぅ!」

 

「はい!」

 

 エルを守り抜き、図らずも念願を叶えることができたウィングは誇らしげだった。

 その彼女たちをビルの影からクワガオーガが静観していた。

 

「新たなプリキュア、キュアウィングか。しかし、あのニャシュランですら退けるとは奴らは確実に強くなっているな。・・・・・・ん?」

 

 ふと、クワガオーガは空中を漂う紫色に光る粒を発見。それは、エルの瞳から溢れ落ちた涙の一滴であった。

 ほくそ笑むクワガオーガが左手を翳すと、エルの涙をシャボン玉で包み回収する。

 

「良い手土産ができたことだし、これで良しとするか」

 

 涙入りのシャボン玉を手にクワガオーガは路地裏の闇の中へと消えていった。

 

 * * *

 

 数日が経ち、ツバサはエルのことを『プリンセス』と敬称。すっかり彼女のナイトとして世話を焼いている。今はソラと共にエルの立つ練習を見守っていることだろう。

 代わって、何気なくリビングを訪れたシグレはテーブルの上に置かれたミラーパッドに目が留まり、吸い寄せられるかのように近づき手に取った。

 

「確かこれは・・・」

 

 ヨヨが以前、好きな場所を映す(・・・・・・・・)ことができるとミラーパッドを操作していたことを思い出し、ある考えに行き着く。

 

「もしや、これを使えば兄上の居場所が分かるのではござらぬか!」

 

 シグレが旅をする目的の一つ、生き別れの兄の行方を捜すため。ソラシド市に来てからは諸々あって手掛かりを得られなかったが、ミラーパッドを使えば兄を見つけられるのではないか。

 早速、シグレはヨヨがやっていたように鏡面を幾度も触ってみると、白く輝き出した瞬間、強く眩い光が照射する。

 

「━━うっ!?」

 

 堪らず目を瞑るシグレ。全身が光に包まれ、鏡の中へと吸い込まれていき━━。




アニメ9話部分終了です。
ラストの続きは、BURNINGさんの『熱き太陽系 静かなる雪の輝きに照らされて』の作中コラボ回にて公開中ですので、そちらをご拝読ください。

ご感想がありましたらどうぞ。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。