ひろプリ SAMURAI GIRL HEROISM 作:MOZO
「━━いでっ!」
並行世界での戦いを終えたシグレは、ミラーパッドから放り出されるように床へドスンと前のめりに不時着する。
「戻った・・・のでござるか?」
一見虹ヶ丘家のリビングではあるが、また似て非なる世界だったとしたら。という不安が過る。
「シグレさん、どうしましたか? 今すごい音がしましたけど」
物音を聞きつけ、ソラがリビングに降りてくる。シグレは猛烈な勢いでソラに詰め寄ると両肩をガッシリ掴んで顔を覗き込む。
「ソラ殿! ソラ殿は拙者の知っているソラ殿でござるか!?」
「ふぇ!? いきなりどうしたんですか? というか顔近い・・・」
鼻の頭が接触してしまうのではないかという気迫で顔を近づけてくるシグレにソラは赤面する。
「ソラちゃん、シグレちゃん、どうしたの?」
「何の騒ぎですか?」
このタイミングでましろとツバサもリビングを訪れ、密着する二人と鉢合わせすることに。
「えっと、これって・・・」
「・・・もしかして、お邪魔でした?」
「違います違います! これはシグレさんが━━」
勘違いする二人をソラが懸命に誤解を解こうとする。と、シグレは次にましろとツバサへ差し迫る。
「ましろ殿、ツバサ、拙者のことを覚えているでござるよね!? ねっ!?」
「本当に何がどうしたの・・・?」
「とりあえず落ちてください・・・」
混乱状態のシグレに二人はただ戸惑うしかなかった。
そうしてシグレはしばらくの間、疑心暗鬼に陥るのであった。
* * *
それからまた数日が経ち、ましろからある提案が為された。
「歓迎パーティー!?」
「うん。新たにプリキュアになったツバサくんとパーティーをしたいなって」
「えっ、ボクのですか?」
巣箱にいたツバサ本人も人間態になって話に加わる。
「やりたいです。歓迎パーティー!」
「ぱーてーというのは確か、夜が明けるまで飲めや歌えのどんちゃん騒ぎをする宴会のようなものでござったか?」
「夜は明かさないけど、大体そんなところだよ・・・」
シグレの知識は偏ってはいるものの、パーティーが何たるかは理解してくれているようだ。
「あの、そんなに気を遣ってもらわなくても・・・」
「ツバサくん、ダメかな?」
「あっ、いや。ダメって訳では・・・。嬉しいです!」
新参者の自分を歓迎してくれると言うましろの優しさにツバサは顔をほころばせる。
「早速準備に取り掛かろう!」
「ボクも手伝います」
「じゃあ、四人で準備しよ!」
思い立ったが吉日。ソラ、シグレ、ましろ、ツバサはパーティーに向けての準備を始める。
まずは部屋の装飾をどのようにするか。意見を出し合い、ツバサがスケッチブックで描き起こした。
「飾り付けはこんな感じでやるとして」
内装のイメージと必要な飾りを見事な画力でまとめてある。
「あとは料理ですね!」
「ツバサくん。何か食べたいものある?」
「やっぱりパーティーと言えば・・・
「そっか、ヤーキターイか。・・・・・・うん? ヤーキターイ?」
微妙に聞き覚えがあるようでない料理名にましろは目を点にする。
ヤーキターイとは、プニバード族が祝いの席で振る舞う特別な料理なのだとか。
「外はフワフワ、中はしっとり甘くて。最後に食べたのはここに来る少し前だったな。ボクの絵がコンクールに入選して、父さんと母さんがすごく喜んでくれて。あの時みんなで食べたヤーキターイはとっても美味しかったなぁ」
ツバサはスカイランドにいた頃の思い出に心馳せるのだった。
「ヤーキターイ・・・。そう言えば、拙者も以前食べたことがあったでござるなぁ」
それは、シグレがあるプニバード族の集落を訪れた際、丁度祭日と時期が重なっていたこともあって村長宅で
「じゃあ、味とか覚えていますか?」
「う~む。大分前でござったから記憶が定かではなく・・・・・・」
「そうですか・・・・・・」
「作ってみようよ、ヤーキターイ!」
未知なる料理であるにも関わらず、ましろが珍しく積極的な姿勢になる。
「でも、どうやって? ボクも作り方分からないし・・・」
「それは、えっと・・・」
「そこは諦めずにチャレンジです!」
透かさずソラが手帳を取り出し、開いて見せる。
「一度やると心に決めたことは絶対に諦めない。それがヒーロー! ですよね、ツバサくん!」
飛ぶことを諦めなかったツバサに感化したソラが記入した一文。ツバサも同意し、一同はヤーキターイ作りに挑戦することとなった。